滅びのキヴォトス   作:脱力戦士セシタマン

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 書けたのでヤケクソ投稿です。

 オリキャラあともう一人出します。

 一応主人公はトウマ君のつもりだよ。



2話 白い影

 

 

 彼らは無事に家へと戻り、それぞれリビングでくつろいでいた。

 

「びっくりしたぜ……急にマーシャが急げとか言い出すから」

「すまんな。奥にいた何かに見られていたから危険と判断してな」

「でも……私も見えたけれど私達を見ていたのは尋常ならざる相手よ。確証は持てないけど、恐らくあれが元凶よ」

「距離が離れていて助かった……しかしあの少女は一体……」

 

 ヒナはノートパソコンを打ってカイザーに成果を報告する為の報告書を作りつつ、マーシャの見ていた物を思い出す。ヒナには具体的な姿まではよく見えていなかったが、マーシャの口ぶりからして見るにヒナと同じヘイローを持つ生徒なのだろうと予想していた。

 だからこそ、訳が分からなかった。生徒がそんな、ミレニアムを壊滅させるだけの理由も、それをできるだけの力の出処も、予想が出来なかった。

 

(ミレニアムに恨みでもあったのかしら?)

 

 そんな事を考えながら、今確実に分かっている事だけを報告書に纏めていた。

 

「そう言えばマーシャ、報告書終わった〜?」

「それなら私がやってるわ。丁度終わった所、後は送るだけ」

「マジ?ヒナちゃん助かるわ」

「これぐらい、造作もないことよ」

 

 そう言うヒナの表情は余り動いていなかったが、見ている方向は虚空だった。まるで何かが頭の中でつっかえていて、けれどそれがどうしてなのか根拠が欠片もないから考えてもどうしようもないと思おうとしているような雰囲気を纏っていた。

 

(前(・)は(・)こんなにすぐには終わらなかったのに……前っていつ?……)

「……ヒナ、考え込むな。失った記憶はすぐには戻らない。焦るな」

「…………そう、ね。その通りだわ」

 

 ヒナは自分に言い聞かせるようにそう言った。考え込んでも何も変わらない。それはヒナにも分かっていたが、思い出せそうなら思い出したいのは当然の事だ。

 

「コユキ上手っ!」

「にはっ!その程度じゃ当たりませんよ〜!」

「それよりあのトウマに懐いてるあいつをどうする……」

 

 マーシャが見る先ではコユキとトウマがリビングのテレビを使いゲームをしており、トウマに泣きじゃくっていたときが嘘のようにトウマと遊んでいた。何と言うか、初めて会うはずなのに兄妹のようにはしゃいで遊んでいた。

 こうなった理由はトウマが『気晴らしにゲームでもしてみないか』という提案から始まり、結果二人とも意気投合してはしゃいで遊ぶまでに至った。トウマはコユキの様子を案じた提案のつもりだが、内心トウマは元気を取り戻せたことに少し安心していた。

 

「何と言うか……仲がいいわね」

「あいつはノリがいいタイプだからな……あのコユキとか言う生徒もノリがいいタイプなんだろう……」

「ミレニアムで起きたことを聞きたい所だけど……まだ聞かないほうが良さそうね」

「一先ずは保護するか……」

 

 マーシャとヒナは一先ずその様子を見守る事にした。恐らくはミレニアムで起きたことを思い出したくはないのだろうと二人は予想し、今はそっとしておくことにした。

 

 

 

 

 

…………………………………………………………

 

 

 

 

 

 場所は変わってトリニティの建物。そこにはピンク色の髪の少女とブロンド色の髪の少女と、白い服を来た青年がいた。

 少女達には翼がありヘイローを持っており、さながら天使のような姿だ。対照的に白い服の男はフードを深々と被っていた為に目元はよく見えず、その装いは古の時代のアサシンのような姿だった。

 

「で、そこの白い服の人は?」

「彼はブラックマーケットの方で有名な暗殺のプロです」

「遂にそんな人を雇っちゃうなんて来るとこまで来ちゃったね☆」

「今は手段を選べる状態ではありません」

 

 彼はその正体や名前を掴むことはできず、かろうじてナギサ達が掴めたのは『声を出せない事』と『依頼は探し出して依頼を出さなければいけない』と言うこと。それが本物であるかどうかの確証も持てない中、どうにかこうにか金を積んで依頼を出した為に何とか呼ぶ事が出来た状態だった。

 白い服にフードを深々と被り目元の見えない彼は、まるで感情を失っているかのように反応を見せず、ナギサもミカも少し引いているような、理解不能なものを拒むように距離を取っていた。

 

「今やゲヘナとの膠着状態。トリニティの治安も悪化して行く一方でティーパーティー内でも汚職の横行している現状……それを解消するべくこちらで雇用しようかと」

「因みにこの人の名前は?」

「名前は……どういうわけか調べることも出来ませんでした。まさかトリニティの情報網をもってしても分からないとは……」

「もしかして名前ないの?」

「あるようなのですが……彼はブラックマーケットの方では半分程伝説の存在です───」

 

 すると彼は懐からメモ帳を取り出し、何かを書き出しナギサ達に見せてきた。

 

「アルビノ……ですか?」

 

 すると彼は頷いた。アルビノ……先天性白皮症の事で白い服を纏うことが多い彼には相応しい名前だが、残念ながら彼には特定の名前がなかった。

 彼が依頼を受けるときは特に頓着がなく好きに呼んでもらっていたのだが、勝手に呼ばれた名前に尾ひれがついていった結果『白い死神』や『地獄へ誘う亡霊』や『白雷』と……その存在という概念が一人歩きしているような状態になってしまった。

 彼にとっては不本意だが、最早彼にどうこうできる問題ではないためほぼ諦めている。

 

「それでは……貴方にはこの方を暗殺してもらいましょう。ティーパーティーで汚職が問題となっている方なのですが……」

 

 そう言いナギサは封筒をアルビノに渡す。彼はそれを受け取り、中を見た。アルビノの瞳は虚ろだったが、ナギサの目を確実に見て頷いた。その瞳の異様さにナギサは内心狼狽えるが、それは表に出さなかった。

 

「……ではよろしくお願いします。良い報告を期待していますよ」

 

 その言葉を聞いた瞬間、アルビノは音もなく立ち去った。文字通りアルビノからは布擦れの音すらもせず無音であり、ティーパーティーの二人からしてみればまるで幽霊のような、白い影ともいえるような人間だった。

 

「……ナギちゃん。あの人って人間なの?」

「さぁ……それすらわかりませんが、職務を全うするなら良いでしょう」

 

 アルビノはそこまで聞き取り、ティーパーティーの建物を離れた。

 

 

 

 

…………………………………………………………

 

 

 

 

 アルビノと呼ばれる男は、封筒の中身を確認し、情報を頭に入れる。アルビノは弱視であり、服装はどうにか判別できる程度。それ故に書面の内容はスマホの読み上げを聞いて頭に入れている。

 ティーパーティーの生徒が最も無防備かつ潜入するとは思われない場所。それは家とアルビノは考えた。そもそも家になんて入れるのかと言う話だが、彼の存在は何かしらの認識阻害能力があると言われても納得する程の気配を消す技術があり、それは影が薄いとされるミユを超えるほどである。

 そして何より視覚以外の全ての感知力が高く、敵は見えずとも聴覚嗅覚触覚を頼りに相手を認知することが可能だ。

 

「…………」

 

 アルビノは全ての情報を聞き終え、封筒は身体に隠す。アルビノは少し考えた後、ターゲットの家へ向かって走った。アルビノの足は速く、また相変わらず無音だった。

 いざターゲットの家にたどり着くと一般的な家のセキュリティとそう変わらず、アルビノは正面玄関の鍵をピッキングで素早く空けて入り込んでしまう。アルビノは痕跡を残さぬように細心の注意をはらいリビングに潜み、ターゲットが家に入るのを待った。

 

ガチャッ……ガチャン!

 

 少し日が暮れた辺りで、家の中に人が入って来た。彼は少し耳を澄ませ、歩く音の大きさと幅からターゲットの身長と体重を情報と照らし合わせ

 

「さて……ゲヘナとどう和平を」

 

 ターゲットがリビングに入りながらそう言いかけた所でアルビノは凄まじい速度で襲いかかった。

 

「っ!?」

 

 アルビノは背中の護拳が付いている剣を二刀持ちし、機械のような正確無比な動きで順手持ちしている右手で首元に突き刺し、逆手持ちの左手で喉を切り裂いた。その生徒は剣に流れていた電流の影響か動けず、そのまま心音すら感じられなくなった。

 生徒を殺せるこの剣の出処はアルビノしか知らない。そしてそれを誰かに伝えるつもりも、アルビノには無かった。

 アルビノはすぐに家を出た。長居は無用と判断してのことだろう。アルビノはそれなりに離れたところへ来た辺りで報告をするべく、封筒に入っていたナギサの連絡先にメールを送った。

 

『ターゲット処理完了』

 

 そう短い文言だけを送り、

 ふとアルビノが耳を澄ますとゴミ箱の中から心音が聞こえた。アルビノは気になって中を見るとウサ耳をつけた少女がゴミ箱の中でうずくまっており、アルビノは何故そこに入っているのか、理解に苦しんだ。

 

「ま、待って……」

 

 微かな声だったが、去ろうとしていたアルビノは確実に聞き取り、少女を見る。

 

「やっと……見つけてくれた……」

 

 見つけてくれたとはどういうことなのかアルビノにはよくわからなかったが、アルビノは一旦少女から紡がれる次の言葉を待った。

 

「その……私……影が薄くて……仲間からも忘れられて……」

 

 ゴミ箱の中にいれば当然じゃないのかとアルビノは思ったが、少し考えて少女がそもそも影が薄く忘れ去られた為にこうなっているのだろうと予測した。

 アルビノはどうするべきか悩んだ。アルビノは感情が希薄でどうにかしようと思うことは多くなかったが、珍しく彼女の気配がないと言うものに興味があった。もしかしたら、自分よりもより仕事に向くものかもしれないと。

 アルビノは、無言で手を差し伸べた。

 

「えっ……?」

 

 困惑する少女にアルビノは懐からメモ帳を出し、書いてメモ帳を見せる。

 

『私の元に来てみないか』

「じゃあその……お願いします」

『名前は』

「あ……か、霞沢ミユです……」

 

 アルビノの手を取ったミユはゴミ箱の中から引き上げられ、そのままアルビノの普段眠る場所まで手を引かれていった。

 

 

 

 

…………………………………………………………

 

 

 

『ターゲット処理完了』

 

 それだけ書かれたメールを、日が沈み切った辺りでナギサは確認した。

 

(……早くないですか!?)

 

 いくらなんでもこの早さは何かの間違いではないかと思い、ターゲットだった生徒に電話をかけるが全く繋がらなかった。

 ナギサは少し戦慄した。幾らヘイローを破壊できる爆弾の存在があるとしても、たった一日、なんなら半日程度で暗殺してしまったのは、ナギサにとっては恐ろしい事だった。

 

(しかしあの瞳は……一体……)

 

 ナギサはアルビノと呼ばれる男の異常さに、疑念があったがそれは今考えたとて解決するような内容でもなく、また契約に従うのであれば何でも良かった。

 

(少なくとも腕は確かのようです。依頼してみましょうか……万魔殿への襲撃を)

 

 ゲヘナとトリニティの争いの火種は、新たに燻り始めていた。

 

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