地球警察隊、司令部の後方にある空間。そこで、樹代光一郎は…何者かに対して端末で電話をかけていた。
樹代光一郎の年齢ならば、恐らくは扱いやすいタッチ式の携帯端末が相応しいとは思うが。樹代光一郎自身が持っていたのは…随分と高性能なタイプの携帯端末。…それも、受注生産タイプの耐久性と耐水性、耐泥性に耐衝撃性と、あらゆる場面に対応できるという大変優れた代物だ。…得に耐衝撃性能に関してはとあるゲーム会社が作った、戦車に踏みつぶされても動くことができていたというかの携帯ゲーム機に並ぶほどのモノだと言う。…そんな端末でどこに電話をかけていたのか。…西瓜谷は疑問に思っていたが。しばらくしてにやにやと気持ちの悪い笑みを浮かべ。樹代光一郎が作戦司令部に戻ってくる。
「…どうしたのですか、樹代さん。…まさか、趣味でやっているもので新しい物でも発売されましたか?」
「くっくっく、バカ者。西瓜谷よ、突然光の戦士たちが手のひら返して人間の敵となったことで、判断力がものすごくさびた刃物のごとく鈍ってしまったかぁ?…その判断力に、砥石で手入れでもしてもらえ。…そうだな、一番番数が低い奴がいいか。」
西瓜谷からの問いにも、そんな軽口で返しつつ。後ろで手を組んで樹代光一郎がふんぞり返る。それから少ししたのちに。彼はこう告げた。
「皆のもの。…光の戦士…彼奴等は神社仏閣、そして城…さらには国の防衛を担う重要な場所を狙って襲撃を仕掛けてはきたが、愚かしくも"自分達の弱点となりたり得る物を作る場所"を狙ってはこなかった。…彼奴等、相当考えが甘いと見て取ってもいいだろうな。」
周りに余裕を見せつける樹代光一郎。…そんな彼に、蝶谷優美が問いを投げかける。
「…樹代さん、先ほどの言葉と照らし合わせますと…"急激な気温の低下を引き起こさせる物を作る所と話を付けていた"…ということでよろしいですか?」
「蝶谷君。君は実に冴えているね。…そうだよ。国内で有名な、そういう物を取り扱っている会社と話を付けてきた。…後は、奴に放つ為の大規模な兵器を作ってもらうだけだ。」
余裕を浮かべたままに、蝶谷優実の事を指さす樹代光一郎。それまでの佇まいとは違った、どこか軽薄とも取れるような様子に…地球警察隊は戸惑う。
…だが、樹代光一郎…彼が考えている策には、未だ穴があった。
「…樹代さん、その大規模な兵器を作るための施設などは、どうすればいいのですか?」
そう、兵器を作るための施設、そしてそれを開発するための施設。…その二つであった。…だが、それらにも心当たりがあるのだろう。樹代はさらに喉を鳴らし笑ってみせる。
「西瓜谷君。兵器を作るための施設に関しては、同じような兵器の製造に携わっていた人々をつかえばいいだけのことじゃあないか。…そして開発は、怪獣と戦っていた時に使っていた部署を今再び頼ればよい。…怪獣に対する対抗策も考えられるうえに、それを形として作り上げられる技術力もある。…光の戦士に対抗するための兵器なんぞ、簡単にできる事だろう。」
簡単にできる事だろう。…樹代光一郎は、そう言ってのけた。だがその場にいた他の地球警察隊員たちは。心配が残っていた。…開発、そして製造の二つの部分で、である。
樹代光一郎が言ってのけられるほどに、武器の開発、そして製造という物は簡単ではないだろう。…西瓜谷たちは、そう思っていたのだから。
それからいくばくかの月日が流れていく。…その間、不気味にも光の戦士達からの動きはなかった。…そう、酷く不気味なまでに。…地球人たちの事を観察でもしているのだろうか。それとも、何か偵察をしているのだろうか。…いろいろと、考察は考えられる。
――もしもこちらが対策してくるよりも前に、こちらの兵器の製造元を絶たれたとなったらどうなる。…それはそれで、もう怪獣達に全てを頼る他ないだろう。
自分達を、日本人たちを。ウルトラマンの襲撃から守ってくれたという怪獣達。…それらに完全に頼ることになるのも、西瓜谷は覚悟をする。
――光の戦士達に我が国の軍事基地がばれてしまっているんだ。…兵器を作る場所だって、あの光の戦士達に筒抜けとなってしまっているはず。…だからこそ、そこを襲撃してきたとしても、おかしな話ではない。…もしもそれらを無視をしていたのなら、どこを狙ってきているというんだ。
西瓜谷は、ただただ、心の中で祈っているほかなかった。…兵器の製造を委託している、もしくは兵器を製造している施設が、襲撃されていないでくれ、と。…その願いは見事にもかなった。…叶ってくれた。
「西瓜谷君。…キミが思っていたよりも、光の戦士達は賢くはなかったようだな。」
あたかも、勝利宣言をするかのような樹代光一郎の発言。…その彼の口元は、勝ち誇ったかのような、笑みが浮かべられている。…それを見た瞬間に。西瓜谷はへなへなと座り込んだ。
「…膝が笑って、立っていられませんよ。軍需品を製造しているところですよ?…地球人を襲撃してきている光の戦士たちが、無視をするはずもないじゃあないですか。」
「ククククっ。普通ならばそう考えられるだろうが。…実際に製造するための施設は襲撃を受けていなかった。それでいいじゃあないか。」
余裕しゃくしゃく、といったような様子を見せる樹代光一郎。…さあ、此処から…地球警察隊の反撃が始まる。