あるところに、サキュバスが人間と共存している世界があった。サキュバスは皆、人間の性的興奮を食べて生きているため、それをより高めるためのセックスに積極的だった。
しかし、衣食住のうち食を満たしただけでは、サキュバスだって文化的な生活を送れはしない。そこは人間と同じで、彼女らにはセックスとは別に、生活していくためのお金が必要だった。
これから見る物語は、そんなサキュバスと、射精障害があるけれど性欲も金も人一倍持っている男が、Win-Winな関係を築いている世界の話である。
「○○ちゃん、この後いい?」
「大丈夫ですよ。どれくらいします?」
「二時間はどう?」
「二時間、了解です。じゃあ先にベッドに行ってますね」
「ありがとう」
「……なんかこれ、言っていいのか分からないですけど。お金もらって時間制でエッチするのって、風俗みたいですよね。勤めたことないから分かんないですけど」
「俺も行ったことないから分かんないけど、まぁそうだよね。で、それを嫌だと思わないところが○○ちゃんのいいところ」
「それはまぁサキュバスですから、気になりませんけど。でも××さんも難儀ですよね、射精はできないのにエッチはしたいから、終わり時を見失わないために時間制でエッチしたいだなんて。人間の女性だと分かってくれる人少ないんじゃないですか?」
「いや本当にそうなんだよ。それどころかサキュバスだって、「射精寸前の性欲が一番美味しいのに、なんで射精障害のある奴とヤらなきゃいけないんだ」って子が大半なんだから。○○ちゃんがいてくれてよかったよ」
「まぁ私は食事のためというより、お金のために来てますからね。貧乏なサキュバスがいる世の中でよかったですね」
「そんな言い方しなくてもいいじゃない」
「いや実際助かってるので、悪く思ってるわけじゃないですよ。サキュバスとセフレになることなんて簡単だから、わざわざお金払ってまでシてくれる人って滅多にいませんし」
「そこはWin-Winだね」
「ですね。……じゃあまたあとで」
「うん。あとでね」
「○○ちゃん、来たよ」
「いらっしゃいませー」
「いらっしゃいませて」
「さっき風俗の話をしたから、それっぽくしたらウケるかなって」
「いや、詳しくはないけど、たぶん風俗嬢の第一声って「いらっしゃいませー」ではないんじゃないかな。コンビニじゃないんだから」
「えっ。じゃあなんて言うんですか?」
「え、分かんないけど……。どうも〜○○です〜、みたいな感じなんじゃないの?」
「へぇ〜。なんか漫才の入りみたいですね」
「まぁ共同作業の入りという意味では、漫才にギリギリ似てなくもないのかも」
「ボケとツッコミならぬ、穴に突っ込み、みたいな?」
「いや「みたいな?」って言われても」
「女性を指す言葉として「穴」って書いて「ボケ」ってルビを振ったら、一瞬で炎上しそうですよね」
「全部○○ちゃんが一人で言ってるんだよ……?」
「そうですけど。ちょっと一緒にどんなルビを振れば炎上しないか考えましょうよ」
「えぇ……。なんだろう、パッとは出てこないけど」
「「女神」とか」
「漢字に漢字のルビを振るのはなぁ……。ていうか、そもそも穴呼ばわりがアウトだと思うんだよね。ルビを何にしても言い訳がましくなるだけというか」
「でも穴じゃないとツッコミ(突っ込み)がダブルミーニングになりませんよ」
「うーん……。正直そこはどうでもいいような……」
「あ、ていうか今思ったんですけど、二人ともボケ役の漫才のことをよく「ツッコミ不在の漫才」って言うじゃないですか。エッチが漫才でセックスがツッコミだとすれば、ピンサロって「突っ込み不在の漫才」じゃないですか?」
「いや「じゃないですか?」と言われても」
「あ、でも口も穴といえば穴か。突っ込んでると言えないこともない……? どう思います?」
「いや、あの、ごめん○○ちゃん、すごくどうでもいい! 正直めっちゃどうでもいい! そろそろエッチ始めさせてもらってもいいかな!?」
「あっ、そうでした、ごめんなさい。……話してる間に結構時間経っちゃいましたね」
「うん。そこは普通に延長してもらっていい?」
「いいですけど、延長料金ってもらえるんですよね?」
「…………○○ちゃんもしかしてそういうお店で働いてたことある?」
完