ポケットモンスターLEGENDS オーレ 作:カラス レヴィナ
「そうだ、相談しよう」
屋台で食事を終えて、私は思いついた。
「何をなのです?」
「全部。ほら、私たちだけじゃどうしようもないでしょ」
「それは……」
「シャドーが復活して、ダークポケモンを造って、地下に研究所まである」
「なのです」
「だったらちゃんと誰かに知らせないと」
「……」
ラピスが目を逸らした。
「誰に知らせるつもりなのです?」
「えーっと」
周囲を見る。
知らない街と、知らない人。
そもそもオーレ地方の組織なんて何があるか知らないし。
あ、でも一個ある。
「ONBSがあるでしょ? パイラタウンに」
確か、オーレのニュースとかを扱ってる放送局だったっけ。
旅に来る前、スマホロトムで調べたことがある。
「事件なら、そういうところに持ち込めば――」
「駄目なのです」
「えっ即答?」
「駄目なのです」
「なんで?」
「……エルサ。今の自分を客観的に見るのです」
「今の私?」
「なのです」
うん、今の私。まあ、服は汚れてるよね。砂と埃まみれで。
「まあ、ひどい格好だけど」
「それより腕なのです」
「腕?」
右腕には、スナッチマシン。
「これ?」
「それなのです」
「でも事情を説明すれば――」
「では説明してみるのです」
「え?」
「ONBSの人がいると思って、最初から説明するのです」
「今? ここで?」
「練習なのです」
「必要?」
「必要なのです!」
妙に押しが強いなあ。
「分かった」
咳払い。
「えー」
ONBSの人、ONBSの人ね。
「こんにちは」
「こんにちはなのです」
「ラピスがやるの?」
「わたしはONBS職員なのです」
「めっちゃノリノリじゃん」
「早くするのです」
「はいはい。……えー、実は、シャドーっていう悪の組織が復活してました」
「証拠は?」
「早い!」
「取材では当然なのです」
「えっと」
証拠証拠……あ、あるじゃん動かぬ証拠が!
「この子、ダークポケモンを一匹保護しました」
ダークポケモンであるリオルが入ったモンスターボールを見せつける。
すると、ラピスは眉一つ動かさないで返してきた。
「どこから?」
「元のトレーナーからスナッチしました」
「つまり他人のポケモンを奪った?」
あ、あれ? なんか風向きがおかしいような。
「でもダークポケモンだったから!」
「それを証明できますか?」
「ラピスのオーラサーチャーで」
「そのラピス博士とは?」
「元シャドーです」
あ、あれ? パート2。
「続けるのです」
「待って」
何か怪しくなってきた。
「では、このスナッチマシンはどうやって入手をしたのですか?」
「元シャドーのラピスが持ってました」
「その元シャドーの所有物をあなたが装着している理由は?」
「……勝手につけました」
「盗難ですか?」
「いや違う!」
「所有者の許可は?」
「なかったけど!」
「なら盗難なのです」
「緊急事態だったの!」
「では、なぜ緊急事態に?」
「シャドーの研究所へ入って」
「不法侵入?」
「……」
「……」
「続けるのです」
「もう嫌なんだけど」
「最後までやるのです」
「……研究所でシャドーに襲われました」
「それで?」
「戦って」
「施設を破壊?」
「主に向こうが!」
「あなたも?」
「……まあ、ちょっとだけ」
「器物損壊」
「不可抗力!」
「そのあとは?」
「逃げました」
「どこから?」
「封鎖されてる地下都市から」
「どうやって?」
「勝手に動いてるトロッコに飛び乗って……そして……立入禁止区域から……地上へ……出まし……た」
「……」
「……」
もう、私もラピスも言葉が出てこない。
「フィア?」
「チル?」
ポケモンたちが、ずっと首を傾げて私たちを見ている。ああ、こういうややこしいしがらみがないなら、いっそポケモンになりたい。
「ラピス」
「なんなのです?」
「私たち、犯罪者二人組にしか見えなくない?」
「だから言ったのです!」
頭を抱えた。
「いや待って! おかしいでしょ!」
「どこがなのです!」
「私、悪いことしてないよね!?」
「結果だけ並べたらかなりしているのです!」
「人助け……ポケモン助けしただけなのに!」
「世の中は過程を説明しないと分かってくれないのです!」
「説明したらもっと怪しくなったじゃん!」
「だから困っているのです!」
「フィア……」
ニンフィアがちょっと離れた。
「ニンフィア!?」
「フィア」
「私犯罪者じゃないから!」
「フィア!」
「その頷きどっち!?」
「とどのつまり、
というラピスの判断は、従う他なさそうだ。
「別にONBSが警察ってわけじゃないでしょ?」
「だからこそなのです。報道機関へ、身元不明の少女が違法改造にも見える機械をつけて、他人から奪ったポケモンを持って、元犯罪組織の研究者と一緒に現れるのです」
「言い方に悪意ない?」
「事実なのです」
「ぐぬぬ……」
「まず優先するべきなのは、リオルなのです」
ラピスがバッグを見る。
「この子をリライブするのが先なのです」
「リライブ」
ダークポケモンを元へ戻すこと。
「できるの?」
「できるのです」
「ラピスが?」
「……できなくはないのです」
「その言い方怖いな」
「でも、今ここでやるのは効率が悪すぎるのです」
「じゃあどうするの?」
「……アゲトビレッジへ行くのです」
「アゲト? ビレッジ? 何それ」
「オーレ北部にある村なのです」
「オーケースマホロトム。検索」
『アゲトビレッジを検索するロト!』
かがくのちからってすげー。やっぱり便利だなあ、スマホロトム。
出てきた結果を見てみると、その場所はパイラから北へかなり離れている。
「遠いなあ。 何があるの?」
「セレビィの聖なるほこらがあるのです」
「セレビィ? セレビィって……あのセレビィ?」
ジョウト地方で有名な、時を渡ると言われているポケモンだ。
「何でオーレに?」
「そこから説明すると長いのです」
「あんたそればっかりだね」
「今日は色々ありすぎなのです!」
確かに。
「で、話を戻すのです。その祠には、ダークポケモンのココロを開くために利用されてきた力があるのです」
「本当に?」
「少なくとも、今ここでアレコレ適当に試すより、ずっと可能性は高いのです」
「……」
バッグに手を置く。ボールの中のリオルは、きっと微動だにしていない。
「アゲトに行けば、リオルを元に戻せる?」
「……」
ラピスは。
すぐには答えなかった。
「絶対とは言えないのです」
「そっか」
「でも、今よりは前へ進めるのです」
「……」
それなら。
「行こう」
「即決なのです?」
「だって、他にないでしょ」
リオルをスナッチしたなら、ここで終わりじゃない。
さっきラピスが言っていたことだ。
「捕まえたんだから」
バッグを軽く叩く。
「最後までやらないと」
「……」
ラピスは、少しだけ驚いた顔を浮かべた。
「何?」
「なんでもないのです」
「その顔で?」
「なんでもないのです!」
「変なの。……よし、じゃあアゲト行こう」
「その前になのです」
「何?」
「移動手段はどうするのです?」
「……」
「……」
そうだった。
「私のバイク、シャドーの研究所に置いてきたままじゃん!」