待ち伏せ艦隊の壊滅。その報告を聞いたアタシは今、急いでサウスブルーの艦隊を率い、彼らが運ばれた基地に向かっている。少将3人に7隻の軍艦。充分だと思っていたが、どうやらまだ敵の姿が見えていなかったようだ。
少し聞いた話だと、ジェイド海賊団は我々と正面での戦いをせず、船を無力化することにのみ専念。艦隊の無力化が終われば、すぐにその海域から離れたとか。これでは追跡は無理さね。まずは、どこに向かったのか特定しないとダメさね。
「まあ、それもこの部隊が続けばの話だがね」
これほどの規模の作戦に失敗したんだ。何らかの責任を問われる可能性がある。はたして、どうなるかはわからないが、まずは向こうとの合流が先さね。
「どんな状況かねぇ」
作戦メンバーが確定した時の最初の顔合わせ以降、アタシはサウスブルーに赴いていたので問題なかったが、待ち伏せに参加した少将達は皆、まともじゃない。これから彼らに会わなきゃいけない現実に、少しげんなりする。
「恨むさね。元帥」
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そして、到着したんだが……。
「アイツ、とうとう頭を…いや、それは元からさね」
待ち伏せ艦隊が救助されて運ばれた近くの海軍基地に着くと、なぜかあちこち飛び回っている狂犬がいた。何さねあれは?確かに、イヌ科の能力だったが……まさか、それのアピール?気持ち悪いさね。
「なるほど、月歩の修行かい」
よく見ると飛びながら何度も足を踏む動作を繰り返している。なかなかに愉快な格好だが、そういう技なのだから仕方ないのかね。アタシが習得する時もああだったかねぇ。少し嫌になるよ。
「どうやら、まだ折れてはなさそうさね」
近くの海兵に聞いたところ、どうやら敵に船を壊されてそのまま海に溺れたらしい。次に戦う時には例え船が壊されても戦えるように、月歩を習得しようとしているのだろう。そもそも船をちゃんと守れという話だが、それができれば狂犬とは呼ばれないかね。時々、よく少将にまで上がれたなと思う。
「他の2人は……問題ないさね」
他の2人。ウィースとアンナは大きな傷を負い、意識もまだ戻っていない。でも、2人は元から頑丈なメンタルをしている。一度の失敗で立ち直れないなど、考えられない。なら、今気にするべきは……はぁ、嫌になるよ。
「仕方ない、アイツらが起きるまで狂犬の躾でもやるかね。やれやれ、狂犬の扱い方など学んでないというのに……」
はぁ、狂犬に噛まれる前に早く起きて欲しいものさよ。
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狂犬の躾と負傷者の治癒をして過ごすことしばらく、本部からの連絡が届いた。内容はこの度の結果に対する叱りだと思ったが……。
「まさかの正式な部隊の設立とは……上はそれくらいジェイド海賊団を危険視しているというのかね」
まあ、今回の結果を見ればそれも仕方ないさね。ここは、叱りがなかったことを喜ぶべきなのだが…。
「なんでアタシが隊長なのさ?」
「逆にティネス少将以外誰が隊長を?まさか、ウィース少将を?私、逃げますよ?」
むぅ、何も言えないさね。アイツは優秀ではあるが、性格に問題があるからねぇ。だからってストーカーに任せたら、隊の日常が犯罪的になる。流石に標的の日常を妄想しながら過ごすなど、アタシもごめんさね。狂犬は論外。
「……アンタ、アタシの代わりに――」
「無理です」
「――は、…だよねぇ」
はぁ、アタシがやるしかないかね。こういうのを任されるのが嫌だから少将で止まってるというのに……まさか元帥、最初からそのつもりで?……ありそうさね。今度本部に帰ったら、問い詰めてやるさよ。
アイツらが起きて情報を共有したら、ようやく追跡が始まるのかね。
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「なるほど、もう1人の指揮官か」
「そうだヨ。この美しいボクが気付けなかったんダ。間違いないネ」
「そりゃ…厄介さねぇ」
さらに数日が経ち、ウィースとアンナが目を覚ました。今はティネスが2人から報告を聞いている。内容はまず、ジェイドと黒い翼が奇襲で不在の中、彼らの船は一切の乱れを見せず、統率された動きをしていたことから、奴らには他にも指揮官クラスの者が存在すると判明した。
「あと、ジェイドの奇襲には私達の誰一人も気付けなかった。おそらく、敵には何らかの手段で我々の目を欺いた者がいるかと」
「確かに、そう考えるのが妥当さね」
さらに、7隻の艦に乗っていた味方の中で誰一人もジェイド達の奇襲に気付けなかった。そして黒い翼の能力は八咫烏である可能性が高いとのこと。その姿はとても巨大で、それが空を渡って奇襲を仕掛けてきたのなら、気づかないはずがない。以上のことから、手段不明の隠密能力を持つ者がいると判断。
「正体不明の指揮官と手段不明の隠密能力者。2人が同一人物である可能性は高いけド、今は断定するべきではないネ」
「そうさね。無闇な断定は致命的な失敗を招きかねない。今はその存在の把握が先決かね」
今のこの状況は、敵を見誤った結果だ。これ以上の誤りはあってはならない。今回は敵が移動手段の無力化を優先したから生き残った。だが次も同じとは限らない。今度は敵が我々を打ち破れるような実力を手に入れ、正面から潰しにくる可能性だってある。これからは、より慎重な判断が必要になる。
「一応聞くがアンタ達、任務をやめる気は?」
「ありません。私の仕事はジェイドの捕縛。彼をこの手で捕まえるまで、例え海の底、空の上だろうと、私はジェイドを追いかけ続けます」
「……そうかい、それは……とても、頼もしいねぇ」
アンナの堂々たるストーカー宣言に少し引くティネスだったが、アンナがいるからこそ追跡部隊はジェイドを追えるのだ。多少の犯罪発言は無視できるティネスである。
「ボクも当然降りないヨ?一度受けた仕事を途中でやめるなんて、美しくないネ」
ナル要素を除けば、意外と真面目な発言をするウィースに、ティネスは諦めと共に安堵をする。ウィースは戦闘力も高いが、指揮もまた任せられる貴重な存在。ウィースなしではジェイド海賊団との戦いで苦戦を免れないだろう。
「それじゃぁ、全員そのまま任務にあたると。了解、今日はもう休みな。詳しい作戦は明日さね」
「はい、よろしくお願いします」
「美しいボクと共に美しい任務を美しくやろう!」
2人の意志を確認したティネスは部屋から出ていく。これ以上この部屋に居て精神に疲労が溜まりすぎるのは良くないと判断したからだ。ティネスの能力では精神の汚染は直せない。仲間2人の精神は治癒不可と診断したティネスだった。
「はぁ、どうかストーカーとナルシストが移らずに任務を終わらせたいねぇ」
ティネスはぼやく。周りの問題児共をどう扱えば良いのかわからないから。だが。
――クソっ、またかよ!グルル、早く、早く飛べるようになって……海賊!!!
「……はぁ、うるさいねぇ。あの狂犬は今日もかい………ヒューズ!足にしっかり力を込めな。そんなんじゃ何度やっても、ご機嫌な犬にしか見えないよ!」
――ヤッてんだよ、クソババァ!!黙ってろ!テメェの助けなんじゃ…!
「出来てないから犬なのさ、アンタは。ほら、さっさと来な。アタシが躾けてやるさね」
――テメェ…クソババァ!オレのどこが犬だ!オレはダイア―
「また、ジェイドに海に落とされたいのかい?まさか…ハマったのかい?」
「んなわけねぇだろ!!!」
「だったら言うことを聞きな。アンタ以外の少将は皆飛べるさね。アンタ、置いてかれたいのかい?」
「グッ、クッソが!!どうすりゃいい!!!」
「まったく、ようやく聞く気になったかい。付いてきな。アタシがしっかり躾けてやるさね」
「クソッ、勝手にしろ!!!」
「煩いよ。アンタは叫ばないと話せないのかい?」
それでも、ティネスは彼らと共に進むだろう。どれだけの迷惑をかけられても、ティネスは彼らの手を決して放さない。彼らが困っていれば手を貸し、落ち込んでいれば手を握ってあげる。
それこそがティネスの正義なのだから。
ちょっと短めかな。ティネスの能力。今回出すつもりだったけど、なんか出なかった。なんで?
『天晃』ティネス
コードネーム:『天晃』
階級:少将・ジェイド海賊団追跡部隊隊長
年齢:40歳
体格:169cm・58kg
外見:白い髪のバンスクリップアップ・片目隠し/エメラルドの瞳/暗灰色のスーツにコートは普通に羽織っている
イメージカラー:白
出身海:イーストブルーの長閑な島
正義:手を取り合う正義
武装:銃
六式:指銃・剃・紙絵・月歩