ダンプリ   作:コウタ王

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タイトルが思いつかなかったのでここから数字やります。変更してごめんなさい。pixivにも書いてるのでそちらも見てください。本編スター卜


三話

 

 

でも、僕の叔父さんと叔母さんは、こういう強いモンスターたちは放り投げられましたって言ってたし……!」

 

ベルが涙目で必死に言い訳を口にした瞬間、窓口には水を打ったような静寂に包まれた。

 

 

「……は?」

 

「放り、投げ……?」

 

 

エイナとカリンはさらに頭を抱えた。 先ほどまでの疲れが何倍にもなって押し寄せ、二人の顔からサーッと血の気が引いていく。

 

 

「お、叔母さんと叔父さん……!? 一体全体どんな超人なのよそれ……! 普通の人間はモンスターをブンブン常識外れの力で振り回して放り投げたりしないわ……!」

 

 

「ベルさん、そのお二人の基準をオラリオの、しかもレベル1の段階に持ち込まないでください……(泣)。私たちの胃に穴が空いちゃいます!」

 

 

受付嬢二人が本気で頭痛を訴えながら机に突っ伏す横で、コッコロもいつもの穏やかな表情のまま静かに首を横に振った。

 

 

「ベルさま。その叔母さまと叔父さまは、おそらく一般に言う『英雄』か、あるいはそれに類する規格外の御方かと存じます。どうかご自身の今の実力を、冷静に見極めてくださいませ……」

 

 

「うう、ごめんなさい……」と完全に小さくなって真っ赤になるベル。授業は開始早々、あまりの価値観のズレに前途多難な空気に包まれるのだった。

 

 

座学の授業を終えて、初心者用のアーマーと剣を身につけたベルとコッコロは、いよいよ憧れのダンジョンへと出発した。

 

二人がギルドを出た後、残されたカリンとエイナは、ベルの規格外すぎる幼少期の常識(10歳でモンスターを素手で倒した、叔父さんたちは強いモンスターを放り投げていたなど)にツッコミを入れまくったせいで、「はぁ……本当に手強かったわね」「あの子の常識、オラリオの基準とズレすぎていて疲れたわ……」と、机に突っ伏して深くため息をついていた。

 

と思ってたら、そこへ【ロキ・ファミリア】の団長フィンが遠征の報告のために、颯爽と窓口へやってきたのだ。

 

 

 

「やあ、カリン、エイナ。随分と疲れ切っているようだね」

 

 

落ち着いた、しかしよく通る少年の声に、二人は慌てて背筋を伸ばした。そこに立っていたのは、小人の種族(パルム)でありながら、迷宮都市最強の一角を率いる『勇者』フィン・ディムナだった。

 

 

「フィ、フィンさん!? すみません、見苦しいところを……」

 

 

「いや、構わないよ。これから僕たちはダンジョンの深層へ遠征に向かうからね。その前にギルドへ、正式な出発の報告と書類の提出に立ち寄ったんだ」

 

 

フィンはそう言って手際よく書類を提出したが、机に突っ伏すほど疲れ切った受付嬢二人の様子が気になり、不思議そうに首を傾げた。

 

 

「それで、オラリオの優秀な受付嬢二人をここまで消耗させた理由を聞かせてもらえるかい?」

 

 

「実は……今登録したばかりのベル・クラネルという新人のことなのですが……」

 

 

2人は、ベルが「強いモンスターは不意打ちで倒す」と言い張ったことや、「叔父さんや叔母さんは強いモンスターを放り投げていた」「10歳の頃にはモンスターを素手で倒して段々と慣れた」と笑顔で語っていたことを、藁にもすがる思いで説明すると――。

 

「…………」

 

さしものオラリオ最高峰の頭脳を持つフィンは、しばらく沈黙した後、そっと右手で額を押さえてガチで頭を抱える羽目になった。いつも沈着冷静な『勇者』の親指が、困惑と驚愕でピクリと震えている。

 

 

「……なるほどね。それは確かに、僕の知るどんな怪物(冒険者)の幼少期よりも常識外れだ。格上のモンスターを不意打ちで放り投げる叔父と叔母……? 10歳で素手……? オラリオのギルドが何年かけても構築できないような、とんでもない戦闘英才教育を施されているね。……うん、カリン、エイナ、君たちが疲れるのも無理はないよ」

 

フィンは深くため息をつきつつも、その碧眼の奥に隠しきれない好奇心の光を灯した。

 

「でもね、僕はその少年がいつか、このオラリオでとてつもない奇跡を起こすと思っているよ。……まあ、ただの勘だけどね」

 

最強の男にそこまで言わしめたベルの底知れなさに、カリンとエイナは呆然としながらフィンを見送るしかないのだった。

 

ついに憧れの第一階層へと足を踏み入れた。

薄暗い洞窟の壁から、不気味な足音が近づいてくる。姿を現したのは、醜悪な小鬼ゴブリンと、犬の頭を持つ獣人怪獣コボルトの二体だった。

 

「キチチッ!」 「ガルルッ!」

 

「うわっ、本当にモンスターが出た……!」

 

ベルは一瞬、幼少期の癖で「素手で掴んで放り投げよう」としそうになったが、ハッとカリンとエイナの言葉を思い出した。

 

『無謀と勇敢を履き違えたらダメ! 相手の動きをよく見て、基本の構えから確実に仕留めるのよ!』

「……よし! カリンさんとエイナさんに教えてもらったやり方でいくぞ!」

 

ベルは鉄の剣を両手でしっかりと構え、教わった通りの基本フォームでゴブリンの突進を真っ正面から見据えた。怪物が錆びたナイフを振り下ろした瞬間、ベルは鋭いステップでその攻撃を最小限の動きでかわし、流れるような動作でゴブリンの胸元へと剣を突き刺した!

 

ズバッ!!

 

「ギャッ!?」

 

正確に魔石を貫かれたゴブリンは、一瞬にして黒い灰へと霧散した。

 

「ベルさま、お見事です! 残りのコボルトは私が引き受けます!」

 

コッコロが新スキル『エルフと精霊の由来』の力を引き出し、槍杖の先から小さな精霊の光を放ってコボルトの目を眩ませる。体勢を崩したコボルトに対し、コッコロはしなやかな動作で槍杖を突き出し、カリンたちの講義にあった「怪物の急所」へ的確に一撃を叩き込んだ。

 

ドッ!!

 

「ガルゥ……!」

 

コボルトも魔石を砕かれ、あっという間に灰となって消え去った。床には、二体のモンスターが残した小さな魔石がコロンと転がっている。

 

「やった……! やったよ、コッコロちゃん! 教えてもらった通りに戦ったら、怪我もしないでちゃんと倒せた!」

 

「はい、ベルさま! ギルドの皆様の教えは、本当に素晴らしい導きでしたね。お怪我がなくて本当に良かったです」

 

二人は転がった魔石を拾い上げ、初めての勝利に顔を見合わせてニッコリと微笑んだ。カリンとエイナの熱血(?)指導のおかげで、ベルとコッコロは無謀な不意打ちや放り投げに頼ることなく、冒険者としての記念すべき第一歩を完璧な基本技で飾り、初陣を勝利で収めるのだった。

 

初めてのダンジョン探索で無事にゴブリンとコボルトを倒した二人は、安全のために一度通路の端へと身を寄せた。

 

ベルが周囲を警戒する中、コッコロは懐から小さな羊皮紙と魔石ペンを取り出し、自分たちが歩いてきた通路の形状や、モンスターが出現した位置を手際よく書き込み、地図(マッピング)を書いている。 その手つきは非常に無駄がなく、まるで見事な職人のようだった。

 

「すごいね、コッコロちゃん。もうそんなに綺麗に地図が書けてるんだ」

 

ベルは驚きながら、身を乗り出してその手元を覗き込み、コッコロに「地図を書くのが得意なの?」と聞いた。

 

すると、コッコロはペンを動かす手を少しだけ止め、いつもの穏やかな微笑みを浮かべて顔を上げた

 

「ええ、昔、父上に教えてもらいました。 私はガイド(導き手)としての務めを果たすため、地理やマッピングの基礎を幼い頃から厳しく、そして優しく叩き込まれたのです。主さまの歩む道を一歩でも明るく照らすため、この程度はお手の物でございます」

 

「へぇ、コッコロちゃんのお父さんって凄い人なんだね! 僕の叔父さんたちとは大違いで、すごくちゃんとした教育だ……!」

 

 

ベルが深く感心して目を輝かせると、コッコロは「主さまのお役に立てて何よりです」と嬉しそうにパチパチと瞬きをした。

 

カリンとエイナの教えを忠実に守りながら、コッコロの完璧なマッピング能力によって、初めてのダンジョン攻略は極めて順調に進んでいく。

 

「よし、コッコロちゃん! 地図もバッチリだし、このまま第2階層へ進んでみよう!」

 

「はい、主さま。油断せず参りましょう」

 

足を踏み入れた第2階層。通路の奥から現れた第2階層のモンスターは、ゴブリンやコボルトで1階層と種類は変わらない。しかし、その数が明らかに増えていた。

「キチチチッ!」 「ガルルルッ!」

 

 

前後から一斉に5、6体の群れが牙を剥いて突進してくる。囲まれればレベル1の新人には命取りの状況だ。

しかし、ベルの脳裏にカリンとエイナの教え、そして叔父たちから叩き込まれた過酷な戦闘経験が閃いた。

 

 

「コッコロちゃん、教わった通りに地形(地表や狭い通路)を使って戦おう!」

 

 

「御意に、主さま!」

 

 

二人は広い空間から、わざとモンスターが1体ずつしか通れない狭い一本道の通路へと素早く退避した。これによって、数の有利を完全に無力化する。

 

 

「そこだっ!」

 

 

狭い通路に一列になって突っ込んできたゴブリンの隙を突き、ベルはカリンたちに習った基本に忠実な突きで確実に仕留めていく。

 

 

「精霊たちよ、我が主の道を阻む不届き者に、光の目眩ましを!」

 

さらにコッコロが後方から『エルフと精霊の由来』の魔法を放ち、後続のコボルトたちの動きを地表の凹凸に合わせて完璧にコントロールする。

地形を完全に味方につけた二人は、怪我一つ負うことなく、増えたモンスターたちを次々と見事に撃破していった。

 

「ふぅ……! やったね、コッコロちゃん!」

 

「はい、主さまの冷静な地形判断、お見事でした」

 

戦いが終わると、そこには床一面に転がる大量の魔石があった。コッコロが手際よくマッピングを完成させる横で、ベルはそれらを残さず回収し、ずっしりと重くなった革袋を抱えて、意気揚々とダンジョンを出るのだった。

 

 

 

ダンジョンから無事に戻ったベルとコッコロは、ギルドに到着し、集めた魔石を換金した。

初めて手にした冒険者の報酬にベルが胸を躍らせる中、帰り道、コッコロが露店の前で足を止め、何かをじっと見ていた。

 

それに気づいたベルが「どうしたの?」と聞くと、コッコロは「いえ、何でもないです」と少し照れたように言い、そのままアメスの待つテントに戻ることにした。けれど、ベルは「もしかして」と思い、コッコロが去った後にこっそりとその店に入り、彼女が見ていた商品の値段を聞いた。それは、今のベルの稼ぎでは到底手の届かない、けれどコッコロに絶対似合う綺麗な花の髪飾りだった。

 

 

それから2週間が経ち、ベルが必死に毎日ダンジョンで頑張っているのを、コッコロはずっと側で見ながら気づいていた。主さまがなぜここまで無茶なペースで戦っているのか、彼女は理由が分からずとても心配していた。

 

そしてある日、ベルに「今日はダンジョンを休みにしてほしい」と言われ、コッコロは一人で買い物をしていると、街の広場で偶然ベルの姿を見かける。駆け寄ろうとしたコッコロだったが、足が止まった。ベルがどこかの女性にプレゼントを渡すための綺麗な箱を持っていたのだ。

 

(主さま、あの箱は……どなたか、大切な女性への贈り物でしょうか……)

 

コッコロはそれを見て、胸の奥がチクリと痛み、持っていた買い物袋を無意識に強く握りしめていた。

やがて夕方になると、コッコロは自分の胸のモヤモヤを必死に誤魔化して、いつも通りの笑顔でテントでベルを迎える。さらに、オラリオの街を散策していた主神アメスも丁度帰ってきた。

 

「おかえりなさいませ、ベルさま。アメス様もお帰りなさいです」

 

「ただいま、コッコロちゃん! ……はい、これ!」

 

すると、ベルははにかみながら、後ろに隠していたあの箱をコッコロに差し出した。ベルはコッコロにプレゼントを渡す。それは、先ほどコッコロが街で見て心を痛めていた、あのプレゼントそのものだった。

 

「え……? ベルさま、これは……」

 

「開けてみて!」

 

コッコロが震える手で中身を見ると、そこにあったのは、あの日露店でコッコロが欲しかった、あの美しい花の髪飾りだった。

 

「あの日、コッコロちゃんがこれを見てたでしょ? だから、いつもお世話になってるお礼に、どうしてもプレゼントしたくて……」

 

ベルはコッコロにプレゼントするため、この二週間、必死になってダンジョンで頑張っていたのだ。誰か他の女性のためではなく、自分のために傷だらけになりながら魔石を稼いでくれていた。その事実を知った瞬間、コッコロは嬉しさのあまり、瞳から大粒の涙が溢れ出た。

 

「あ、あれっ!? コッコロちゃん、ごめんね、気に入らなかったかな……!?」

 

慌てるベルの横で、全てを察したアメスが「もー、ベルってば最高に粋なことするじゃない! よかったわね、コッコロたん!」と優しく微笑む。

 

「いいえ……いいえ、主さま……! とっても、とっても嬉しいです……! 不肖コッコロ、これほど幸せなことはございません……っ」

 

夕暮れのテントの中、ベルの純粋な優しさと、コッコロの嬉し涙が温かく溶け合い、【アメス・ファミリア】の絆はさらに深く、固く結ばれるのだった。

 

 

「よかったわね、コッコロたん!」

 

涙を流して喜ぶコッコロの姿を見て、アメスは自分のことのように優しく目を細めた。そして、はにかみながら立っているベルの背中をポンと叩く。

 

「ベル、せっかくだし、コッコロたんに髪飾りをやってあげたらどうかしら?」

 

「ええっ!? ぼ、僕がですか……!?」

 

アメスの突然の提案に、ベルは顔を真っ赤にして慌てふためいた。思春期の男の子にとって、女の子の髪に直接触れて飾りをつけてあげるなど、ハードルが高すぎる大仕事だ。

 

しかし、コッコロは潤んだ瞳を真っ直ぐにベルへと向け、胸の前で小さな手をぎゅっと握りしめた。

 

 

「主さま……お願いします」

 

 

「う、うん……! じゃあ、失礼します……!」

 

 

そこまで健気にお願いされては、男として断るわけにはいかない。ベルは壊れ物を扱うかのように指先をガタガタと震わせながら、コッコロの綺麗な緑色の髪にそっと触れた。

 

 

サラリとした髪の感触に心臓が破裂しそうになりながらも、ベルは丁寧に、あの日コッコロが見つめていた位置へ、美しい花の髪飾りを優しく挿し込んだ。

 

「……うん! すっごく似合ってるよ、コッコロちゃん!」

 

 

ベルが顔を真っ赤にしながらも満面の笑顔で褒めると、コッコロはそっと自分の髪飾りに触れ、深く深く頭を下げた。

 

 

「主さま、本当に、本当にありがとうございます……!」

 

 

コッコロはいつものように丁寧に行儀よくお礼を言ったが、そのコッコロの心の中は、表の落ち着きからは想像もつかないほど、とても嬉しさに大興奮中だった。

 

 

(あわわ、あわわわわ……! 主さまが、主さまの御手で、不肖コッコロの髪に直接触れて飾りをつけてくださいました……! この髪飾りは我がファミリアの宝、いえ、私の生涯の宝物です! 嬉しすぎて、精霊たちへの祈りのステップを今すぐこの場で全力で踊り明かしたいほどの情熱が胸に渦巻いております……っ!!)

 

 

ポーカーフェイスの裏側で、文字通り頭の中で大爆発を起こすほど興奮しているコッコロ。アメスはその二人の甘酸っぱくも尊い様子を「ふふ、ごちそうさま♪」とニヤニヤしながら見守るのだった。

 

 

 

 

オマケキャラ紹介

 

ベル・クラネル 

 

7歳の頃に叔父たちや叔母たちから「強いモンスターは不意打ちで倒せ」「モンスターの巣に放り込む」といった恐ろしい戦闘英才教育を受け、10歳でモンスターを素手で倒して慣れてしまった、常識が色々と手遅れな少年。

 

コッコロ

 

昔、父上から厳しくも優しく教わった完璧なマッピング能力の持ち主。ダンジョン内でも手際よく正確な地図を描き、ファミリアを導いている。

 

アメス

 

司る権能は夢:彼女が天界から携え、司る権能は『夢』。人々の願いや憧れ、そして心の中に眠る無限の可能性を「夢」として見守る

 

 




今回はここまでです。感想と評価お願いします、次回もお楽しみに
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