ポケットモンスターLEGENDS オーレ 作:カラス レヴィナ
「ならば二択を与えよう! 素直に返すか、それとも……痛い目を見るか?」
ヴァイスが笑っている。
さっき私が捕まえたダーク・ドンファンを取り返すつもりだ。
「どっちも嫌なのです」
ラピスが即答した。
「そうか! そうか!」
「な、何? 何に納得したの?」
「なら、奪う!」
「話し合いが一秒で終わったのです!?」
ヴァイスはもうモンスターボールを握っていた。
そして光が弾けた瞬間、私たちは思わず後ろへ下がった。
長い。いや、大きい。
濃い赤紫色の身体が地面を這い、その頭部から伸びる二本の角がこちらを向く。
あれって……。
『ペンドラーロト! メガムカデポケモン! むし・どくタイプ――』
「待って」
『何ロト?』
「大きくない?」
私が知っているペンドラーより、明らかに一回り以上大きい。
ヴァイスは満足そうに笑った。
「でかい方が強そうだろ!」
「理由それだけ!?」
「十分だ!」
「十分ではないのです!」
ラピスの腕から警報音が鳴り響いた。
「……やっぱり」
「ダークポケモン……!」
「ご名答!」
「セトだけじゃなかったのです……」
「何だ? ダークポケモン持ってちゃ悪いか?」
「悪いに決まってるのです!」
「そうか!」
ヴァイスが腕を振る。
「ペンドラー! 突っ込め!」
「それ技名!?」
「違う!」
「じゃあちゃんと指示して!」
「細けえな!」
ペンドラーの脚が一斉に動いた。
「速っ――」
「フィア!」
ニンフィアが私を触角で引っ張る。
直後、さっきまで私が立っていた場所を、ペンドラーの巨体が突っ切った。
砂と小石がまとめて巻き上げられる。
「こんな大きいのに速い!?」
「ペンドラーは元々速いポケモンなのです!」
「先に教えて!」
「見れば分かるのです! それに、最悪の場合相手は特性かそくなのです!」
「あの図体でかそく!?」
ペンドラーが目の前で急旋回する。
あの体格で、曲がるのまで速い。
「ルカリオ!」
ニンフィアじゃ速度が追いつけない。
ルカリオを繰り出して、すぐさま指示を出す。
「はどうだん!」
「ガウッ!」
ルカリオはすぐさま両手に波導を集めて放つ。
だけど。
「突っ切れ!」
「またそれ!?」
はどうだんが命中して、ペンドラーの身体が一瞬揺れる。
でも。
「ドルルルルッ!」
止まらない。
「うそ!?」
そのままルカリオへ突進。
「避けて!」
「ガウッ!」
横へ飛んだルカリオのすぐ横を、黒紫色の巨体が通過する。
そしてその勢いのまま、採掘場に残っていた資材へ突っ込んだ。
轟音がこの場を支配して、鉄板や木箱がまとめて吹き飛んだ。
「ほら!」
ヴァイスが胸を張る。
「道ができた!」
「作る必要ない道を作るな!」
「建物壊してるのです!」
「採掘場だろ!」
「だからいいという理屈にはならないのです!」
何なの、この人。
一方、ペンドラーの方はまだ動いてくる。効果は薄いけど仕方ない。
「ニンフィア! ムーンフォース! ルカリオははどうだん!」
「フィ!」
「グルッ!」
二つの光が放たれる。
それに対して、ペンドラーは。
「ペンドラー!」
ヴァイスが叫ぶ。
「耐えろ!」
「避けないの!?」
直撃して、爆発の中でペンドラーが身体を大きく揺らす。
「ッ……!」
「効いてる!」
「まだ立ってるから問題ねえ!」
「そういう問題じゃない!」
「立ってるなら行ける!」
ペンドラーの全身から、さらに濃い黒紫色のオーラが吹き出した。
脚の動きが止まる。
身体を低くして――。
「ダークブレイク!」
次の瞬間。
ペンドラーが消えた。
「え――」
そう見えた。
黒紫色の残光だけを残して、巨体が一直線に迫ってくる。
もう避けられない。
「ニンフィア! リフレクター!」
「フィア!」
光の壁が生まれた。
そして、激突。
「っ!」
空気が震えた。
ニンフィアの足が地面を滑っていく。
「フィ……!」
「頑張って!」
透明な壁の向こうで、ペンドラーがさらに脚を動かす。
「押せ押せ!」
「力任せすぎる!」
「押せば行ける!」
「そんなわけ――」
びしっ。
「え?」
リフレクターに亀裂が入った。
「嘘でしょ!?」
「ほら行ける!」
「喜ぶな!」
さらに一撃。それで、ばきん! と嫌な音がして光の壁が砕けた。
「ニンフィア!」
「フィッ!」
直前で横へ飛ぶけど、ペンドラーは止まれない。
そのまま岩から地面を揺らして。
「……ぶつかった」
「よし!」
「何がよしなの!?」
「止まった!」
「止め方が雑!」
砂煙の向こうで、ペンドラーが身体を振る。
さすがに今の衝突は効いたらしい。
「ルカリオ!」
「ガウッ!」
「ボーンラッシュ!」
ルカリオの両手に骨状のエネルギーが形成される。
そのまま走って、一撃を与える。
「ドルッ!」
そのまま二撃。
ようやくペンドラーが後退した。
だけど。
「ペンドラー!」
ヴァイスの声。
「身体ごと回せ!」
「そんな指示ある!?」
ペンドラーがその長い身体を大きくひねった。
「ガウッ!?」
側面がルカリオへぶつかる。
「ルカリオ!」
吹き飛ばされたけど、すぐに受け身を取って立ち上がる。
「……強い」
「だろ!」
「何であんたが嬉しそうなのよ」
「俺のポケモンが強いんだから嬉しいだろ」
「ダークポケモンにしておいて!」
「あー」
ヴァイスが頭を掻いた。
「そこは俺の担当じゃねえ」
「担当?」
「俺は捕獲」
ペンドラーを指さす。
「捕まえる!」
今度は採掘場の外を指す。
「運ぶ!」
最後に、私の持っているボール。
「逃げたら捕まえ直す!」
「説明が簡単すぎるのです!」
「分かりやすいだろ!」
「つまり、この子たちを捕まえたのも……」
「俺が捕まえた奴もいる」
カイルの顔色が変わった。
「ライオットもか?」
「さあな」
「さあなって!」
「何匹捕まえたと思ってんだ。全部覚えてねえよ」
カイルが拳を握る。
その隣で、ラピスもヴァイスを睨んでいた。
「昔から変わらないのです」
「あ?」
「何でも力任せ」
「いいだろ。大体それで何とかなる」
「ならないから言ってるのです!」
「でも今まで何とかなってる!」
「反省しろなのです!」
……やっぱり知り合いなんだ。
セトとラピスの時とも違う。
ヴァイスはラピスのことを見ても、驚いた様子がほとんどない。
「それより」
ヴァイスが肩を回した。
「そろそろ返してくれ」
「嫌。あんたたちに返したら、また戦わせるでしょ」
「まあな」
「なら絶対嫌」
「そうかよ。じゃあ続きだ!」
ヴァイスが笑う。
「そればっか!」
「ペンドラー!」
「ドルルルルッ!」
黒紫色のオーラが再び膨れ上がる。
だけど、その時。
「……?」
ルカリオが突然振り返った。
「グル……」
「ルカリオ?」
耳が立っている。
「何かいるの?」
「ガウッ!」
「フリャァァァァァァッ!」
遠くから聞き覚えのある咆哮が響いた。
「……!」
砂煙の向こうに、緑色の大きな翼が見えた。
あれは。
「フライゴン!」
ラピスがオーラサーチャーを見る。
「まだダーク状態なのです!」
「また来た……!」
フライゴンがこちらへ向かって飛んでくる。
「おお! ちょうどいいぜ!」
隣でヴァイスが嬉しそうな声を出した。
「二匹まとめて捕まえる!」
「やっぱりそれしか考えてない!」
ペンドラーがフライゴンへ向き直る。
そしてヴァイスも。
「よし!」
拳を鳴らした。
「力ずくで行くぞ!」
「それ、さっきからずっとやってるから!」