戦姫絶唱シンフォギアDIEND 作:通りすがりのシアン
……最初に、俺の話をしよう。
俺の名前は
前世の記憶を持つただのライダーオタクだった。
仮面ライダーが存在しない以外は前世と同じ日本にもう一度転生したと思っていたけど、その日常は16年後に崩れ去ってしまう。
「海人!お前だけでも逃げ──」
「父さん!母さん!!」
突如世界中に現れた謎の生物。
そいつは触れただけで人間を炭化させる力を持ち、既存の兵器や核爆弾を以てしても奴らを倒すことは出来なかった。
そうして人類は僅か一週間で絶滅寸前にまで追い詰められ、もはや滅びるのを待つだけの存在となった。
そんな時だった。俺の目の前にディエンドライバーとカードが現れたのは。
前世であれば玩具が落ちているだけだと考えるが、仮面ライダーの存在しない世界で、そしてこの世界の惨状を見て、無意識に俺はその力を使っていた。
「──変身!!」
こうして俺は仮面ライダーディエンドとして自分の世界を守るための戦いを
──始めることができなかった。
ディエンドに変身した直後の事だった。
突然出現したオーロラカーテンのせいで別の世界へと飛ばされてしまい、元の世界に帰る方法を探すことになった。
最初こそ海東大樹や門矢士のようにオーロラカーテンを使うことが出来るか試してみたが、それも出来ず。
気付けばこの世界で一年近くが経とうとしていた。
現状分かっているのはこの世界には仮面ライダーという言葉は存在していたが、【仮面ライダーBLACK】を最後にシリーズは終了していること。
俺の世界を襲った化け物の正体が【ノイズ】と呼ばれる認定特異災害である可能性が高いということ。
そして、この世界のノイズには対抗手段があるということだ。
触れた人間を炭化させる能力や姿形がほぼ同じこと、そもそも攻撃が全く効いていないことからこれはほぼ確実だと思っている。
……気になる点があるとするならば、ノイズは一定時間が経過したり、人間に触れた時に自身も消滅することか。
俺の世界のは一方的に人間を炭化させるし時間が経っても消滅しない。
これを上位個体と考えるか、そもそも俺の世界のやつは見た目や性質が似ているだけの全く違う別物と考えるか。
その真実が分かった時に俺は元の世界に帰れる……と考えている。
その時までにノイズを倒せるあの力に関しても学んでおきたいものだ。
……と、丁度悪い時にノイズ出現のアラートが発生する。
「帰宅ラッシュの終わり際とは……見過ごせないな」
ディエンドライバーとカードを取り出す。
市街地のノイズほど厄介なものもない。
警報で既に民間人は避難しているとはいえ、例の組織が来るまでは放置される。
《カメンライド》
「変身」
《ディエンド!》
音声と共に全身に鎧を纏い、仮面ライダーディエンドへと変身する。
ノイズの数は30ほど。
大型もいないとなると俺だけで何とかなりそうだ。
「はっ!!」
敵に狙いを定めディエンドライバーを連射する。
一撃で消滅するノイズを見ると耐久面のほうも違う。
俺の世界のノイズらしき化け物はある程度攻撃を続けなければ倒せなかった。
「そしてお前たちに共通することが一つ」
触手を伸ばしてきたノイズを掴んで頭を撃ち抜く。
ノイズと化け物はディエンドの状態であれば攻撃が効いているし触れることも出来る。
「それと……!」
「Croitzal ronzell gungnir zizzl」
「Imyuteus amenohabakiri tron」
二つの声が聞こえ、どこからともなく曲が流れ始める。
……一ヶ月ほど前、初めてこの世界のノイズと戦い、全て倒し終えた頃に突然現れたのが最初の出会いだ。
仮面ライダーとは違うが、明らかに戦う為の姿でいることからノイズと戦うための力ということは理解出来た。
「今回は間に合ったみたいだな」
「随分と早かったが、この辺りに拠点でもあるということかな?」
表ではツヴァイウィングとして活躍するトップアーティストの二人。
天羽奏と風鳴翼。
だが裏ではノイズと戦うヒーローってところか。
「話はノイズを倒した後に聞かせてもらうぞ」
「やはりノイズと戦える力を持っているのか」
風鳴翼がしまったというように目を開いて口を手で隠した。
テレビだと堅物なイメージがあったが、意外と天然なのかもしれない。
《アタックライド》
「君たちの話も聞かせてくれるのなら連行されても構わない。……もっとも、話せることも多くはないが」
《ブラスト》
ディエンドライバーを構え、ノイズを撃ち抜く。
そこに合わせて先行するのは天羽奏だ。
「まぼろし?夢?優しい手に包まれ」
「これは……歌か」
天羽奏が歌いながら戦闘を続行する。
普通ならば歌っている場合かと言うだろうが、戦い方を見るに余裕があるからという理由ではないことは分かる。
そもそもその場合だとこの聞こえてくる音が意味が分からない。
「眠りつくような 優しい日々も今は」
では何故か?
理由となりそうなものはかなり絞られる。
そしてどの候補もノイズが関係していると考えていい。
「こういう形での援護はどうだい?」
《アタックライド》
《イリュージョン》
自分を四人に増やし、天羽奏と風鳴翼の両方で攻撃を行う。
そもそもノイズの数も少なかったというのもあるが、結局はそれからすぐに戦闘は終わった。
「もう終わりか。ツヴァイウィングの歌をもう少し聞いておきたかった」
「それで、アンタは何者なんだい?」
「僕は……そうだな」
変身を解き、素顔を晒す。
俺が元の世界に帰るために必要なピースを持つのはおそらく彼女たち。
罠があったとしてもこの接触は必要なことだ。
「大城海人、通りすがりの仮面ライダーだ。覚えておいてくれ」
ディエンドらしくこの世界のお宝を手に入れ、そして帰るんだ。
自分たちの世界のために。