【アリスルール・オンライン】18歳童貞だけど現実の才能で決まるスキルが【魅了】だった件。しかもこのスキルなんかリアルの女友達にも効いてるけどバグ? 作:ひきさん
「とりあえずさ。このゲーム、ずいぶん自由度が高そうだが、序盤にできることを教えてくれよ」
「そうだね、わたしもクローズドβの範囲で分かった話になるけど、その辺のプレイヤーよりは詳しいと思う! 教えたげるね」
「頼む」
「まずね、わたしたちはガーデン魔法大学の学生として、初級、中級、上級と学年を上げていって、最後に魔法大学の卒業試験に合格する必要があるんだっ」
「ほうほう」
「てか、チュートリアルはちゃんと聞いたの?」
「正直、世界観とかは聞き飛ばした」
それを聞いた火咲は、はぁっとため息をつく。
「……まあ大事なところだけ説明しとくと、ゲームの舞台になっている『アリスルールの巨塔』はこの世界における世界の中心そのもの、政治、軍事、経済、魔法、学問、ありとあらゆる要素が世界でダントツで一番進んでる、世界のすべての権力と武力と技術が集まってる巨塔なんだよっ」
「ほー。世界の中心ねぇ」
「この世界の中心となる力は魔法で、ゆえに魔法を極めし者は、世界のすべてを統べる絶対者になる。そういう世界観の元、巨塔の頂上、つまり世界の頂上を目指すゲームなんだよね~」
「なるほど……んで、そのためには何をすればいいんだ?」
「とりあえずの目標は、中級試験に合格すること。中級試験は1週間に1回行われる試験で、魔法を使ったゲーム的なものに挑むことになるんだけど……」
「ゲーム?」
「クローズドβのラストにあった中級試験はね~、3人チームを組んで巨塔第11層『魔の森』で魔物をテイムしていって、魔物ごとに決められてるポイントの合計値が多かったチームから順番に合格する感じだったねー」
「テイムか。総合力の出そうな課題、なのかな」
「そだねー、各系統の魔術にそれぞれ役立たせるやり方がある感じになってて、面白い試験だったよー」
「ほうほう。んで、いきなりその中級試験に挑んで、合格できるものなのか?」
「たぶん無理。だから、最初に我々は、初級研究実習に合格し、魔術研究を解禁しますっ」
どやっ、と火咲が笑顔で宣言する。
「おー、なんだそれは?」
「その場で課題を貰って、その課題を覚えてる魔術の範囲で解く実習だねー。これをクリアすると、魔術研究ってのが解禁されて、スキルツリーを進めて魔術をアンロックしたり、オリジナル魔術の開発ができたりするんだよっ」
「オリジナル魔術なんてのも作れるのか」
「そうっ! これがこのゲームの面白いところで、自分で魔術理論の書物を読んだりしつつ、≪式≫、≪媒介≫、≪代償≫っていう魔術の三要素と呼ばれてるものをカスタマイズして、自分しか使えないオリジナル魔術を開発できるの! ユニークマジックだよっ! ユニークマジックっ!」
ぶんぶん、と興奮した火咲が俺の肩をぐらぐらと揺する。
火咲は大層このシステムがお気に入りらしい。
まあ、気持ちは分かる。
魔導師になり切って、自分オリジナルの魔法を開発して、それで巨塔の頂点を目指す。
――そんなの、実際に魔導師の人生を味わっているようなもんじゃないかっ!
「……確かに、だいぶ面白そうなゲームみたいだな――」
「でしょっ! だから、早速初級研究実習をクリアしようっ! レッツゴー!」
火咲に連れられて、俺たちは学園都市ガーデンを移動し、ガーデン魔法大学第7キャンパスなる場所にたどり着く。
煌びやかな妖精たちが舞い踊るオブジェクトが左右に並んだ門を超えると、広々としたキャンパスに、いくつもの建物や塔が並んでいる。こんなのが少なくとも7つはあるのか。すごい世界だ。
「学園都市は広すぎるから、あちこちに魔法大学のキャンパスがあって、それぞれに個性があるんだ。初級研究実習はどこのキャンパスでも受けられるから、今はとりあえず一番近いところに来たけど、本来第7キャンパスは、妖精魔術専攻のためのキャンパスだね。妖精魔術の授業や研究、妖精がらみの実習やクエストなんかが盛ん。ちなみに、キャンパス内には他のキャンパスへのワープゲートもあるよ」
「オッケー、大体把握した。俺も副専攻だけど妖精は選んだから、あとで探索しておきたいな」
「たぶん、初級研究実習も妖精魔術があるとちょっと有利かも。わたしが受けたときも、受けたキャンパスで若干内容に補正がかかってる節があったから。まあでも、わたしは速攻で魔術研究を解禁したいから、まずは実習を優先しよう」
「了解」
そうしてキャンパス内を移動していくと、中庭でお目当ての実習を発見した。
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<コモンイベント:≪初級研究実習≫発生!>
空中庭園の"届かずの鐘"を鳴らせ! 手段は問わない!
なお、鐘は一度鳴らした手段を学習するものとする……
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クエスト表示が来たので、どうやら無事実習クエストは受けられたようだ。
周囲を観察すると、今日始めたばかりのプレイヤーたちが、遥か高くに浮かぶ小さな庭園の中央、大きな鐘を見つめて考えている。
「これは明らかに早い者勝ちの試験っ!」
「だねっ! みんな初心者だから魔術をどう使うか考えこんでるから、今がチャンス……」
「……なんて考えてるのは、君たちだけじゃないよっ」
と、横にいた金髪の欧米系らしき顔つきの白人の男が、自動翻訳機能で日本語になった音声と共に、魔術を起動する。
「【物質顕現】!」
男の足元から、ズズッと音を立てて石の足場が伸びて、男の身体はみるみるうちに空中庭園の高さまで上昇していく。
そうして小さな庭園にたどり着いた男は、そのまま大きくジャンプして、中央の鐘に自らの拳を叩きつけるっ!
「獲った!」
男が勝利を確信したその瞬間――
ふわりと、鐘が飛び去った。
「はぁあああ!?」
突如として両側から羽根が生えた鐘は、男には殴られたくないと言わんばかりに男の拳を回避し、そのままふわふわと空中を漂う。
足場からジャンプしていた男は、着地のことは考えていなかったらしく、そのままの勢いで空中に飛び出て――
勢いよく落下したっ!
<プレイヤー:サム・オーバーロードが死亡しました>
そんなログが流れてくる。平和な実習だと思っていたが、思ったより命がけらしい。落下ダメージはこの世界にも存在するようだ。
「ならば、追尾すればいいだけの話っ!」
と、別の東洋系の男が、鳥型の使い魔のようなものを飛ばし始める。
「【契約:使い魔】!」
あれは契約魔術か。あれでうまくいくなら、火咲は容易にクリアできることになるが――
庭園にたどり着いたところで、羽根の生えた鐘はバタバタと羽根をはためかせ、なんと風の魔術を行使したっ!
「流動魔術が使えるんだね、あいつ」
火咲がそう冷静に分析している間に、暴風で制御不能に陥った鳥型使い魔は落下し、ちょうど足元にいたプレイヤーの少女に命中した。
<プレイヤー:ミコティミコティが死亡しました>
どうやら他のプレイヤーを死亡させることもできるようだ。このゲームの痛覚設定がONであることを鑑みると、なかなか洒落にならないゲームである。
「【卜占未来】! わかったぞ! 今から3分24秒後、誰かが作る橋を横取りすれば成功する!」
「【生命強化】! 育て木よ!」
占い師が当たっているのか謎な未来を予知し、俺と同じ生命魔術師が、【生命強化】を木に使い鐘まで届かせようとする。だが、鐘はふわふわとした挙動で巧みに木の根を避け、魔力を使いすぎた術者は卒倒してしまった。
「……甘い試験ではなさそうだが、どうする?」
すっかり騒がしくなっている周囲を他所に、俺はいったん経験者火咲の意見を聞いておくことにする。
「キョウスケ。妖精魔術を選んだってことは、【妖精の光】撃てるよね? それをあの鐘に向けてっ!」
「わかった! 【妖精の光】!」
初めて使う魔術だったが、スキル名を詠唱するだけで発動する方式らしく、無事向けた手のひらから、光の球がふわふわ浮かぶ。
「その光を動かして、あの鐘の近くまで移動させてっ! うまくいけば、誘導できるはず!」
「わかった! でもどういう仕組みだ!?」
「あの鐘の正体は、鐘妖精≪ベルフェアリーガール≫だよっ! 妖精系種族は、【妖精の光】で惹きつけて、誘導したりテイムしたりできるの! 他の人が気付く前にやっちゃおう!」
「……なるほど?」
それを聞いて、一つ、脳内によくない考えが浮かんでいた。
このふわふわした光の操作には若干時間がかかり、あそこまでいくには1分くらいかかりそうだ。これでもクリアできるかもしれないが、先を越される可能性もある。
だが、重要なのはそこではない。
この問題の本質とは――
あの鐘が、女性であるということであるっ!
「【魅了】!」
俺は、≪ベルフェアリーガール≫に向けて、全力で魅了を起動した。
その結果は、果たして――
「わ、わたしの音を、あなたに聞いてほしいですっ♡」
猛スピードで俺に向かって突撃してきた鐘とそれに付属した小さな少女を、俺はコーンと拳で鳴らした。
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<コモンイベント:≪初級研究実習≫クリア!>
【初級魔術研究資格】を手に入れました!
【個人研究机】が自室にアンロックされました!
【魔術研究】がアンロックされました!
プレイヤーポイントが+1されました!
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「きゃっ♡ そんなに激しく鳴らすなんてぇ♡」
それに目ざとく反応した火咲が、なぜか全力のフルスイングで鐘をアッパーし、空中庭園より高く吹き飛んだ鐘を背に、俺に向けてこう叫んだ。
「ヘンタイっ……!」
俺の返答は決まっていた。
「誤解だ」