異界の邪竜は静かに暮らしたい   作:邪竜の棲家

6 / 6
フェルドウェイ

「⋯⋯⋯⋯⋯」

 

 ヴェルダナーヴァにそっくりな見た目をした天使族(エンジェル)の熾天使(セラフィム)にして、最初に生み出された〝始原の七天使〟の一柱(ひとり)───フェルドウェイ。

 輝く光を表すような白銀の長髪に、蒼い星の如く輝く瞳を持つ性別が男にも女にも見えるその者は、なんの前触れもなく現れた少女に驚きつつも、冷静に見定めていた。

 

「(⋯⋯⋯ヴェルダナーヴァ様から御話は伺っていたが、『瞬間移動』を模倣するとは生意気な小娘だな)」

 

 不愉快そうな顔で小娘───ヤルダを見上げるフェルドウェイ。

 ちなみにフェルドウェイ達〝始原の七天使〟の四柱(よにん)は、ヴェルダナーヴァの前で跪く形でいる。

 後で残りの三柱(さんにん)も合流する手筈となっていたが、その者達に任せていた少女が先に来たのは想定外だった。

 

「(フン、我らの神になんて馴れ馴れしい小娘だ。ヴェルダナーヴァ様に抱きつくなどなんて羨ま───コホン!不敬であろう!)」

 

 思わず羨ましいと内心で言いかけるフェルドウェイ。

 あの少女を見かけたのは、ヴェルダナーヴァが次元の狭間から連れ帰って来たあの時が最初だったが、何やら変化が見受けられた。

 

「(最初に見た時はもっと幼かった気がしたのだがな。いつの間にか成長している。一体何が───いや、ヴェルダナーヴァ様の〝名付け〟による効果か?)」

 

 ヴェルダナーヴァの〝名付け〟により、生み出された当初は意思なき天使族(エンジェル)だったフェルドウェイ達七柱(ななにん)は、意思を得て〝始原の七天使〟となったように。

 ヤルダという少女もまた、ヴェルダナーヴァの〝名付け〟によって変わったのだろうと。

 よく見たら耳まで真っ赤に染め上げているのが、フェルドウェイの目に映った。

 

「(フッ、自分から抱きつきに行っておきながら恥ずかしがるとは⋯⋯⋯あの小娘はひょっとして馬鹿なのか?)」

 

 などとヤルダのことを小馬鹿にしていたフェルドウェイだったが、その彼女と不意に目が合った。

 その刹那───フェルドウェイの眼前に『瞬間移動』してきた彼女がしゃがみ込んだ。

 そしてそのままジーッとフェルドウェイの顔を見つめてくる。

 

「な、なんだ貴様」

 

「いや、な。お前はヴェルダお義兄(にい)ちゃんに瓜二つの見た目だったから、こうやって至近距離で見つめていれば義兄(あに)への耐性が付くのではないかと思ったのだよ」

 

 などと意味不明なことを言ってくるヤルダ。

 それにしても顔が近い。これほど近くで見つめられたのは、ヴェルダナーヴァに生み出された時以来である。

 耐性とは一体何の話だ?とフェルドウェイは疑問に思った。

 そんなフェルドウェイをジーッと見つめること数秒間。妙案を思いついたのかポンと手を叩いて彼女はこう言ってきた。

 

「よし。お前、私を抱っこしてみろ」

 

「は?」

 

 唐突な提案をしてくるヤルダに、呆れた声を洩らすフェルドウェイ。

 というより意味が分からない。何故私がこんな小娘を抱っこしてやらねばならぬのだ、と不愉快そうに顔を顰めるフェルドウェイ。

 するとヴェルダナーヴァが苦笑いを浮かべながら言ってきた。

 

「何やら試してみたいことがあるみたいだから、その子を抱っこしてあげて欲しいかな」

 

「はい!ヴェルダナーヴァ様の御命令とあらば、喜んで致します!」

 

 不愉快そうな顔とは打って変わって、笑顔で二つ返事をしたフェルドウェイは立ち上がると、ヤルダを軽々と抱っこしてみせた。

 キョトンとした顔でフェルドウェイを見つめる彼女。

 

「⋯⋯⋯ヴェルダお義兄(にい)ちゃんの言うことには逆らわないのだな、お前」

 

「フッ、我らが神に異を唱える者などいるわけがなかろう。そんな奴がいるのならば、この私が誅してやるだけだ」

 

「ふむふむ、成程な。天使族(エンジェル)はヴェルダお義兄(にい)ちゃんには逆らえないっと」

 

 そんなことをボソッと呟いたヤルダが悪そうな笑みを浮かべた。

 それを見たフェルドウェイは溜息を吐き、釘を刺してやる。

 

「おい、貴様。ヴェルダナーヴァ様を利用して何か悪いことでも企んではおるまいな?」

 

「ギクッ!な、ななな何のことだ?私にはさっぱりだな」

 

 挙動不審になり明らかに怪しさ満載のヤルダ。

 やはりこの小娘は危険だ、何故ヴェルダナーヴァ様は滅ぼそうとお考えにならないのか不思議でならない。

 一体どのような恐ろしい企てをしているというのか。

 とそこまで考えてハッと我に返るフェルドウェイ。

 

「(私は一体何を考えているのだ?ヴェルダナーヴァ様の御言葉は絶対!だというのにこの小娘を滅ぼすべきだと私は思ってしまっている。これでは我らの神に異を唱えている愚か者ではないか!)」

 

 たった今、神に異を唱える者などいるわけがないと否定したばかりだというのに、そんな愚か者の思考をしてしまっている自分自身に困惑するフェルドウェイ。

 そんなフェルドウェイの顔をペタペタと遠慮無用に触っていたヤルダが、ふむと何やら考える素振りを見せた後、こう言ってきた。

 

「ふーむ。ヴェルダお義兄(にい)ちゃんへの耐性を付けられると思ってお前を利用してみたのだが、そもそもお前ではドキドキすらしないようだな」

 

「何?」

 

 ヤルダの言葉を聞いてイラッとするフェルドウェイ。

 ドキドキ云々はどうでもいいが、利用されたことが気に入らなかった。

 何よりも、こんなくだらないことでヴェルダナーヴァ様を煩わさせてしまった己自身が許せないと思ったのだ。

 私が素直に応じていれば⋯⋯⋯とフェルドウェイが後悔していると、不思議そうな顔でヤルダが覗き込んできた。

 

「⋯⋯⋯どうかしたのか、お前?」

 

「フッ、どうもしてないさ。それよりも貴様、顔が近すぎるのだがわざとやっているのか?」

 

「ん?ああ、そうだな。この距離感はヴェルダお義兄(にい)ちゃんを真似しているだけだが⋯⋯⋯やはり近いよな?」

 

「そう理解しているのならさっさと離れたまえ」

 

 そう言ってやると、ヤルダは頷いてフェルドウェイの腕の中から跳び降りた。

 やれやれ、やっと解放されたかとフェルドウェイが思っていると、急にヴェルダナーヴァがパチンッ!と指を鳴らした。

 すると目の前にいたヤルダの姿が掻き消えて、一瞬でヴェルダナーヴァの膝上に移動していた。

『瞬間移動』と似ているが違う。これは『空間転移』というスキルだった。

 ヴェルダナーヴァが退屈しのぎでスキルというものを開発し始めたらしく、『思念伝達』は試運転という形でフェルドウェイ達〝始原の七天使〟や自分の妹弟達に与えたそうだ。

 そのスキルはヤルダも模倣済みのようで、恐らく『空間転移』も今この瞬間に模倣を完了していることだろう。

 そんな彼女はというと───

 

「~~~~~ッ!!?」

 

 ヴェルダナーヴァの腕の中に収まったからか、顔を真っ赤に染め上げ、目を回して今にも気絶しそうだった。

 ヴェルダナーヴァにそっくりな見た目だけでなく、名前まで似ているこの少女は、フェルドウェイにとっては気に入らない存在ではあるのだが、

 

「(⋯⋯⋯どうやら私の思い過ごしのようだな。少なくとも、今のあの小娘ではヴェルダナーヴァ様の障害にはなり得ない。それどころかあの様子ではヴェルダナーヴァ様にいい様に利用されるような気がする。『万物模倣』はたしかに脅威のスキルだが、模倣することを許可する代わりに、スキルの実験台になさるおつもりなのだろう。そうでなければ、自らに刃を立てるやもしれぬ危険分子を受け入れたりするわけがないのだから)」

 

 そう考えを改めたフェルドウェイは、一人頷くのだった。




オリ主習得(もとい模倣済み)スキル

『思念伝達』
『瞬間移動』
『空間転移』
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
点
※参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。


  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

読者層が似ている作品 総合 二次 オリ

転生したら黒蝕竜だった件(作者:転スラ好きのライズ民)(原作:転生したらスライムだった件)

転生したらゴア・マガラだった!▼目は見えないし体は重いし、鱗粉は危険。それでも人間との共存を目指す。▼異物が基軸世界へと乱入し、どのような時間を刻むのか。▼運命は天を廻り、そして一体の龍と成る。▼※筆者はMHR:S以外ほぼ未経験。▼※MHXXもやり始めました


総合評価:626/評価:7.92/連載:65話/更新日時:2026年09月08日(火) 23:17 小説情報

転移先でエルモノ(作者:eeeeeeeei)(原作:転生したらスライムだった件)

 半機械人のオリ主もの。原作知識はなく、異世界からの転生。▼ リムルとヴェルドラとの同格扱いで進んでいきます。▼ 主人公の容姿は女性。とは言え身体の殆どが機械なのでリムルと同じく性別は無いです。▼ 無性なのでBLGLは一応・・・▼ 愛されというか、心配というか、な感じです。


総合評価:15/評価:-.--/連載:10話/更新日時:2026年10月10日(土) 20:00 小説情報

転生したら『天理』になったので、『星神』になる。(作者:グランド・アニマル)(原作:崩壊:スターレイル)

スターレイルの世界で何故か天理になってしまった元原神プレイヤーは、▼星神になって、スタレ宇宙に原神の世界観を加える話


総合評価:1463/評価:8.39/連載:5話/更新日時:2026年09月12日(土) 17:00 小説情報

転生悪魔の生きる転スラ(作者:禍津真宙)(原作:転生したらスライムだった件)

死んで転生した元男の2回目の転生のお話【一回目はちゃんと▼バス突っ込みかまして、特典もらって転生しました▼2回目は戦争にて死亡▼この作品はアークナイツと一部Fateの内容があります。▼一部AIつかうかも


総合評価:44/評価:-.--/連載:4話/更新日時:2026年09月09日(水) 22:01 小説情報

脳無(幼女)のヴィランアカデミア(作者:殻木の弟子)(原作:僕のヒーローアカデミア)

脳無(幼女)だってPlus Ultraするんだよ!!


総合評価:3678/評価:8.18/完結:12話/更新日時:2024年08月11日(日) 14:18 小説情報


小説検索で他の候補を表示>>