【アリスルール・オンライン】18歳童貞だけど現実の才能で決まるスキルが【魅了】だった件。しかもこのスキルなんかリアルの女友達にも効いてるけどバグ? 作:ひきさん
翌朝。再びゲームを起動した俺は、学生寮の自室にいた。
研究机の前に座った俺は、錬金魔術のスキルツリーを開く。
中級試験まであと二日。捕まえる道具を作ると言ったのは俺である以上、仕事は果たさねばなるまい。
錬金魔術のスキルツリーには、習得済みの【錬金料理】【生命錬金】に加え、未解放の【錬金調合】【錬金精錬】といった錬金スキル、【料理マスタリー】【調合マスタリー】【精錬マスタリー】といったパッシブスキル、必要系統不足により習得不可能となっている【物質錬金】【錬金数秘】などが表示されていた。
錬金魔術というのは、どうやらスキルツリーを解放していくと作れる物が増えていくらしい。
料理、調合、精錬、生命。ジャンルごとに錬金スキルというものがあり、それをスキルツリーで解放していかないと、まともに何も作れない。
そして、スキルツリーの解放条件には、様々な魔法材料の消費のほか、特定の≪式≫の保有や理論書の読破などのフラグ条件があるようだ。
火咲が「式を集めないと弱い」と言っていたのは、こういう意味だったのか。
俺が今使えるのは、【錬金料理】と、【生命錬金】だけ。
【生命錬金】は、生命魔術と一緒に取ったからか最初から解放されていたレアスキルだが、素材の欄が全部空欄で、何を作れるのかすら分からない。宝の持ち腐れとはこのことだ。
というわけで、まずは料理からである。
錬金術師の初仕事が飯作りとは、これいかに?
いや、今はいいとしよう。
このゲームの錬金術師はコック業もする。
そういうロールプレイでいこう。
素材は、昨日火咲から預かった≪巨大肉≫と、同じく火咲が買ってきた≪香草≫。ベビーグリフォンをテイムするために買って、結局殴り殺したせいで使わなかった代物と、魔物が好むとNPC商人が喋っていたらしい香草である。
チュートリアルによれば、錬金の基本は、≪材料≫に≪錬金意図≫を込めることであるそうだ。
≪材料≫は、≪巨大肉≫、≪香草≫。
≪錬金意図≫には、「魔物を強く引き寄せて、抗いがたくする料理」。
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≪魔物寄せの香草肉≫
材料:魔力1、巨大肉、香草
周囲の魔物を匂いで引き寄せる。食べた魔物は満腹になる。
≪巨大肉≫、≪香草≫を消費しました!
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できた。そして、焼けた。
研究机の脇で肉が焼ける音がして、部屋の中に、とんでもなくいい匂いが広がっていく。
うまそう、という言葉では足りない。腹の底を直接掴まれるような匂いだ。
「ご主人様っ♡ わたしも引き寄せられちゃいます♡ 食べていいですかぁ♡」
「ダメに決まってるだろ!」
その時、隣の部屋の壁が、どんっと鳴った。
「なんか隣からすっっっごい匂いするんだけど!? なにこれ、おなか減る! ずるい!」
壁を突き破る勢いで火咲が入ってくる。鼻が完全に肉の方を向いている。
「魔物寄せの料理を作ったんだよ」
「魔物寄せ!? なんでわたしが寄せられてるの!?」
「知らん」
「……これは【魅了】が籠ってると見た!」
「アホか」
火咲は文句なのかなんなのか良く分からないことを言いながら、端を一切れ千切って口に入れた。
「……めっちゃうまいじゃん!」
「錬金料理だからな」
「わたしも一口いただいちゃいます♡」
我慢できなかったらしくベルも火咲よりだいぶ大きい一口を食す。これくらいは見逃してやるか。
まあ、とりあえず――
俺の錬金術師ロールプレイの第一歩は、無事成功したようだ。
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問題は、ここからだった。
料理で引き寄せるところまではいい。次は、引き寄せた魔物を動けなくする罠だ。
罠を作るなら、精錬である。
スキルツリーの【錬金精錬】の所を開く。
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【錬金精錬】:未解放
解放条件:
・フラグ:錬金炉の理論書の読破(0/1)
・≪鉄鉱石≫(0/5)
・≪銅鉱石≫(0/5)
・式≪融解≫
・式≪冷却≫
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「錬金炉の理論書と鉄鉱石5個と銅鉱石5個と≪融解≫と≪冷却≫の式とか必要なもの多すぎだろ! 一体どこにあるんだ……」
「理論書は錬金魔術のキャンパスだと思う。第4キャンパスだよ。鉄鉱石と銅鉱石は、掲示板だと5層の≪魔鉄鉱山≫で採掘だね。店でも買えるけどまあまあ高い」
火咲は伊達にβを遊んでいないようで、俺の問いに即答した。
「≪融解≫の式はちょっと分からないけど攻略ウィキになんかあるかも。≪冷却≫の式は、≪火炎≫の式をくれる第3層の魔導師のおじいさんがイベントでくれたはず」
「絶望的状況だな。それだけで1日2日潰れそうだ」
「試験は明後日だよ?」
俺はスキルツリーの画面を閉じて、別の画面を開いた。プレイヤーポイントのボーナス一覧である。
ゲーム開始から一度も選ばず、9ポイントまで温存してきたプレイヤーポイント。
そのボーナス一覧の中に、それはあった。
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≪スキルツリーの任意の初級ノードを強制解放する≫ 1PP
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「……」
「え、プレイヤーポイント使うの?」
「時間は今、貴重な資源だ。1点で俺は時間を買うんだ」
「初めてを可愛い子を捕まえるための罠に使うんですね♡」
「そのどうしようもない言い方をやめろ」
言ってから、思った。
あれだけ悩んで温存したものを、罠のために使う。傍から見ればちょっと馬鹿かもしれない。
だが、俺は錬金術師のロールプレイをしに来たのだ。錬金術師が基本的な行動すらできないままでは、話にならない。
選択。
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<プレイヤーポイントを1消費しました!>
【錬金精錬】を強制解放しました!
残りプレイヤーポイント:8
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使ってしまった。
やってしまえば、あっさりしたものだ。
「で、精錬する素材はあるの?」
「……ない」
「ないの!?」
鉄鉱石がないから精錬が解放できなかったのだ。解放しても、鉄がない。当然である。
火咲が、自分の手首を見た。
「……鉄環で使った鉄鉱石が2つ余ってるけど、しょうがないからあげるよ。いっとくけど、これ安くないんだからねっ!」
火咲が渋々差し出した≪鉄鉱石≫2つを受け取って、研究机に戻る。
≪材料≫は≪鉄鉱石≫と≪魔物寄せの香草肉≫。
≪錬金意図≫は「魔物をいい匂いで引き寄せて、捕らえる罠」
罠の上に置いた料理に引き寄せられた魔物を捕らえる、古典的な罠をイメージした。
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≪満腹の罠:魔物寄せの香草肉≫
材料:魔力1、鉄鉱石、料理
罠の上の料理を食べた魔物1体を、捕らえる。
≪鉄鉱石≫、≪魔物寄せの香草肉≫を消費しました
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できた。二つの鉄環が、平たい鉄の輪になって机の上に転がっている。
「おーできたね。貴重なプレイヤーポイントを代償にしてるけど」
「いいんだ。俺は一刻も早く錬金術師ロールプレイがしたかったんだ」
犠牲無くして前進は得られない。そういう風に、世の中はできているんだ。
「一度食べたら胃袋を掴まれちゃうんですね♡ ご主人様、それはベルへのプロポーズですかっ♡」
――この馬鹿妖精を黙らせる魔道具の作成は、そろそろ真面目に検討した方がいいかもしれないな。