「わ、私を攫って、何が目的なんですか!? 身代金なんて期待できませんよ、うち貧乏ですから」
「そんなもの期待してねーよ。身代金目的だとお前の言う通り、まずはターゲットを金持ちの子に絞らなきゃいけないだろ? その時点で面倒だし、それに金持ちの子ほど防犯的な意味でも大事に育てられてるもんだからな、誘拐する難易度も上がる。正直攫う自信ないわ」
「な、なら何が目的なんですか……」
「そりゃお前、男が、若くて可愛い女を攫ってきてすることといったら、決まってるだろ」
「……っ!! わ、分かりました、お相手します。ただそのかわり、一つ約束してくれませんか?」
「あ?」
「あなたの望むことに全て従うので、命だけは奪わないって約束してください。あと五体満足で、少なくとも身体的には健康に生きていけることも」
「お、おいおいおいちょっと待て。お前自分の立場分かってんのか? なんで対等に交渉できると思ってんだよ。俺に従うのはおまえ……それは当たり前のことだろうが。殴られる前に従うか、殴られてから従うか。お前には元々その二つしかないんだよ。話になってねーだろ」
「で、でも! 暴力を振るう側も手間でしょう……? いちいち抵抗されたらストレス溜まりません? スッと従順な方がいいと思うんです」
「すでに今スッとなってねーから言ってんだけどな」
「ごめんなさい! でも、でも、えっと、せっかく攫った獲物じゃないですか……? 誘拐ってやっぱり労力もかかるでしょうしリスクもありますし、対価は大きい方がいいと思うんです。そしたらほら、せっかくの獲物は長持ちさせて長く使った方がよくないですか……? その意味でお互いの利害は一致してるはずっていうか……」
「…………まぁ一理あるよ。たとえばお前が強靭な精神で頑なに抵抗するもんで、暴力で屈服させようと思ったら勢い余って殺しちゃいました……なんてことになったら、そりゃ俺もやってらんないからな」
「で、でしょ!? そうですよね! だから従順になるかわりに、ここで長生きできるようにしてほしいんです。……どうですか?」
「あー分かったよ、分かった。じゃあ交渉成立な。お前が従順でいる間は暴力なし、そのかわりお前は一生ここでオナホとして生きていく。これでいいか?」
「あ、ありがとうございます! 頑張ります!」
「よし、じゃあさっそく服脱いで股開け」
「はいっ」
「……あ、あの。ありがとうございました」
「ん? あぁ、媚び売ってんのか? べつに約束は約束だから、そんなことしなくてもまた俺がヤりたくなるまでは何もしねーよ」
「あ、いや、そうじゃなくて。……その、避妊とか、ちゃんとしてくれて……」
「……そりゃするだろ。妊娠したらどうすんだよお前、病院なんか行かせねーぞ」
「そ、そうなんですけど。でもほら、着床から出産までって結構間がありますし、その期間だけ遊べれば満足とか思われたらおしまいだと思って……」
「そんなこと考えてたのかお前……。ヤってる時も思ったけど、攫われてきてレイプされてるわりにはずいぶん余裕なんだな。相当なヤリマンか何かなのか?」
「あ、いえ。初めてでした」
「はぁ?」
「でもなんか、その、思ってたよりは平気だったっていうか……。もっと地獄みたいな痛さがあるのかと思ってたんですけど、このくらいだったら、きっと世の中もっとつらいことがいくらでもあるよなぁ……みたいな感じで」
「すげぇなお前……」
「運がよかっただけですよ。体質ですから」
「体質だけの問題かなぁ……。普通の女って、痛いかどうか以前にレイプされたり、明日からも今日と同じことをされるって考えたら絶望するもんなんじゃねーの?」
「え……。まぁ、それはその、なんていうか……。……誤解しないで聞いてくれるって信じて言いますね」
「あ?」
「私だって、家に帰れるなら帰りたいし、エッチしなくていいならしたくないです。でも無理じゃないですか、普通に」
「まぁ逃がす気はないな」
「それもそうですし、そもそも私、あなたの機嫌を損ねたら何されるか分からない立場じゃないですか。……あっいや変な意味じゃなくて」
「なんだよ変な意味って」
「人のことなんだと思ってんだみたいな受け取られ方しちゃうかと……」
「いや、なんか……うん。分かった、お前が頭のネジの緩んだ女だってことは」
「えっ。……ど、どうも?」
「褒めてない」
「す、すみません……」
「…………あ、そうだ。じゃあそんなネジの緩んだお前に提案があんだけど」
「は、はい」
「お前って女の友達いる? 同年代の」
「え、あ、はい。学校に何人か」
「その友達、一人俺に紹介してくれよ」
「えっ」
「二人くらいなら同時に飼えると思うんだよな。で、俺も絶倫じゃないから、友達が俺の相手してる間お前は休める。俺も二人の女をとっかえひっかえヤれてハッピー。な? 悪い話じゃないだろ」
「え、いや、あの、でも、友達はその……」
「なんだよ?」
「……友達はたぶん、その、無意味な抵抗とか、反抗的な態度とかで、イライラさせちゃうタイプだと思うっていうか……。あんまりオススメできないっていうか」
「つまりいくらイカれた女でも、友達を売るのは気が進まないと?」
「……はい。すみません」
「いや、すみませんじゃねーよ。それって「従順」をやめるってことだよな?」
「えっ。ち、ちが、違います!」
「違わねーよ、俺の望みを拒否してんだろうがボケ。友達を道連れにしないなら交渉は決裂。今日はこれでも優しくしてやったつもりなんだがなぁ、明日からはいろいろ試してみるか」
「まっ、待ってください! 待って!」
「気が変わったか?」
「いや、えっと、友達を紹介するのは無理です、嫌です、ごめんなさい。でもそのかわり、他の有益な情報を提供しますから。それで手打ちにしてもらえませんか……?」
「あぁ? なんだよその情報って」
「それは、手打ちにしてくれるって約束してくれるまで教えられません」
「……はぁ? ナメてんのかお前? 何を教えるかは秘密だけど、何かは教えるから勘弁してくださいって、今日日ガキでもそんな抜けたこと言わねぇぞ。ぶん殴られてーのか」
「ちがっ、ごめんなさいっ、でも本当に言えなくて、ふざけてないんです。理由は……理由も、約束してからじゃないと話せなくて……。でも本当なんです、信じてくださいっ。それにネジの緩んだ女が、今さら口から出任せなんて言うと思いますか……?」
「……さぁな。そこまで信頼するほどの理由もねーだろ。だからな、殴られるか友達呼ぶかどっちか選べって。今すぐに」
「……分かりました殴ってください」
「なに?」
「でも出来れば怪我しない程度でお願いします……。殴られるのは我慢しますから、私が、嘘は言わないって信じてもらえるようになるまで、我慢しますから。だから信用してもらえないうちは、それで許してください……っ」
「…………分かったよ、そこまで言うなら。お前の言う情報とやらが何なのか言ってみろ。場合によっちゃ見逃してやるよ」
「は、はいっ。はいっ! ありがとうございます!」
「おう。で、何を話すんだ?」
「あ、えっとですね。……その、ここから一駅行ったところに○○ってパチンコ屋さんがあるじゃないですか。大きい公園がある方からそのパチンコ屋さんの方に向かって歩いていって、パチンコ屋さんより三本向こうの路地に入るんです。するとそこに、海老で出汁をとったすっごくおいしいラーメン屋さんがあるんですよ」
「……はぁ、ラーメン屋? おう、それで?」
「えっ、おわりです」
「…………あ?」
「おいしいラーメン屋さんの情報を教えました。……ど、どうでしたか?」
「……お前マジで俺のことナメてんのか?」
「えっ、いやっ、な、なんで……!? 滅相もないです! あ、え……? あっ、もしかしてすでに知ってるお店でしたか……?」
「いや知らねぇけどよ。知らなかったとして何なんだよ、お前、なんでそれが交渉材料になると思ったんだ? あ?」
「え、だ、だって、私が教えなかったら、一生知らないままだったんですよ……?」
「あぁ? だからそれがどうしたって」
「けどっ。ほら、セックスは、あなたが言う通り、結局はすることじゃないですか。私が従順でもそうじゃなくても、結局はするけど、でもおいしいごはん屋さんの話は、私が言わなかったら、そもそも尋ねようとすら思いませんよね……? その発想がないはずです。だからこれは元々持ってない権利を交渉材料にすることとは違って、ちゃんと私が持ってる「発想」っていう手札を切った交渉なんです。ね、想像してみてくださいよ……、この交渉がなかったら一生知らないままだったんですよ? 本当においしいラーメンなんですよ……?」
「…………口車に乗せられてるよな、俺」
「え……?」
「今からそのラーメン屋行ってくるわ。で、本当に旨かったら交渉成立ってことにしてやる。ただそうならなかった時は、お前、マジで地獄を見せてやるからな」
「あ……。は、はい。行ってらっしゃいませ……」
「…………旨かったわ」
「あっ。え、じ、じゃあ……?」
「あぁ。友達を紹介しろとは言わん。無駄な暴力も引き続き無しだ」
「ほ、本当ですか!」
「嘘ついてどうすんだよ」
「いやっ、あっ、ありがとうございます! ありがとうございます!」
「はいはい……」
「あの、あの、あなたって、すごく優しい人なんですね……! 私ちょっと感動してます」
「お前それはいよいよイカれてるぞ」
「だって……! 私、待ってる間に思ったんです。もしあのラーメン屋さんが口に合ったとしても、それはそれとして「不味かった」って言えば、あなたは情報だけ得て我も通すことが出来るんだなぁ……って。でも、そういうひどいことはしないでくれたから、すっごく優しい人なんだって分かりました。それにずっと思ってたんですけど、あなたはちゃんと私の話を聞いてくれるっていうか、ちゃんと誠実に会話してくれて……。それが私すっごく嬉しいです。不幸中の幸いってこういうことを言うんですね……! ありがとうございます!」
「……なんでだろう、微妙に喧嘩を売られてる気がするな」
「なんでっ!? えっ、ご、誤解です! ごめんなさい!」