異界の邪竜は静かに暮らしたい 作:邪竜の棲家
「ところでヴェルダお
小首を傾げながら私が聞くと、オベーラが返してきた。
「ヴェルダナーヴァ様なら謁見の間にいるわよ」
ふむ、謁見の間か⋯⋯⋯流石は〝星王竜〟と名乗ってるだけある。
「そうそう、アンタが起きたら連れてくんだった」
「そうなのか?」
「ああ。そこにはアタイらの同僚もいるから後で紹介するぜ」
ピコとガラシャも続けて言ってくる。
オベーラ達の同僚か。〝始原の七天使〟っていうからには、あと
一体どんな奴らが待っているのやら、と思いながらベッドから降りた私はそのままオベーラ達について行こうとして───やめた。
「あら、来ないのかしら?」
「あ、いや。いちいち移動するのも面倒だと思ってな。一瞬で移動する術があるのだから、そっちにしようと思っただけだ」
「は?ナニソレ?」
「一瞬で移動する術って、どういう意味だい?」
不可解そうに聞いてくるピコとガラシャ。
それに私が頷いて答える。
「ヴェルダお
「はい!?」
「なんだそりゃ!?滅茶苦茶じゃないか!?」
愕然とするピコとガラシャ。
「貴女の『万物模倣』⋯⋯⋯デタラメすぎる力ね。まさに万能って感じだわ」
オベーラでさえドン引きさせていた。
万能、ね。ならばどうして私はヴェルダお
だから私にとって『万物模倣』は万能ではない、と言い切れるのだよ。
それはさておき、早速『瞬間移動』で
私には謁見の間とやらが何処にあるかは知らないし、テキトーに跳んで探し回るのも面倒だな。
ならば───ヴェルダナーヴァの〝魂〟を道標にして跳べば完璧、などと思っていたのだが、それは後に後悔することとなる。
「では先に行ってるぞ。また後でな、お前達」
などと言って私は『瞬間移動』でヴェルダナーヴァの下へと跳んだ⋯⋯⋯のはいいのだが、その結果───玉座に座っていた
「───⋯⋯⋯は?」
「おや?まさか君の方から来てくれるなんてね!もしかして寂しかったのかな?」
「え?あ、いや、違───ッ」
ヴェルダナーヴァの言葉を否定しようとした私だったが、
~~~~~ッ!!?待て!死ぬッ!マジで死んじゃうッ!早く『瞬間移動』で抜け出さなければ⋯⋯⋯え?発動しない、だと!?
ヴェルダナーヴァが私の『万物模倣』を封じているのか?と思ったが、それはどうやら違ったようだ。
これは所謂アレだ。頭では離れたがっていても、身体は離れたがらないという矛盾が生じているからだった。
その結果───エラーが生じて『万物模倣』の発動に失敗したのである。
こんな時にふざけてる場合かッ!と内心で叫ぶ私は、余りの恥ずかしさでまた気絶しかけた。
⋯⋯⋯いや、違う。私こそ素直になるべきだ。
目が覚めた時、ヴェルダナーヴァの姿がなくて私はどう思った?
───寂しい。
『瞬間移動』の本当の使用用途は?
───一秒でも早くヴェルダナーヴァに会いたかったから。
跳んだ先がヴェルダナーヴァの胸は事故?
───否。私の計画通り!クソ恥ずかしいけども!
では次にする私の行動は?
───ヴェ、ヴェルダナーヴァを抱きしめる⋯⋯⋯ッ!!
そうして私は顔を真っ赤にさせたまま、ヴェルダナーヴァを抱きしめる───勇気はまだ皆無なので服を掴んで握りしめた。
そんな私の予想外の行動に、ヴェルダナーヴァは驚きつつも嬉しそうに目を細める。
「(てっきり逃げられるかと思ったけど、まさか受け入れられるなんてね。それに、試しに離れて様子を見るつもりだったんだけど、この子の方から来てくれるとは思わなかった!)」
ヤルダとの最初の出逢いは冷たいものだったが、今じゃ逆に求められるようになっていた。
〝名付け〟による効果で感情がハッキリしたのも大きいだろう。
それに彼女から嫌われるどころかむしろ好かれるようになったことをヴェルダナーヴァは知っている。
まあ、彼女の明らさまな反応を見ればそうとしか取れないわけだが。
「(本当は〝始原の七天使〟に管理させようかと思ったけど、この子はボクをご所望のようだし、やっぱり直接ボクが管理した方がいいよね)」
ヴェルダナーヴァはうんうんと頷く。
もしヤルダがオベーラ達と一緒に来た場合は、そのまま〝始原の七天使〟に管理を任せるつもりだった。
だが彼女は真っ先にヴェルダナーヴァに会いに来たのだ。そんな娘の管理を自分でやらずしてなんだというのか。
そのことについてはオベーラ達が来たら報告しようとヴェルダナーヴァは決めた。
それにしても───
「(この子の正体がただの能力───スキルだったのは驚いたな。ボクが開発した覚えのないスキルだけども)」
そう。ヴェルダナーヴァを模倣しようとした存在が、ただのスキルだったのだ。
そんな存在が自我を持ち、姿を得て、自由に行動するなどヴェルダナーヴァにとっては埒外の出来事である。
この事実に気づけたのは、〝名付け〟を行った後でヤルダを抱っこした時だ。
それまでは未知の存在で何一つ不明だったというのに。
しかし、解ったのはそれだけだった。
何処で生まれたのか、何故あんなところにいたのかはヴェルダナーヴァにも分からずじまいである。
「(どうしてこんな存在が生まれたのかは謎だけど、ただのスキルだからといって、この子を吸収して取り込もうとは思えない)」
ヴェルダナーヴァが生み出したスキルではないが、スキルである以上、望めばその力を取り戻すことが可能だろう。
だがそうはせずに管理をすることを選んだのは、新しい仲間を欲したからだ。
ただのスキルであろうと、会話が成立するし何より天使達と違って逆らってくる。
とても危険な存在ではあるものの、されど消すのはもったいないと思えたので今のままの彼女を選んだのだ。
「(はてさて、模倣しかできない君が何を齎してくれるのか、楽しみにしてるよヤルダ)」
顔を真っ赤に染めながらも服を握りしめたまま離れようとしないヤルダ。そんな彼女の頭を優しく撫でながら、内心で呟くヴェルダナーヴァだった。
オリ主設定
精神生命体ではなく、『万物模倣』というスキルが本体。
そのスキルは精神生命体をも模倣可能なので、スキルでありながら存在を維持できる異質な存在。
逆に模倣先が無ければ存在を維持できないので、ヴェルダナーヴァが現れなければ詰んでいた。