異界の邪竜は静かに暮らしたい 作:邪竜の棲家
夜空に輝く星々を鏤めたような漆黒の長髪が特徴的な男───ザラリオは、ヤルダとフェルドウェイのやり取りを興味無さげに横目で見ていた。
「(フェルドウェイは何を気にしている?ヴェルダナーヴァ様がお許しになられているのだから、私達がすることは命じられた通りにその者を管理するだけだ。それ以上もそれ以下もない)」
ザラリオにとってヤルダとは、管理しなければならない存在、という程度にしか思っていない。
個人的には彼女に対して何の感情も抱かず、ヴェルダナーヴァに気に入られていようが、それは一時的なものだと思っており、ザラリオにはそのことさえどうでもいいのだ。
ヴェルダナーヴァに必要とされているのならば管理をし、不要とされたならばその時は処すればいい。
だからヤルダが何を成そうが興味はないし、止めようとも思わない。
ヴェルダナーヴァがそれを放置するならば何もしないし、止めろと命じられれば止める、ただそれだけである。
一方、コルヌは、フェルドウェイに馴れ馴れしいヤルダを不快に思っていた。
「(一体何なのだあの小娘は!?生まれたばかりの分際でフェルドウェイにタメ口とか馴れ馴れしいぞ!許せん!今すぐにでもブチ殺してやりたいところだが⋯⋯⋯それはヴェルダナーヴァ様がお許しにならないだろうな)」
コルヌはなんとか怒りを鎮める。
ヴェルダナーヴァに抱きつく行為さえ不敬であり許せないのに、ヤルダは偉そうにフェルドウェイにタメ口を利くのだ。
そんな彼女をコルヌは、今すぐ殺すべき存在、という風に思っていた。
だがヴェルダナーヴァがそれをよしとしない限り、コルヌの独断で行っていいものではなく、もしそれをすればヴェルダナーヴァの不興を買い、消されるのはコルヌの方になり兼ねない。
なので怒りを鎮めてヤルダを睨みつける程度で我慢した。
最後に銀髪に紫のメッシュが特徴的な男───ディーノは、ヤルダに興味津々というわけではないが少し気になっていた。
「(ふーん?ヴェルダナーヴァ様から聞いてた通り、このガキ生意気だな。一度痛い目見ねーと理解できない感じか?まあどちらにせよ、ヴェルダナーヴァ様に仇なすような奴なら容赦しねーが)」
ディーノは内心でそう呟き、ヤルダを睨みつける。
ディーノはヤルダのことを、生意気なガキ、という風に思っていた。
これは一度痛い目に遭わせて分からせた方がいいかもしれない。
ヴェルダナーヴァに仇なすような存在ならば、容赦なくぶちのめしてやるとディーノは思った。
ちなみにディーノは知らないが、ヤルダは既に二度も痛い目に遭っていた。どちらも鳩尾パンチで、最初の一発なんかはKOされていたりする。
そんなヴェルダナーヴァを彼女は、怒らせたら怖いけどそれでも大好き、という感じだった。
何故これ程までにヴェルダナーヴァのことが好きなのか、正直なところヤルダにもよく分かっていない。
そんな彼女は現在───ヴェルダナーヴァの『空間転移』という初めて見たスキルによって強制転移させられ捕まっていた。
「~~~~~ッ!!?」
みるみるうちに顔を真っ赤に染め上げ、目を回して気絶しかける私。
ほ、本当に油断も隙もないなヴェルダお
ヴェルダナーヴァにそっくりな白銀天使に抱っこされても何とも思わなかったのに、やはりというか相手がヴェルダナーヴァだとすぐこんな調子になってしまう私である。
だがお陰で分かったことがある。
それは───ヴェルダナーヴァの容姿にではなく、〝魂〟に惹かれているということだった。
いや、ヴェルダナーヴァの容姿も勿論美しいとは思っている。が、それよりも〝魂〟の輝きと比べれば、見た目など些細なことでしかないのだ。
だから私は、ヴェルダナーヴァにそっくりな白銀天使には一切靡かないのである。
見た目はそっくりでも、その〝魂〟の輝きは似ても似つかないからだ。
⋯⋯⋯それにしても、ヴェルダお
それも〝名付け〟をしてくれた後のことだった。
その前は容赦なく殴られたり、強い力で掴んできたりしてきたが、今のヴェルダナーヴァは私を優しく包み込むように抱きしめてくれている。
大切に扱わられている気がして恥ずかしいが嬉しくもあった。口元に笑みを浮かべる私。
⋯⋯⋯ん?
突如、床に不可思議な模様が浮かび上がると、その上に見覚えのある天使達が姿を現した。
見覚えのある天使達───オベーラ、ピコ、ガラシャの
『瞬間移動』とも『空間転移』とも違う、私が初めて見るスキル───否、これは魔法と呼ばれる現象だった。
ふむ。オベーラ達が『瞬間移動』のスキルに驚いていたからてっきりできないものかと思っていたが⋯⋯⋯魔法による転移が可能なのだな。
私はそんなことを思いながらもちゃっかり『万物模倣』のスキルで転移魔法を覚えた。
成程。私の前で魔法を行使しなかったのは、私に模倣されることを避ける為だったのだな。だが残念!魔法を発動するところが観測できなくとも、魔法を行使したという事象さえ観測できれば模倣は可能なのだよ。
転移魔法を用いて謁見の間に姿を現したオベーラ、ピコ、ガラシャの
ヴェルダナーヴァの前に綺麗に並んで跪く〝始原の七天使〟を眺めながら、ふと私は思った。
そういえばオベーラが行使した転移魔法⋯⋯⋯何やら特殊な力によるもののようだな。ふむ、管理者権限か。
管理者権限。世界を管理する為にヴェルダナーヴァによって生み出された〝始原の七天使〟が有する権限である。
ヴェルダナーヴァが生み出した力ならば、私にも模倣は可能なはず───
⋯⋯⋯む?エラーだと!?一体どういうことだ!?
が、管理者権限の模倣に失敗した。
不可解そうに眉を顰める私。
するとヴェルダナーヴァがニヤリと笑って、『思念伝達』のスキルを使って私に言ってきた。
『フフフ、悪いけど君に管理者権限は模倣させないよ』
『⋯⋯⋯ヴェルダお
どうやらヴェルダナーヴァが妨害してきたようだ。解せぬ。
『どうして私の邪魔をするんだ?』
『だって君、私利私欲の為なら世界すら滅ぼすつもりなんだろう?そんな危険な存在に、ボクが定めた法則に干渉できる管理者権限を模倣させるわけないじゃないか』
『うぐっ』
そういえばそんなことを言っていたな。あの時の私は少し調子に乗り過ぎていた気がする。だが反省はしない。
ヴェルダナーヴァが妨害してきたということは、やはり管理者権限も模倣可能だったようだ。
模倣できるのにそれができないなんて、お預けされたようで気に入らないと感じた私であった。