樹代光一郎の考えた作戦。…それは地球警察隊の他のメンバーにとっては、とても運頼みとしか言いようのないものだった。
なぜならば、光の戦死…すなわちウルトラマンが見逃すはずもない軍需生産工場や、兵器の研究開発を行う施設が破壊されていないことを前提とした作戦だったのだから。…だが、結果としてその作戦の第一段階ともいえる黄帝はとてもうまく行った。…そう、軍需生産を行う工場や、兵器の研究開発を行う施設がウルトラマンの攻撃目標とも思われるソレから外されていたのか。全くと言っていいほどに襲撃を受けていなかったのだから。…それを知った西瓜谷は、引きつった笑いを浮かべつつ膝から頽れていた。…てっきり、ウルトラマンのターゲットにされて破壊されている物かと思っていたのだから。…いや、兵器の開発などを行う施設が襲撃されただけならばいい。…軍需品の生産などを行う工場が襲われでもしていれば。それはすなわちその時点で樹代光一郎の作戦が失敗に終わったことを意味していた。
――…樹代さんが何を言うかと思えば。…酷く心臓に悪い作戦じゃあないか。…おかげで、此方の寿命がかなり縮んでしまったようにも思える。
樹代光一郎の作戦が滞りなく行われるであろう。その事を知って胸をなでおろす西瓜谷。地球警察隊は今、ウルトラマンとの戦いに備え…ウルトラマンの弱点ともいえるだろう"急激な気温の低下"を引き起こす兵器が到着するのを今か今かと待ち望んでいた。
その時点で、光の戦士達に察されるであろうことは重々承知。…だからこそ、地球警察隊は祈っていた。…無事に兵器が到着するという事を、祈っていた。
「試作品のお届けに上がりました!まずは、超低温のレーザーをはなつ兵器です。…この兵器は元となるエネルギーの量に限りアがありますので、適時此方のボンベにて補充を行ってください。…よっと。」
地球警察隊とほぼ同じスーツを着た男が、ボンベと先のとがった拳銃のようなものを地球警察隊のテーブルの上へと置く。…それを物珍しげに見る地球警察隊の隊員たち。…その中のまとめ役である樹代光一郎は、不敵な笑みを浮かべつつ男に対して問いを投げかける。
「その様子だと、私が頼んだもう一つの品はまだのようだな?」
「あ、いえ。もうすでに出来上がっておりまして。もう間もなく輸送機で地球警察隊の武器庫の中に運ばれるものかと思われます。」
樹代光一郎の問いに返ってくる、男の答え。…それに樹代光一郎は不敵な笑みを浮かべたまま…こう言葉を返した。
「そうか。…それならば、此方の動きが光の戦士達に察知されないうちに早急に運んでくれ。…光の戦士達にこちらの動きが知られてしまった場合、何が起こるか知ったモノじゃない。場合によっては我々は、怪獣に頼り切る日々を送ることになるのだからな。」
「……それは承知の上です。」
樹代光一郎と男がそう会話を交わしたのち。…男はそそくさとその地球警察隊の指令室から退室する。
警察隊の隊員たちは、その拳銃のような形の兵器に付属していた本を読んだ。…その本の厚さは通販のカタログと同じといった方がいだろうか。いや、男性向けの週刊誌と同じ厚さといった方が適切なのかもしれない。
「…内部にある物がものだけに、なるべく低温のばしょで保管するようにと書いてあります。」
「…それと、目的外での使用を控えてくださいとも書かれてますね。」
説明書の注意書きを読み、感想を述べる西瓜谷たち。…その兵器が使われる日は、すぐに来た。
神奈川県は厚木市。その場所に、光の戦士…ウルトラマンがやってきたのだという。…その知らせを聞いた地球警察隊は。その場所へと一直線に向かって行った。
「…我々の新兵器を試すいい機会だ。…ウルトラマンを良く狙い、銃を撃て!」
樹代光一郎の指示の通りに、地球警察隊の隊員たちが銃の照準を光の戦士の胴体部分にぴたりと定めていく。…その照準機器は、ダットサイトと呼ばれるもので。使用者が狙った場所へとタマが命中することができるようにできている。…よって、地球警察隊の放ったその攻撃は。ものの見事に光の戦士の胴体部分へと直撃した。
一番の弱点ともされるものが、自身の弱点部位の近くに直撃していった所為か。ウルトラマンが大きく体勢を崩す。その光の戦士は、尻もちを搗くような形となった。
「うむ、敵は隙を見せた!者どもよ、畳みかけていけ!」
地球警察隊の隊員たちが、体勢を崩したウルトラマンに対して容赦のない攻撃を浴びせ行く。…だがしかして、光の戦士もいつまでもやられているばかりではなかった。
厚木市の軍用施設。その場所を目指し、まっすぐに光の戦士が歩いていく。そのウルトラマンに対して、戦闘機もなんとか応戦をしようとしていくが…ウルトラマンはそれらをあたかも南風を叩くかの如く、撃墜していった。
――今頼れるのは恐らく、自分達。
目の前の光景を見て、その事をしっかりと胸に刻み始める西瓜谷。…新兵器によるダメージはかなりのものだとは思われるが、光の戦士の進撃を止めることはできるのか