歴史というものは、時に極めてシュールな光景を
陸路を鉄道で運ばれてくる航空母艦という概念も、間違いなくその類の一つであろう。
のちの世の歴史家が横須賀鎮守府の兵站記録を紐解いた際、彼らは自らの目を疑うことになる。『正規空母二隻、貨物列車にて到着』という記述は、旧世紀の常識に照らし合わせれば、明らかな誤記か狂人の戯言にしか見えないからだ。
しかし、艦娘という存在が『人間の少女のサイズ』に収まっているこのオカルトの世界においては、それは極めて合理的かつ実用的な輸送手段であった。
■
南方へと強行偵察部隊が送り出され、ヤン・ウェンリーが胃を痛めながら吉報を待っていたその数日後の朝。横須賀の軍港に引き込まれた軍用引き込み線に、佐世保からの長旅を終えた重厚な貨物列車が滑り込んできた。
ヤンは、大淀と明石、そして彼女の頭の上に陣取る妖精さんを伴って、プラットホームへと出向く。そして、貨物列車の扉が開き、陸軍の輸送将校から引き継ぎの敬礼を受ける。
「ヤン提督へ報告。輸送任務、完了いたしました。道中、敵の妨害も特段の異常もなく、彼女たちは至って『普通の艦娘』であられます!」
「ご苦労だったね。ゆっくり休んでくれ」
ヤンが将校へと労いの言葉をかける。それと同時に、貨車の中から二人のうら若き乙女が姿を現した。
一人は、長く美しい銀髪をなびかせた、どこかたおやかで母性を感じさせる少女。もう一人は、活動的なツインテールに鉢巻きを締め、勝気な瞳をした少女であった。弓道着をアレンジしたような紅白の装束に身を包んだ彼女たちは、プラットホームに降り立つなり、ヤンに向かって美しい敬礼を見せた。
「翔鶴型航空母艦一番艦、翔鶴と申します。横須賀鎮守府の皆様、どうかよろしくお願いいたします」
「同じく二番艦、瑞鶴よ! 提督さん、どんな任務でもバンバン任せてよね!」
ヤンはベレー帽を軽く持ち上げて挨拶を返しながら、背後に控える明石と妖精さんに視線で合図を送りながら、口を開く。
「ご苦労様。では早速検査を受けてもらいたい。輸送将校は異常なしと言っているがね。念のためだ。失礼な話で申し訳ないがね、翔鶴、瑞鶴。君たちが敵の残骸から生まれたという事実がある以上、どうしても形式上の検査が必要なんだ」
ヤンが正直に告げると、姉の翔鶴はふわりと微笑んで頷いた。
「ええ、佐世保の司令部からも伺っておりますわ。当然の措置です。どうぞ、お調べになってください」
「ありがとう、翔鶴。では明石、妖精さん。彼女たちの『規格』を確かめてくれるかい?」
ヤンの言葉を受けて、明石と妖精さんが二人の周囲を回り、時には彼女たちが背負う飛行甲板の艤装に触れ、矢筒や甲板の構造を素早く、しかし綿密にチェックしていく。やがて、妖精さんがヤンに向かって両手で大きな「丸」を作り、明石も安堵の息を吐いて頷いた。
「間違いありません、提督。彼女たちの艤装は、純然たる日本海軍の規格……メートル法に則った我々の味方の装備です。佐世保の検査通り、完全な白(シロ)ですね」
「それは何より」
ヤンはホッと肩の力を抜き、二人の正規空母に向き直った。
「では、改めて歓迎しよう、翔鶴、瑞鶴。私はヤン・ウェンリー。この鎮守府で司令官という割の合わない仕事をしている」
「ヤン提督ですね。噂は佐世保まで届いておりますわ。東シナ海を制した素晴らしい采配、お見事でした」
「噂に尾ひれがついているだけさ。さて、さっそくだが……、少し今後の話をしよう。大淀さん、加賀を呼んでくれるかい? 執務室に集合だ」
「かしこまりました」
その後、執務室へと移動したヤンは、横須賀の航空戦力を束ねる第一航空戦隊の加賀と、この新鋭空母姉妹を引き合わせた。感情の起伏が少ないクールな加賀と、たおやかな翔鶴、そして勝気でやや突っかかるような態度の瑞鶴。性格は三者三様であったが、空母としての矜持を共有する彼女たちは、短い言葉で互いの実力を認め合ったようだった。
「加賀。彼女たちは新しく生まれたばかりで、まだ自らの手足(艤装)の感覚に慣れていないはずだ。鎮守府の近海で、演習がてら空の飛び方をレクチャーしてやってくれないか」
「分かりました。五航戦の子たち、ついてきなさい。横須賀の空の厳しさを教えてあげるわ」
「望むところよ! 五航戦の零戦の機動、見せてあげるんだから!」
賑やかに執務室を出ていく三人の空母を見送りながら、ヤンは自らのデスクに戻り、ドサリと椅子に身を沈めた。
「正規空母が三隻……か。艦隊の打撃力としては戦略級だが、これからのボーキサイトと燃料の消費報告書を見るのが恐ろしいよ。胃薬の予算を増やしてもらわねばならんな」
「贅沢な悩みですね、提督。他所の鎮守府が聞いたら暴動が起きますよ」
大淀が呆れたように言いながら、新しい紅茶を淹れ始めた。
「さて、次は……イムヤの面談のついでに、彼女の『装備』でも作るとしようか」
ヤンはマグカップを手に取り、工廠へと足を向けることにした。
■
明石の管理する工廠は、相変わらず青白い炉の火と、妖精たちのハンマーの音が小気味よく響く活気ある空間であった。ヤンが訪れると、明石の元で検査と休養を終えたイムヤが、退屈そうに足をぶらぶらさせていた。
「あ、提督さん! もう、すっかり元気よ! 早く海に出してちょうだい!」
スクール水着姿のイムヤが駆け寄ってくる。ヤンは、
「元気なのは結構だが、丸腰の兵士を戦場に送り出すほど悪辣な指揮官ではないつもりだよ」
と苦笑した。
「潜水艦ということは、やはり必要なのは『魚雷』だろうね。明石、弾薬を多めに配分して、開発の準備を頼む」
「了解です! 妖精さんたち、資材の投入お願いね!」
ヤンがコンソールの前で資材の数値を弾き出そうとした時、ふと、ある考えが脳裏を過った。
(……そういえば、以前、艦娘の装備は彼女たち自身のルーツたる『依り代』の概念に引っ張られると言っていたな。この世界はオカルト的な『縁(えん)』が結果を左右するのであれば……)
ヤンはコンソールから手を離し、イムヤを手招きした。
「イムヤ。ちょっと、この炉のすぐそばに立ってみてくれないか」
「え? こう? 熱いわよこれ」
「いいから、少しの間だけ我慢してくれ。……よし、妖精さん、これでスイッチを入れてくれ」
イムヤという存在そのものを「触媒」として配置した上での、装備開発。
(おそらく、これで彼女に由来する装備が出来る、かもしれない)
果たして、その直感は見事に的中した。カンカンと響いていたハンマーの音がピタリと止むと、炉の中から妖精さんたちが、自らの会心の出来栄えにウンウンと深い納得の表情を浮かべながら飛び出してきたのである。
白煙が晴れた後に台座に鎮座していたのは、鈍く、しかし凶悪な光沢を放つ巨大な円筒形の金属。
「おお! これは……!」
明石が目を輝かせて声を上げた。
「九三式……『六十一センチ酸素魚雷』ですね! 雷跡を残さない世界最強の必殺兵器! 素晴らしい引きです、ヤン提督!」
「ほう、これはなかなか良さそうなものが出たようだ」
ヤンは顎を撫でた。酸素魚雷の航跡が見えないという特性は、隠密行動を旨とする潜水艦にとって、これ以上ない相性の良さを誇る。
「では、早速装備したまえ、イムヤ。明石、妖精さん、頼んだよ」
ヤンが促すと、明石と妖精さんたちがよってたかってイムヤの背中や腰の艤装ジョイントに、重厚な魚雷発射管を接続していく。カシャリ、という小気味よいロック音が響くと、イムヤは自らの身体を確かめるように軽く跳ねてみせた。
「……うん、しっくりくるわね! これなら、どんな装甲だって一撃でぶち抜いてみせるわ!」
兵器としての欠落(依り代)が埋まり、完全な存在となった彼女の顔には、生気に満ちた笑みが浮かんでいた。
■
その後、執務室へと場所を移したヤンは、イムヤに対して初めての『命令』を下す。
「ひとまずは、その新しい体と装備の感覚に慣らすためのシェイクダウン(試運転)が必要だ。近場を回ってきてくれ」
ヤンは海図を広げ、東京湾から南へと抜ける航路を指差した。
「そうだな……大島を回ってから伊豆半島の先をかすめ、そして横須賀に帰投するルートで頼む。水中の音の響き方や、海流の感覚を掴むんだ。……もし道中、敵の駆逐艦などの小規模な哨戒部隊がいた場合は、練習がてら撃破してしまって構わない」
ヤンはそこで言葉を区切り、極めて真剣な目でイムヤを見つめた。
「だが、無理は禁物だ。相手が多勢であったり、分が悪いと判断した場合は、迷わず海中深くへ潜って逃げても良い。君の最優先任務は、生きて帰ることだ。そして、何か異変があれば、浮上してすぐに無線で報告を頼む」
「了解よ! 潜水艦の戦い方、たっぷり見せてあげるわ!」
イムヤは胸を張り、元気よく執務室を飛び出していった。そして、その元気な背中を見送りながら、大淀が静かにヤンのデスクへ新しい紅茶のカップを置く。
「見えない『目』が我々にもできたことになりますね、提督」
「ああ。彼女の隠密性をうまくピケット(哨戒)に組み込めれば、横須賀の防衛線はさらに強固なものになるだろう。全く、思いがけない手札が転がり込んできたものだよ」
ヤンは紅茶の香りを楽しみながら、その頭脳は次なる戦略の盤面へと再び没入していった。
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ヤンが執務室で海図と睨み合っている間、第一艦隊の旗艦として数多の武勲を立ててきた戦艦・金剛は、久しぶりの完全な非番(オフ)を満喫していた。
彼女は戦闘用の艤装を工廠のメンテナンスに預け、代わりに、秋の気配が近づく横須賀の街並みに合わせた、シックなトレンチコートと落ち着いた色合いのワンピースという私服に身を包んでいた。豊かな髪をベレー帽でまとめ、すれ違う水兵たちが思わず振り返るほどの美しさを振りまきながら、彼女は港町を歩いていた。
「……少し前はかなり荒れていたんデスが、だいぶ変わりましたネー」
金剛は、街のあちこちに立ち並ぶ露店や、活気を取り戻しつつある市場の様子を眺めながら、感慨深げに呟いた。
数ヶ月前まで、この横須賀の街は、深海棲艦の海上封鎖によって物資が途絶え、人々は飢えと絶望の影に怯える幽霊都市のような有様であった。しかし、ヤン・ウェンリーという異端の提督が着任し、彼女たち艦娘が東シナ海のシーレーンを切り拓いたことで、事態は劇的に好転した。台湾方面からの補給船団が以前より多く到着するようになり、街にはわずかながらも新鮮な食材や、嗜好品が流通し始めたのだ。
「テイトクの言っていた『兵站』が、こうして目に見える形になっているのデスね。……あんなにボサボサ頭でいつも眠そうなのに、やっぱりスゴイ人デス」
金剛はクスリと笑い、ヤンの功績がこうして人々の笑顔に直結している事実を、自分のことのように誇らしく思う。軍隊の勝利とは、為政者の虚栄心を満たすためではなく、市民のささやかな日常を守るためにこそ存在する。そのヤンの政治的・歴史的信条を、彼女は理屈ではなく肌で理解していた。
そんな風に街を散策していた金剛の足が、ふと、薄暗い路地裏に店を構える「古物商」の軒先でピタリと止まった。店先には、ガラクタから、どこから拾ってきたのか分からないような軍の払い下げ品まで、雑多な物品が無造作に並べられている。
その中で、金剛の目を釘付けにしたのは、木箱の上に置かれた『手のひらサイズの、ひどく熱でねじ曲がった鉄塊』であった。
「……オジサン。これ、ナンデスか?」
金剛が尋ねると、パイプを咥えた白髪交じりの店主が、気怠げに顔を上げた。
「お、ねーちゃん。そいつに興味を持つたぁ、変わった趣味してるな。そいつはな、ただの鉄屑じゃねぇ。かつての栄光の第一航空艦隊、空母『赤城』の甲板の一部さ」
「アカギの……!?」
金剛は驚きに目を丸くした。
「ああ。俺ぁ、元々は呉の出身でな。うちの親戚に、赤城に乗ってた飛行機乗りがいたんだよ。あのミッドウェーで敵の爆撃を喰らって、船が業火に包まれる中……沈みゆく母艦から脱出する時に、這いつくばった飛行甲板から、熱で溶けたこいつをもぎ取って懐に入れたらしい。……まぁ、形見ってやつさ」
店主はパイプの煙を吐き出しながら、遠い目をして語った。
「売ってるんデスか? そんな大切なモノ」
「もちろんさ。思い出の品だろうが何だろうが、このクソみたいなご時世、その日の飯を食うためには何でも売らんと生きていけねぇからな。まったく……海の化け物ってのは、実に嫌だねぇ。人間の生活も思い出も、全部海の底に沈めちまう」
店主の愚痴は、戦火に翻弄される名もなき市民の、偽らざる本音であった。
言葉を噛みしめ、頷きながら、金剛はその曲がった鉄塊を見つめていた。赤城といえば、現在『呉鎮守府』において艦隊の主力として戦っている一航戦だ。加賀の僚艦とも言える存在である。そして、金剛が守り切れなかった船だ。何より、この鉄塊には、かつて国のために命を懸けた人間の無念と、沈みゆく船への強い未練が染み付いていた。
「……オジサン。これ、いただいてもイイですか?」
「お、物好きだねぇ、おねーちゃん。二万円だ」
足元を見るような強気な値段設定であったが、金剛は財布から迷わず二万円の紙幣を取り出した。この鉄塊は、何かの『縁』だ。それに、このお金が少しでも、テイトクが守ろうとしているこの市民の暮らしを良くする足しになるのなら、決して安い買い物ではない。
「おっと、気前が良いね! 助かるよ、毎度あり……?」
鉄塊を包もうとした店主が、金剛の視線が別の商品に注がれているのに気づいてニヤリと笑った。
「オジサン、こっちのお皿はなんデスか? 海軍のマークがありますケド」
「……ん? おやおや、ねーちゃん、やっぱりアンタはお目が高いな」
金剛が見つめていたのは、少し煤けてはいるものの、海軍の桜の紋章が刻まれた美しい陶器の『お皿』であった。
「こいつはな、戦艦『榛名(はるな)』で将校用に使われていた食器さ」
「ハルナの……!?」
思いがけない妹の名前に、金剛の心臓が大きく跳ねた。
「いやな、さっき俺、呉の出身だって言っただろ? 大戦の終わり頃、呉の港の底に着底した榛名の残骸を、ガキの頃に探検したことがあってな。そん時に、沈んだ厨房の中から記念に持って帰ったんだわ」
店主は懐かしそうに目を細めた。
「そうなんデスか……」
「ああ。まぁ、今じゃあ軍の所有物窃盗で犯罪かもしれねぇが、当時は町中が焼け野原で、鉄屑泥棒なんて誰も気にしちゃいなかった時代だからな」
妹・榛名の、かつての記憶の欠片。金剛の胸の奥で、激しい愛おしさと郷愁が入り混じった感情が渦巻く。いつか、あの建造ドックが妹たちを呼び寄せてくれる日が来るのだろうか。それとも、イムヤのように、深海棲艦の残骸から……。どちらにせよ、もし来るのだとすれば、このお皿は、彼女をこの世界に繋ぎ止めるための大切な道標になるかもしれない。
「オジサン。そうしマシたら、その……、榛名のお皿もお願いしマス」
「お、少し高いぞ? こっちは状態もいいし、三万だ。こいつは有難い……合わせて五万、たしかにいただいたぜ!」
予期せぬ妹ゆかりの品、そして空母の記憶の欠片を手に入れ、金剛はホクホク顔で古物商を後にした。提督から支給された軍資金の多くを使ってしまったが、後悔はない。彼女は帰り道に屋台の立ち並ぶ通りを歩き、残った小銭でクレープと焼き鳥を買い食いしながら、上機嫌で鎮守府へと戻っていった。
■
鎮守府へ帰還した金剛が、屋台で買った差し入れの焼き鳥を持って真っ先に訪れたのは、地下の工廠であった。明石ならば、この古い鉄塊や食器の手入れ方法を知っているかもしれないと思ったからだ。
「明石ー! 差し入れ買ってきマシタよー!」
「あ、金剛さん。ありがとうございます! ちょうど小腹が空いていたところで……」
明石が嬉しそうに焼き鳥に手を伸ばそうとした、その時である。工廠のあちこちで作業をしていた十数人の『妖精さん』たちが、突如として作業の手を止め、一斉に金剛の足元へとワラワラと群がってきた。
「オーウ!? びっくりしまシタ! 妖精さんたち、焼き鳥が食べたいんデスか?」
金剛が紙袋を差し出すが、しかし、妖精たちは焼き鳥には目もくれていない。彼らの視線は、金剛が抱えているもう一つの紙袋――すなわち、『赤城の鉄塊』と『榛名のお皿』へと釘付けになっていたのである。
妖精たちは、それらの品物を指差し、「くれ、くれ!」とばかりにピョンピョンと跳び跳ね始めた。
「コレが……、気になるんデスか?」
金剛が尋ねると、妖精たちは全員で首がもげるほどの勢いで、全力で縦に頷いた。
「うーん……」
金剛は少し迷った。大切なお金を払って買った、妹と赤城の思い出の品である。しかし、オカルトの権威である妖精たちがこれほどまでに惹きつけられるということは、この物品には何か強烈な力……それこそ、新たな艦娘を呼び寄せるための『依り代(触媒)』としての力が宿っているのかもしれない。もしかすると、妹と会えるのかも……と、考えたのかもしれない。
「じゃあ……アゲマース! 大切に扱うのデスよ!」
金剛が決心して鉄塊とお皿を袋から取り出し、手渡すと。
妖精たちは、まるで砂糖の塊を見つけたアリの大群のように、それらの品物を頭上に掲げ持ち、言葉にならない歓声を上げながら、猛烈なスピードで工廠から飛び出していった。
彼らが向かった先は――新たな艦娘をこの世に呼び出すための祭壇、『建造ドック』の方向であった。
「あーあ。行っちゃいましたね。妖精さんたち、あんなに興奮して」
明石が焼き鳥を頬張りながら、呆れたように笑った。
「なんだか、すごいモノができそうデスねー!」
金剛もまた、自らの手でもたらされた『縁』が、この不敗の魔術師の陣営にどのような新たな力をもたらすのかを想像し、ワクワクとした笑顔を浮かべながら、走り去っていく小さな職人たちの背中を見送っていた。
歴史の歯車は、人間の論理とは無関係な場所で、オカルトと偶然を養分にしながら、絶えずその回転を速めようとしていた。