魔法少女まどか☆マギカ ワルプルギスの前後夜 作:カピバラ@番長
こちらは映画終了後の話。
初めに言っておくと、映画の内容は大満足です。
一回目は頭の中がパンクしましたが、二回観て充分以上に満足できました。
一応ネタバレ回避のために空けました。
どうぞ。
「ほんとーにこれで良かったのですか?」
「……うん。すっごく、悔しいけど」
夜の見滝原。その中でも特別空に近い所。
元に戻った月明かりはとってもよく届き、風を挟まないと視えない夜景の明りはあんまり届かない場所。
そこで見えない女の子とお話しする。
なぎさしか覚えている人が居なくなってしまった女の子と。
「……でも、誇らしくもあるんだ」
「どーしてなのです?」
隣に居るのか、前に居るのか、後ろなのか上なのか下なのか。
どこにいるのかは分からねーけど、でも確かに[ここ]にいる女の子は嬉しそうに言うのです。
「私の、一番の友達を救ってあげられたから」
「……何もかもを忘れさせて、夢の中でだけは会える相手に自分がなった事がですか?」
「あ、あはは。なぎさちゃんはやっぱり厳しいなぁ…」
「とーぜんなのです。なぎさは本来、マミよりも先輩の魔法少女なのですよ?こーはいのきょーいくには一家言あるのです!」
「……そっか。そうだったね。ごめん」
「む、なんでそこで謝るのですか?これではなぎさがイヤなヤツになってしまうのです!」
「え~?難しいよぉ~~」
握った両拳を上げてぶんぶん振ると困ったように女の子は笑う。
それから、改めて理由を説明してくれた。
「私はね、ほむらちゃんの事を救ってあげたかった。ほむらちゃんの願いを無かった事にしたくなかったから。でも、私の事を覚えたままだときっとほむらちゃんは救われない。私の事を諦めるのは、ほむらちゃんが自分で自分を打ち抜くのと同じ事になるから……」
「……それは、そうなのです。ほむらの最初の願いは『まどかを救いたい』。でも、まどかの願いは『全ての宇宙の、過去と未来の全ての魔女を、この手で生まれる前に消し去る』。どうあっても寄り添い合う事の無い、相反する願いなのです」
「そう……。祈りが絶望に屈しない為には『大丈夫だよ』って言ってくれる誰かが必要で、私がその存在になる必要があった。でも、その存在に私がなる事をほむらちゃんは絶対に受け入れられない」
「まどかは欲張りなのです。そこまで分かっているのにほむらを悲しませたくないなんて、どーやっても無理なのです」
「そりゃあそうだよ。だって、ほむらちゃんも魔法少女なんだよ?私が『大丈夫』って言ってあげなきゃ」
「そりゃー、そうですけど……」
「でもね、ほむらちゃんからしたら私だって魔法少女。こんな姿になっても私を覚えていてくれた。だからほむらちゃんは私の事を[救いたい][救わなきゃ]って、ずっとずっと自分を追い詰めてる。それが最初の祈りで、絶対に叶えたい願いだから」
「だから……なのですか?」
「うん、だから、なの。一度は世界に抗って私を救おうとしてくれたほむらちゃんを、今度は私がって。だから決心がついたの」
思わず振り向いて、でも、やっぱり誰もいなくて。
……少しだけ辛いのです。
ほむらの祈りの理由に触れた気がしたから。
「ほむらちゃんの記憶を引き受けてでも、私の一番の友達を救おうって。それで今まで辛い思いをした分、頑張り過ぎちゃった分、幸せになってもらおうって」
「……それで夢の中でだけは認識できるようにしたって事ですか」
「そう。多分きっと、一番の方法。ほむらちゃんが幸せになれて、私の願いも叶う、唯一の方法。……誰にも邪魔されずに二人きりでお話も出来るしね」
そう言って笑った女の子の声は嬉しそうで、誇らしそうで、……でも、やっぱりちょっとだけ悲しそうで。
「……ムッカムカくるのです!」
「えっ……?」
「なんでまどかは純粋に楽しめねーんですか?そんなのおかしーのです!」
「……なぎさちゃん」
そんなの、あっていいワケがねーのです。
誰よりも大変な役割を自ら名乗り出た女の子が純粋に楽しめないなんて、そんなのダメに決まってるのです!
「だからまどか、もう少し待っているのです!いつか、みーんなが大手を振ってチーズを食べられるようにしてやるのです!そうすればまどかだって心から楽しくやれるのです!!」
そうなのです。忘れた事すら忘れているみんなはどーなるんですか。
それを思い出して、引っかかっていた時のさやかは見てらんなかったのですよ!
「……ふふふっ、分かった。でも、無理も無茶もしないでね?私にとっては……」
「心配ごむよー!こーはいに助けられてばかりじゃ先輩は務まらないのです!」
立ち上がって、誰もいない空間に向って胸を張る。
そこにいる女の子のために。
とーぜんなのです。そのほーがなぎさも楽しいし、マミもさやかもきょーこももっと楽しいのです。ほむらなんて嬉しすぎてぶっ飛ぶはずなのです!
楽しく過ごすためのモノが目の前にあるのになんにもしねーなんて、それこそ三流以下なのです!
「だからまどかは心配しないで待っているのです!」
「……ありがとう。なぎさちゃん」
「ま、それまではほむらの代わりでもやってればいいのです。きっと本能的に眠るのが好きになって手が付かなくなるはずですから!」
「……ふふ、そうだね。ほむらちゃんが見つけた[魔法少女を産まない方法]だもん。私も手伝いたい」
「それならよろしい」
どこにもいなくて、どこにでもいるその女の子にニッっと笑って大きく右手を振る。
全く。カバン持ちは辛いのです。
「それじゃーまた今度なのです。寂しくなったら呼ぶのですよ?先輩めーれーなのです!」
「うん。……ありがとう、なぎさちゃん」
やっぱり誰もいない空間に背を向けて、空に一番高い場所から下へと落ちる。
けっこー大変な役目に名乗り出てしまった気もするですが、これも楽しくするため!
回りまわってはなぎさのためになる事なのです!
だから、手は抜かないのですよ。かつて、ただの女の子だった鹿目まどか。
end.
最終盤、まどかの膝枕を受けていたはずのほむらはカットが変わると微笑んで一人で横たわっている。
これはどういう事なのか、から想像したのが上記の本文です。
で、そうなると全部知っているのはおそらくなぎさだけになるだろうなと考え、こうなりました。
早く円盤出て欲しいです。