「佳奈多、ひな。お前ら、一体何者だ?」
「聖摩君、それってどういう……」
穂香が不思議そうにこっちを見てくる。まぁ、普通の人はどういう意味でこんな質問をしてんのかわからないだろうな。
佳奈多にひなも、同じように頭をたてに降る。
「お前ら二人は恐らく、前にもあのモンスター……獣化人間を見ているはずだ。」
「そ、そんなことないよ。」
「そうかな? 佳奈多、アリーナピットでバジリスクに襲われたときひなに対して何て言ったか覚えてるか?」
ほんの少しだけ、佳奈多の笑顔が強張った。
「『シン』って呼んでたよな? それだけじゃない。ひなも、俺が間にはいって助けたときに、『また』襲われるなんてね…っていったよな。確かにこっちの世界には2回獣化が現れたけど、よく考えたら一体目の時は現場には鈴しか居なかった。――――――本当のことを教えてくれ。お前ら二人は何者だ?」
もしこの二人がBCウイルスのことを知っていて、しかも何か重要な事を知っているのなら……
佳奈多が口を開く。
「わかった。本当のことを言うと、私たちは聖摩君とおんなじ世界から来たんだ。……やっぱり私たちのこと、忘れちゃってるのかな……?」
まて、俺はこいつらなんて知らないぞ。俺の記憶力はどこぞのイン〇ッ〇ス級だぞ?
「やっぱ本当の名前じゃないとダメかなぁ。香奈だよ。雨兎(あまと)香奈。そして―――」
「日向 真(ひなた しん)だよ。」
「あぁ! 確かにいたなぁ、俺のいたクラスに……」
確かに俺が小5、6年の時は同じクラスだった。ただ、一番驚くべき事態がここに存在している。
「真、お前は男だっただろうが!! なにしれっと女装してんだ!!」
「あー、それは私。」
佳奈多(いや、香奈とよんだほうがいいのか?)が口を出した。お前が原因か?
「この世界に来て、ちょっと慣れてきた頃に、IS学園って言うのがあるのに気づいて、そこでIS適性検査を受けることにしたの。そうしたらなんか男はダメー! とか検査員が言い出すからさぁ。じゃあひな―――あ、真を女装させよう!ってことになって。そしたらノーメイクでも十分ばれないってことになって。上手く検査員も騙して、適正もB判定だったからこの学園には入れたわけ。」
……頭がいたくなりそうな事件だな。その検査員は少しも疑わなかったのかよ。まぁ、俺も今の今まで気が付かなかったから言えねぇけど。
「ええええ!」
穂香が騒ぐ。あー、耳元で叫ぶな、鼓膜がフィーバーする。
「だってだって、ひなちゃんって男でしょ? IS動かしてんだよ!」
――――――ぁ。ほんとだ。しかも適正検査だから、入試よりも先ってことは一夏よりも先に判明!?
ニュース記者さんも気の毒に。こんな身近にネタの逸材がいたのに……
「ていうか、織斑先生気づかなかったのか……いや、気づいてるよな。ところで、そのー、あのときのって?」
「あのとき?」
3人中3人が頭上にはてなマークを浮かべている。
「お……お前らが、同時にキスしてきたときだよ……っ、恥ずかしい。言わせんなボケ!」
そしてやはり全員が顔を真っ赤にしている。そして俺は顔を真っ青にして聞く。
「あの時って確か真もしたよな……一体どんな魂胆で……」
「そ、それはね、昔のことが原因と言えば原因なんだよっ。」
顔を膨らませ、頬を染めて見つめてくるひな(真)。こっ、これは男とわかっていてもなお可愛いっ……一体何があったらこんな女子でさえ霞むような可愛さを。
「小学5年の時だよ。」
――――――――――――――――――
僕はお母さんとお父さんとお出かけにいった。何でも最近できたおっきなお店、それも中に遊園地もあるから、とっても楽しみにしてた。
「ねぇねぇ、おかーさん! おとーさん! 早くいこうよ!」
「あらあら、元気ねぇ。」
「はっはっ、いいじゃないか。」
僕は真っ先に遊園地の方に走った。遊園地にいくことがはじめてで、とってもワクワクしていた。
ジェットコースターは身長が足りなかったから乗れなかったけど、お父さんと一緒にゴーカートに乗ったり、みんなで観覧車に乗ったり、とっても楽しかった。
そんななか、お父さんがトイレにいっていたときに、問題がおこったんだ。
「ゴホッゴホッ、ヴェッホォッ!」
近くに、とっても咳をしていたおじさんを見かけた。はじめのうちは近くにいたくないなーと思っていたけれど、そのうちになんか変だなーと思った。
そして、目の前のおじさんがいきなり変なこわい虫みたいなのにかわった。
「キャァァァ!」
周りが大声を出して、これは大変なことになっていると気づいた。
「真ちゃん、あなたは逃げなさい!」
お母さんが僕を突き飛ばした。
次にお母さんを見たときは、もうお母さんじゃなくなってた。だって、――――――頭も腕も無くなっていたんだもん……
何がなんだかわからなくなったとき、僕の前におんなじクラスの聖摩くんがたっていた。
「お前ぇぇぇぇぇぇぇ!!!!」
すると、聖摩くんが手にソードをもって、怪物と戦って――――――簡単に倒した。
聖摩君が僕の近くに来る。
「ごめん、真くん。君のお母さんを守れなくて……」
その言葉を聞いて、僕は泣き出してしまった。涙が止まらない。次々と滴と嗚咽が出てくる。
「僕を恨んでもいい。だから、これからも生きて……」
「う、うん。せいま、くん、は、わるく、な、いんだよ。だか、ら、あやま、らな、いで。」
すると、聖摩くんは僕を抱き締めてくれた。そしてそのまま頭を撫でてくれた。
「君のお父さんも、僕だっている。だから、いきる希望を失わないで―――」
その日、僕はもう涙も枯れるほどに泣いた。そして、聖摩くんは僕のなかで、ヒーローになった。
次の年。僕はまた聖摩君とおんなじクラスになることができた。あの日―――去年のあの事は、聖摩君からのお願いで誰にもいっていない。
でも、聖摩君は教室から出ていってしまった。
皆が、聖摩君をいじめたからだ。
聖摩くんは、皆を助けただけなのに。
あの日のお礼もちゃんと言えてないのに。
男同士だけど、好きになれたのに――――――
僕は、そのとき同じく聖摩君を好きだった香奈ちゃんと話して、聖摩君の働いている? ところに電話をした。
電話に出たのは聖摩君のお兄さんだった。たくさんの事を聞かれ、伝えられた。聖摩を裏切らないのか、どんなことでも聖摩を捨てないのか。そして―――聖摩君がどれ程心に傷を負っているかも。
そして、僕と香奈ちゃんはこっちの、ISの世界に来ることができた。
――――――――――――――――――
「―――って、聖摩君泣いてる!?」
え、あれ? 気がつくと俺の目のまわりには水滴がついていた。
そっか……
「いや、俺ってバカだなぁって思って……あのとき俺はすべてから逃げたくて、こっちの世界に来たんだ。それでも、あのときの俺を見ても怖がらず、化け物じゃなく、東郷 聖摩として見ててくれたやつもいたんだって――――――それなのに俺は、そいつらのことも考えずに、自分だけが、差別されてた事実から逃げたくて自分だけが助かることだけを考えて……っ、」
ふと気づくと、自然と液体が頬をつたう。なんだよこれ、こんなんじゃ泣いてるみたいじゃねぇか…………
すると、頬に人の体温を感じた。たぶん香奈が拭ってくれたのだろう。頬にはうっとうしい水の感覚は無くなっていた。
「聖摩君は悪くないよ。あのときに皆を止めることができなかった私の責任でもあるんだよ。」
そして、真が背中をさすってくれる。
「それに、僕たちならずっと聖摩の味方だよ。」
ありがとな。佳奈多―――香奈、それにひな―――真。
閑話
「ところで、ひな。(とりあえずはこっちの世界の名前で呼んどこう。)」
「なにかな? 聖摩。」
「まさかと思うけど、野獣……いや、なんでもない。」
「ふふふ……」
そんなわけで。
この話のせいでタグの追加が確定。はぁ……
次回はここまでのおさらいをかねて設定回です。