どれくらいでエタるかは分からないがのんびり書いていこうかなと。2週間に1回投稿になるかも。
「起きろ、トウマ」
「うーん……」
物が散乱した部屋のベッドで眠る右眼から右腕にかけて機械になっている青年『トウマ』は、そう唸りながらも男のほうを向くように寝返りを打った。
「マーシャ……今何時……」
「7時12分。そろそろ起きろ」
「えぇ〜……」
「そろそろ仕事の支度をしてくれ……間に合わない」
マーシャと呼ばれたその男は呆れながらも、トウマの身体を揺さぶる。彼らの暮らす家はブラックマーケットにあり、学園の自治区外の人間だ。故に彼らはカイザーからの依頼を受けて行動する傭兵として活動しているものだ。
「うーん……」
「そろそろ起きなさーい」
白い髪に角の生やした少女が扉が開きっぱなしになっていた部屋の入り口をのぞき込む顔を出し、そう声をかける。
「ヒナちゃーん……仕方ないなぁ……ヒナちゃんに免じて起きてやるよ」
そう言いトウマは身体を起こした。トウマの部屋は服やボードゲーム等が散乱しておりその普段の生活が垣間見えるが、トウマが部屋を出ると同じ家とは思えない程整然としていた。
「おは」
「おはよう」
「おはようトウマ。早く着替えなさい」
そう言いつつヒナは朝食を皿に盛り付けており、マーシャは自身の愛銃たるライフル『フェイルノート』を整備していた。
「おっ、ヒナちゃん服いつもと違う?」
「そうだけど……」
「やっぱなー。マーシャはこういうの気づいてやらないと。だからモテないんだぜ?」
「トウマが女好きというだけだろう……」
マーシャはやれやれと言わんばかりの態度を取りつつ銃の整備を終え、ヒナは困惑気味に答えながらも朝食を机に運んでいた。
「ヒナ、手伝うぞ」
「助かるわ。そこの茶碗を頼むわ。あとそこの鮭の塩焼きも」
「分かった」
二人は朝食を運ぶと席につく。トウマは未だに寝巻きのままだが、マーシャとヒナは既に着替え終えておりマーシャもヒナも軍服のようなものに身を包んでいた。ヒナはマーシャと同じ軍服を着ており、本来風紀委員長として着ていた服とは概ね色が違うだけだ。
口を濯いでいたトウマが席につくと三人は手を合わせる。
「「「いただきます」」」
「そう言えばヒナ……
「いいえ、何一つ」
「…………そうか……」
「ヒナちゃんの手作りだから美味いなぁ!」
「いいから、早く食べて」
「了解!」
リビングに置いてあるテレビはこの時間ではニュースが流れており、キヴォトスで起きたことを報道していた。先生がエデン条約での襲撃で意識不明の重体となり連邦生徒会が機能停止した今なお、クロノス報道部は報道を続けている。
そして空崎ヒナはエデン条約の日、先生を庇い瀕死の重症を負った。当時名の売れぬ傭兵だったトウマとマーシャはアリウス生を相手にしつつどうにかヒナを救助することに成功した。
しかしヒナは記憶を失った。トウマ達は風紀委員長である事も知らぬまま、ヒナを仲間として受け入れていた。
『先日ミレニアムで大規模な襲撃が発生しミレニアムが壊滅状態に────』
「ミレニアムか……今回の依頼もミレニアムの偵察だが、恐らくは碌な依頼じゃないぞ」
「かもな……だがヤバいのがいる分逃げられるからそこそこの情報掴めたらパッパ帰んのが無難だな〜」
「そうね。少なくとも私達だけで何とかなるような相手じゃないのが元凶になってるはずだわ……全く、面倒な依頼を出すものね」
「……断っておくのも考えるべきだったか」
テレビを見ながらも三人は次の依頼について思い思いのことを話す。彼らはカイザーから『壊滅したミレニアムの偵察』を依頼されていた。
「トウマは早く着替えろ」
「マーシャ冷たいぞー」
「早く着替えなさい……本当に間に合わなくなるわ」
「分かったよ!ヒナちゃーん!」
そう調子の良い事を言いつつ、着替える為にトウマは部屋に戻り扉を閉めた。
「…………いつもあんな調子ね……」
「あいつはマジでああ言う感じで単純なやつだから……本当に女子が好きなんだな」
「そうなら態度を改めるべきとは思うけれど……」
「同感だ」
そう喋っている内にトウマはすぐに着替え終わらせ、マーシャにとっては見慣れたジャケットとカーボパンツを着たトウマが部屋から出てきた。ヒナも風紀委員長として活動していた頃のコートを羽織り、マーシャも鉄帽子を被った。
「準備はいいな?」
「あぁ、バッチリだぜ」
「本当に?」
「ヒナちゃーん。俺の本気舐めちゃいけないぜ?腕のロケランもあとは弾を込めりゃいつでもぶっ放せるぜ」
「……ならいいわ」
「行くぞ。偵察する時間がなくなる」
三人が外に出るとすっかり外は曇っており、ブラックマーケットにいた時は彼らは余り空が見えなかったが、ミレニアムの方まで行くと厚い雲が空を覆っていることがよく分かった。
「最近は曇りが多くてだるわ〜。雨も多いし。錆びるっての」
「だな……折りたたみ傘でもあったほうがいいだろうか」
「最悪私の翼があるわよ」
「……流石に3人は入らないだろう」
そうくだらない会話を交わしながらも、三人は周囲を警戒し進んでいた。ミレニアムであったはずの瓦礫の山は時折人が混ざっており、そこで起きたことの異常性と凄惨さを物語っていた。
「待て……見慣れないオートマタが見える……イカか?なんだあれは……」
「マーシャ相変わらず目良過ぎだろ」
「数は?」
「…………手前だけでも二十はいる……」
マーシャの見据える方向には、無名の守護者達が向かってきており、恐らくは生存者がいないか探している段階なのだろう。
「カイザーの偵察部隊が返り討ちにされていた正体はこれ……か」
「見えた……この数はやべぇな」
「俺が先にここから削っておく。トウマのロケランで吹き飛ばしてくれ。残ったやつは俺がカバーする」
「了解!」ガシャン!
トウマはそう返事し、右前腕の外側を変形させて仕込まれていた発射筒を出し、弾頭を入れる。敵の方へ向かう途中に盾にするための看板を拾いながら、敵方へ走って行く。
「あの馬鹿……!」
「追うわ」
「頼む」
マーシャとヒナはそう短く会話を交わし、ヒナは走るトウマを追いかけ始める。ヒナはその体躯に見合わない大きさのマシンガン『終幕デストロイヤー』を持っているが、それでもトウマとはそう変わらない速度で走って行く。
すぐにトウマは無名の守護者の前に躍り出て、投げるが如く無名の守護者目がけロケットランチャーをぶっ放す。無名の守護者達はトウマを視認するなり射撃をしようとするが、その前にロケットランチャーの弾が着弾する。
ドゴーーーーーーーーン!!!!!!
かなりの近さで爆発し、その破片は持っていた看板により防がれる。無名の守護者達の何体かは木っ端微塵となるが、まだまだ無名の守護者は残っており、その内の数体はマーシャの狙撃により処理される。
丁度ヒナはトウマに追い付き、『終幕デストロイヤー』を構えるが同時に無名の守護者もレーザーを撃とうとしていた。
「こっちをみろぉぉ!」
トウマはそう叫びながら持っていた看板をぶん投げ、ヒナを狙った無名の守護者を破壊する。看板を投げて無力化など常人には不可能だが、トウマの持つ高い身体能力があってこそ成立するものだ。
「はぁ……はぁ……やっと追いついた…………ん?2時の方向にピンク色のなにか……生徒か!?」
「助けてくださいー!!!!」
マーシャが切れ切れの息で見る方向には、大量の無名の守護者を引き連れ、こちらに走ってくる白い服を着ている少女がこちらに向かって走ってきた。
「2時の方向?……ってそんな大量に引き連れてくんなよ!」
「ヒナ、もうあいつとあの少女諸共ぶっ放せ。多分あいつなら何とかするはずだ」
「了解」
マーシャの指示を聞きヒナはその手に持った『終幕デストロイヤー』を構える。
トウマはそれを見て、自分諸共撃つつもりなのを察しピンク色の髪の少女の元に走った。
「伏せろ!」
「へ?」
ドドドドドドドドド!!!!
マシンガンから放たれる凄まじい弾幕は無名の守護者達を撃ち抜いていく。トウマはピンク色の髪の少女をギリギリ抱き抱え、瓦礫の影に隠れる。
「大丈夫か?」
「大丈夫じゃないです……!!!!」
「ちょっ……落ち着けって///」
少女は半泣きでトウマに抱き着くが、そういうのに慣れていないトウマは思わず照れてしまう。
「朝起きたらユウカ先輩が……ノア先輩も……!なんで……なんで私だけが……!」
「…………」
しかし少女の様子を見て、トウマの火照りはすぐに収まった。代わりにトウマは少女に向けて優しく声をかけ、頭を撫でる。
「辛かったな……今は思いっきり泣いていいぜ」
「う……う゛ぅ゛……!」
そしてその少女はそのまま静かに泣いた。未だに外では銃声が鳴り響いているが、少女の啜り泣く音はトウマに鮮明に届いていた。
「……少し落ち着いたか?」
「はい……」
「名前だけ聞いてもいい?」
「…………コユキ……です」
「そっか。よろしくな、コユキ」
トウマがそう笑いかけた辺りで銃声が鳴り止み、戦闘が終わったようだった。トウマはコユキの相手に手一杯で、戦闘には参加したくても出来なかった。
「あっぶねぇって!ヒナちゃん容赦ない!」
「指示したのは俺だ。ヒナにはとやかく言うな」
「マーシャ!お前、俺に流れ弾当たったらどうするんだよ!」
「あの弾幕の範囲にもろ入ってて流れ弾で済むのはお前だけだよ」
トウマはそう文句を言いつつも泣き疲れて眠ったコユキを背負い、瓦礫の裏から顔を出す。
「少なくともお前がそこで隠れていた間は俺らが倒したから文句は言うな」
「酷ぇ!」
「それよりも……その子は?」
「あ、この子?コユキって名前の子らしい」
「へぇ……ミレニアムの生徒ではあるみたいね」
「そうか……成果はあった。急いで戻るぞ」
「えっ?」
そういうマーシャが見据える先には、無名の守護者の統率者と思しき黒い服の少女が、宙に浮きながらマーシャの方を見ていた。
焼け焦げた腕章
ヒナがつけていた腕章。しかしエデン条約の巡航ミサイルを受け、書いてあった文字が判読できぬ程焼け焦げてしまっている。
ヒナは未だに、この腕章を捨てられずにいる。