ポケットモンスターLEGENDS オーレ   作:カラス レヴィナ

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ジェードタウン

 ナックラーの巣穴から離れて、さらに歩くこと二十分。

 砂漠の向こうに、白っぽい建物と、低い煙突が見えてきた。

 そしてその周りを、何台ものトラックが行き来している。

 ようやく到着したんだ。

 

『ジェードタウンロト!』

 

 ロトムの言葉が、よりそれを強く実感させてくれた。

 

「思ったより普通の街だね」

「フィア」

「普通って何なのです?」

「うわっ!?」

 

 振り返ると、白衣を着た小柄な女の子がいた。チルタリスもいるし、それは間違いなく。

 

「ラピス!? いつからいたの!?」

「今来たのです」

「どうやって?」

「チルタリスなのです」

「それは見れば分かる」

「チル」

 

 チルタリスが得意げに胸を張った。

 

「というか、なんでここに?」

「調べものをしていたら、この辺りに用事ができたのです」

「用事って……シャドー?」

「……」

「その間は何」

「何でもないのです」

「うわ、絶対シャドーじゃん」

「決めつけは良くないのです!」

「じゃあ違うの?」

「……」

「ラピス?」

「暑いのです」

「話逸らした。この子嘘つけないタイプだ」

「フィア」

「ニンフィアまで頷くななのです!」

 

 いつもの調子。

 数日しか一緒にいなかったはずなのに、妙に慣れてしまっている。

 

「で、本当に進化したのですね」

 

 ラピスがルカリオに目を向けた。

 

「調子はどうなのです?」

「グル」

「ふむ……顔色は悪くないのです」

「ルカリオの顔色って分かるの?」

「科学者を何だと思ってるのです」

「科学者」

「なら信じるのです!」

「雑だなあ」

 

 チルタリスがルカリオへ顔を寄せる。

 

「チル」

「……グル」

 

 少しだけ警戒しているけど、逃げる様子はない。

 

「チルタリスのことは覚えてるみたい」

「当然なのです」

「最初に戦ってたもんね」

「それを覚えられているのは微妙な気分なのです」

「確かに」

 

 チルタリスが首を傾げて、ニンフィアも入ってくる。

 

「フィア」

「チル」

「……ルォ」

「何か三匹で話してる」

「エルサより会話成立してそうなのです」

「失礼だな」

 

     ◇

 

 ジェードタウンは、近くで見ると、思っていたより新しかった。

 道路は広い。建物も、フェナスみたいに綺麗に整えられているわけじゃないけど、古びてはいない。

 近くには倉庫や加工場も密集して、トラックや作業服の人が忙しく行き交っている。

 その間に。

 

「ポケモンも多いね」

「フィア!」

 

 ワンリキーにドロバンコ、コータス、イワンコ。

 他にも人の仕事を手伝っているポケモンがかなりいる。

 

「ここ、本当にオーレ?」

『野生ポケモンも昔より増えているロト!』

「それは聞いた」

 

 少し先の広場には、大きな垂れ幕がかかっていて、大きな文字でこう書かれている。

 

『ジェードポケモンフェスタ』

 

 あれだ。ステージも作られている。

 

『大会は明後日ロト!』

「まだ準備中か」

「コンテストに出るのです?」

「うーん、まだ決めてない」

「優勝したばかりなのに? ハイペースなのです。グランドフェスティバルまで、まだ間があるはずなのです」

「だからだよ。もう一回出たいかどうか、自分でも分かんない」

「変なのです」

「うん」

「そこは否定しないのです?」

 

 だって、本当にそうだから。

 勝って、ものすごく嬉しかったけど、だからコーディネーターになりたいかと聞かれたら、分からない。

 

「まあ、見てから考える」

「エルサらしいのです」

「それ褒めてる?」

「半分くらい」

「残り半分は?」

「優柔不断。……それより、少し寄りたい場所があるのです」

 

 ラピスの声が落ちる。そのただならない雰囲気に、私にも緊張が走る。

 

「やっぱりシャドー?」

「声が大きいのです!」

「じゃあそうなんじゃん」

「……」

「で、どこ?」

「ポケモンセンターなのです」

「え、なんか思ったより普通の返答」

「普通で悪かったですね!」

 

 町の中央には、赤い屋根が目立つ施設がある。

 ポケモンセンター。トレーナーにとって欠かせない、重要な施設だ。回復や転送、休憩など、旅をするにあたって困った場合は何でもござれの施設。

 

「こんにちは! ポケモンの回復ですか?」

 

 受付のお姉さん、ジョーイさんが言った。うん、この町のジョーイさんもフェナスとかで見たのと同じ顔だ。

 

「あ、お願いしま……ルカリオ、大丈夫だよ。ここでは何もしないから」

 

 ルカリオが、ジョーイさんをものすごく警戒している。来歴を考えれば、当然か。

 だけど、しばらく私とジョーイさんを見比べて、警戒を解いてくれたみたい。自分からボールへ戻っていった。

 まだ、こういう一つ一つを確認してしまうな。

 

「二匹ですね。それでは、お預かりしますね」

 

 私のモンスターボールが回復マシンにセットされている一方で、ラピスは受付ではなく掲示板を見ていた。

 

「何見てるの?」

「これなのです」

 

 そこには、でかでかと張り紙が張り出されていた。

 

『注意 町の外で野生ポケモンの被害が増えています』

「被害?」

「ここ数日なのです」

 

 水道設備や資材置き場、その他いろいろな施設が壊されているらしい。

 

「それって、野生のポケモンがやっているの? 随分と大規模だね。群れ単位で暴れているのかな」

「そういうことになっているのです」

「なっている?」

「……詳細はまだ分からないのですが、この目撃情報を見るのです」

 

 掲示板には、確かに犯人と思われるポケモンの詳細が記載されていた。

 

『大型』『飛行』『砂嵐』『緑色』

「……」

「フィア?」

 

 あ、いつの間にかニンフィアが戻ってきていた。

 ルカリオも一緒だ。

 

「早。ありがとうございました!」

「お預かりしたポケモンは、みんな元気になりましたよ」

 

 一度ボールを受け取って、もう一度掲示板を見る。

 

「緑色の大型で、飛ぶポケモン。しかも砂嵐が特徴って……」

『検索するロト?』

「いや、大体思い当たるからいいよ。だってそれ、フライゴンだよね?」

 

 フライゴン。ホウエン地方にも多く生息している強力なポケモンで、フェナスで戦ったガブリアスと同じ、ドラゴン・じめんタイプのポケモンだ。

 

「その可能性が高いのです」

「でもフライゴンって、そんなに人の施設壊すっけ?」

「普通なら、そもそも積極的に町へ来るようなポケモンではないのです」

「じゃあ、普通じゃない?」

「……」

 

 またその間。ラピスは暗い目で、掲示板から目を離さない。

 

「まだ証拠がないのです」

「つまり疑ってるんだ」

「なのです」

 

 ダークポケモン。その言葉が頭に浮かぶ。

 

「じゃあ、調べに行くの?」

「わたしはそのつもりなのです」

「じゃあ私も」

「ダメなのです」

「何で?」

「エルサは旅の途中なのです」

「そうだけど」

「これはわたしの調査なのです」

「でも」

「昨日まで散々巻き込まれたのです。今日は普通に観光でもするのです」

「それ、ラピスが言う?」

「わたしが言うのです」

「説得力ないなあ」

「あるのです!」

 

 チルタリスが横で首を傾げた。

 

「チル?」

「ほら」

「何がほらなのです!?」

 

     ◇

 

 結局。

 

「別行動になるね」

「なのです」

「無茶しないでよ」

「エルサに言われたくないのです」

 

 ラピスとチルタリスが町の北側へ向かう。

 一方、私は南。ニンフィアとルカリオと一緒に、受付開始時間まで空いてしまった。

 

「何しようか」

「フィア」

「……グル」

「ちょっと早いけど、コンテストの受付でも見る?」

「フィア!」

「おっ、ニンフィアはやる気だね」

 

 そのまま町を歩いていくけど、やっぱり気になあ。

 

「大型の緑のポケモン……」

『フライゴンの可能性は高いロト!』

「うん」

 

 そして、さっきのナックラー。

 人間を見た瞬間のあの怒り方。

 

「何か関係あるのかな」

「グル」

 

 ルカリオが立ち止まる。

 町に向けて、耳を立てている。

 

「どうしたの? 何か感じる?」

「……」

 

 ルカリオがじっと見る。

 その時、遠くで何かが爆発したような音が落ちてきた。

 

「……え?」

 

 町の人たちも振り返る。

 もう一度、どんという黒い煙が上がる。方角は___北側。

 

「ラピスが行った方じゃん!」

「フィア!」

「行くよ! ルカリオも!」

「ガウッ!」

 

 ルカリオが先に飛び出した。

 

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