錬金術師ロールプレイするつもりでVRMMO始めたけど、現実の才能を反映したスキルが【魅了】だった件。しかもこのスキルなんかリアルの女友達に効いてるんだがバグ? 作:ひきさん
試験は、無事終わった。
上級魔術師への飛び級合格という、最高の形で。
「次の方どうぞ……肩、左腕、背中の火傷は……大体もう治っているようですね。保護のため、包帯を巻きますね」
11層に用意された救護所で、俺は白衣のNPCに検査を受け、保護の包帯を巻かれていた。
「痛っ……!」
少し痛い、どころではない痛みだった。
すでに傷は治っているはずだ。だが、それでも結構ダメージは深かったらしい。
「上級って、どうなるんだろうねっ?」
横で治療を眺めている火咲が、そんなことを言って楽しそうにしている。
「ま、行ってみれば分かるだろ」
「第100層まで行けるみたいだけどさー、他にも色々変化あるのかなっ」
そして、その隣には――真っ赤な踊り子が立っている。
真っ赤な布が巻かれた露出の多い衣装に、褐色の肌、腰まで伸ばされた深紅の髪。
「……その格好、ずっとそれなのか?」
いかんせん、この少々えっちすぎる恰好は童貞には刺激が強い。
「これが我である」
踊り子は、意味深な表情を浮かべ、俺だけを見つめている。
いや、というよりは――
――俺を見ることをやめられない、という表情をしていた。
【魅了】をかけたのだから、当然かもしれない。
もちろんそうなのだが、あのとんでもなく強かったドラゴンが俺を見つめて興奮したように頬を赤らめている様子は、落ち着かない。
――と、そこで視界に表示が出てきた。
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<中級試験:≪魔の森のテイム試験≫結果発表!>
東部第86区画 合格チーム:10組
本日、特殊イベントにより上級魔術師へ飛び級したチームは5組15名誕生している!
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「……15人?」
このゲームの初日同接2000万人。
各区画で合格が10組。区画がいくつあるのか分からないが、合格者だけで数万人くらいはいそうだ。
つまり、いわゆる攻略組と呼ばれる連中が、今日、何万人か生まれているはず。
その、頂点に位置する、15人。
そこに、俺たちが、入っている。
「……これ、ヤバくね?」
「ヤバいっ! ヤバいどころじゃないっ! 中級試験の合格者なんて、何万人かいるはずなのに!? その頂点、たった15人のトッププレイヤーに、入っちゃってるんだよっ!」
火咲が俺の肩を掴んでがくがく揺さぶる。包帯のところが痛い。すごく、痛いです。
「なかなかいい報酬がもらえたみたいだね」
ツキトはいつものように、壁にもたれて微笑んでいる。
「これで100層まで……行けるんだね」
「みたいだが、世界が広すぎて全部回れるのはいつの日になるやらって感じだな」
巫女ミナエルが待っている200層までは、まだ半分に過ぎない。
だが、今朝まで、俺たちの行動範囲は10層までに過ぎなかったのだ。
一日の前進量としては、十分すぎるものだろう。
「あのぉ、飛び級の皆さまに、ご連絡したい事項がございます」
試験官のローブを着た女性NPCが入口に現れてそう言った。
「合格者15名の上級魔術師登録手続きを、第30層≪魔法都市シャンドラ≫のキャンパスで明日行っていただきます」
「わかりました、ありがとうございます」
事務的な連絡を済ませたNPCは、静かに去っていった。
それから報酬の分配を、火咲が取り仕切る。
「≪魔術研究素材セット≫はそれぞれ一人1つでいいいよね!」
「まあそうだな」
「僕も異論ないよ」
「鱗はキョウスケに渡そう! 錬金でなんか作ってもらう感じでっ! キンググリフォンの爪と同じ感じだねっ!」
「おっけー」
3枚の≪灼熱竜の鱗≫は、いったん俺の元に預けられた。
ステータスを開いてみると、プレイヤーポイントは13も貯まっていた。
「プレイヤーポイントの使い道は、近いうちに真面目に考えるってことで」
「また言ってるよっ!」
不可逆要素は慎重に使うべき。この考えは変わらない。
――流石にもったいないかな……?
「……最後にこれだね」
火咲が指しているのは、≪灼熱竜の翼≫だった。
「それは我の片翼だ。返せ」
突然、≪ファイアドラゴン≫が、初めて俺以外に対して口を開く。
「……確かにお前の翼ではあるな」
「貴様らが我より引きちぎったものだ」
あのツキトの爆発の後、竜の片翼は根元から吹き飛んでいた。
あの翼が、今回ドロップ品としてアイテムボックスに入っていたわけか。
「もう、ただのアイテムだし、付かないんじゃないか?」
「……」
≪ファイアドラゴン≫は黙った。
黙って、俺を見た。
たしかに魅了はされているはず。だが、その目つきだけは、あの時の竜のまま、圧倒的な威圧感を放っていた。
「……ま、テイムしちゃったしな。戻せるか、試してみるか」
ついつい、そんなことを言ってしまう。
もしかすると、【生命錬金:身体正常化】で戻せるかもしれない。翼が戻れば戦力強化にもなるし、悪くないだろう。
「主よ」
「なんだ?」
「……翼は、主に預ける。治せ」
褐色の頬は、少し赤くなっている。
火咲が、黙って≪灼熱竜の翼≫を俺のアイテムボックスへ移した。
「一つ借りだからねっ?」
火咲もなんだかんだ、甘い奴である。
そういうところが、いい友達なんだよな。
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11層から1層に戻るワープポータルで、問題が発生した。
「主、まさか我をしまう気か?」
「ラミアは仕舞ったし、お前も仕舞わないと」
「蛇ごときと我を一緒にしないでもらおうか」
……まるで従う気がない。
ラミアは素直に俺の中へ戻ったのに、この踊り子ドラゴンは、召喚解除した次の瞬間には俺の隣に立っている。
そういえば、馬鹿妖精もたまに勝手に出てくるよな……
このゲームのテイムモンスターは、そういうものなのか……?
「そういえばお前、名前はあるのか?」
「我は竜だ」
「いや、そうじゃないだろ。お前固有の名だ」
「竜は、竜である。名など無い」
「それじゃ呼びにくいな」
俺は少し考えた。
竜の女性名かー。
「今日からお前の名は、ミスドラだ。どうだ?」
踊り子の動きが、ぴたりと止まった。
「我に、名を……名を、くれたのか……?」
「嫌なら、別の名前でもいいぞ」
「……いや、良かろう。ミスドラ……悪くない名である」
どうやら悪くないネーミングだったらしい。
「きゃっ♡ ご主人様、わたしの時より長く考えましたね♡ 嫉妬してしまいますっ♡」
馬鹿妖精が、いつの間にか俺の肩のあたりを飛んでいた。
「お前はいつでも勝手に出てくるなぁ」
「わたしの時は『じゃあベルで』だけでしたっ♡ 雑にされたのは、わたしだけってことですねっ♡」
「だったらなんなんだ?」
「わたしが一番選ばれし女ってことですよっ♡ きゃっ♡」
本当にこいつの思考は微塵も理解できない。
さて、こうして、ミスドラという名の≪ファイアドラゴン≫が、俺の従魔になった。
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灼熱竜 ≪ミスドラ≫
主専攻:物質魔術
副専攻1:流動魔術
副専攻2:感応魔術
ステータス:
力:128
頑丈:256
素早さ:64
器用:32
精神:128
魔力:256
運:32
耐性・抵抗:
火炎無効
魔術抵抗:全
固有スキル:
エピックスキル【竜王炎舞】
スキル:
エピックスキル【灼熱咆哮】
エピックスキル【灼熱吐息】
エピックスキル【灼熱竜鱗】
レアスキル【飛行】
アンコモンスキル【火炎射出】
アンコモンスキル【流動空気】
アンコモンスキル【感応物質】
コモンスキル【流動地面】
コモンスキル【感応敵意】
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全部2のn乗というNPCらしいふざけたステータスだが、頑丈256は、俺のほぼ十倍である。
「マジで強すぎるな……」
「いやーエピックモンスターはとんでもないね! ベルが可愛く見えちゃうねっ」
「わたしはいつだって一番可愛いんですよっ♡ きゃっ♡」
「魔力256もすごいね。そうそう魔力は切れなさそうだ」
「俺は運くらいしか勝ってないか」
「え? キョウスケの運っていくつなわけっ!?」
「俺の運は、99だ」
「……はぁ!?」
「ふふっ。運99か。ドラゴンを従えてるのも、なんか納得だね」
「ははっ」
「竜を魅了できたのも、運のうちってね」
「何言ってんだ。よく言うだろ? 運も実力のうち、ってな」
なんにせよ、勝利は勝利。気持ちよく余韻に浸らせていただこう。
「こんなに可愛くて強い妖精がついてるのが、何よりご主人様の豪運の証ですねっ♡ 幸せものですねっ♡ きゃっ♡」
「お前はいつだって平常運転だな」
馬鹿妖精に呆れつつも、俺たちは勝利を祝い、笑顔を交わしたのだった――
*****
学生寮の自室に戻ると、当然のようにミスドラもついてきた。
「これが主の寝床か」
ベッドに腰を下ろしたミスドラは、褐色の脚をセクシーに組んで、部屋を見回す。
あの城のようだったドラゴンが、今は俺の部屋にいる。
その竜の視線が、窓で止まった。
「小さいぞ」
「ここは城じゃないからな」
「あら。こんなに狭いのね、あなたの部屋」
今度は召喚解除したはずのラミアが、俺の足元でとぐろを巻いていた。
どいつもこいつも、次々と勝手に出てくるな……
「蛇よ」
「あら、何かしら」
「貴様、先日の戦で、我にその目を向けたな?」
「ええ……よく効いたわ」
「効いてなどおらぬ。ただ、目障りだったから、少しばかり見ただけである」
「ふふっ、それを、効いたと言うのよ」
いま、部屋の温度が確かに上昇したのを感じた。
「ご主人様の前で喧嘩はめっですよっ♡ ご主人様の正妻はいつだって最強カワイイ妖精のベルなんですからっ♡」
今度は馬鹿妖精が宙を羽ばたいた。
「正妻、だと?」
「正妻とは、一番最初に、ご主人様にテイムされた妖精のことを指すのですよっ♡ きゃっ♡」
「本当にお前はろくでもないことしか考えないな」
テイムしたモンスター3体が、学生寮の自室で、俺を挟み睨みあう。
そこへ、ノックもせずに今度は隣の部屋の主が入ってきた。
火咲の登場である。
「なんかさっきからうるさいんだけどっ! 壁が薄いんだから、この初級学生寮はっ!」
火咲は部屋の中を順々に見た。
踊り子。蛇。妖精。そして俺。
少しの間黙ってから、火咲が言った。
「キョウスケ。これ、ハーレムだよっ……!」
「誤解だ」
「きゃっ♡」
積み重なる誤解は、上級魔術師になっても増え続ける一方らしい――