咲に幼馴染がいたら嬉しいし、総受け百合ハーレムだともっと嬉しいすぎだろ…… 作:わたっくし
朝6時。アラームの音と共に目覚める。えーっと、龍門渕高校に行く……のは明日なので、今日は特に何の予定もない。ふふん。久々の休養日だ。
「いってきまーす」
手早く朝の支度を済ませて学校へと向かう。春ののどかなそよ風が心地良い。いつものように咲の家に寄り、彼女を待つ。小学生の時からの日課だ。
「スズちゃんおはよう」
「おはよー咲」
「今日体育あるけど、ちゃんと体育着持ってる?」
「持ってるよ。もう子供じゃないんだから」
そう得意げに言っているが、先週体育着を忘れて見学していたことを私は忘れていない。咲は高校生になってもおっちょこちょいな部分があるからな……。
「……スズちゃんまた胸おっきくなった?」
「なったよー。……主に誰かさんのせいでね」
露骨に目を逸らす咲。……この可愛らしい少女を筆頭に、何年もセクハラを受け続けているせいか私の胸は日に日にサイズが増している気がする。またブラ買い替えなきゃな……
「ほらいつまでも揉んでないで、早く行くよー」
「もうちょっとだけ……」
無視して学校へと向かうと、慌てて咲も付いてくるのでペースを落として彼女に合わせてあげる。中学生あたりからは、咲のセクハラに対して特段注意することはなくなった。だって注意しても聞く気ないんだもんこの子。
「明日は龍門渕高校だっけ」
「そう。どうやって忍び込むかが思いついてないけど」
聞くところによると龍門渕は部員がわずか5名。なんでも1年前、当時在籍していた麻雀部員をこの5名が殲滅した形で今の龍門渕高校麻雀部が出来上がったようで。
めちゃくちゃ危険なんじゃないかこの麻雀部……?
色々と話している間に学校に着いてしまった。咲とのお喋りが麻雀の次くらいに楽しいかもしれない。
「今日は1時間目から数学かー。最近難し……あれっ?」
靴箱から上履きを取り出そうとすると、奥の方に少し厚みのある紙が置かれていることに気づいた。
「ねえねえ咲!これって……あ、ちょ、咲!?」
「…………」
咲は私から手紙を奪い取って中身を読み、しばらくして自身のポケットにしまい込んだ。内容を尋ねても、『聞く価値ないよ』としか答えない。す、少しは気になるじゃん……。
高校でも咲とは同じクラスだ。というか小学生から今に至るまで咲とは大体同じクラス。何かの力が働いているとしか思えない。
クラスメイトとも程々に挨拶を済ませ、席に着いてカバンを下ろす。まだ始業までには結構時間があるし、それまで部室で時間を潰そうかな。
「咲も部室いこ?」
「うん!」
職員室で鍵を借りて、部室へと向かう。中には誰もいなかったので私達が1番乗りだ。日によっては部長や染谷先輩とかがいるんだけど。
「……今更だけどなんでこんな豪華なんだろ」
「ベッドがあるのもそうだけど、ステンドグラスともなるともうよく分からないよね……」
まるで教会かのような巨大な部室を見渡しながら呟く。こんな部室を獲得できた部長は一体何者なんだ……
「一緒にお昼寝する?」
ベッドを指さしながら私に笑顔を向ける咲。可愛いけど丁重にお断りする。さっき寝たばっかだし、そもそも咲と一緒に寝ると何されるか分かったもんではない。脱がされていなければマシな方だ。
ひとまず奥の方にある雀卓の席に腰を下ろして一休み。咲も私の隣に座……らず、ひょいっと私を持ち上げたかと思いきや、そのまま私は彼女の膝の上に乗せられた。
「スズちゃん今身長いくつ?」
「……145」
「本当は?」
「……144」
「本当は?」
「143!もういいでしょ!」
幼馴染が私のことをいじめてくる。小4くらいまでは私の方が大きかったのにな……。今では背後からも頭を撫でられてしまうくらいには身長差がついてしまった。
「何しよっか?」
「脱衣麻じゃ……」
「却下」
むー、と呟く声が聞こえる。むーじゃないが。というかこの前十分楽しんだだろ。
ぼーっと二人で指遊びをしているとポケットのスマホから通知音がした。確認してみると、差出人は池田先輩。こんな時間になんだろう?
『お疲れ。ウチの部室に高そうなハンドクリームあったんだけど、これ鈴の?』
メッセージと同時に送信された写真には、少し高級感のあるパッケージのハンドクリームの写真が。……このブランドのクリームを使っている人はあまりいないので、恐らく私の私物で間違いない。そういえば昨日休憩中にハンドクリーム使ったな……
『すみません、私のやつです。取りに行くの手間なので先輩が使っちゃってください。いらなかったら捨てちゃって大丈夫です』
『マジで!?じゃあありがたく使わせて貰う!』
高かったけどもう一度風越まで行く方が面倒くさかったので池田先輩にそのまま譲渡。帰りにまた新しいの買っておこう。
「今の人は?」
「風越の池田先輩。大将だから多分咲とも戦うよ」
「へぇ。連絡先も交換してるんだ」
「うん。昨日たまたま……ちょっとぎゅってしないでー!」
お腹に回された咲の腕の力がぐっと増す。苦しくて動けない。
「スズちゃん細いね」
「小さいから細く感じるだけ!ほら、そろそろ行くよ?」
時計に目を向けると、いつの間にか始業10分前になっていた。
咲は今の体勢のまま立ち上がり、そして私を持ったまま移動し始める。私はネコか。というか咲の体幹が凄い。一応40キロ近くある私を難なく持ち運んでいる。
「咲って地味に身体能力高いよね……」
「スズちゃんが軽すぎるだけだと思うけど」
このまま教室まで運びそうな勢いだったので、途中で降ろしてもらい小走りで教室まで向かった。
×××
授業中。
「じゃあこの問題を……丈槍!いけるか?」
「はい。全体の数が47の場合、12番目のデータが第一四分位数と見なせるので……」
スズちゃんは頭が良い。学年の中でも上位に入る成績だと思う。それを本人に言っても『人より勉強してるだけだから……』って、あまり嬉しそうにしない。スズちゃんは自己肯定感がちょっと低い。
『た、丈槍さん!これどうぞ!』
『す、鈴ちゃん。放課後って空いてるかな……?』
スズちゃんはよくモテる。何故なら顔がいいのに顔がかわいいから。この二つって両立するんだって最近思った。今朝も靴箱にラブレターが入っていたので私が丁重に預かっておいた。
『咲、元気出して』
『お姉ちゃんともまた会えるよ』
スズちゃんは優しい。私が今でも麻雀は続けているのは間違いなく彼女のおかげだ。それに私がいくらセクハラしても笑って許してくれる。スズちゃんがモテる真の理由は、ここにある。
『あ、ちょ、咲っ!?』
『もぉ…よく飽きないね……』
スズちゃんは胸がおっきい。私なんかとは比べ物にならない程には。小学生の頃から日に日に成長していって、本人曰く多分IかJだと言っていた。
……和ちゃんよりは小さいにしても、身長を加味したら相当な物だと思う。冷静に考えて、体重の8分の1がおっぱいって字面が物凄い。
普段は着痩せしてるけど、中学生の時に一緒にお風呂に入った時なんて物凄かった。高校生になった今、仮にスズちゃんとお風呂に入る時が来たとして、正気を保てる自信が私にはない。
つまり私が何を言いたいのかというと、スズちゃんは、良い。
勿論こんな完璧な女の子を周りが見逃す訳がない。中学生までは鳴りを潜めていたものの、高校生になってからは彼女の魅力は抑えきれなくなってしまった。それは校内に留まらず、校外まで。
だからここ最近は、スズちゃんが他の誰かに盗られてしまうんじゃないかって少し不安なんだけど……。
(まあ、その時は先に結婚しちゃえばいいかな)
恋は早い者勝ち。長年スズちゃんと過ごしてきた私だからこそ言えるが、彼女は押しに弱い。多分今からでも強く押せば全然婚姻届にハンコを押してくれる。まだ16だから年齢的には出来ないんだけど。
(………………)
高校生になってから、和ちゃんや優希ちゃん、麻雀部のみんなと出会えた。清澄を全国の舞台まで連れて行くこと、全国に行ってお姉ちゃんに会うこと、叶えたい目標も沢山できた。これも多分、スズちゃんが居てくれたから。
「最近、楽しいなぁ……」
席の横で教科書を読む彼女に、私はぽつりと呟いた。
×××
「…………」
……席の横で咲が笑顔を浮かべながらこちらを見ている。かわいい。かわいいけど、もう少しだけ授業に集中して欲しい。こっちが集中出来なくなってしまうので。
×××
あっという間に放課後。支度を済ませて、咲と一緒に部室に向かう。部室では既に和ちゃん、優希ちゃん、部長、染谷先輩で対局が始まっていた。
「おーう、咲、鈴ー」
「もう少しで終わるからちょっと待っててねー」
状況を見てみると、今のところトップが和、3000点差で部長、そこから3000点、2000点差で染谷先輩、優希ちゃんといった感じだ。
「す、鈴〜、タコスを買ってきておくれぇ……このままだと負けちゃうじょ……」
「ダメよ、優希。大会でも対局中の飲食の持ち込みは禁止なんだからタコスなしでも戦えるようになりなさい」
「そうじゃけえ優希。後でタコス奢ってやるけん頑張れ」
「本当に!?うおおおおおやってやるじぇー!!」
「……優希は少し甘えすぎです」
……タコスで思い出したけど、昨日のパスタ屋さん、美味しかったなぁ。今度はみんなも連れて行きたいな。
「ツモ。2000・4000です」
「うわー!もう少しじゃったのに!」
パスタに想いを馳せていると、いつの間にか対局が終わっていた。そのまま和がツモで上がってトップ。他三人の順位も先程も変わらず終局といったところ。
「咲、鈴。ワシと優希は学食でタコス買いに行ってくるけん、代わりに二人が入ってくれ」
「うぅ〜私の仇を〜……」
優希ちゃんとまこ先輩の席が空いたので、代わりに私達が入る。優希と私の身長は同じだから、座高の調整をしなくて済むので楽だ。
「それじゃあ始めましょうか」
部長が中央のボタンを押して雀卓が動き出す。手牌は……可もなく不可もなくって感じかな。対局開始!
「そういえば鈴、昨日の風越はどうだった?」
「あー、福路先輩が強かったです。なんというか、私と相性が大分悪いっていうか……」
「そういえばこの前鈴さんは能力が戻ったとか言っていましたよね」
「あっ、それ私も気になってた」
「あー……まあ、相手の待ち牌だったりツモ牌だったりが浮かんでくるんですけど……」
発動条件を明かしてしまっていいのか少し悩む。というより、私が勝手に仮定している『相手がやる気を出せば出すほど』という発動条件自体が、間違っている可能性が高いからだ。
仮にその条件が正しかった場合、それを知った相手は私に勝つために、『本気を出さないフリ』をしなければならなくなる。でも、『勝ちたい』と願いながら『勝つ気はない』と思い込むのは、恐らく心理的に不可能だ。
その結果、勝つために勝たないつもりで戦うという、一種の矛盾のような状況が生じてしまう。
「……いつ発動するのかはまだ分かりませんね。私にもまだちょっとよく分かってなくて」
「そう。何か分かったら教えてちょうだい」
そんな矛盾を強いる能力が本当に存在するのだろうか。私が勝手にそう思い込んでいるだけで、何か別の引き金があるような気がしてならない。
×××
部活帰り。ドラッグストアでハンドクリームを買ってから帰る。今度は無くさないようにしなきゃ。
「スズちゃん、明日も頑張ってね」
「うん、咲も特訓頑張って」
咲の家まで着いた。そしてそのまま私も帰ろうとした時、咲が何かを思い出したかのような素振りを見せ、私に聞いてきた。
「スズちゃん。二人で挙げるとしたら、教会式、人前式、神前式、どれがいい?」
「え、何?きょ、きょうかい?」
「どれがいい?」
「し、しんぜんしき?」
「ふふっ、ロマンチックだね」
そのまま手を振って姿を消す咲。なんだったのだろう今の質問は。きょうかい、しんせん……あーもう忘れちゃった。まあいいか。
明日は龍門渕高校。今度こそ上手く潜入してみせる。
鈴のバストは、大体滝見春ちゃんと同じくらいです。