「なぁ、俺最近悩んでることがあるんやけど、ちょっと聞いてくれへん?」
「なに? どうしたん?」
「……あ、それとこの話ってだいぶエグい下ネタなんやけど、大丈夫……?」
「べつにええけど。なに?」
「……最近な、夜寝る前に、一回オナニーしてから寝ようかなってよく思うんやけど。それでシコり始めたが最後、何時間も何時間も終わらせられへんくて朝が来んのよ。それでいつも寝不足になってて……」
「ん……? ちょっと待って。それはお前が遅漏だっていう話?」
「いや、ちゃうくて。その気になればサクっと終わらせることは出来るんやけど、なんかその「その気」になられへんのよ。どうしてもなれんくて……、それで困ってる」
「ふむ……。ちなみにやけど、一回し始めるとやめられなくて困るっていうなら、そもそも寝る前にそういうことはせぇへんようにする……ってことは出来ひんの?」
「それがどうにもなぁ……。やり始めると「その気」になれへんのと同じで、やり始める前に「やめとこう」って気にも、どうしてもなれへんねん。なんでなんかは自分でも分からんけど……」
「なるほどなぁ……」
「それに、べつに夜寝る前の話だけじゃないんよこれって。同じような感じで、休日の昼間の時間が消し飛んだりするんよオナニーで。なぁこれどうしたらええと思う……?」
「…………お前それ、性依存症ちゃうか?」
「えっ?」
「性的な行為がやめたくてもやめられへんっていう心の状態を性依存症いうて、立派な精神病の一つなんよ。オナニーがやめられなくて困ってるっていうのは、性依存症なんとちゃうの? 深刻そうならちゃんと病院行った方がええで」
「いや、でもな? 俺ももしかしてそうなのかもって思ったんやけど、本当にそうなのかが分からへんのよ」
「何が分からへんねん? 睡眠時間削ってまでオナニーしてまうんやろ? そりゃもう確実に性依存症やないか」
「いやでもな、調子がいい時は五分くらいでサクッと終わらせて、他のことしたりさっさと寝たり出来んねん。あと忙しすぎて時間ない時は何日もオナニー無しで普通に生活してるし」
「……ほな性依存症とは違うかぁ。いや、俺もまったく詳しくないんやけど、でも精神病ってれっきとした一つの病気やろ? コロナかかったら治るまでずっと熱出たり喉痛かったりで調子悪い〜ってなるみたいに、精神病も治るまではずっと調子悪い〜ってなってるもんとちゃうの? そりゃ躁鬱病みたいな「調子良かったり悪かったりが激しすぎる」っていう症状の病気もあるんやけど、「オナニーしすぎたりサクッと終わらせられたりする」っていうのはちょっと聞いたことないんよな……。いや〜、よう分からんくなってきたけども」
「そうかぁ……。……あ、それと下ネタといえばもう一つ悩みがあるんやけど。保存したエロ画像の数が2000枚に達しそうで、容量的にもかさばってるし、整理するのも大変になってきてなぁ」
「お前それは性依存症やないか! エロ画像を何千枚も保存しておいて、その上でオナニーがやめられへんとか言うてるやつはほぼ確実に性依存症なんよ! 無限にオカズがあるのになんでさっさと満足できへんのよ、ていうかなんで無限に保存してんの。やばいって、絶対に性依存症やって」
「そういうもんなん……? けどなぁ、言うても全年齢向けのイラストは5000枚近く保存しとるんよ?」
「……ほな性依存症とは違うかぁ。仕事で資料にしてるとかじゃない限り、ネットで見たイラストを5000枚も保存してるようなやつは、もうそれ自体ちょっと変わった趣味しとるからなんとも言えんくなってくるんよ。保護目的とかでもなくただの趣味で10匹も20匹も猫飼うとる人見たらちょっと常識が通用しない雰囲気とか感じるやろ? それと同じ感じになってんねん。もはや性欲がどうのこうのって次元の話じゃなくなってきた感あるわ」
「マジで? そういうもん……? ……あぁそうだそれと、俺にも人並みに異性の友達がおるんやけどな? 記憶をよく振り返ってみたら、俺そういう女友達の全員に一度はどギツいセクハラのメッセージを送り付けたことがあるんよ、地上波には流せんようなやつを。改めて考えるとそれもやばいなぁって」
「性依存症やん! 性欲をコントロールできなくて人間関係に支障をきたしてるのになおやめられへんって、もうそれは完全に性依存症以外の何物でもないやん! その友達がただただ気の毒やわ……。お前それは今すぐにでも病院行った方がええって」
「え、そこまで……? でも酔った女友達に抱きつかれてキスされた時とかは、べつに性欲がやばくなったりはせんかったんよ。むしろ勃起もしないくらいで、冷静っていうか」
「ほな性依存症とは違うかぁ〜。いや、死ぬほど言い方悪くなるけど、年頃の男がワンチャンヤれそうな異性に抱きつかれてキスまでされたのに内心どころかチンチンまで真顔でいるっていうのは、それは逆に枯れてる方を心配せなアカン事態になっとるんよ。いや、お前わけ分からんわマジで、どういうこと……? ヤりたいの? ヤりたくないの? セックスよりオナニーの方がいいとかそういう話?」
「いやセックスの方がいいよ、ヤりたいよ! でもお前、だって、じゃあ仮にそこでホテルに連れ込めたとして、いい感じに同意の上でエッチできたとして、それでどうなるん? 明日からどうする? あーこの男も結局そういうことするんや、でもきっかけ作った上に拒否しなかったのは自分やからな……ってモヤモヤした気持ちをしぶしぶ飲み込むその女友達と明日からも普通の友達ですって顔して仲良くしていくん? ホンマか?」
「いや何が? 知らん知らん。なにが? ずっとなんの話しとんねん。そもそもその女友達はなに? お前からどギツいセクハラされた上で一緒に飲んどんの? そんなんもう大体何があっても大丈夫ってことなんちゃうの? この男も結局こういうことするんかのラインをはるか昔に飛び越えとるやないの」
「いや大丈夫なわけあるかいっ。なんで一緒に飲みに行けてるのかなんて俺にも分からんよ。なんも分からん。他人が何を考えとんのかとか、自分が何をどうしたいんかとか、どこからどこまでが病気なんかとか、全部分からへんことだらけよ。でもセクハラされるのとセックスするのは別やろ? 俺らかてもしオッサンからチンチンの写真が送られてきたらうげぇ最悪死ねキチガイと思うけど、流れによっちゃ笑い話にも出来るやん。でも写真どころか現物を体に擦り付けられたら最悪通り越して人に話せんレベルのトラウマなるわ」
「いや知らんけども……。でもまぁあれやな、お前がなんかめっちゃ苦労してることだけは伝わってきたわ」
「そう、苦労してるんよ、だから相談したんよ。……なぁ、結局のところ俺は、どうすればいいと思う……?」
「……いや、ごめんけど、話が入り組みすぎてて医者やない俺からはなんとも言われへんわ。俺にはせいぜいミルクボーイ形式で話を聞くくらいのことが関の山というか」
「あ! 今のでもう一つ思い出した」
「なに……?」
「下ネタって一言に言っても、思い浮かべる物が人によって違ったりするやんか」
「あー、あるなぁ。下品だけど笑える冗談だけが下ネタだと思ってたり、猥談やセクハラまで含めて下ネタだと思ってたりな。俺もお前から「下ネタ系の相談がある」って言われた時に、さっきみたいな話が出てくるとは夢にも思わんかったよ」
「そうそう、人によってマジで全然認識がちゃうねん。で、そこで俺は思ったことがあるんやけど」
「なによ?」
「ミルクボーイって名前は、よく考えたら下ネタなんちゃうかって」
「いや下ネタちゃうわ!」
「ほな下ネタとは違うかぁ」