ダンプリ   作:コウタ王

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四話

その夜、アメスは二人の初めてのステイタス更新を行うことにした。

 

「それじゃあベル、まずはあんたから更新するわね。

 

ベッドにうつ伏せになってちょうだい」

 

「はい、よろしくお願いします!」

 

ベルがベッドに横たわると、アメスは彼の背中に神の血を一滴垂らし、指先を滑らせていく。浮かび上がってきた神聖文字(ヒエログリフ)の数値を羊皮紙に写し取ったアメスは、その結果を見て大きく目を見張った。

 

「……ちょっとベル、これ本当に二週間だけの成果なの!? あたし、自分の目を疑っちゃうわ……!」

 

アメスから手渡された羊皮紙を覗き込み、ベルはそこに並ぶアルファベットと数字を見て声を弾ませた。

 

ベル・クラネルのステイタス

 

• Lv.1

• 力: I(0)→ H(140)

• 耐久: I(0)→ H(110)

• 器用: I(0)→ H(130)

• 敏捷: I(0)→ H(160)

• 魔力: I(0)

• 《スキル》

• 英雄憧憬(アルゴノゥト)

 

• 英雄たちを憧れ抱けば抱くほど、ステイタスが爆発的に上昇する。また、あらゆる行動の成否に対して、その強い憧れの想いが補正を与える。

 

「すごいです……! 前よりずっと体が軽くて、力が湧いてくるのが分かります!」

 

 

ベルは嬉しそうに何度も自分の手を握り締め、自分の成長を噛み締めていた。

 

「ベルさま、おめでとうございます。素晴らしい成長でございますね」

 

コッコロも自分のことのように顔をほころばせ、ベルの隣で嬉しそうに頷いた。

 

「それじゃあ次は、コッコロたんの番ね」

 

アメスがそう告げると、ベルは「それじゃあ、僕は外で待んでますね! コッコロちゃん、頑張って!」と笑顔で手を振り、テントの外へと出て行った。

 

 

静かになったテントの中で、コッコロは少し緊張した面持ちでベッドにうつ伏せになり、アメスに背中を向ける。

 

 

「それじゃあ、いくわよ」

 

 

アメスがコッコロの華奢な背中に指先を走らせ、神の血を馴染ませていく。浮かび上がってきた神聖文字(ヒエログリフ)を羊皮紙に写し取っていたアメスは、ある一箇所に文字が刻まれていくのを見て、嬉しそうに声を弾ませた。

 

 

「あら……! コッコロたん、すごいわ! 新しい魔法を発現させているわよ!」

 

 

「魔法、でございますか……?」

 

 

コッコロが体を起こして羊皮紙を受け取ると、そこには成長したアビリティと共に、新たな魔法の詠唱と効果がはっきりと刻まれていた。

 

コッコロのステイタス

 

• Lv.1

• 力: I(0)→ I(60)

• 耐久: I(0)→ I(80)

• 器用: I(0)→ H(110)

• 敏捷: I(0)→ H(100)

• 魔力: I(0)→ H(120)

 

• 《魔法》

• オーロラ(アウローラ)

• 聖なる光の加護を呼び覚ます回復・支援魔法。傷ついた者の体力を癒やし、一定時間、対象の身体能力を底上げする効果を持つ。

• 【詠唱】「大自然に息づく精霊たちよ、我が声に応え、主を救う盾となれ――オーロラ!」

• 《スキル》

• エルフと精霊の由来

• 精霊の導き手

 

「ベルさまの盾として、矛として、ほんの少しでもお役に立てる強さを得られたのなら、これ以上の喜びはありません……。この魔法があれば、より一層主さまをお守りすることができます」

 

コッコロは、先ほどベルに付けてもらったばかりの花の髪飾りへ愛おしそうにそっと手を触れた。そして、すぐさまいつもの凛とした表情に戻り、アメスに向かって深く一礼した。

 

「アメス様、神の恵みの更新、ならびに新たな魔法の授与、誠にありがとうございます。この力、全ては主さまとファミリアのために捧げます」

 

 

翌日、新しく手に入れた力と魔法、そしてお揃いの髪飾りを胸に、ベルとコッコロは今後のダンジョン探索に必要な物資を買い出すため、活気あふれるオラリオの市場を歩いていた。

 

「ペコリーヌさん、それにしてもどうしてあんなに限界になるまで倒れていたんですか?」

ベルが不思議そうに尋ねると、ペコリーヌは「ううっ」と両手で顔を覆い、どこか恥ずかしそうに身を縮こませました。

 

「実は……私、今はお金が全くなくて、オラリオで生きていくためにアルバイトを頑張っているんです。でも、お給料をいただくまでどうしてもご飯を食べるのを我慢しなきゃいけなくて……。気付いたら体力がゼロになって倒れちゃっていました☆」

 

 

テヘッと可愛らしく頭を小突いて見せるペコリーヌでしたが、その内容はかなり切実なものでした。お金を稼ぐために必死に働くあまり、自分の食事代を極限まで削ってしまっていたのです。

 

 

「ご飯を我慢してバイトだなんて……そんなの、絶対に体に悪いです! 倒れる前に誰かに頼るわけにはいかなかったんですか?」

 

 

「主さまの仰る通りです。ペコリーヌ様、いくら路銀を稼ぐためとはいえ、御身を損ねては元も子もありませんよ」

 

 

ベルが自分のことのように本気で心配し、コッコロも胸を痛めて眉をひそめると、ペコリーヌは二人の温かさにじわっと目を潤ませました。

 

 

「お二人とも、なんて優しいんでしょう……! でも大丈夫です! ベルさんとコッコロさんのおにぎりのおかげで、今はもう力がみなぎっていますから!」

 

 

ペコリーヌはぐっと拳を握りしめ、先ほどまでの空腹が嘘のような満面の笑みを浮かべました。そして、ベルの腰にある量産品の鉄剣と、コッコロが持つ大きな槍杖に視線を留めます。

 

 

「もしかして、お二人とも冒険者さんですか? これからダンジョンに向かうところなのでしょうか?」

 

 

「あ、はい! 僕たち、昨日ようやくアメス様のファミリアとして登録したばかりの新人なんですけど、これから物資を買い揃えて、またダンジョンに潜ろうと思っていて……」

 

ベルが少し照れくさそうに応えると、ペコリーヌはパッと表情を輝かせ、二人の両手をがっしりと握りしめました。

 

「それなら、ぜひ私にそのお供をさせてください! アルバイトで鍛えたこの腕っぷしで、お二人のダンジョン探索を全力でお手伝いします! これがおにぎりの恩返しです!」

 

 

「あの……ペコリーヌさんって、どこかの『ファミリア』に所属しているんですか?」

 

 

ベルがふと疑問に思って尋ねると、ペコリーヌは人差し指を顎に当てて、おっとりと首を横に降りかえた

 

「いえ、入ってないですね! オラリオに来たばかりで仕組みもよく分かっていなくて、まずは日銭を稼がなきゃとバイトばかりしていました☆」

 

「それなら……!」

 

ベルはパッと隣のコッコロと視線を交わしました。コッコロも主さまの意図を察し、嬉しそうに何度も深く頷きます。

 

 

「ペコリーヌさん、もしよかったら、僕たちの『アメス・ファミリア』に入りませんか? まだ僕とコッコロちゃん、それに神様しかいない小さなファミリアなんですけど……みんなすごく優しいんです!」

 

 

「ベルさまの仰る通りです。ペコリーヌ様のように心優しく力強い方が仲間になってくだされば、これ以上の心強さはございません。ぜひ、私たちと一緒に歩んでいただけませんか?」

 

 

二人の真っ直ぐな勧誘に、ペコリーヌは一瞬だけ驚いたように丸い目をさらに丸くしましたが、すぐに破顔して「はいっ!」と元気よく返事をした。

 

 

「喜んで入ります! 命の恩人であるお二人と一緒なら、毎日がとっても美味しそうで楽しそうです!」

 

 

こうして三人目の仲間が決まり、一行はさっそくペコリーヌに『神の恩恵(ファルナ)』を授けてもらうため、自分たちの拠点である小さなテントへと向かいました。

 

「アメス様、ただいま戻りました! 新しい仲間を連れてきましたよ!」

 

 

ベルが勢いよくテントの幕を開けると、そこには主神アメスの姿と、もう一人、見慣れない人物が座っていました。

 

 

ツインテールにした艶やかな黒髪に、ぴこぴことせわしなく動く三角形の耳――気難しそうな表情で腕を組んでいる、猫人(キャットピープル)の少女。

 

 

「あら、おかえりベル、コッコロたん! って、また随分と賑やかな子を連れてきたわね?」

 

 

アメスはベルたちの後ろにいるペコリーヌを見て目を瞬かせつつも、すぐに隣にいる猫人の少女を二人に向かって手招きしました。

 

 

「ちょうどよかったわ。紹介するわね、彼女は今日から私たちのファミリアに加わった新しい眷属よ。魔法大国アルテナの学校を卒業したばかりの、優秀な魔導士のキャル!」

 

 

「……ちょっとアメス、変な紹介の仕方しないでよ!」

 

 

キャルと呼ばれた猫人の少女は、恥ずかしそうに耳を伏せながらフンとそっぽを向いた。しかし、すぐに観念したようにベルたちの方を睨むように見つめ、ぶっきらぼうに口を開きます。

 

 

「……キャルよ。一応、攻撃魔法ならあんたたちよりは使えると思うわ。足手まといにだけはならないでよね!」

 

 

口調はキツいものの、どこか人見知りを隠しているだけのようなキャルの様子に、ベルは「よろしくね、キャルちゃん!」と満面の笑顔を返しました。

 

 

お腹ペコペコの頼れる前衛ペコリーヌと、ツンツンした実力派魔導士のキャル。個性豊かな二人が一気に加わり、アメス・ファミリアはさらに賑やかになっていくのだった

 

 

ペコリーヌとキャルの二人がベッドに横たわり、主神アメスによって初めての神の恩恵(ファルナ)が授けられます。

 

 

アメスが二人の背中に神の血を垂らし、指先を滑らせていくと、それぞれの純粋な本質を映し出した規格外のステイタスが浮かび上がる

 

 

ペコリーヌのステイタス

 

• Lv.1

• 力: I(0) / 耐久: I(0) / 器用: I(0) / 敏捷: I(0) / 魔力: I(0)

 

• 《スキル》

 

• あのおにぎりの味(プリンセスフォース)

 

• 食べ物を摂取することで、一時的に全アビリティを爆発的に上昇させる。また、満腹度が高いほど防御力と自己回復能力が強化される。

 

キャルのステイタス

 

• Lv.1

• 力: I(0) / 耐久: I(0) / 器用: I(0) / 敏捷: I(0) / 魔力: I(0)

 

• 《魔法》

• グリムバースト

• 強大な魔力を凝縮して放つ漆黒の球体魔法。着弾と同時に激しい爆発を引き起こし、周囲の敵をなぎ倒す。

 

• 【詠唱】「闇の深淵に集いし魔力よ、我が命に従い、全てを打ち砕く絶禍の光となれ――グリムバースト!」

 

• 《スキル》

 

• アルテナの特待生(アブソリュートマナ)

 

• 魔法大国の英才教育によって培われた魔力制御能力。精神力(マインド)の消費を大幅に軽減し、攻撃魔法の威力を常に上昇させる。

 

「わあぁぁっ! 背中がポカポカして、なんだかさらにお腹が空いてきました! これならいくらでも戦えそうです!」

 

自分のステイタスを見たペコリーヌは、目を輝かせながらお腹を鳴らして大喜び

 

「ちょっと、なによこの魔法の詠唱……! はずかしいセリフ言わせないでよね! ……でも、魔力の通りは学校にいた時より段違いに良くなってる気がするわ……」

 

キャルは顔を真っ赤にして文句を言いつつも、自身の内に宿った確かな魔導の力に驚きを隠せない様子。

 

これで前衛、後衛、そして支援と魔法のバランスが完璧に整った、最強の4人が揃うことになった

 

 

 




今回ここまでです、感想と評価お願いします次回もお楽しみに
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