活気あふれる都市。ここは迷宮都市オラリオの正門前。大きなリュックを背負った白髪の少年、ベル・クラネルは、見上げるほどの巨大な城壁を前に緊張で体を硬くさせていた。
「はい、次の方どうぞ-!」
ベルは一瞬で目を奪われた。その顔に浮かぶのは、新入りの若者を温かく歓迎するような、屈託のない満面の笑み。オラリオの冒険者はもっと恐ろしいものだと思い込んでいたベルにとって、彼女の放つ眩しさは衝撃だった。
「どうしたの?」
「ふぇ!?すみません!とても綺麗な人だったのでつい見惚れて….」
赤くなりながら言うと彼女は『初対面で綺麗な人って言われたのは初めてかな』照れながら口を溢す。
「君名前は?」
「あ、はい! ベル・クラネルっていいます!」
緊張しながらも、ベルは背筋を伸ばしてハキハキと答えた。
私は品行方正で人懐こくレベル6のアーディ・ヴァルマだよ!じゃじゃーん!」
「え、ええええええええええっっっ!!!???」
あまりにも衝撃的な自己紹介に、ベルはひっくり返りそうになりながら驚き、絶叫した。
「れ、レベル6っ!? オラリオのトップクラスの超一流冒険者、生ける伝説の英雄じゃないですか!? そんな凄い人が、どうして正門の検問なんかしているんですかぁぁぁ!!」
頭を抱えてパニックになるベルを見て、アーディはしてやったりとニシシと白い歯を見せて笑う。
「あはは! 実はね、最近レベル6になれたんだ! だからちょっと自慢したくなっちゃってさ! でも、お祝いの特別任務ってわけじゃなくて、これでも普段通り真面目に街の治安を守ってるんだよ?」
「さ、最近レベル6に……!? 冗談じゃなくて、本当に英雄なんですね……!」
ベルが畏怖の眼差しで硬直していると、アーディはすぐにいたずらっぽくウインクをして、優しく言葉を続けた。
「でもね、オラリオを舐めちゃダメだよ? 私以外にももっと凄い人いるよ。上には上が、化け物みたいな強さの先輩たちがゴロゴロいるんだから!」
「ええっ!? レベル6のアーディさん以上に凄い人が、他にもいるんですか……!?」
ベルはさらに目を丸くして息を呑んだ。目の前の少女がすでに世界の縮図のような強さなのに、それを凌駕する存在がまだいるという迷宮都市の底知れなさに、改めて身震いしていた
「そうだよー。だから、怯まずに一歩ずつ頑張ってね! よし、荷物も身元も異状なし! 通っていいよ、迷宮都市へようこそ!」
「あ、ありがとうございます……! 頑張ります!」
ベルは門に入るとアーディは地図を渡してくれた。冒険者になるならまずギルドに向かわないといけない。そしてファミリアにも入る必要がある。ベルは再びアーディにお礼を言ってギルドに向かう。地図を頼りに白い巨塔を目指して進み、ついに冒険者の総本山であるギルドに到着した。
大理石で造られた広々としたロビーには、多くの冒険者たちが行き交い、独特の熱気と緊張感が漂っている。ベルが圧倒されながらきょろきょろと辺りを見回していると、空いている窓口の受付嬢が声をかけてくれた。
「新規の冒険者登録ですね。こちらへどうぞ」
手続きを担当してくれたのは、眼鏡をかけた実務的な雰囲気の職員、カリンだった。
「では、こちらの書類に名前の記入をお願いします」
「はい、ベル・クラネルです」
カリンはベルが記入した書類を受け取り、手際よく魔石ペンで手続きを進めていく。
「……はい、ベル・クラネルさん。登録を了しました。まずは所属する『ファミリア』を探す必要がありますが、当てはありますか?」
「いえ、これから探そうと思っていて……」
「そうですか。主神(パトロン)がいないとダンジョンへの入場許可が下りませんので、早めに見つけてくださいね」
カリンにそう見送られ、ベルはギルドのロビーで途方に暮れていた。右も左もわからない都市で、どうやって神様と出会えばいいのだろう。
その時、ベルの前にふわりと光の粒子が舞い、一人の美しい女性――女神が現れた
「ねぇそこのあんた、今ファミリアが探してるでしょう?」
「もしかして女神様ですか?」
「ええそうよ。あたしはアメス。実はあんたを眷属にしたいのよ」
突然、光の粒子の中から現れた美しい女神――アメスからのストレートなスカウトに、ベルは驚きのあまり目を丸くした。
「ええっ!? ぼ、僕なんかをですか……!? でも、さっき登録したばかりの、右も左もわからない田舎者なんですけど……」
「ふん、そんなの気にしないわよ。あんたのその真っ直ぐな魂、結構気に入っちゃったのよね。」
アメスはそう言うと、満足そうに微笑みながら自分の背後に控えていた小柄なエルフの少女をベルに向かって促した。白色の髪に、大きな槍杖を持った、神秘的でどこかおっとりとした雰囲気を纏った少女だ。
「丁度いま、コッコロたんを眷属に迎えたところなの。あんたが入ってくれれば、最初から二人体制で賑やかになると思ってね」
「初めまして。コッコロと申します。至らぬ身ですが、これから同じファミリアの仲間として、精一杯お仕えいたします」
コッコロは小さな手を胸に当て、丁寧に行儀よく一礼した。
「あ、初めまして! ベル・クラネルです。よろしくね、コッコロちゃん! ……あの、アメス様、本当に僕でいいなら、ぜひあなたの眷属にしてください!」
「ええ、よろしくね、ベル。」
「よろしくお願いしますベル様
アメスが嬉しそうに頷くと、一同はさっそく窓口へと戻り、驚くカリンの手によって正式に『アメス・ファミリア』の登録手続きを行うのだった。
今回はここまでです