「私、サキュバスとして一つ気になることがあるんだけど」
「聞こう」
「人間の女子には、チンポをしゃぶらされることを「屈辱」って思う層がいるでしょ? でも私にはそのことがどうにも分からなくて。いったいぜんたい、どのあたりが屈辱なんだろう?」
「…………俺は人間男子だから憶測でしか答えられないが、しかし思うに、答えは「味」なんじゃないかな」
「味?」
「チンポってどう考えても美味くはないだろ?」
「あー、まぁそりゃ、純粋に味覚的な意味ではね。○○君のおちんちんおいしい♡ みたいな台詞で散々夜を盛り上げてきた身で言うのもなんだけど」
「いやそれはいいんだよ、嘘も方便ってやつだから。でも実際問題不味いっていうのが、屈辱感に繋がってるんじゃないかな」
「うーん、そうなのかも……? でも、ちなみにどうしてそう思うの? 私としてはなんとなく、姿勢とかの方が理由かなって考えたりしてたんだけど」
「跪くからってこと?」
「そう。あとなんか頭押さえられたりとか」
「そんなのはいくらでも工夫出来ちゃうから、違うんじゃないかな。たとえば逆さ吊りになってる男がいて、その男のちんぽを直立した姿勢でしゃぶる分には問題ないのかっていったら、絶対そういう問題じゃないだろ?」
「たしかに。なんかそれはそういう問題じゃない気がする」
「そう。だから消去法で味なんだよ。人は不味いものを我慢して味わわされると、尊厳が傷つけられた気持ちになるように出来てるんだよ」
「なるほど……。たしかにサキュバスはみんな生まれつき、人体のあらゆる部位の味だとかにおいだとか感触だとかを不愉快に感じない作りになってるから、味が屈辱の素なんだとすれば、それが分からないっていうのも納得かもしれない」
「だろ? よかった、疑問解決だな」
「……うーん。ただそれだと一つ気になることがあって」
「なんだ?」
「人間の子どもは、たとえば小学校の給食とかでさ? 苦手なものでも残しちゃいけませんって食育を受けることがあるよね。……本人が不味いと感じるものを我慢させることが尊厳を傷つけるなら、食育とフェラチオの違いってどこにあるのかな?」
「ハハハ、そりゃ簡単だよ。……違いなんてないんだ! 小学校の給食のあれはな、フェラチオの強要と一緒なんだよ!!」
「えぇ!?」
「まだ人類の倫理観が未発達だから気づいてないだけで、まだ違法じゃないだけで、数百年後の未来ではあんな食育、絶対に人権侵害の重罪になってるからな。性犯罪と同じくらい重く取り締まられてるから未来では、マジで、犯罪者どもは震えて眠れ」
「な、なんか私怨で言ってない……?」
「私怨くらい出て当然! 吐いても許されなかった事例が世間で物議をかもしたことくらいは何度か見てきたけどなぁ、そもそもそういう問題かって話だろ? イラマの加害性は相手がゲロ吐いたら有りで吐かなかったら無しか? そんなわけないだろうがっ」
「わ、分かった分かった。○○君が小学生の頃につらい思いをしてたらしいことは十分察したって」
「いや察してないね。生まれつき平気でチンポしゃぶれるような種族は食べ物にも好き嫌いなんてないだろ」
『ねぇ二人でなんの話してるの?』
「おわっ!?」
「あ、××さん。いやそれがね、○○君が小学生の頃に給食でそれはもうつらい思いをしたって話を……」
『いや、なんかちんぽが云々って聞こえてきたんだけど』
「あちゃー……」
「いや、××、これはなんだ、あれだ。男とサキュバスの間で交わされる、女人禁制というか……人間の女人禁制の、そういうあれな話なんだ。聞かなかったことにしてくれ」
『えぇ……。いいじゃんべつに、ピュアなキッズでもあるまいし。混ぜてよ私も』
「女子が混ざって楽しい話じゃないぞ……?」
『えー? でも普通に考えてさ、人間女子がなんでフェラを屈辱だと思うことがあるのかが気になるなら、まず人間女子にそのまま聞いてみるのが確実じゃない?』
「あっお前どっから聞いてたんだよ!? 全部聞いてんじゃねぇか」
『声がデカいんだよ二人とも。しかも話が明後日の方向に飛んで行くし』
「えっ、じゃあ味が理由じゃないってこと? 何が理由なの?」
『汚いからでしょそりゃ』
「汚い……?」
「……はっ、そうか」
『○○君は分かったみたいだね。……ちなみに○○君って給食の何が苦手だったの?』
「生野菜全般……」
『給食に出てきた生野菜を汚いと思ったことは?』
「ないです……」
『ちんちんを汚い物だと思ったことは?』
「あります……」
『そう、そういうこと。人はね、汚いことをさせられると尊厳が傷つくの』
「えっ、でもじゃあ、洗ったら平気ってこと? なんかそういう感じじゃなくない?」
『あー、うん。サキュバス的にはピンと来ないのかもだけど、これは必ずしも衛生的な話ではないんだよね。イメージの問題だから。汚れじゃなくて穢れって感じの』
「穢れのイメージ……」
『外気に触れてないおしっこは無菌とか、なんかそういう話も聞いたことあるけどさ。そんなことは関係なくおしっこには触れたくないわけですよ、我々人間は』
「そういうものなんだ」
『そうなんです。だから仮にちんちんが美味になっても嫌なものは嫌だし、食育とフェラチオは全然別物なんです』
「くっ……! じゃああの頃の俺の尊厳はなんだったんだ……! 確かに傷ついたのにっ」
『そりゃ嫌なことを強制されたら普通に嫌だからね。性的なことに通じてるかどうかに関係なく』
「あ、それはちょっと分かるかも。セフレに急に呼び出されるのは嫌じゃないのに、休日に仕事の電話がかかってくるのは嫌」
『え、サキュバスもそれはそうなんだ』
「そうだよ〜? あっ、あとそうだ、さっき言いそびれたけど、サキュバスにだって苦手な食べ物くらいあるからね?」
「えっ。たとえば?」
「シソ」
「紫蘇……?」
「うん」
「じゃあちんぽにシソ巻いてあったらおえってなるの?」
「なる」
『なんの話をしてんの二人とも……。……ていうか今ので思い出したんだけど、○○君さ、これちょっと聞いていいことなのか分かんないんだけど』
「うん?」
『……男の人って普通、フェラのこと考えた時に、「汚い」より先に「不味い」が思い浮かぶものなの?』
「え?」
『いや、だってさ。男なんてみんな欲求不満なんだから、じゃあもう男同士で解消すればいいのにって私なんかは思うわけですけど。でも男子的にそれは嫌なわけでしょ? なんで嫌なのかっていったら、キモいとか、汚いとか、そういうのが理由なんだろうなって思ってたんだけど。それを全部すっ飛ばして「味」って。……そんなことある? 男子は味知らないはずじゃん、経験ある女子じゃあるまいし』
「…………そんなこと言われてもなぁ」
「え、もしかして○○君ってフェラしたことあるの?」
「は? よし、俺今からちょっとシソ買ってくるわ」
「えっごめんごめんごめんごめん」