【悲報】錬金術師ロールプレイのつもりでVRMMO始めたのに現実の才能を反映した固有スキルが【魅了】だったんだが。しかもこのスキルなんかリアルの女友達にも効いてるけどバグ?   作:ひきさん

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第24話 ≪雷晶砂漠≫

 教授の説明によれば、卒業試験まで残された猶予は、あと5日。

 

 ――上級魔術師になれた余韻にのんびり浸っている暇はあまりないらしい。

 

 俺たちの行動範囲は第100層まで広がっている。

 だが、このゲームがまだリリース5日目の新作VRMMOであり、β組ですら上級魔術師になったプレイヤーはこれまで居なかったらしい以上、全てのプレイヤーにとって未知の階層が70層もあるというとんでもない現状が今である。

 おそらく、5日の日程をフルに取ったとしても、まともに探索できる階層など、片手で数えられるほどだろう。

 

 どこで素材を集めればいいのか。どんなイベントで、どんな≪式≫が手に入るのか。全てが謎な状況で、やることを決めないといけない。

 

「キョウスケっ! 良さげな階層見つけてきたよっ!」

 

 俺が上級キャンパスの購買で薬草を買い足している間に、NPCから聞き込みを終えてきたらしい火咲が戻ってきた。

 

「もう分かったのか?」

 

「うん! 結論から言うと、33層の≪雷晶砂漠≫が良さそう! ≪雷晶≫っていう貴重な素材が取れて、そこから式を取って雷系の魔術が作れるようになるみたいだし、中央に≪古代宝宮≫っていう迷宮があって、貴重なスキルとか≪式≫とか、宝物が眠ってるらしいよっ!」

 

「宝物かぁ……」

 

「僕も賛成かな。とりあえず動くだけでも、なにかプラスにはなるはずだ。ぼうっとしてるのが一番良くないよ」

 

 ツキトも、先に買い物を終えてこちらに合流していた。

 

 そこで俺は、隣のミスドラを見る。

 

「……その前に、お前の翼を直しておきたいな」

 

 真っ赤な踊り子は、すぐさまこっちを向いた。

 

「主。治すがいい」

 

「まずは、試してみる感じだけどな」

 

「待ちかねたぞ」

 

 ミスドラの翼がもし繋がれば、【飛行】スキルで砂漠の探索も楽になる。そしてなにより、空に島が浮いている≪天空諸島≫で行われる卒業試験の会場では、間違いなく素晴らしい価値を持つだろう。

 

 つまりは、錬金術師の出番である。

 

 

 

 

 *****

 

 

 

 

 第33層≪雷晶砂漠≫は、真っ白なところだった。

 

 見渡す限り、真っ白な砂丘が広がっている。

 そこに点々と、紫色の透き通った結晶が地面から突き出していた。

 

 ――と、空が光った。

 

 稲妻の一撃が、巨大な紫結晶へと落ちる。

 

 撃たれた結晶は、砕けたりせず、むしろ内側からより濃い紫色に輝いた。

 枝分かれした稲妻が、そのまま結晶の中へ閉じ込められる。

 

「あれが、雷晶か……」

 

「うんっ! 魔法材料!」

 

 雷を閉じ込めた鉱石。

 

 ……さっそく、欲しい。

 

「主よ」

 

「分かってる。まずは翼だ」

 

 街中で、あの城みたいなドラゴンを出すわけにもいかないので、翼の修復は砂漠に出てから行うことにしたのだ。

 

「じゃあ、元の姿に戻ってくれ」

 

「離れていろ」

 

 ミスドラの身体が、赤く光り輝く。

 

 光の中から、巨大な頭、真っ赤な鱗を持つ胴体と、強靭な四肢が現れた。

 重みで、白い砂が沈み込む。

 

 ――でかいな。

 

 改めて、そう思う。

 よく俺は、昨日、あんなのと戦ったものだ。

 

 しかし、そこに広がった翼は片方だけだった。

 

 もう片方は、根元から失われている。

 ツキトの一撃を受けた傷跡が、今もはっきりと残っていた。

 

 さて、≪灼熱竜の翼≫をアイテムボックスから取り出す。

 

 砂の上に、巨大な片翼が現れる。

 

「火咲、ちょっと手伝ってくれ」

 

「任せて! ミスドラ、一回寝てくれる? そうそう……【流動地面】!」

 

 横たわったミスドラの傷へ、火咲が地面を動かして翼の根本をくっつける。

 

 次に、≪ブルリア草≫を取り出す。

 

 普通に考えれば、薬草でドラゴンの千切れた翼をくっつけるなど、無茶な話である。

 だが、俺の使うのはレアスキル【生命錬金】の派生スキル。十分に勝機はある。

 

「【生命錬金:身体正常化】!」

 

 薬草が消える。

 

 同時、翼の付け根が、光に包まれた。

 

 裂けた肉が伸びて、離れていた翼を引き寄せる。

 骨が繋がり、その周りを筋肉が覆い、最後に赤い鱗が、傷口を埋めていった。

 

==========

 ≪ミスドラ≫の翼の欠損が正常化されました!

 

 ≪灼熱竜の翼≫、≪ブルリア草≫を消費しました!

==========

 

「おおっ……!」

 

 本当に、繋がってしまった。

 

 ミスドラが起き上がる。

 

 そして、ゆっくりと、翼を動かした。

 一度畳んで、もう一度、いっぱいに広げる。

 

 俺たちをまとめて覆うほどの影が、白い砂の上に落ちた。

 

「動くな」

 

「よかった」

 

「主よ。治ったぞ」

 

 偉そうな声で、ミスドラは同じ内容を繰り返した。

 

 その次の瞬間――

 

 爆発したような音と、強烈な風が吹き荒れた。

 

 ――気付けば赤い竜は、空を飛んでいた。

 

 空高く舞い上がり、両翼を広げ、ゆっくりと旋回する。

 それからまた羽ばたいて、さらに遠くへ。

 

「……すげぇ」

 

 ――なかなか、いい仕事をしたんじゃないか?

 

 しばらく好き勝手に飛び回ってから、やがてミスドラは戻ってきた。

 

「気持ちよかった」

 

「楽しそうだったな」

 

「当然だ。竜にとって空とは家である」

 

 堂々と言い切ってから、竜が首を下げた。

 

「乗れ。この翼で、主を運んでやろう」

 

 目の前で、巨体が低くなる。

 

 ――マジでドラゴンに、乗れてしまうのか!

 

 ファンタジー憧れのシチュエーションの一つに、少々興奮してしまう。

 

「やった! じゃ、わたしも乗せてね」

 

「娘。我は主に言った」

 

「その翼、一つ貸しって言ったでしょ?」

 

「……むぅ」

 

 竜が、黙った。

 

「治すのも、わたし手伝ったよねっ?」

 

「……好きにせよ」

 

 了承を得ると、火咲はさっさと一人で登り始めた。

 

 すごいな。

 

 ドラゴン相手でもまったく遠慮というものがない。

 

 その後へ続こうとしたツキトを、ミスドラが見た。

 

「貴様は、我の翼を吹き飛ばした男。ダメだ」

 

「なに、昨日の敵は今日の友ってのが物語の定番じゃないか」

 

「ミスドラ、こいつも仲間だ。乗せてやってくれ」

 

 俺が頼むと、ミスドラは不機嫌そうに鼻をならした。

 

「……ふん。今回だけは許す。後ろに乗れ」

 

 結構、根に持っているらしい。ただのボスとは思えない感情の作りこみに、改めてこのゲームの底知れないポテンシャルを感じる。

 まあ、翼をあの爆発で吹き飛ばされたのであれば、無理もないが……

 

 

 

 

 *****

 

 

 

 

「うおおおおっ!」

 

 砂漠が、急速に離れていく。

 

 いや、俺たちが上がっているっ!

 

 何もかも、あっという間に遠ざかる。

 巨大だと思っていた雷晶が、遥か小さい。

 

 白い砂丘は、海面のように波打って遥か彼方まで続いていた。

 その中に紫色の≪雷晶≫がいくつも突き出して、あちこちで雷が落ちて、鮮やかに輝く。

 

 すごい眺めだった。

 

「手すり! 手すりが欲しいっ!」

 

「落ちるでないぞ、主よ」

 

「もうちょっとゆっくり曲がれっ!」

 

 そして、俺はミスドラの突起にしがみついていた。

 

 今のミスドラの背中には、椅子も安全ベルトもない。

 竜騎士よろしく格好よく乗り回すことは、できそうもなかった。

 

「あははははっ! これでわたしたちもドラゴンライダーだね、キョウスケっ!」

 

「思ってたのとだいぶ違うけどなっ!」

 

「だね。もう少し気分よく乗りたかったものだよ」

 

 振り返ると、ツキトも普通にしがみついていた。

 

「【流動空気】!」

 

 火咲が魔術を使うと、顔に叩きつけられていた突風が和らいだ。

 

「これなら、ちょっとは景色を楽しめるかなっ?」

 

「助かるわ……」

 

 俺は、ようやく身体を起こした。

 

 ――高いな。

 

 目の前を遮るものは、何一つなかった。

 ミスドラの翼が羽ばたくたびに、砂漠はぐいんと後ろに流れていく。

 

 仮に歩いていたら、いったい何時間かかっただろう。そんな距離が、一瞬で過去になっていく。

 

 たしかに、怖い。

 怖いけど――

 

 ――最高に、楽しいじゃねぇかっ!

 

「ご主人様っ♡ あそこに幸運の予感を感じますっ♡」

 

 俺の肩にちゃっかり掴まっていたベルが、前方を指さす。

 

「お前、いつの間に出てきてたんだ」

 

「ご主人様が竜に乗る以上、わたしがご主人様に乗るのが筋というものですっ♡」

 

「あまりにも意味がわからん」

 

「ご主人様にくっついているのが、一番気持ちいいってことですよっ♡」

 

「ヘンタイっ……!」

 

「誤解だ」

 

 漫才はおいておくとして、ベルが指した場所には、ひときわ大きな雷晶が集まっていた。

 あれを全部、採取できるだろうか。

 

「ミスドラ、あそこへ行こう! ≪雷晶≫を採りたい!」

 

「よかろう」

 

 地面に降りてみると、近くで眺めた雷晶には、細い雷の光が、何本も閉じ込められていた。

 

 内側で、ぱちっと光が跳ねている。

 

 ……これ、触って大丈夫なのか?

 

 少し躊躇したが、結局、紫結晶へ手を触れた。

 

==========

 ≪雷晶≫を採取しました!

==========

 

 無事、アイテムボックスに入る。よかった……

 

「これ、研究したら雷系の≪式≫が手に入るだろうな」

 

「わたしの分もねっ!」

 

「こんなにあるだろ」

 

 俺たちは、雷晶の周囲でしばし採集作業に入った。

 

 これだけあれば、色々と試せるな……

 

 何個も使って魔道具を作ってみるのもいいし、雷の≪式≫が得られるなら――

 

「主」

 

 背後で、ミスドラが声を発した。

 

「敵だ」

 

 次の瞬間、目の前の砂から何かが出て来た。

 

「うわっ!」

 

 俺は素早さ値を活かして反応し、後ろへジャンプした。

 

 直前までいたところに、巨大な尻尾が突き刺さる。

 

 砂の中から出て来たのは、紫色の甲殻を持つサソリだった。

 普通自動車ほどの大きさを持ち、尻尾の先では毒針がばちばちと電気を放っていた。

 

==========

 レアモンスター:≪サンダースコーピオン≫が現れた!

==========

 

 サソリの魔物か!

 

 すぐに、腰から風王剣を抜いて構えた。

 

 サソリが、こちらへ向く。

 

 ――これは、撃ってくるな。

 

「ベル! 回避だ!」

 

「【流動地面】♡」

 

 毒針に光が集まったところで、ベルの【流動地面】で高速回避する。

 その後ろを、尻尾から放たれた紫色の雷が走りまわった。

 

 砂が、弾け飛ぶ。

 

 だが、当たらない。

 

「ベル! そのままサソリに突っ込むぞ!」

 

「【流動地面】♡」

 

 サソリに高速で突っ込みざまに、風王剣で切りかかる。

 サソリは反撃で前腕で攻撃を放つ。

 

 ――が、ミスドラに比べれば、はるかに遅い!

 

 回避し、横を抜けながら腕の付け根へ剣を叩き込む。

 

 巨大な鋏が、砂へ転がる。

 

「よしっ」

 

 斬れるな!

 ちゃんと、攻撃が通るっ!

 

「キョウスケ! 毒針は残そうっ!」

 

「んな余裕あるか?」

 

「あれ絶対いい素材だよ!」

 

 ……まあ、確かに。

 

「【暗殺風刃】!」

 

 振り下ろされる尻尾をいったん避けて、もう一度踏み込もうとしたところで、その尻尾が火咲に切り落とされた。

 俺も負けずに、頭と胴体の境目に風王剣を放つ。

 

 真空の刃が、サソリの命を断ち切った。

 

==========

 <≪サンダースコーピオン≫を討伐しました!>

 

 ≪雷蠍の甲殻≫がドロップしました!

 ≪雷蠍の毒針≫がドロップしました!

==========

 

「……楽勝だったな」

 

「いいね! 錬金術師というよりは魔法剣士って感じだけど!」

 

「うるさいなっ! まだ俺の錬金術師ロールプレイは始まったばかりなんだ」

 

「いやー、普通の敵だと僕の出番がないね」

 

 出番のなかったツキトが、オーブを片手にそう言った。

 

「お前がやると素材ごと吹き飛ぶしな」

 

「それに、毎回撃ってたらあっという間に魔力切れだ」

 

 俺は、手に入れた毒針を見て、ふと思いついたことがあった。

 

 雷晶の中には、雷がある。

 こいつの毒針は、雷を撃っていた。

 

 もしも錬金で、この針の働きを残した魔道具を作れたら――

 

「……もう少し、狩るか」

 

「賛成っ!」

 

 急に、あのサソリが欲しい素材の塊に見えてきてしまう。

 

 錬金術師ってそういうものだよなっ!

 

 

 

 

 *****

 

 

 

 

 それからは、おおむね順調だった。

 

 ミスドラに乗って移動し、見かけた雷晶を採取し、近くにいがちな≪サンダースコーピオン≫を討伐する。

 

 俺のアイテムボックスには、≪雷晶≫と、≪サンダースコーピオン≫の素材がどんどん増えていった。

 

「あれじゃないかなっ!」

 

 火咲が、前方を指した。

 

 砂丘の向こうに、巨大な結晶の塔が、何本もそびえている空間が見えてくる。

 

 その中心に、インドとかにありそうな巨大な宮殿があった。

 その上空では、巨大な金色の輪が動いている。

 

 一つどころではなく、大きさの違ういくつもの輪が、互いにぶつかることなく、宮殿の上で、回転し続けていた。

 

「……なんだろうな、あれ」

 

 そこに、雷が落ちた。

 

 宮殿の周りを囲む雷晶が輝き、そこから発された雷が、金色の輪へと集まっていく。

 

 輪の表面に、びっしりと刻まれた何かの文字が、順番に光った。

 その光は、さらに下の宮殿へと伝わっていく。

 

 宮殿そのものが、雷を受けてエネルギーを吸収しているように見えた。

 

「あれは、魔道具なのかな」

 

 ツキトの言葉に、俺は、回り続ける輪を見上げた。

 

 古代の宝物がある、と聞いていた。

 

 俺が想像していたのは、せいぜい、宝箱の中に入った杖や指輪だったのだが――

 

 ――スケールが、違うなっ!

 

 こんなものを作った連中の魔術や宝物を、手に入れられるかもしれないのだっ! 

 高まるじゃないかっ!

 

「ミスドラ! 降りるぞ!」

 

「楽しみであるな、主」

 

 竜が翼を羽ばたかせ、宮殿の前へと俺たちは降りていく。

 

 砂に埋もれた宮殿前の広場で降りると、ミスドラも【竜王炎舞】で踊り子の姿へ戻った。

 

 そんな俺たちの前に、大扉がそびえていた。

 

 扉にも、あの輪にあったのと似た模様が刻まれている。

 この世界の古代文字のように見えるが、意味はまったく分からなかった。

 

==========

 <ダンジョン:≪古代宝宮≫を発見しました!>

==========

 

 俺は、頭上の金輪を見上げる。

 

「……アンダーラインさんもあっけに取られるような魔術、ゲットしちゃおうっ!」

 

 隣で、火咲がやる気満々の宣言をする。

 

「ああ」

 

 そうして、≪古代宝宮≫の大扉へ、一斉に手をかけた――

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