ヒロアカ世界に(変則)トラック転生した 作:全作未完成
「まず大前提として、インターン期間中だけでは基礎力の大幅な変化は望めない。だから今からやるのは使い方の工夫だね。劇的な変化じゃなくて、君たちの手札を増やすことが目的になることはわかってほしい」
くるり、と手の内のステッキを教鞭に見立てて回しながら、目の前にいる
前提の共有は問題なさそうだ。ボクはそう判断して言葉を続ける。
「とはいえやれる事を増やすのが難しい事は
ま、とはいえボクの体はひとつきりだ。二人同時にってのは難しい。なのでどっちから先にやりたいか聞いてみる……の前に、
「じゃ、まずは……と思ったけど、ボクが伝えたい事が分かりにくいから、先にちょっと見ててね」
ボクは用意したサンドバッグを設置し、その前に立った。尾白くんは少し離れて見に回ってもらっている。彼が頷いたのを見てからボクは左膝を持ち上げて、一本足立ちの構えをとる。
「まず一本」
上げた左足をしならせて回し蹴りを放った。ドッと音を鳴らして、サンドバックはぎぃぎぃと揺れる。
「次に、二本」
揺れを止めて、次は両の足を地面につけたボクは、再び回し蹴りをする。ドボッ!と、先ほどより数段大きな音を上げ、サンドバッグはグワングワンと大きく揺れる。
「最後、一応三本」
そう宣言し、先の二回より少し離れた位置に立った。トントンと軽くニ、三度跳ねてから膝から力を抜く。
体を下へ落としながら左腰をやや前へ、それに合わせて地面と胸が平行に近くなるように半回転。
両手を近づいてきた地面について重心を移動、軸に使う右足もそれに合わせる。
シュル、手足が地面をこする音が鳴る。それと同時に最後の工程。
落下と回転、重心移動を乗せた速度を、両手と軸足でさらにもう一段階加速。体をしならせて狙いをつける。
そうして全ての体重と速度を乗せた左足を、サンドバックへ思いっきり叩きつける。
ドバボッ!
サンドバッグは大きく右上へと飛び上がり、支柱はそれを支えきえない。ふわり、一瞬だけサンドバッグが土台毎数十センチ程浮き上がって。
……ガゴワァァァアン!
大きな音を上げてから床へと倒れ落ちた。
「ふぅ、よし。ちゃんと見た?」
「みっ、ました……凄かったです……まさかその体格で決めれるとは」
「おぉ?知ってるんだコレ?えへへ、ありがとねぇ…………じゃないや、今の一連のキックの違いって分かった?」
結構難しめな技を褒められて、一瞬嬉しがってしまった。違う違う。ボクはサンドバッグを直してから尾白くんへ向き直る。
「えっと、支えかな……だと思います。支柱とか加速の要とも言えますけど。蹴りの威力を出すために使った支えの数、だと」
「わぉ……大正解だ
「尻尾を支えとして使ってみる……ってわけじゃないか、それなら手足の役割、っていう必要がないし」
尾白くんはボクの質問にそうやって答えた。少し自信なさげだけど……なんでこんなに自信ないんだ?いい答えなのに。まぁいいか、自信過剰で失敗するよりよほど上等だ。
「そだねぇ。支えに使う、は案の一つだから間違ってないよ。ただ、ボクみたいな二本足は体勢と、体幹と重心移動。これら全部を使わないと満足に三本支えの威力が出せない……けど、君はそうじゃないよね?」
ボクは少しだけニヒルさを意識した笑みを浮かべる。悪っぽい顔、できてるかはわからない。
「俺なら、もっと楽に出来るってことですか?でも実は、尻尾がある分だけ上手く動けなくて……」
「ああ、違う違う。ボクが言いたいのはね、二本足用の技の型に捉われすぎないでってこと。むしろ、そういう技を君用に改造して欲しいんだ」
「っ……技を、改造」
おお、食いついてくれたみたい。まぁ男の子なら好きだよね改造。わかる。ボクも好き。
「そう、改造。アレンジとかも言うかな?まぁ一個ずつ行こうか。まず君とボクの違いって―――」
少しソワっとした尾白くんの熱を逃がさないように、ボクは彼の手札を増やすための思い付きを伝えていくのであった。
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「―――と、まぁこんな感じかな、どう?出来そう?」
「多分……?とりあえず、やってみます!」
数分が経ったところで話を切り上げた。今はある程度の概要を伝えたくらい。けどまぁ、本格的な調整はどうせ尾白くん本人にしかできないしね。
それにお話しだけで個性訓練の時間を終わらせるのも勿体ない。まずは動いてみるのが先だ。ということで、尾白くんにはボクの思い付きの構想を念頭に、試し打ちをしてもらう事にした。
きゅっ、と道着風のスーツを正してサンドバッグへ向き直る尾白くん。その目は少しの緊張と、新しいことを試す時の高揚が見て取れる。
「すぅ、ふー……行きます、はっ!」
息吹で呼吸を整えて、彼は気合とともに動き出した。
さて、ボクは尾白くんの動きと、砂藤くんの様子(個性で無理してないかとかね)を見るターンになったのだけれど。
ここで突然のクエスチョン。尾白くんの強みとは何だろう?
まぁ言うまでもない。答えは尻尾だ。
太く柔軟で、頑丈かつ器用な長い尻尾。第二の手足とも呼べる彼の個性はとてもシンプルでわかりやすいものだね。
では次に、彼の弱点……というか、危惧していた
言っておくけれど尻尾の個性が地味だからとか、結局身体依存の個性だからとかはアンサーとしては弱い。そりゃ発動型や蓄積型の個性に比べれば、パフォーマンスの大幅な強化はないけれど、常に個性を自身の扱える強さで使えるっていうのは強みだ。
彼の尻尾による攻撃は多彩で、威力もある。尻尾を振り回す、尻尾をぶち当てる、尻尾で捕まえる……強い。確かに強いんだけど。
勿体ないんだよね。やっぱりさ。
彼の武術的な基礎の部分は、回転と流れ意識の連続した動きだ。そしてこれは本人の気質なのかもだけど、即撃離脱が基本っぽい。攻撃して相手の一撃は受けずに下がる多対一の動きが根底にある。
つかず離れずヒット&アウェイ。足を止めずに動き続ける戦術だね。コレが決定力の不足に繋がってると、ボクはそう考えているのだ。
尻尾に主役としての比重を置きすぎて、手足の攻撃が体格と技術に反して軽くて型に入り過ぎている。本来なら彼はもっとアグレッシブに攻められる技量がある。けれど、尻尾の活用と負けないような戦い方に捉われいる。
もっと、尻尾に役割を増やして使ってほしい。尻尾以外の技も使ってほしい。尾白くん専用の攻撃を見つけてほしい。そもそも人体なんて一人一人規格が違う。もっと勝手なアレンジが必要だ。
攻撃の支えに尻尾を使えば威力は上がるだろう。急加速の一助だったり、尻尾だけで急制動も行えるはずだ。重心が尻尾で変えられるなら、姿勢の制御や変更で意表も突ける。遠心力を操ったり、手足に注意を向ければ足払いなんかも可能かも。サブミッションの抑えに使ったり、ブラフだって出来るはず。
それと、後は連撃や回転や流動性で得た加速を、五体や尻尾を用いて一点に収束させたりも……あぁホラ。君なら出来ると思ったよ。やっぱり。
「なんだよ、ボクより上手いじゃん」
目線の先、尾白くんの動作が
「ハァァァアッ!!」
そうして放った右足は空気を割りながら一直線の軌道を描き。
ヴォッ―――――ゴガッシャァン!!!
五メートルほど上へ浮き上がってから、ド派手な音を鳴らしてサンドバッグは落ちたのだった。
「……アレ受けたら生身なら死ぬかも、手加減教えないとだ」
ついでに追加の訓練も決定した。下手したら尾白くんの四肢が壊れるわ。
テラフォの豹紋蛸さんみたいに、本来無い部位を利用するの好き。
説明口調って無才が書くと冗長になりすぎるね