「あのさ私思うんだけど、、ヒーローって私服から戦闘服に変身するじゃん? 戦隊とかプリキュアとか」
「うん」
「あの要領で着替えが出来たら便利じゃない? 寝坊した時とか時短になるし」
「あー、いろんな変身アイテムを使い分けていろんなコーデに、みたいな?」
「そうそう。プリパラとかそんな感じじゃなかった?」
「そうだけど、あれは固定のでっかい機械を通さないといけないから不便だよ」
「じゃあやっぱり普通に変身がいいな」
「えー。でも変身はさ、「変身!」って叫ばなきゃいけないじゃん」
「え? いや、そこは無しにしてよ普通に」
「そこを無しにしたらそれはもう変身ではない」
「変身でなくていいんだよ、お着替えしたいだけなんだから」
「あと変身する時ってなんか音鳴るじゃん? ファミマの制服に着替えたらファミマの入店音が鳴るのかな。それはちょっとバックヤードでも恥ずかしくない?」
「いや何の話? 勝手に話進んでますけども。変身!も言いたくないしBGMも付けないでくれって」
「でもそれが無いと変身じゃないから」
「変身じゃなくていいんだよ楽に早く着替えたいだけなんだからっ」
「いや、でも実際それ無しでパッて衣装チェンジされたら、びっくりしない? 変身!テレレレー♪があったら「あぁ変身したんだな」って感じだけど、無音で急に服変わってたら怖くない?」
「怖くないでしょべつに」
「隣にいたおじさんが急に鉄拳になっても?」
「はぁ?」
「鉄拳っているじゃん、紙芝居使う芸人の。隣の人が急にあんな感じになったら怖いでしょって」
「どんな状況なら隣の人が急に鉄拳になるんだよ。仮に鉄拳本人のメイク前が隣にいても、私と一緒にいるタイミングで彼が急遽鉄拳を求められることはないでしょ」
「じゃあパペットマペットでもいいや。隣の人が急に」
「一緒だよどっちも!」
「じゃあとにかく明るい安村は? 隣の人が急にギリ履いてるだけの人になったら?」
「それはどっちかというと変身解除じゃない……? いやどっちでもいいんだけど。安村だって私の隣で脱ぎ着することはないでしょうよ、一緒だよ全部」
「じゃあ自分は? 自分が急に小梅太夫になって隣の人をびびらせる可能性は?」
「私の身に何が起きれば突然小梅太夫になろうと思うんだよっ」
「チクショー!って言いたい時とか」
「そんなLINEスタンプみたいな理由で変身しないわ! いくら手軽になったとて!」
「ほんとかなぁ。LINEスタンプではなくても、たとえば目の前でナンパ男に絡まれてる人を見た時とか、ちょっと怖いから今のうちに甲冑騎士に変身して危ない人のフリで乗り切ろうとか思わない?」
「…………甲冑騎士かどうかはともかく、そういうシチュエーション自体は絶対にないとまでは言いきれないけども」
「ほら来た。その時かけ声も音もなかったらどうなる? 隣にいる人びびるよ?」
「いやでもナンパってことは街中でしょ? 街中で隣の人が「変身!」って叫んでたらそれはそれでびびるよ。そしてこちらとしても街中で堂々と変身を叫ぶ勇気はないよ」
「言ってる場合じゃなかったら? はい、普通にナンパ男の魔の手があなたに迫ってきました。お姉さん俺とお茶しな〜い? どうする!?」
「ナンパ男にとにかく明るい安村の変身をセット!」
「変身! 安心してください履いてますよ!」
「はいパンイチでお巡りさんに連れて行かれました」
「変身アイテムにこんな悪用法が……」
「危険すぎて絶対実用化されないやつだった」
「使いたかったのに! 変身! チクショー!」
「LINEスタンプだ!」
「変身! こんな変身アイテムは嫌だ、勝手に他人に使える」
「私の隣で突然鉄拳になるタイミング!?」
「ほらね、変身のかけ声と音は必須だって。あと他人に向けて使えないようにするセーフティーも」
「あ、ていうかよく考えたらさ、目の前でナンパされてる女の子を甲冑騎士になって助ければよかったんだ。いけるでしょ騎士なら」
「すごい、思考がヒーローになってきた」
「やいそこのナンパ男、やめなさい」
「なんだなんだ〜? 俺はお姉さんとでもいいんだぜ〜?」
「あ、いや私今は甲冑着てるから。お姉さんって分かんないから」
「いやいつ変身したのか分かんないんだよ音鳴らないから」
「あ、そっかごめん。変身!」
「ガシャッガシャッ」
「なにそれは」
「甲冑の音」
「音も強制なんだ。まぁいいや、やいナンパ男、やめなさい!」
「変身! グリズリ〜!」
「ナンパ男がグリズリーに!? 鎧と剣では心もとない、変身! テンテンテンテ♪テンテンテテンテン♪」
「がおー!?(スター状態のマリオ!?)」
「クマの台詞がめんどくさいことになってる! よし速やかにくたばれ、スターパンチ!」
「ぐあああああ! 変身解除、意識不明で倒れる男性。どうもマリオさん警察です、ちょっと署まで来てもらえますか」
「あっ、お、終わった……」
「変身! チクショー!」
「もういいよLINEスタンプは」
「ねぇどうしよう」
「なにが?」
「さっきからずっと考えてるんだけど、パペットマペットの使いどころが思いつかない……」
「使いどころが分からない方のLINEスタンプ……!」