翡翠の海賊   作:カズサ

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01.ライラ

 

 

 

魔女の住む島。マリーナス島に向けて出航したんだが、よくよく考えればまだ補給の途中だった。部下にばれる前に、急いでこっそり地図で確認して近くの島を探したが、ちょうど向かってる方向に補給出来そうな島があった。やったぜ。

 

「流石です、船長!補給のことまでちゃんと考えて出航したんですね!」

「フッ、この程度のことでそう褒めるな。恥ずかしい」

 

マジで恥ずかしい。ルッツがいなくて助かったぁ。いたらなんて言われたか…いや、あいつは何も言わんな。なんか言えよ。

 

「船長!もうすぐ島です!」

「む、そうか。よし、皆もうすぐ島だ!準備しとけ!」

『オォー!』

 

さーて、どんな島なんだろう。この辺りは王国の翡翠輸送船が通らないから来たこともないし。情報も魔女の住む島の位置以外ないんだよなー。

 

そんなことを考えながら風に当たってると、どうやら島に着いたようだ。見ると、その島には港らしきものがなく、遠くに見える街らしきものもあまり栄えているようには見えない。船は砂浜に泊めるしかないようだ。部下達に停泊を命じたあと、部下を一人だけ連れて島へ飛んでいく。カゼカゼの実はこういう時に便利だよねー。

 

「さーて、着いた。取り敢えず、近くを確かめるぞ」

「ウース、センチョー」

 

軽いなこいつ。今にでも砂浜に流れそうなくらい軽い。

 

「君、足元注意したほうが良いよ」

「へ?リョカイッス。優しっすね、センチョー」

「まあね」

 

そんなことを言いながら砂浜を歩き街に向かっていると、少し離れた先から1人の少女が刀を腕で持ちながら現れた。小さ…くはないな、持ってる刀が長すぎて体が小さく見えたのか。大体165cmぐらいか?それに、よく見ると持っているんじゃないな。掴んでるだけだ。刀は腰に差しているのか?ほぼ立ってるぞ。どういう差し方だ?そんな考えをしながら少女を観察していると、少女の方から話しかけてきた。

 

「こんにちは」

「あぁ、こんにちは。いい天気だね」

「チーッス。刀、カッチョイっすね!」

「うん、ありがとう。ところであなた達海賊?」

「ん?そうだが、どうしてそれを?」

「そう。じゃあ、よろしくね」

 

は?よろしくって何を…っ!?

 

極夜・一閃(きょくや・いっせん)

「なっ!?」

 

まさしく一瞬の出来事だった。少女が掴んでいた刀を少し下げたその瞬間、少女はすでに私の眼前にまで迫っていた。そして、いつの間にか抜刀し終わった刀を、私に向けて振り下ろそうとしていた。

 

「くっ、御威加是(おいかぜ)!」

「どえあ!」

 

全身に風が駆け巡るのを感じながら少女の斬撃を避けようとするが、あまりにも突然だったため、無理やりな体勢で体を投げながら隣にいた部下を遠くに投げ飛ばす。くっ、御威加是は技名叫ばないのに、つい叫んでしまった。恥ずかしい!

 

「あれ、よけた?凄いね、あなた。初めてだよ」

「そうかい、それは嬉しいね」

「じゃあ、続いていくね?白夜・一文字(びゃくや・いちもんじ)

「いや、来なくて良いんだが?」

 

少女が刀を大きく振ると、そこから巨大な斬撃が放たれ、こちらに飛んでくる。当たったら死ぬな…速さはそこまで速くないな。さっと避け、部下に言う。

 

「君、船に戻り皆と待機していろ」

「う、ウース!センチョー!」

 

最後まで軽い部下が走っていくのを流し見ながら、少女に向け、こちらも剣を振るう。

 

「アルス・ユリアナ――刃矢天(はやて)!」

「おお、すごい。なにこれ?」

 

私が振った剣から数本の小さな風の刃が少女に向けて飛んでいくが、少女は何の苦にもせず避け、ただ砂浜を斬り裂くだけだった。ほんとに凄いと思ってるのか、こいつ?

 

「これ、剣術じゃないよね。なにこれ?」

「いや、言うわけがないだろう。カゼカゼの実の能力さ」

「あ、言ってくれるんだ?」

「まあね」

 

別に言ったって問題はないだろう、この場合は。それより何だ、この少女は?全く殺気がないぞ。こんなに襲いかかっているのに。今こうやって考えている時も、こちらに向かって凄い踏み込みをしてくる。怖すぎだろう…。

 

極天・一閃(きょくてん・いっせん)

「く、本当に何だい君は!?」

 

最初の奇襲の時のような凄まじい踏み込みで、少女が一瞬で私の懐まで迫り、斬りかかった。なんとか空に飛んでこれも避けたが、凄まじい速さだ。御威加是による強化がなかったら、とっくに体が半分になっていたな。

 

「おお、これも避けた。あなた本当に凄いよ」

「そうかい、それはとても嬉しいね!アルス・ユリアナ――過舞立(かまいたち)!」

「お、じゃこっちも白夜・一文字(びゃくや・いちもんじ)

 

私が振るった剣から放たれた風の斬撃と少女の巨大な斬撃がぶつかり、激しい衝撃波とともに相殺される。周りに吹き荒れる砂を風で飛ばし、少女を探す。見えなくても()()()が、この少女はしっかり視認しておかないとどうなるかわからない。砂が飛ばされ、その向こうに現れた少女はこちらを見ながら笑っていた。楽しそうで何よりだ。一応、それなりに威力を込めたつもりなんだが…このままでは埒が明かない。そもそもなんでこの少女は私に斬りかかってくるんだ?

 

「君、質問だが。どうして私に戦いを?」

「どうしてって、だってあなた海賊でしょ?わたし、この街を襲う海賊を狩っているの」

 

狩ってるって…表現が物騒だな。だが「襲う」か。なら、もしかしたら……

 

「少し良いかな。私たちはこの街を襲いに来たわけではないんだ。ただ、補給をしに来ただけさ」

「あれ、そうなの?」

「そうさ!だから、別に私と戦う理由はないのではないか?」

「でもあなたが嘘をついているかも知れないよ?」

「そんなことはない!ほら、見給え。その証拠に私の部下達は皆、船で大人しく居るだろう?略奪だなんてとんでもない!」

 

そう言って船に視線を向けると部下達が手を振っていた。呑気だな彼奴等…私も適当に手を振り返してやった。

 

「あ、ホントだ。じゃあ、嘘ついてない?」

「そうとも!つまり私達には戦う理由がないわけだ。だから、刀を仕舞ってくれ。私はすでに仕舞ったぞ」

「むう、仕方ないかぁ。わかった」

 

そしてようやく少女は刀を仕舞い、この戦いを終えることが出来た。よし、勝ったぜ。

 

「ふー。君、強いね。名前は?私の名前はエルツ・J・ユリウスだ。よろしく頼む」

「わたし、ライラ。よろしく」

 

…私が言うことではないが、この少女…ライラ、よくさっきまで戦った人によろしくとか言えるな。私が言うことじゃないが。まあ、色々あったが、すべて終わったことだ。さっさと補給を済ませよう。船の部下達に降りてこいと伝え、少女を見る。

 

「君、ライラと言ったな。これから何を?」

「んー、そうだ。あなたが嘘ついてないか見張る」

「見張るって…まあ、良いさ」

「センチョー!無事スッカー!」

 

部下達が船から降りてこちらに来ながら私の心配をしている。どうやら斬撃の余波が届いたりはしなかったようだな。

 

「ああ、無事さ。それより君達、補給の続きを頼むよ」

「ウース!センチョー!無事で何よりっす!補給行ってくるっす!」

「ああ、滑って流されないようにな」

 

いつまでも軽い部下を見送って、横にいるライラに目を向け、少し考えて話しかける。

 

「ライラ、少し良いかな?聞きたいことがあるんだが」

「うん?いいよ、なに?」

「どうしてこの街の守りを?」

「?わたし、守ってないよ?」

「は?何を言っている。言ったじゃないか、この街を襲う海賊を狩っていると」

「うん、そうだよ。でも別に街を守ってるわけじゃないよ?」

 

???…どういうことだ?

 

「わたしがやっているのは街を襲ってくる海賊を狩ること。街を守るのじゃないの」

「つまり、ライラは海賊を狩るのが目的で、別に街を守りたいわけじゃないというのか?」

「うん、そう言ってる」

 

いや、なんでだよ。そこは普通逆だろうに。

 

「理由を聞いても?」

「特にないよ?強いて言うなら…腕試し?」

「…腕試し?」

「うん。わたし、自分がどれくらい強いのか気になるから、だから海賊を狩ってたの。海賊って強いでしょ?」

「まあ、一般人よりは強いだろう。だが、そうか…なら、別に海賊だから狩ってたわけじゃなく、強い相手と戦いたいから襲ってくる海賊を狩っていたと?つまり、向こうから襲ってくるなら、強ければ誰でも良かったと?」

「うん、そう言ってる」

 

なるほどーそうかーうんうん。良いことを聞いた。これはチャンスだな。

 

「ライラ、提案だが。私の船に乗らないか?」

「え?あなたの船に?わたしが?」

「そう、そう言ってるよ。君に一緒に来て欲しいんだ」

「うーん、でも…」

「まあ、聞いてくれライラ。実は今、このサウスブルーでは海賊の活動が殆どなくなっている」

「えっそうなの?どうして?」

「簡単さ。今、この海には海軍本部の少将が一人入っている。それも軍艦を3隻も連れてな」

「ほん…ぶ?」

 

そこかよ…。どうやら、そういったことにはあまり興味が無さそうだな。仕方ない、少し説明しよう。

 

簡単に言うと、この海の海軍、つまり支部の海軍より偉いのが本部の海軍だ。で、その中でも偉いのが少将。その少将が軍艦を3隻も連れて来たんだ。そりゃ、木っ端海賊は息を潜める。おまけに、あの少将、なかなかのようで、王国周辺を哨戒しながら周りの海賊を捕まえている。おかげで、この海は今、近年稀に見る平和な状態だ。この前まではキッドがうざったいほど騒いでたが、彼奴もグランドラインに行ってる。おかげで最近は鬱陶しいちょっかいもなく、助かっている。

 

「とにかく、そういう状況なので、この海にはもう私達以外に目ぼしい海賊はいないさ」

「ええっそうなの!うーん、どうしよ…」

 

そう伝えるとライラは驚いた後、困った顔をしながらチラッと私を見て刀に手を添える。やめてよね?

 

「そこでだ!ライラ、繰り返すが私達と共に来ないか?」

「むう…確かに、最近海賊も少なかったしな…」

「そうだろう!それに、今私達はグランドラインに向かう準備をしている。興味ないか、グランドラインの強者に」

「ある」

 

即答!ま、まあ、分かっていたが。なら、あと一押し。

 

「それに、何より私達は海賊。当然、海軍が捕まえるために追いかけて来ることもある」

「お?」

「つまりだ。私達と一緒に来れば海軍の強い者とも戦えるということだぞ」

「!うん、行く!わたし、海賊になる、よろしく!」

「ああ、こちらこそよろしく。歓迎するよ、ライラ」

 

フッ、チョロいぜ。

ライラの力は凄まじい。これから先、きっと頼りになるだろう。まずは、ライラに船の案内をしよう。この船、大きいから最初はよく迷う。注意しないとな。

 

「おおー、ひろーい。あと、豪華」

「だろう?自慢の船さ。さ、着いてきてくれ。君の部屋を案内しよう」

「個室なの?いいの?」

「いいとも。ライラの実力なら当然のことさ」

「でも、わたし、刀以外出来ることなにもないよ?」

「構わないよ。ライラの仕事は強い相手と戦うこと。それだけさ」

「あ、それなら大丈夫。わたし、得意だよ」

 

知ってる。だから誘ったし。

そんなこんなでライラに部屋を案内して、再び甲板に出て部下達に補給の確認をしようとした瞬間、空から大きく羽ばたく音がした。この音は、戻ったのか。

 

「戻ったか、ルッツ」

「はい、只今戻りました。隊長」

「うん?誰、あなた?」

 

空を見上げると、そこには私の左腕と言える者、ルッツが大きな黒い翼を羽ばたいていた。

 

 

 

 

 




ライラの設定。刀周りは本編で描写すると、だるくなるのでここに載せます。

ハリリ・ライラ(Hariri Laila)
役職:唯の戦闘員
年齢:18歳
体格:166cm・65kg
外見:ローズブラウンのアップスタイルの髪・ローズゴールドの瞳
イメージカラー:ローズ・白
二人目の仲間

武装:紫雲(大太刀・業物)
全長:160cm(柄を含めた長さ)白銀色に薄紫の光沢がある刀身。柄はローズブラウン、鞘は灰白色。

普段の刀の差し方
刀を背中ではなく、左の腰に差す。この時、後ろに深く傾けて差すのではなく、刀を縦向きに腰に差す。柄は左肩の前を通って頭の横まで来る。これがデフォルト。

ライラの居合
普段の差し方のまま、左手で鯉口を切りながら右足を前方に大きく踏み出し、腰を下ろす。この時、体は横を向く。そして、左手で鞘を後ろに深く下げ、右手で抜刀を行う。

本編に出た技
白夜・一文字(びゃくや・いちもんじ)
刀を大きく振り巨大で強力な斬撃を飛ばす技。威力が高く、範囲も広い。

極夜・一閃(きょくや・いっせん)
居合の動作の中で、右足を深く踏み込むと同時に一瞬で相手に近づき、抜刀して一閃する技。踏み込む速さは尋常ではなく、ライラ特有の居合術と合わさり奇襲性に優れている。

極天・一閃(きょくてん・いっせん)
抜刀した状態で相手に一瞬で踏み込み一閃する技。連続での使用も可能。
強い踏み込みを必要とするため、足場が悪い場所では少し困る。それでも使用可能なあたりさすがライラ。



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