異界の邪竜は静かに暮らしたい 作:邪竜の棲家
「⋯⋯⋯?どうしてそんな悲しそうな顔をするんだいヤルダ?」
おっと、どうやら顔に出てしまっていたらしい。
平常心、平常心っと。
「え?あ、いや、なんでもない。それよりもお前にとって私は
「そうだね。あ、でもボクが君をそういう風に思ってるだけだから、君がボクのことを
ヴェルダナーヴァがそう言ってくる。
そうは言ってもな、こちとら失恋してしまったのだからむしろお前を
あとはヴェルダナーヴァのことをなんて呼ぶかだが、お
ふーむ、ならばお
「───ヴェルダお
「⋯⋯⋯!お
ヴェルダナーヴァが嬉しそうに笑って、私の頭を優しく撫でてくる。
子供扱いされてる気がしてムッとしたが、大好きなお
が、やはりというか恥ずかしいと思った。感情が希薄だった頃はなんとも思わなかったのにな。
それは兎も角、ヴェルダナーヴァを
「それじゃあボクの世界を案内するね」
ヴェルダナーヴァがそう言って私の手を握ってきた。
は?と不可解に思い、私はヴェルダナーヴァに聞いた。
「⋯⋯⋯手を繋ぐ必要はあるのか?」
「え?駄目だった?」
「いや、別に駄目というわけではないが」
「ん?抱っこされる方がよかった?」
「は?」
だ、だだだ抱っこ!?是非───じゃない!そんなことされたら恥ずか死するわッ!
なんて素晴らし───じゃなくて!恐ろしいこと言うのだこの馬鹿
「⋯⋯⋯手を繋ぐ方がいい」
「分かった、抱っこだね!」
違うわッ!何が分かっただよ!全然分かってないじゃないか!?
内心で叫ぶもヴェルダナーヴァはお構いなしに私を軽々と持ち上げ抱っこした。
「~~~~~ッ!!?」
嗚呼、私はなんて幸福───じゃない!死ぬ!恥ずか死んでしまうわッ!
いや、待て。心を落ち着かせるのだ!
平常心、平常心⋯⋯⋯うん、無理!
ボンッ!という音と共に頭から煙を出し始めた私は、目を回しながら気を失ってしまった。
「⋯⋯⋯ちょっとからかいすぎたかな?」
そう呟いたヴェルダナーヴァが苦笑したのだった。
「───⋯⋯⋯ん」
目が覚めたら見知らぬ天井───ではなく、夜空のような黒髪と、星空の如き輝きを放つ瞳の美女の顔があった。
うん?何がどうなってるんだ?というよりこのお姉さん誰?
「あら、目が覚めたのね」
「あ、うん。お姉さんどなた?」
「私の名はオベーラ。〝始原の七天使〟にして、〝星王竜〟ヴェルダナーヴァ様の忠実なる使徒よ」
ふむふむ。ヴェルダお
背中に白い翼が生えておるな。⋯⋯⋯触ってみたい。
それはそうと、
「してオベーラよ。何故私はお前に手を握られておるのだ?」
「それはね、ヴェルダナーヴァ様より貴女の介抱を任されているからよ」
介抱?ああ、そうか。私はまた気絶したのだな。だからベッドの上で寝ていたのか。
また無防備な姿をヴェルダナーヴァの前で晒してしまったのかと思うと急に恥ずかしくなってきた。
コホン!と咳払いをして気持ちを落ち着かせる。
ところで───
「先程から私の頬を突っついて遊んでいる金髪のお前はなんだ?」
「あ、気づいてたんだ?」
「そりゃあな。これだけちょっかい出されて気づかないのは無理があるだろうよ」
「それもそうだね。私の名前はピコ。オベーラと以下同文、よろしく」
「うむ、よろしくピコ。以下同文ってことはお前も〝始原の七天使〟とやらなのだな」
「そんなとこ。ちなみにアンタよりも私の方が先輩だから。何が言いたいのか分かるよね?」
「ああ、敬語を使えってことだろ?───だが断る!」
え?と驚くピコ。
そもそも、お前達の主たるヴェルダお
「そういやアンタはヴェルダナーヴァ様にタメ口利くような命知らずなヤツだったな。アタイにはそんな真似、できる気がしないぜ」
「ふふん!どうだ、凄いだろ!赤髪のお前は───」
「ガラシャだ。よろしくな、嬢ちゃん」
「ああ、よろしくガラシャ。私にもヴェルダお
「そうかい。ならお言葉に甘えるぜ、ヤルダ」
「ああ、是非そうしてくれ」
ふむ。このガラシャも〝始原の七天使〟とやらのようだな。背に生やす白い翼が
私がそんなことを思いながら上体を起こすと、オベーラがふと気がついたのか聞いてきた。
「そういえば貴女って、ヴェルダナーヴァ様の
「ん?まあ、そういうことになってはいるな」
「なら貴女のことも様付けした方がいいわよね?」
「え、マジ?」
「その方がいいだろうな」
ふむ?ヴェルダお
だがそんなもの───
「いや、別にいらないだろ」
「「「え?」」」
「え?じゃない。たしかにヴェルダお
私がそう言うと、オベーラ、ピコ、ガラシャの三人が困った顔を見せる。
やれやれ、仕方のない奴らだな。こうすれば私がニセモノだと理解できるだろう。
私はオベーラを見つめると、瞬時に解析を完了させ模倣を開始した。
〝始原の七天使〟───ヴェルダナーヴァが〝光〟の大聖霊から生み出した七柱の
その
流石に〝魂〟や
まあ、その〝魂〟と
「───さて、これで私が万物を模倣し再現することしかできないニセモノだと理解してもらえたか?」
オベーラそっくりになった私が言ってやると、オベーラ、ピコ、ガラシャの
ふふん、驚いてる驚いてる。その反応が見れて私もしてやったりの気分なのだ!
両手を腰にやり、胸を張ってドヤ顔する私。
「⋯⋯⋯そうね。私がそんな顔するはずないもの」
と、オベーラが言いながら私の顔に触れてくる。
「でもさ、ニセモノとは思えない出来だよね」
と、ピコが言いながら身体を遠慮無用に触ってくる。
「そもそもよ。万物を模倣し再現するって、アタイからしたら意味不明だよ」
と、ガラシャが顎に手をあてながらまじまじと見つめてくる。
ふむ。コイツらに至近距離で見つめられても、接触されても、特に何も思わないな。
ヴェルダナーヴァだと変に意識してしまうのだよな⋯⋯⋯ッ!!?
ヴェルダナーヴァに抱っこされた時のことを思い出してしまい、私の顔が真っ赤に染った───その瞬間、元の姿に戻ってしまった。
む、むう。どうやら感情が昂ると元に戻ってしまうらしい。
一方、オベーラ、ピコ、ガラシャの
『⋯⋯⋯ホントにこの子、危険な存在なの?』
『あら、ヴェルダナーヴァ様の御言葉を疑う気?』
『そうだぜピコ。ヴェルダナーヴァ様の御言葉は絶対だろ?アタイらは与えられた御役目を果たすだけさ』
『そうだね。変なこと言ってごめん』
『⋯⋯⋯けれど、そうね。たしかに気になるわね。この子のことをどうしてヴェルダナーヴァ様が危険視しているのかを』
『ヴェルダナーヴァ様曰く〝この子はとても危険な存在だから、取り扱いには気をつけてね〟───って言ってたわけだが、パッと見だとそうは思えないんだよな』
ガラシャの言葉に頷くオベーラとピコ。
『とはいえ、私達〝始原の七天使〟にはこの子の監視と管理を任されているもの。その使命を全うしないといけないわ』
『そうだね。それにしても監視は兎も角、管理って言い方はなんか変じゃない?まるで〝モノ〟を取り扱うみたい』
『危険な存在だからじゃないか?見る限り、感情が原因で元に戻ってるようだし、力の制御に失敗して暴走させちまう可能性がある⋯⋯⋯とかな』
『それは十分有り得そうね。そうならないように私達がしっかりこの子のこと、お世話しましょうね』
『はーい』
『あいよ』
そんな感じでオベーラ、ピコ、ガラシャの
当時の天使は自我が弱いからこれじゃない感あるけど、変に書くのもアレなんでこんな感じにしました。
オリ主設定
ヴェルダナーヴァのことを〝お義兄ちゃん〟と呼ぶようになる。
『万物模倣』
見たものを瞬時に解析することで模倣し再現する能力。
模倣する範囲は任意で決められるが、対象の〝魂〟を再現すると弱体化を招く。
心核(ココロ)を模倣すると自我が上書きされる可能性があるため基本はやらない。
ヴェルダナーヴァが生み出した存在ならば、完璧に再現可能の模様。
感情が昂ると強制解除され元の姿(最初に再現した姿)に戻る欠点が見つかった。