チクタクチクタクチクタク…
時計の針は、一歩一歩と足を運ぶように前に進んでいく。その時計の針が戻ることは、決してない。どんな事があっても、人生という時計は常に進み続け、その先には様々な出会いが待っている。
時には、その出会いが人間の運命を変えることだってある。何故か。人間すべてには、運命を変えることのできる力が携えられているからだ。
無論、人生の中では様々な選択肢がある。人間は選択一つで様々な道へと進んでいくのだ。
これは、『今』という時を生きる、二人の少女達のお話である─
「…こられなくなった?」
『悪い!親戚が大怪我しちまって見舞いに行くことになったんだ…ごめん!!』
「…ううん、いいよ。メラの分まで、私が楽しんでくるから。」
『わかった、それじゃあ!!』
スマホに映る赤い通話を切るボタンを押しチケットを取り出す、ピンクのロングヘアーに紫の瞳が特徴の女性。彼女の名は『堕楽 ツカサ』、身長170cm体重58kgの中学二年生だ。
彼女は今、先程通話していた数少ない友人である『天命 メラ』から勧められ、推していくことを決めたアーティストユニット『ツヴァイウィング』のライブ会場に来ている。
「…生の、ツヴァイウィング。CDの時とは違う、生歌。どんな感じなんだろう…」
元々ツカサは自己肯定感が低く、友達も作れずにいた。そんな時に話しかけてきたのがメラだ。彼女は武闘派で常に明るく、ツカサに無いものを持っていた。
その明るさに触れたとき、ツカサは嬉しかった。こんな私でも誰かと話が出来るのだと、語れるのだと。
みるみる内にツカサとメラは仲良くなっていった。そんなある日の放課後、メラからこんな話がとんできた
『ツカサ、ツヴァイウィングって興味あるか?』
『ツヴァイ…ウィング?』
『知らねぇのか!?今流行りのアーティストユニットだぞ!?』
その時自分の中の『好き』という概念に気づいてなかったツカサに、世間の流行というものは知る時もなかった。
『いっぺん聴いてみろって!これそのCD!』
『あ…ありがとう』
『通話で感想聞かせてくれよなー!それじゃ!』
帰りの通学路で別れた二人。それからCDを受け取ったツカサは、自宅のCDプレイヤーでツヴァイウィングの曲を聴いてみた。…そして、その歌声に魅了された
『…なんだろう…凄い、聴いてると楽しい…そんな気がする』
そこで初めて、ツカサは自分の中の『好き』という感情に気づいた。ツヴァイウィングの曲を聴いていると、心が安らぐ。テンションが上がる。そんな感情が湧いていた。
そんなツヴァイウィングの生ライブのチケットをなんとか入手し、いざ親友のメラと共に参加しようと思ったが、メラが来れなくなってしまった
「…仕方ないよ、急な事だったから」
まるで自分に言い聞かせ、胸の中にそっと悲しみの感情を閉じ込める。ペンライトを購入し、いざ入場…しようとした時
「…?」
ツカサの視界に、微かながら興味を惹かれる物が入った。彼女は一歩、また一歩とその『物』に近づいていく。手で取れる範囲内に入り、ツカサはその『物』を手に取った
「なんだろう…これ。黒い…機械?」
ツカサが手に取った『物』は、全体的に黒く、何かの機械だということはわかった。だが、それ以上は情報を得ることができなかった。
「…後で、係員に渡そう」
この機械が誰かの落とし物と思ったツカサは、一度ポケットに入れ後で係員に渡し、いずれ持ち物が現れるだろう…この時はそう思っていた。それがまさか、あんな事になるとは…
───────
いざライブ会場内に入り、自分の席に座ったツカサ。自分の他にも観客は席がすべて埋まるのではというレベルでおり、ツヴァイウィングの人気度が高いことがわかる。
観客が会場に入りきってから数分後、曲のイントロが流れ出し、ゆっくりとツヴァイウィングの二人…天羽奏と風鳴翼が姿を見せた
「来た……!!生の、奏さんと翼さん…!!」
周囲の興奮に煽られ、ツカサのテンションもフォルテッシモ…ゴホン、最高潮に達する。これがライブ、これが生歌。美しい歌声を自分の耳で聴いたツカサは、心から感動していた。
「…影から、支えたい…!私の、推しを……!!」
ツカサもすっかりファンの一人となり、ツヴァイウィングの歌声に魅了されていた
天羽奏がマイクを近づけ、観客達に声をかける
「お前ら!まだまだ盛り上がれるだろ!!」
『ウオォォォォォォォォォ!!!』
観客たちの熱狂の渦は最高潮。その声に応えるように、いざ二曲目に入ろうとした
『ドゴォォォォォン!!!』
─その時、世界が変わった
突然ライブ会場にて起きた爆発。何が起きたのか分からぬ観客達は恐怖と悲鳴に包まれパニックに。火の手から逃れようと出口に殺到していく中、一人の観客が叫んだ
「ノイズだぁぁぁぁっ!!」
空からボトッボトッと飛来し、次々と人間に突撃…触れた対象物と共に自らも散っていく謎の敵、ノイズ…この異形達と人類は、ただひたすらに戦い続けていたのだ。
「ひっ……!?」
先ほどまでライブで盛り上がっていた観客が一人、また一人とノイズに触れられ、生命活動を停止していく。軽々と命が散っていく様に、ツカサは恐怖に囚われ、出口にまっしぐらに走っていく。
『Croitzal ronzell Gungnir zizzl……』
─その際、歌のようなものが聞こえた。ふと振り返ると、そこには先ほどまでの歌姫とは違い、『戦士』としてノイズと戦う、ツヴァイウィングの姿があった。
「何…あれ」
出口で他の観客に押し流されそうになるツカサ。咄嗟に横にあった通路に身を隠し、出ることを放棄。ツカサは戦士となった今のツヴァイウィングがどういうものか全く知らなかった。だが、天羽奏が口ずさんでいる歌を聴いて思った
(なんて…悲しい歌なの)
普段の天羽奏の歌とは違い、暗く…胸が締め付けられる。そんな歌を聴いたツカサは、微かながら涙が出ていた。
戦闘を影から見つめるツカサ。見ると、途中から奏の動きが悪くなり…最終的には、誰かに向けて叫んているように見えた。
誰かに向けて、何かを叫ぶ…そのシーンを見たツカサの脳裏に、最悪のシナリオが過った
そう思ったツカサの足は、自然と速かった
『駄目ぇぇぇぇぇぇぇぇっっ!!!』
『!?』
奏が生命の炎を燃やそうとしたその時、会場から避難したツカサが何故か戻ってきていた。突然戻ってきた民間人に奏は叫ぶ
「お前・・・なんで戻ってきた…死にたいのか!?」
奏の問に、ツカサは答える。それは一ファンの声でもあり、彼女としての覚悟の現れでもあった
「何をしようとしたのかはわからない…でも、人が自分で命を断つのは違う…!それに、あなた達は二人揃ってツヴァイウィング、どちらか片方でもかけてしまったら…ツヴァイウィングはツヴァイウィングじゃない…!!」
力強く叫び続けるツカサ。彼女が叫び続ける度、道中で拾った小型の機械が、微かながらマゼンタの光を発し続ける…
ツカサに襲いかかってくるノイズ。戦う力を持たぬツカサは死を覚悟した。けれども悔いはない。はじめて『好き』と言う感情に出会えたこと。はじめて『推し』ができたこと。人生を変えてくれたメラには感謝しかない。
だから、サヨナラ───
────
────
────
「・・・?」
ツカサは死を覚悟した。あのままでは確実にツカサはノイズに身体を貫かれ、死んでいただろう。だが、運命は思いもよらぬ方向へと変わった。勇気ある行動が、彼女の分岐点を新しい未来へと繋げたのだ
ふと自分のポケットを見てみると、マゼンタ色の光が溢れ出しているのがわかった。この光が、私を守ってくれたの・・・?そう思ったツカサは、ポケットから光が溢れ出している小型機械を取り出した。すると…ギュオォォォという音と共に、マゼンタの光がツカサの腰に集まり、ベルトへと変化していく…
腰に装着されたベルト…名は『ジクウドライバー』という。続くように、小型機械がぐるぐると時計の針が回るように動き出し…『ジオウライドウォッチ』へと形を変えた
「何、これ……ッ!?」
瞬間、ツカサの目に映る、謎のビジョン…ビジョンにはツカサが映っており、まるで何かのポーズをとっていた
「…今の……もしかして」
ツカサは再び覚悟を決めた。今あるこの力ならば、この場にいる皆を守れるかもしれない。そう踏んだツカサの行動は早かった。
ジオウライドウォッチのベゼルを片手でぐるりと回し、顔の絵柄を揃えボタンを押し込む
『ジオウ!』
ツカサはジクウドライバーの右側にライドウォッチをセットする。すると、チクタクチクタク…と言う音がかすかに聞こえる待機音が流れ始め、ベルト内部のセグ表記がマゼンタに光り出す…
ツカサはボタンを押してベルトのロックを解除すると、左手を顔の横に構え、気迫のある声で叫ぶ
「…変身!!」
ジクウドライバーをぐるりと一回転させると、カンコーンという音と共に、後ろの巨大な時計が時間にして10時10分に止まり、ツカサの全身が変化していく…
『ライダー・ターイム!仮面ライダー・ジオウ!』
顔にマゼンタの色でライダーという文字が張り付き・・・今、仮面の戦士が降臨した
『祝え!全ライダーの力を受け継ぎ、時空を超え、過去と未来を知ろしめす、ときの王者!その名も仮面ライダージオウ!まさに生誕の瞬間である!!』
・・・何処からか声が聞こえたような気がするが、気にしないでおこう
「…なんだろう、いける気がする…!」
ノイズの一体がジオウめがけて身体を槍へと変化させて飛んでくる。
「おい、逃げろ!!死んじまうぞ!!」
天羽奏の叫びが会場に響き渡る。だが、ジオウもといツカサの思考にはこんな事がよぎっていた。自然と負ける気が起きない。ジオウは、ノイズめがけてパンチを繰り出した
『ドゴォォォッ!!』
パンチが直撃すると…ジオウの腕が灰になることはなく、ノイズだけが活動を停止。灰となっていった。
「なっ…!?」
「ノイズを倒した…?」
これには天羽奏と風鳴翼も驚かされた。自らの纏う鎧以外にも、ノイズを倒すことのできる力がある。そう思うと、嬉しい反面複雑な心境にもなった。
「やぁっ!!はっ…たぁっ!!」
向かってくるノイズをパンチやキックで対処するジオウ。だが、本来彼女は戦闘経験なんてまっぴらもない一民間人。大振りで無駄な動きが多く、反撃するので手一杯だ。
「…っ!翼、そいつを頼む!アタシはこの子を!」
「わかった…!」
天羽奏は負傷した子供を抱えて会場から離脱。戦場には、ジオウと翼が残った。
「貴女…味方、でいいのかしら?」
ジオウはコクッと頷き、自らが敵ではないことの意思を見せる
「わかった…事情は後で聞くわ。今はこの場を沈静化するわよ。」
「はい…!」
しかし、このままでは翼の足を引っ張るばかり。何か自分にも武器はないか…そう思ったとき、ベルトから文字が飛び出し、ジオウの前で並ぶと…武器の形となり立体化する
『ジカンギレード!ジュウ!』
「…何これ」
「わ、私が知るわけないでしょう!?貴女の力なら、貴女で何とかしなさい!?」
ジオウはノイズを狙って、ジカンギレードの銃口を定め…トリガーを引く。すると、銃弾がノイズめがけてとんでいき、撃たれたノイズは灰となった
「…ここのくぼみ…もしかして」
ジオウは、ジカンギレードジュウモードを見ている中で、何かくぼみが空いていることに目をつけた。ここになら、何かハマるかもしれない。そしてそのくぼみは、先程ベルトにはめたライドウォッチの形に似ていた。
ベルトからウォッチを外し、ジカンギレードにセットする。
『フィニッシュタイム!』
「……いける!」
ジオウはノイズに狙いを定め、ジカンギレードのトリガーを引く
『ジオウ!スレスレシューティング!』
「やぁぁぁぁぁっ!!」
トリガーを引いた瞬間、『ジュウ』の文字がオーラを帯びて飛び出し、ノイズ達へと直撃。一部分のノイズがまとめて倒された。
「ハァッ!!」
一方の翼も、空間から大量の剣を具現化し、上空から落下させ広範囲を攻撃する技を使用し、広範囲にわたってノイズを沈静化…
残るは、巨大なノイズのみとなった
「私が、倒す…!」
ジオウはベルトに戻したジオウライドウォッチのボタンを押しこむ。
『フィニッシュタイム!』
すると、巨大なノイズの周りを、マゼンタ色の『キック』と書かれた文字がグルグルと回りだした。ジオウは勢いよく飛び上がり、ジクウドライバーを一回転させる
『タイムブレーク!』
「ハァァァァ……!!」
ノイズの周りをグルグルと回っていた『キック』の文字が一つにまとまり、ジオウの右足に合体。顔の『ライダー』という文字と合わせ、文字通りの『ライダーキック』が炸裂した
「やぁぁぁぁっ!!」
ジオウのライダーキックがノイズの体を貫き、沈静化。こうして、ライブ会場で起きた一連の騒ぎは収束したのだった。
「…貴女、何者?」
事態が収束したことで、ジオウの事を知らぬ風鳴翼が剣を構える。少し考えると…ジオウは変身を解き、自らの名を名乗った
「堕楽 ツカサ…ツヴァイウィングのファンで、仮面ライダージオウ…らしいです」
この日、堕楽 ツカサの物語は大きく変わるのだった─
つづく
堕楽 ツカサ
女性
年齢16歳
身長170cm体重58kg
性格は自己肯定感が低く、仲間思い
一人称は私、二人称はあなた・名前呼び・敬語等々
所持アイテム ジクウドライバー&ジオウライドウォッチ
彼女がどんな物語を生み出すのか、以後ご期待ください