咲に幼馴染がいたら嬉しいし、総受け百合ハーレムだともっと嬉しいすぎだろ…… 作:わたっくし
今日は風越女子への偵察日だ。
「はい、これが風越の制服ね。一度着て問題ないかチェックしてちょうだい」
「ありがとうございます。……鶴賀の時も思ったんですが、どうやって手に入れてるんですか?」
「細かいことは気にしない気にしない!…うん、よく似合ってるじゃない」
白いセーラーブラウスをベースにした制服。そこにピンク色のスカートが対比で映えている。着ているだけでなんだか上品になった気分だ。
「こんにちはー……あっ、スズちゃんかわいいー。どこの学校の制服?」
「風越のだよ。かわいいでしょ」
「風越……ま、まさかスズちゃん、風越へ転校してしまうのかだじぇ……?」
「しないよ!偵察に行くだけ」
部長に写真を撮らせてあげていると、部室に咲と優希が入ってきた。片手には勿論タコス。どんだけタコス好きなんだこの子は。
「昨日から対戦校へ偵察に行って貰ってるの。ほら、スズって小さいからなーんか油断しちゃうでしょ?」
どういう意味ですか。部長に抗議の視線を注ぐもわしゃわしゃ撫でられてしまうので、諦めて視線を戻す。
「私も一緒に行きたいなぁ……」
「ダメ。咲はウチの秘密兵器なんだし、大会まではひたすら特訓よ」
「はーい……」
がくんと項垂れる咲。まあ当然っちゃ当然である。そもそも出場校同士の事前の対局は、大会の規則で禁じられているし。
「それじゃあ行ってきます」
「今回はバレないようにね」
……あの後、蒲原先輩から部長に連絡があったらしい。私はボロが出やすいとかなんとか。今回は大丈夫だといいけど……
×××
〜風越女子高校〜
「はーい、じゃあ部内戦始めるよー。順番にくじ引いてねー」
……案外簡単に侵入出来てしまった。名門校なだけあって部員も沢山いるせいか、バレる気配は全くない。
そして今から風越恒例の部内戦が始まる模様。一人ずつくじを引いていき、その番号に対応した雀卓の席に座るといった仕組みだ。つまりくじ番号によっては福路美穂子や池田華菜と対局出来る可能性があるってことだ。
「えーっと番号は73………73!?」
隣に立っていた部員の子にそれとなく聞いてみると、風越麻雀部の部員は80名を超えているそう。流石全国常連なだけある……
"73"と書かれてあるテープの席に座り、対戦相手を待つ。……今気づいたが、私は福路先輩や池田先輩の顔を把握していないため、仮に対戦したとしても気づかずに終わってしまう可能性がある。
(福路美穂子…… 池田華菜……っと)
今のうちに彼女たちの名前を検索して顔を把握しておく。見られるとなんとなく気まずいので、こっそりと。
(福路先輩は片目を閉じてて……池田先輩は猫っぽい)
顔を上げて周りを見渡すと……あ、福路先輩だ。もう別の席に座ってる。池田先輩は…………
「ねえ、今私とキャプテンのこと調べてたよね」
……下家だった。私の卓の。しかも二人を検索してる所までしっかり見られていた。
「あんまり見ない顔だけど、新入生?」
「は、はい。お二人に憧れて風越に……」
「へー、見る目あるじゃん!まー、なんたってウチのキャプテンは最強だし!」
満足そうに答える池田先輩。心なしか猫耳も生えているような気がする。
「あ、そうだ!部内戦終わったらキャプテンと一緒に対局しようよ。キャプテンの凄さを体感出来るいい機会になるよ」
「い、いいんですか!?ありがとうございます!」
「いいよいいよ。君もなかなか見所あるから」
なんという幸運。池田先輩どころか福路先輩と対局出来る機会まで得てしまった。もうここで運使い果たしちゃったんじゃないかな。
「それじゃあ始めるよー」
「よろしくお願いします!」
数少ない貴重な対局の機会。なるべく多くの情報と学びを持ち帰っておきたい。
×××
「ツモ、4000オール!」
「あ、ありがとうございました……」
……何の成果も得られなかった。こちらがコツコツの手牌を完成させていく間に向こうはあっという間に役を完成させてしまう。
打ち筋に何か特徴があるというよりかは、シンプルに麻雀が上手な印象を受けた。咲や桃子みたいな能力持ちではないっぽい。
「君は守りが少し手薄だね。あとリーチのタイミングももう少し考えた方がいい」
「助かります、池田先輩!」
「せ、せんぱ……!も、もっと頼ってもいいからな!」
褒めてあげると喜ぶ……と。他に気になる点があるとすれば高打点の上がりが多いことかな。先程の対局でもバンバン跳満を上がっていた。
「それじゃあ後でな!」
そう言って池田先輩は次のくじを引きに行ってしまった。うーむ、先の対局ではやられっぱなしだったけど、福路先輩とも打つ際にリベンジしよう。
(えーっと次は34番……)
その後もくじを引いては対局、くじを引いては対局の繰り返しで結局福路先輩と同じ卓に着くことはなかった。
私の戦績は1位2回、2位3回、3位0回のラス1回という具合。なかなか悪くないんじゃないだろうか。
部内戦の結果が発表されたあと、残りは各々自主練という形で一旦解散となった。因みに1位は同率で福路先輩と池田先輩。1位6回でトップ率100%という意味の分からない記録を打ち立てていた。なんなんだこの人たち……。
「あ、いたいた。おーい」
部屋の壁にもたれながら休憩していると、向こうから池田先輩がやってきた。
「お疲れ様です、池田先輩」
「せ、せんぱ……!……ゴホン。じゃなくて、さっきの約束なんだけど…」
「あっ!一緒に対局してくれるっていう」
「それが、キャプテンに聞いてみたら先約があったみたいで……。それに私もさっきコーチから呼び出し喰らっちゃって……」
「な、なるほど」
「また別の日に埋め合わせするからさ!今日はちょっと厳しいかも。ごめん!」
そう言って池田先輩は部室の外へと出ていってしまった。ごめんなさい、私も明日以降はここから姿を消していると思います。
……しかし、福路先輩も池田先輩もいないとなると、このまま風越に残っていても正直あまり意味はない。さっさと清澄に帰って咲たちのお手伝いでもしてくるかな。あんまり有用な情報も得られなかったし。
そそくさと部室を出た私はそのまま正面玄関へと向かっていった。途中福路先輩とすれ違ったが、何を話せばいいかも分からずにそのまま通り過ぎてしまった。
×××
風越の校門を抜け、帰りの電車に乗るべく見知らぬ街を歩いていると……
「パ、パスタ専門店……!」
その帰り道途中で見かけたパスタ屋さん。何を隠そう、私丈槍鈴はパスタが大好物なのである。それはもう、優希がタコスを好きなのと同じくらいには。
勿論入る以外の選択肢は存在していないので、私の身体は引きつけられるように店へと入っていく。……おお、結構いい雰囲気。
席に座り、少し悩んだ末にカルボナーラを注文した私はスマホを取り出しメッセージアプリを起動する。30分前くらいに桃子さんからメッセージが来ていた。
『風越対策は順調っすか?』
えーっと
『微妙。池田先輩にはボロ負けしたし福路先輩とはそもそも対局できなかった』
『おいたわしやっす、スズさん。清澄は勝てそうっすか?』
すぐに返信が来た。
『どうだろ。たしか池田先輩は大将だったから、咲との相性次第かな』
『なるほどっす。ところで今は休憩中っすか?』
『うん。帰り道にいいお店があったからちょっと』
『もし私がそこにいたら膝枕してあげるんすけど』
『はいはい。今度鶴賀に来た時お願いするね』
ぐーっと、背伸びをして身体を少し横に傾ける。ここ最近長野各地を歩き回っているせいで疲れが溜まっている。本当に桃子がいるなら膝枕だってお願いするのに……
……こつん。と私の肩が何かとぶつかる感覚。……この席は私一人のはずなんだけど……
「本当にいたりして」
「うわあぁっ!?」
よーく隣を見るとそこには笑顔の桃子さんが座っていた。
「い、いつの間に……?」
「ふふっ。さっきからいたっすよー。はい身体を委ねてー」
あっという間に膝枕の体制に。今は人の少ない時間帯だからいいけど、それでも少し恥ずかしい。
「本気を出したらスズさんでもすぐには気づけないっぽいっすね」
「あー……、今はしっかり見えてるんだけどなー」
桃子さん曰く、私の場合一度気づいたら見失うことはないらしい。桃子さんの存在を意識していないと気づかないといった感じか。
「桃子さんはずっとこのお店にいたの?」
「違うっすよ。あとモモでいいっす」
「じゃあ……モモはいつから?」
「えーっと、スズさんが風越に潜入した時からっす」
「それってずっとじゃん!!」
「はい、ずっと見てたっす」
つまりモモは偵察する私をずっと尾行していたのだ。ま、全く気づかなかった。……いや、というかこれって立派なストーキング行為なんじゃ……
「……それを防ぐには、モモのことを常に意識する必要がある、と……」
「普段から私のことを考えなきゃっすねー」
「重いなぁ……」
頭を撫でられながら思案に耽る。まあ、悪い子じゃないんだし尾行されるくらいならいいか。
「あ、パスタ来たみたいっす。食べさせてあげるっすよ?」
「流石に自分で食べる」
モモの膝から起き上がって、そのまま机に置かれたカルボナーラに目を輝かせる。盛り付けや麺の輝き具合など、このお店なかなかやるようで……。
「うん!おいしー」
味も文句なし。カルボナーラ特有のクリーミーさと麺のもっちり感が完璧だ。リピート必須だなこれは……
「美味しそうっすね」
「……自分のは頼んでないの?」
「基本気づかれないので……」
……ちょっと気の毒だったので分けてあげることにした。追加のフォークを取り出そうとする前に、何やら口を開けてきたので仕方なくクルクルと麺を巻き取ってモモの口にフォークを運ぶ。美味しそうで何よりだ。
「幸せっす……」
「それはよかった。…そろそろいこっか」
カルボナーラも堪能できたし、そろそろ戻らなきゃ。そう思って席を立ったタイミングで……
「……あっ!さっきの1年生!」
偶然にも池田先輩が店内へと入ってきていた。隣には福路先輩もいる。
「初めまして、3年の福路美穂子です。よろしくね」
「い、1年の丈槍鈴です。よろしくお願いします」
「へー、名前鈴っていうんだ。…それで鈴!この後時間ある?」
……あるけど、この流れは……!
「向こうの卓でさ、一局だけ打ってこうよ」
池田先輩の指を差した方向には雀卓が。麻雀全盛期のこのご時世、飲食店といえど雀卓の一つや二つ置かれているのが当たり前のことなのだ。
「……是非、お願いします!」
「ありがとう。でも、人数が一人足りないわね……」
……この流れもつい最近見たな……
「私もいるっすよ」
「うわぁ!?ビックリした!」
「……全然気づかなかった」
突然現れたモモに驚愕する先輩たち。やっぱりモモって全然目立たないんだ……
「……でもその服、鶴賀学園の制服よね?」
「あっ本当だ!……キャプテン、大会前の出場校との対局って……」
「規則違反ね。……あの、申し訳ないのだけれど……」
「あっ、全然大丈夫っすよ!でもスズさんは清澄の団体メンバーには入ってないのでセーフっす!」
…………まずい。
「……清澄?なんで清澄がここで…」
モモもやらかしに気づいたのか慌てて口を抑える。可愛いけどもう手遅れだ。
「……そういえば、その制服ってウチらの代のデザインだよな。新入生はデザインが変わってたはず」
「……そもそも、風越の新入部員募集期間は先月で終わっていたはずなのだけれど……」
「す、すみません用事ができたので帰りま……いたたたたた!!!」
「逃げんなよ」
隙をついて逃げようとするも、池田先輩に腕をがっしりと掴まれて身動きが取れなくなってしまう。
「……ウチらが勝ったら洗いざらい話してもらうかんな」
こ、怖い。とても断れる雰囲気ではない。
「……よ、よろしくお願いしまーす」
×××
手の空いている店員さんに入ってもらい、対局を始める。モモは呑気に私の横で応援している。
「清澄って、あの原村和が入ったってとこだよな」
「全中王者の原村和さん。彼女ならどこの高校でも活躍できそうだけれど……」
毎日会ってるせいかあまり感じないけど、やっぱり和って凄い人物なんだな。中学時代とはいえど、全国1位って考えたらそれもそうか。
「でも何故、彼女は清澄に?」
「友達と同じ高校に進学したかったからだそうです」
「そんな理由で……てか清澄だってことはもう認めるんだな……」
「あっ」
ついつい答えてしまった。友達のことを聞かれると嬉しくなってつい話し過ぎてしまう。
「まあ対局が終わったら全部話してもらうかんな!リーチ!」
は、はや。こっちの役は全く完成していないというのに。
(うーん……)
……池田先輩の牌に関しては、さっき対戦した時よりかはよく見えるようになっている。幾分か本気を出しているってことだと思う。だけど、福路先輩の牌は全く見えない。キャプテンらしい余裕の現れだろうか。
とすると、気をつけるべきは福路先輩の方。多分池田先輩に振り込むことはないから、彼女の出方のみに意識を注ぐべきだ。
「……テンパイ」
結局この局は流局。相手のツモは防ぎようがないからそこは幸運だった。
(……今どのくらい見えてるっすか?)
(池田先輩の待ち牌くらいなら。福路先輩に関しては何も見えない)
ステルスモードのモモと小声で話す。私の能力の不便な所として、完全に相手依存な所があげられる。向こうのやる気次第というのが何とも難しい。
「リーチ!」
またも池田先輩からのリーチが飛んできたので、自分の手牌と福路先輩の出方を探り、厳しそうならオリ、の繰り返し。
私があからさまに振り込まなくなったことに対し、池田先輩は怪訝な表情を浮かべる。
「……降りてばっかじゃ意味ないぞ」
「守りが薄いって言われちゃったので」
私の言葉にムスッとした視線を注ぐ池田先輩。こちらはアドバイス通りに打っているだけだ。
そしてこの局も流局になった後、うっすらと福路先輩の纏う雰囲気が変化する。
(あ、目開けたっす……)
「キャプテン……」
常に閉じていた福路先輩の右目が開く。青色の綺麗な瞳、いわゆるオッドアイだった。
(……こっちも見えてきた)
少しは本気を出してくれたのであろうか、福路先輩の牌に関してもうっすらと形が浮かび上がってきた。……浮かび上がってきたのだけれど…
(なんかめっちゃ見られてる気がする!!!)
それ以上に福路先輩からの視線が凄かった。勿論視線といっても直接こちらを見ている訳ではない。居場所の分からない所から、私自身が覗かれている感触が伝わってきたのだ。
(お、落ち着かない……)
対面の池田先輩も緊張したような表情を浮かべる。多分能力が発動したことに気づいたのだろう。……ただ、私の場合は更に事情が異なる。
恐らく福路先輩の能力は、他家に干渉して場を支配するといった類のもの。一般の、もしくは能力持ちの打ち手でもそこまで福路先輩の能力に忌避感は覚えないはず。
しかし私の場合、普段相手の牌を覗き見る側に立っている為、立場が逆転するとどうしても調子が狂ってしまう。小さな震えと鳥肌が止まらない。
(……大丈夫っすか?膝使います?)
(い、今はいい……)
一応私も福路先輩の牌は見えている。十分に勝ち目はあるのだが、どうしても攻めに行く気にはなれない。個人的に咲や和よりもキツい相手かも……!
「……手震えてるけど大丈夫?」
「も、問題ないです。続けましょう」
一刻も早く勝負を終わらせたかった私は勝つことを諦めて守りにシフトする。このまま行くと福路先輩に対して変なトラウマを抱きかねない。
(……福路先輩は聴牌。池田先輩はまだ一向聴……)
対する私は聴牌。リーチをかけられる状態ではあるが、やはり弱気になってしまう。悩んだ末に降りようと牌に手をかけた瞬間。
(ダメっすよ。……降りちゃ、ダメっす)
私の身体にモモの手が触れる。それだけで、不思議と気持ちが大分楽になる。……触れる場所が問題だが。
(……ガッツリ胸揉んでますけど)
(気づかれてないし大丈夫っすよ)
……そういう問題ではないのだが。私の周囲のセクハラ癖はどうにかならないものか。
しかし、モモのおかげで気を持ち直した私は呼吸を整えて宣告する。
「リーチ!」
(……ついに来たッ!)
先輩たちの身体に力が入る。ここで上がることができれば、私の逆転1位だ。勿論二人もそうやすやすと私に勝たせる訳にはいかない。
「リーチ!」
「リーチ」
続け様に先輩方のリーチ。これで後は完全な運勝負となった。もっとも下家の店員さんは四向聴くらいだったので多分スルーで大丈夫。
一巡、二巡と誰も上がりが来ないまま牌山だけが減っていく。そして最後の一巡、彼女、福路先輩はツモ牌を手にし、役を宣告する。
「ツモ!2000・4000 満貫です」
「……負けちゃった」
「……ありがとうございました」
勝負は福路先輩の満貫ツモで決着。1位福路先輩、2位私、3位池田先輩、4位店員さんという形で幕を閉じた。
「丈槍さん、対局中少し震えていたみたいだけど大丈夫?」
「あー、大丈夫です。今完全に治りました……」
対局が終わって再び右目を閉じたせいか、あの得体の知れない恐怖感も消え去っていった。
「どう?ウチのキャプテン強かったっしょ!」
「はい。恐怖で震えが止まりませんでした」
「えっ、あれ私のせい……?」
出来れば1年くらいは対局したくない。そう思わされるほどの威圧感だった。
「……そーれーでー、なーんでウチの高校に忍び込んでたのかなー?」
「うっ……えーっとですねー……」
もしかするとこのまま帰れるかもと思っていたが、そんなはずもなく文字通り私は池田先輩に今回の件について洗いざらい吐かされた。
「うう……風越怖い……」
「私はお前のその行動力の方が怖いよ。昨日は鶴賀に行ってきたのか……で、明後日は龍門渕に行くんだって?」
「はい。噂によると凄く強いらしいですね」
「ああ……。あ、そうだ!見逃してあげる代わりに龍門渕の情報を……」
「華菜」
「……うぅ。すみませんキャプテン……」
か、かっこいい……!これが名門風越のキャプテン……!部長なら嬉々として欲しがるだろうに。
「それじゃあ私達はこれで。華菜」
「はい!……あ、そうだ、鈴!」
何かを思い出したかのような素振りを見せると、池田先輩はスマホを差し出してきた。
「何かあったら連絡しろよ!」
……池田先輩の連絡先も手に入れてしまった。昨日と合わせてこれで4人目。アイコンの猫が可愛らしい。
店先まで二人を見送って、私達も帰ることにする。
「清澄まで送ってくっすよ」
「いいの?結構遠いけど」
「遠いからいいんすよ!」
……時間がかかるだけだと思うけど。そう思いながら私達は歩みを進めて行った。
×××
〜原村和〜
放課後、私と咲さんは近くのカフェで甘味をいただいていました。普段はあまり食べませんが、パフェというものは凄く美味しいですね。
そしてまた部室に戻ろうと二人で歩いていると……
「あっ!ねえ和ちゃん!向こうから歩いてくるの、あれスズちゃんじゃない?」
「あっ、本当ですね。風越からの帰りでしょうか」
手を振ろうと思ったその時、何か違和感に気づきます。……隣に、人がいます。
「……咲さん、鈴さんの隣にいる人、見えますか?」
「え?人なんていないよ?……いや、何か、いるね……」
鈴さんもこちらに気づいたのか手を振ってきます。取り敢えず振り返しておきますか。
「お疲れ様です、鈴さん。風越はどうでしたか?」
「あー……、まあまあって感じかな?」
「そうですか。……で、隣にいる方は?」
鈴さんは驚いたような表情を浮かべます。対して隣の少女は、まるで見つかるのが分かっていたかのような笑顔を浮かべて。
「流石っすね。鶴賀学園1年の東横桃子っす」
「東横さん……鈴さんとは随分仲がよろしいんですね」
「そう見えるっすか?だとしたら嬉しいっす」
「ねえスズちゃん?ちょっと距離近いと思うな」
「さ、咲……?なんか怖いよ……?」
笑顔を浮かべる咲さんですが、まず声音からして絶対に笑っていません。威圧感すら感じます。
「……お二人はどういう関係で?」
「えー?普通に他校のお友達っすよ?」
そう言いながら彼女は鈴さんの背後に回り込み、そのままバックハグの体制に。こ、この女、絶対に分かっててやっています……!
「……スズちゃん、後で詳しく聞くからね」
……冷静に考えてみれば、鈴さんの魅力が清澄の内で収まりきるはずがありません。私達が迂闊でした……。
「そろそろ怖いんで、私はこの辺でお暇するっす」
そう言って彼女、東横さんは手を振りながら来た道を戻って行きました。
「鈴さん!何か変なことはされませんでしたか!?」
「えっ!?い、いや別に……」
「本当に?」
「……強いて言うなら膝枕して貰ったり、あとは胸とか揉まれて……。いや、二人は毎日やってるからね?」
それとこれとは話が別です。私達以外にその身体を許してしまったという事実が許せないのです。
「もー二人とも顔が怖いよ?早く部室戻ろ!」
「帰ったら膝枕してね?」
「はいはいわかったから!早く行こ?」
……まあ今日の所は鈴さんの膝枕に免じて許してあげましょう。
アニメ見返したんですが池田かっこよすぎ