『犬の名はアクセル』   作:タカチ・スカル

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第6話

そこかしこに穴が開く路面を掻きむしり、タラスは咆哮した。

 

『お前らアメリカ人は、いつもそうだ! 助けて欲しい時は顔を背けるクセに、余計な時に邪魔をするんだ!!』

 

アクセルは言葉が出なかった。

 

『ウクライナが核を捨てた時、アメリカは何て言った? ウクライナの安全を保障する…そう言っただろう!? 俺たちは…それを信じたんだ!!』

 

 

タラスは血が滴る右手を地面に叩きつけ、慟哭の言葉を紡ぐ……。

 

『クリミアに「緑の兵隊」が来た時、お前らは何処にいた? ドネツクとルハンシクに勝手に国を作られた時も!? 「武器をくれ」と言った俺たちに、お前らが最初に送りつけてきたのは……ヘルメットと止血帯だ! ふざけるな!!!』

 

タラスは肩を震わせ、内臓から毟り取るように声を出した。

 

『どうして死なせてくれなかった…? 「誇り」を持つ事も許されないのかよ……? こんなの、あんまりだ……』

 

 

『「誇り」を失っても…生きてさえいれば、部下や友の仇は取れる…』

 

アクセルは、そう言うのが精一杯だった…。

 

 

タラスはプレートキャリアを外し、アクセルに放り投げると、ランドクルーザーに乗り込んだ。

 

その時、ヴィントレスを構えたマクシムが向かいの路地から現れ、アクセルに銃口を向けたままランドクルーザーの助手席に滑り込む。

 

 

ウインドウを開けたタラスは、

 

『絶対に許さない…アメリカもロシアも……』

 

そう言い残して車を走らせた……。

 

 

ランドクルーザーが視界から消えると、アクセルはプレートキャリアに目をやり、天を仰いだ。

 

『マジでヤバかった…』

 

フラットバー状に加工されたセムテックスが、プレートキャリアの内側にびっしりと貼り付けられていた…。

 

アクセルは電子雷管を慎重に抜き、割れ落ちたUAZ Patoriotのリアウインドウから、プレートキャリアを投げ入れると、深く息を吐いた……。

 

 

アクセルがアネックスに戻ると、CIAの工作員たちが口々に怒声を浴びせた。

 

『何て事をしてくれたんだ!? ここも含め、周囲のセーフハウスをみんな休眠させなきゃならんのだぞ!』

 

アクセルは無視して椅子に腰を下ろし、大慌てで撤収を始めた工作員たちを見つめた。

 

(コイツら、皆んなクソだな…)

 

 

ウクライナ人が何人死のうと、コイツらは何も感じない。

いや…感情を押し殺しているんだ…。

情報要員として、やるべき事をやっているだけだ…。

 

だけど…俺は……

 

軍人だから「誇り」を持ってしまう…。

軍人だから心に傷を負ってしまう…。

軍人だから自分を嫌悪してしまう…。

 

軍人だから……。

 

 

アクセルは、シンプルな結論に達した。

 

(俺も…クソになれば良いのだ)

 

『辞めた! 軍人を辞めた!!』

 

 

アクセルは帰国し、陸軍を除隊した。

 

そして、自らCIAという「肥溜め」に飛び込んだのだった……。

 

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