「フー、ボクの美しさは相変わらずだネェ。いや、違ったっカ。昨日のボクより、さらに美しくなっていル!ああ、申し訳ないヨ。この世界はボクという存在のせいで、美しいという言葉が限定されてしまっタ!ああ、ボクはなんて罪深いんだろウ」
ウザっ!うざすぎる。なにこれ?どういう生き物?なんでこんなのと一緒にしなくてはならないのよ。センゴク元帥は何を思ってこんなのを推薦したの?もしかして元帥もこんな感じ?うっわ、嫌すぎる。
「あれ?どうしたんだイ、アンナ?眉間にシワを寄せテ。ああ。そうか!ボクが眩しすぎて目が眩んだのカ!ああ、済まないヨ。アンナ、どうかボクの美しさを許してくレ。だが、済まなイ。ボクの美しさは抑え込むことが不可能なんダ!」
「……はあ、もうどうでもいい。それで、ナル野郎。脳筋野郎はどうしたのよ。今日は全員で話し合うんじゃなかったの?」
「ああ、ヒューズかい。いつものように彼は不参加だヨ。きっと、ボクの美しさを直視できなかったのだろう。仕方ないネ」
「……もう、それでいいわよ。脳筋野郎はナル野郎を正面から見れなくて不参加、と報告書に書いとくわ」
あの、クソ脳筋野郎、あとで文句言ったって無駄だから。自業自得、会議に参加しないやつが悪いわ。どうせ脳筋野郎は、報告書だって読まないしバレやしない。
「それで、ティネス少将からの報告は?」
「ああ、ちょうど届いたばっかりだヨ。ティネスは自分の仕事をちゃんと全うしたらしいネ。流石だヨ。詳しい内容はこの報告書を読むと良いヨ」
「そう。なら、ようやく私達の仕事ね」
ナル野郎から渡された報告書を読んでみる。……なるほど、ジェイド海賊団は現在リバースマウンテンへ向かう途中。その速さは凄まじく、リバースマウンテンまでは1日もかからないと予想される。『ジェイド』の能力ね…やはり、厄介だわ。私の能力で追跡は可能だろうけど、この速さだとただ後を追うだけでは振り切られるわ。予定通り待ち伏せ以外に方法はなさそう。
「では、作戦当日の陣形をもう一度確かめるわ。良いわね、ナル野郎」
「勿論、いいとモ。ボクが考えたこの美しい陣形について存分に語り合オウ!」
「……脳筋野郎が羨ましくなったわ。…はあ、良いわ。まず最初は全体の数と陣形を頼むわ」
「ああ、聞いてくレ。ボクの美しい声を!まず、この待ち伏せに参加する総戦力はボクとアンナとヒューズの3人の少将。ティネスは合流せず、サウスブルーでそのまま待機サ」
ナル野郎のうざ声を適当に流しながら、必要な情報だけ聞き取る。こちらの総戦力は少将3人と軍艦7隻。当日は私の能力で『ジェイド』の向かう先を把握し、その先に待ち伏せをする。その時の陣形はU字陣形。この時U字の底の部分は敵船の正面に位置し、両の縦は敵船の両脇を防ぐ布陣。各少将はこの両の縦に配置される。理由はジェイド海賊団が逃走に長けているため。敵が左右のどちらかに逃走する場合、その方角に位置する少将がそれに対処。敵が速さを活かし正面突破を狙う場合は両の縦で挟み撃ちを狙う。合理的ね、異論はないわ。
そして、各少将の詳細な配置。まず、脳筋野郎は片方の縦の端に配置。そこに逃げてきたら噛みつけ、と言う意図。あいつはバカで短気だから、細かい指示は意味ないしね。
「彼に対する一番の指示は『見つけたら、噛みつけ』だネ」
次に私。私の追跡能力はこの作戦の要。だが、私の戦闘力は高くない。それを考慮し、なおかつ私の方角に逃げてくる場合にも追跡が可能な、遠すぎず近すぎない縦の中央に配置する。
「あと、ヒューズはキミを守りながら戦うなんて不可能だから、彼と同じ列じゃダメだネ」
とのことなので、私は反対側に配置。合理的だわ。
そして、最後。ナル野郎は私と同じ縦列の底側に配置。敵がこちら側に逃走する場合、ナル野郎は飛行が可能なため端側に移動が可能。中央突破を狙う場合、そのまま敵船の前を防ぐ。もし、敵が予想以上の戦力を持っていても、ナル野郎なら脳筋野郎が来るまでは十分止められる。こちらも異論はない。悔しいけど、やっぱ優秀ね……さっきから聞こえる、うざい自画自賛さえなければ、良い同僚なのに…。
※布陣の簡単なイメージ
船(中央)
船 船(ウィース)
船 船(アンナ)
(ヒューズ)船 船
敵
※これ以降、どちらの陣営でもヒューズの縦を左翼、ウィースの縦を右翼と記す。
ようやく長ったらしく、うざったらしい自慢混ぜの作戦説明が終わる。はあ、本当にうざい。
「会議はおわり?じゃあ、私はもう帰るわ」
「おや、どうしたんだい。早いじゃないカ?ボクの美しさは、まだ語り始めたばかりだヨ?」
だから帰るのよ。もう、今日は声も聞きたくないわ。
「フッ、照れちゃっテ☆ボクの美しさを聞く以上に大事なことなんてないヨ?」
「うっざ。あるわよ、大事な仕事が。これからイメージなのよ」
「イメージ?ああ、なるほど!ボクの美しさ――」
「違うわよ。ジェイドよ、ジェイド」
「――を、うん?ジェイド?ああ、作戦のために作戦時の――」
「ジェイドのイメージをするのよ。彼が今何をしているか、何を考えているか、今日のご飯、普段の生活、趣味、そういったことをイメージするの。追跡の基本よ」
「――……あー、そうかい。ガンバッテ」
何よ。突然静かになって?気持ち悪いわね。まあ、いいわ。さっさと帰って、ジェイドのイメージをしましょ。
「ええ。それじゃ、私はもう行くわ」
「あー、アンナ。一つだけ言わせてもらうヨ………キミ、少し気持ち悪いヨ?」
「貴方にだけは言われたくないわよ!」
何なのよ!こいつは!うざいくせに!ちょっとイメージするくらい、何が気持ち悪いのよ!ほんとっ意味わかんない!
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「なるほど、イレーナはヒトヒトの実の能力者だったのか」
しかも、幻獣種のバンシー。へえ、すごーい。だから、若作りなのか。おー、色々出来るんだな。
「幽霊達を従えているのは、その力のおかげなのか?」
「うむ。いや、正確には少し違うが、概ねその通りじゃ」
ここはリバースマウンテンの入口付近。イレーナが船に加わった日はそのまま準備に使い、今はその次の日の夜。1日中、船を走らせてなんとか着いた。私が頑張ったおかげと言っても過言じゃない。まあ、着いたのが夜なので行くのは明日にしたけど。今はグランドラインでの海軍との衝突を考えてイレーナの能力について聞いている。
「イレーナ、兵の指揮は?」
「無論、出来るぞ。経験もまたあるぞ」
「頼もしいね。イレーナにはルッツの次の指揮官を任せるよ。戦いの中で私とルッツの両方が指揮を執れない状況なら、その時はイレーナに任せる」
「うむ、構わん。妾に任せよ」
助かる。これでいざという時、私とルッツのどちらかが船に居続ける必要がなくなった。今までは船の指揮のため、ルッツは前線に出る機会が少なかったからね。今回、予測される艦隊戦ならルッツの能力は必須と言える。
「ルッツ、心の準備はどうだ?ようやく海軍に君の能力を見せる機会が出来たぞ」
「…ええ、隊長。少し緊張しますね。なにせ私自身この力にいまだ慣れていないので」
「そうか、それについて私からは何も言ってあげられない。私から言えることはただ一つ、信じてるぞ、ルッツ」
「……ええ、勿論です。隊長の信頼に応えてみせます」
まだ緊張が見えるが問題ないだろう。ルッツのことだ、いざとなったらやってくれる。
「あとは、ライラだけど……」
「……ん…」
寝てるな。この部屋に入ってきた途端、瞑想すると言ってそれからずっと寝てる。ここ、私の部屋なんだが。まあ、良いよ。ライラはそれで。そう思いながら、横に座ってるライラの横顔を見てみる。うーん、可愛いね。到底、初見の相手によろしく居合をかましたとは思えない。……ちょっと、撫でてみよ。おお、滑らかだね。ローズブラウンの髪はとても撫で心地が良くて、ずっと撫でていたい。
「……隊長?」
「うん?どうした、ルッツ?」
「いえ、こちらのセリフです。寝てる女性を勝手に触るなど…」
「いや、ライラ起きてるよ。というかさっき起きた」
「え?」
そう、ライラ、なんか起きてるよね。さっき気づいた。
「なあ?ライラ」
「……うん」
「なんか、さっき見てる時、起きたみたいでね。どうしたの?そのまま起きれば良いのに」
「…なんか、エルツが見てるなーって気がして。起きていいのか迷っちゃった」
気にしなくて良いのに。ライラが起きたので、もうちょっとだけ撫でた後、少し名残惜しいが手を離す。そしたら、ライラがこちらを見て言った。
「お早う、エルツ」
「はは、もう夜だよ。お早う、ライラ」
「あれ、そうなの?」
本当にライラは時々、ただの少女にしか見えない時がある。あの時のことが嘘のように。いや、こういう娘だからこそ、ああやって戦えるのか。殺気などなく、大義もない、真っ白な戦いが。そう思ったのはどうやら私だけではないようで、イレーナがライラに話しかけてきた。
「ふふふ、おんしは本当に愛らしいのう、ライラ。まるで、無垢な花のようじゃ。おんしが戦う姿、期待しておるぞ」
「…?よく解らないけど、戦えばいいの?いいよ、それならわたし得意だから」
そう言って、ライラはまるで今にでも戦おうとするが、今じゃないんだよな…敵も居ないんだよ。ほら、刀仕舞って。…私を見たところで戦わないよ?
「残念」
「まあまあ、近い内に戦いがありそうだから、その時のために取っといて」
そう言って、ライラを宥めた。ルッツはなんか困惑している。まあ、いずれ分かるよ。ライラがどういう娘なのかは。
「さあ、明日はいよいよグランドラインだ。今日はもう寝ようぜ」
そう言って、皆を自分達の部屋に帰した。ライラはちょっと渋ったけど帰ってくれた。ここで寝るつもりだったの??この娘の基準点をまだ把握しきれてないのかもしれない。ま、何はともあれだ。私も寝よ。おやすみ―
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はい、朝です。朝日が昇り始めた時間。部下達を起こし船を駆る。目標はリバースマウンテン。そして、その向こうグランドライン。さあ、いよいよだぜ。
「おー、本当に船が山を登ってる!すごーい!」
「ああ。凄いぞ、ライラ!しかも速い!ワッハッハー!風が気持ちいいぜ!」
「隊長、はしゃぎすぎです」
ルッツがなんか言ってるが、気にしない。これを我慢するなんてありえない。それが出来るのはルッツみたいな枯れたやつだけだ。
「おおー、エルツ、見て!もうすぐ頂上だよ!」
「おお、良いぞー!もっと、速く行くぞー!」
「わー!はやーい!すごーい!」
「ちょっ、隊長、ダメです!
横でルッツがずっとなんか言ってるが、やはり気にしない。これを我慢するなどありえない。
「まったく、おんしら騒がしいぞ。せっかくの朝の紅茶が楽しめないであろう」
「おー、イレーナか。見ろよ!今、この船飛んでるぞ!すごくね!?」
「ほう、これはなかなか。珍しい下り方だのう」
「いや!絶対、これ、下りじゃないです!落ちてるだけですよね!?」
ルッツが悲鳴をあげているが気にしない。着地は自信ある。何の問題もない。つまり何も心配せず楽しんで良いわけだ!!フー!!落ちてる船にさらに風を吹かせ、前へ飛ばす。周りから悲鳴が聞こえるが、気にしない。隣のライラを見ろよ。めっちゃはしゃいているぞ。こんな顔されちゃさらに飛ばすしかないよね?はい、ドーン。フー、気っ持ちいいー!!!
既に、下り坂どころかリバースマウンテンを抜けたが、いまだ船は空にある。このまま空島行っちゃう?どこにいるのか知らねえけど。なんて、考えていたときだ。
「む、あれは?」
「―…隊長、気をつけてください」
「おおー、でっかーい」
リバースマウンテンを飛んで越え、海に落ちる途中。突然、海から巨大な何かが出てきた。なんだ、あれは?大きすぎる。クジラ?だが、これは…あまりにも異質だ。そのクジラらしき生き物の頭の部分にある、不気味な文様。あれは…一体何だ?一見ドクロのようにも見えるが、その姿はどこか歪んでいて、恐ろしくも見える。くっ、一体あれは何だ!?
「グランドライン……常識が通じない海とは聞いたが…まさか、生き物すらこうとは…」
「ええ、油断なりませんね。隊長、部下達をいつでも動けるように言っておきます。あの、恐ろしき文様のクジラが、どう動いても対応できるように」
「ああ、任せたぞ、ルッツ」
くっ、これが、グランドライン!油断していたつもりはなかったが…これほどに、不気味な生き物がいるとは…一体、なんだ。あの呪われそうな文様はっ。まさか、これがグランドラインでは一般なのか!?
「くっ、グランドライン…恐ろしき海…!」
だが、どんなに恐ろしき生き物があろうが、私達の航海が止まることはない…!
さあ、来いよ!グランドライン!
「………そち、さては馬鹿じゃな」
後書き。出た技と、船の設定。
あと、アンナのイメージは能力とか関係ないです。ただの趣味ですね!
大型ガレオン・全長80メートル・主な材質はアダム・大砲計58門
一般船員220名。幹部を含めた総乗員数は別途。船員は大半がモブキャラ。
220人の内、70人は戦闘に参加せず操艦にだけ当たる。
残る150人は護衛部隊として乗船してる。戦時はユリウスやルッツの指揮に従って戦う。平時は艦内の各自の仕事に当たる。
建造された経緯は王国がユリウスの海賊活動を支援するため新造した。
名目は翡翠輸送船の護衛。それをユリウスが奪い自らの船にする、というのが筋書き。
船員220名は皆、王国から選ばれた信頼できるモノ達。
大きな船だけに幹部勢はみんな自室を持っている。モブキャラは自室など無い。
イレーナが合流した時彼女が率いる幽霊たちも船に乗った。
航海用技。風を起こし航海を支援する技。
戦闘技ではなく航海用の能力応用技。
技名は設定上だけ存在し、作中で出る場合は殆ど無い。