まあ生徒はバンバン死んでもらいます。バッドエンドスチルの世界だしね。
『続いてのニュースです────』
廃墟の偵察から数日が経ち、四人は朝食を取りながらニュースを見ていた。
『近年急増している生徒にもキヴォトスの外の者同様致命傷を与える銃弾の流通が────』
「近年、じゃなくてここ数ヶ月だろ!?」
「怖いですね〜」
「ニュースに文句を言わないのよ」
トウマはニュースにツッコミを入れるが、ヒナがそれを宥める。
エデン条約での混乱以降、致命傷を与えることが可能な銃弾の流通が横行しており、特にブラックマーケットを中心として広まっている。これはある種の革命であり火種でもある出来事で、キヴォトスでは生徒が死ぬ事が珍しいことではなくなり始めていた。
「それじゃあ今日も一日お仕事頑張ってくださいね!」
「待て、ちょっと待ってくれ……」
「ん?どしたんマーシャ」
「おかしくないか?」
「何言ってるんですかマーシャさん。何もおかしい所なんてありませんよ?」
コユキはトウマに乗じさも当然の如く間違っていない発言をする。しかしマーシャとしては少し納得の行かないところがあるようだ。
「保護するとは言ったが、ニートを匿うと言ったつもりはないぞ……」
「げっ!」
「その反応は自覚アリなのね……」
「そう酷いこと言うなよ。コユキちゃんだってミレニアムで命からがら生き延びて傷心なんだぞ?」
「そ、そうですよ!こんな可哀想な私に働けなんて!」
コユキはすかさず乗じようとするが、以前の様子を見ているマーシャやヒナからしてみると、多少辛いのを隠しているかもしれないといえど家事の手伝い位なら出来そうなものだと思った。
「だがこっちも何もできない奴を匿える程余裕はない。食い扶持に困りたくなければ役に立て。それだけだ」
マーシャはそう言うと、自分の食べ終えた食器を流しに置いてから自分の部屋に戻っていった。マーシャは根は優しい為、マーシャとしては何かしらできればいい位の考えだった。少なくとも『できないから仕方がない』という考え方はマーシャは好きではなかった。
「酷いじゃないですか!?」
「マーシャは『できないから仕方がない』とかいうのは嫌いだしな……マーシャらしいぜ」
「でも……私はマーシャの言うことは最もだと思うわ。昨日はゲームをする元気はあったんだし」
「まあな」
「ぐぅ……!」
コユキはぐぅの音は出ているが、ぐぅの音も出ない程には言われてしまう。
「わかりましたよ!行きますから!」
「よしよし、偉いぞコユキ!」
「ふんす!」
「…………そろそろ時間よ」
コユキがトウマに撫でられている様子にヒナは何とも言えない気分になるが、それは表に出さずに食器を流しに運んで支度を始めた。
…………………………………………………………
「結局来るんだな」
「ほんとは嫌ですよ!」
「偉いぞコユキちゃん!」
「そうですよ!働いてるだけ偉いんですから!」
そう言うコユキは
「今回の依頼はゲヘナの万魔殿を護衛だ」
「ゲヘナ……」
「多分ヒナちゃんがいた所だよな?」
「角と翼があると思ったらそういうことだったんですね」
四人はそう喋りながらも、万魔殿の建物に向かった。ゲヘナの領地にはトウマとマーシャは中々入らない為に新鮮だったが、ヒナは
「キキキ……よく来たな」
「この人が傭兵さん?」
「そうだぞ、イブキ〜」
そう言うマコトはイブキという見るからに幼女な万魔殿の制服を着た生徒にそう言う。トウマもマーシャもヒナもコユキも目を疑う光景だったが、依頼人の事情は聞かぬが吉なので聞かないことにした。コユキは聞こうとしていたが、マーシャが口を塞いでいた為聞くことはできなかった。
「き、ききき貴様は!」
「…………」
依頼主のマコトはマーシャの後ろからひょっこり顔を出すヒナの姿を見て凄まじく驚いていたが、それと同様にヒナも苦い顔をしていた。まるで思い出したくない相手だと言わんばかりに。
「マコトちゃんなんか知ってるの?」
「き、気にするな……古い知り合いに顔が似ていてついな」
「あ、そうだったんだ」
「そうなのか……」
トウマもマーシャも特に何も疑いはしなかったが、マコトはヒナが風紀委員会に戻ることを阻止したかった。
(空崎ヒナが風紀委員会に戻ってしまえばマコトの威厳が落ちてしまう!)
という何ともマコトらしい考えだったが、それはこの場にいる者は誰も知る由もなかった。
「あら、もう来ていたの?」
「どうも〜!情報部の元宮チアキでーす!」
「はぁ……最近は治安が悪化してて面倒ですね」
他の万魔殿の主要メンバーも部屋に入って来た。
「こんな人まで雇わないと……って貴方は……」
「?……」
「……いえ、なんでもありません。あのマコト先輩がツッコんでないならそういうことなのでしょう」
イロハの物言いにヒナは何かを隠されていることが分かったが、それを聞き出すことはしなかった。ヒナとしては質問しても答えないのは分かりきっていたから、もやもやを抱えたままだが口を噤む事にした。
「それで……護衛ってのは?」
「まず自己紹介からね。私は京極サツキ」
「棗イロハです」
「イブキって言いまーす!」
「そして私こそが!偉大なる議長、羽沼マコトだ!」
「それで、詳しい話だけど……もう一組が来てから、ね」
「ちょっとアルちゃーん。本当に良いの?万魔殿なんかの依頼を受けちゃって」
「ここでは社長と呼びなさい!」
サツキがそう言うと、便利屋68が入って来た。万魔殿の生徒ではないが、ヘイローがある辺りトウマとはまた別の傭兵なのだろうとマーシャは予想していた。
「あら、私達とは別に傭兵がいたの……って!?!?」
「どうもートウマでーす。こいつがマーシャでこっちの小さくて可愛いのがヒナ」
「私は黒崎コユキです♪」
小さくて可愛いと言われヒナは少し照れるが、対照的にアルはヒナを見て白目を剥いていた。いつもは心のなかで白目を剥いているが、ヒナは死んでしまったと報じられていた為にその衝撃を隠せないでいた。
(な、なんで風紀委員長が傭兵の仲間になってるのよ〜!!!!)
「あれれ〜?なんでこんな所にいるのかな〜?」
「?……貴方達はもしかして知り合いだったのかしら……」
「……覚えてない?」
ムツキはからかうようにそう質問し、キョトンとした様子や風紀委員会の腕章をつけていないヒナを見てカヨコは薄々ヒナの現状を察した。
「……社長、自己紹介したほうがいいんじゃない?」
「はっ!……そ、そうね!」
アルは気を取り直したようにそう言い、コホンと咳払いをし
「私は社長の陸八魔アルよ!」
「私は室長のムツキ!ムツキちゃんって呼んでね♪」
「課長のカヨコだよ。よろしく」
「は、ハルカと申します……!」
「四人揃って便利屋68よ!」
「よろしくな!」
「なんか……戦隊モノの自己紹介みたいですね」
「コユキ……そういうことは言ってやるな」
陸八魔アルのドヤ顔を見てコユキも流石に配慮して小声で言ったが、マーシャはそれをたしなめる。マーシャも同じ事を思ったことやコユキなりに配慮はしようとしていたことも鑑みて余り強くは注意しなかった。
「それで……今回の護衛はどういう経緯なの?」
「はい!最近トリニティの方で不審な暗殺が起きてるという情報をキャッチしたので調べてみた所、ブラックマーケットで半ば伝説となってる暗殺者によるものと見て間違いない事が分かりました!」
「で、伝説の……暗殺者……!」
「彼の名前は『白い死神』や『地獄へ誘う亡霊』や『白雷』等……特定の名前ではないもののその殺害方法から一つの存在を指すとも言われています」
「か、カッコいい……!」
カヨコの質問に対し、チアキが詳しく説明していく。
陸八魔アルはチアキの言う伝説の暗殺者について目をキラキラさせながら聞いていた。マーシャとコユキは厨二病全開な名前にちょっとダサいと心の中でツッコミを入れつつも、感性は人それぞれだと思い言わないようにした。
「それに、やられちゃった子はどうやら汚職が問題になっていたみたいなの。ゲヘナと和平を結ぼうと活動していた子だったし、依頼主はトリニティの生徒と見て問題はないわ」
「成る程な……」
サツキも説明するが、ミレニアムの突然の壊滅も合わさり、ゲヘナとトリニティが紛争状態に近くなるとキヴォトスの治安は相当悪化するとマーシャもトウマも危惧していた。それもこれも先生が意識不明となり、連邦生徒会が機能停止状態になってしまったからなのか……そうは考えながらもトウマは説明に耳を傾ける。
「ですね……それで犯行の現場を捜査して襲撃してくる可能性が高い日時を割り出したということです」
「そうだったんだ」
「遂に暗殺とは……本格的に戦争になりそうで面倒ですね」
イロハはそう言うが、マーシャは狙われている身で『面倒』などという感想が出てくるのは随分呑気と思ったが、面倒程度に思っているほうが気が楽なのだろうと思いツッコむのはやめておいた。
「兎にも角にも私達は出来ることをするだけ……そっちの皆もよろしく頼むね」
「おう、よろしく!」
そして便利屋68とトウマ達はその襲撃者に備え、作戦会議を始めるのだった。
あかん飽き性過ぎる……全然書けねぇ……