死んだ目をしたプロデューサー 作:勇気に満ちし者
学マスのコミュが面白すぎて執筆しちゃいました。
原作Pとは別Pの話となるので原作改変まったなし作品です。
その上、了承の上御覧いただけますと幸いです。
それでは本編をどうぞ!
「アイドル───それは、わたし達の永遠の憧れ───……」
講堂から聞こえる新入生代表挨拶の始まりが鼓膜を震わせた。
「誕生日と成人おめでとう。プロデュース頑張ってください。応援してます……。
PS.私の好きな銘柄です。人生何事も経験が大事。母さんを真似て喫煙してみさない♡」
俺は母親からいただいた誕生日を祝う手紙を朗読していた。新入生代表生徒が続きの言葉を語っていたが、母親の手紙の内容が内容だったため何も聞き取れなかった。
「成人した息子に喫煙を促す母親とはこれ如何に」
手紙を握りつぶしてポケットに収める。
片方のポケットからいただいた煙草を取り出し、母親を真似るように煙草を口に咥えライターで火をつけた。
「──────!」
煙を吸って肺に入れ込む。
次の瞬間。
「ごほっ!げほ!げほ、うわ、なんだこれクソ不味いんだが!?」
慣れない感覚、慣れない味で咳き込んだ。
こんな不味いものを吸える奴らの気が知れん。
「二度と吸うかこんなもん!!!」
次の瞬間、喫煙所から出て最寄りのゴミ箱へ文句と併せて煙草を箱ごと捨てる。
今日は記念すべき新入生の入学式、兼、俺の誕生日、兼最初で最後の喫煙日となってしまった。
携帯で時間を確認したが入学式終了の予定時間に迫っている。気付けば新入生の挨拶は終わってて学園長が歓迎挨拶をしていた。
この調子だと予定通り終わりそうだ。
喫煙所を後にした俺は講堂の入口が見える近くの木に背を預ける。
今日、俺は新入生の様子を見るために来たのだ。
周りを見渡せば俺と同じ考えなのか同じプロデュース科の学生が数人見える。
みんな考えることは同じってわけだ。
決して可愛いJKを拝みたくて集まった訳ではない。
「……流石に編入生組を狙う作戦まで一緒なんてことないよな?」
俺は二回生となった本年度からプロデュース許可を与えられた。
一回生の時は、現役で受かったこともあり、未成年、且つプロデュース知識が試験の範囲でしか知らないド素人だった俺にプロデュース許可は降りなかったのだ。
おかげで1年間みっちり座学やプロデュース時の資金集めのためのバイトに費やすいい期間となった。
定期試験でも高水準の点数をキープしていたこともあり、晴れて二回生からプロデュース許可が降りたのだ。
だが、噂によるとプロデュース科に本年度入学した現役合格生の学生に対してプロデュース許可が降りてるらしい。
一体どうゆうことだってばよ。
俺には早いってあさり先生言ってましたやん。
「(まあ理由なんてこの見た目だよな)」
読んで字のごとくこの目に原因があるのだ。
どうやら俺の目は世間一般的に言うと「死んだ目」と言うやつらしい。
黒い瞳にハイライトがなく、霞がかかったようにボヤけたその目には生気が感じられないようだ。
やれ何考えてるのかわからん。やれ気味が悪いなど地元にいる時から同級生を初めとして大人からも煙たがられた。
「(……だけど俺は───!)」
死んだ目を鋭く尖らせ、熱い覚悟を持って心の中で決意を語ろうとした瞬間───。
「す、すいません〜〜〜〜〜〜!!!」
「???」
急にもの凄いスピードで生徒が目の前に現れた。
先程まで全力で走っていたと思われるが息一つ切れてない様子だった。
「……どうかされましたか?」
優しい口調で俺は話しかけた。
「あの!入学式ってもう始まっちゃってますか!?」
内部進学組の生徒名簿で見たことがない生徒だ。状況的に新入生で遅刻したってところか。
「残念ながら終わる寸前です」
「うひゃ〜!入学式当日から大遅刻!!失敗したぁ〜!どうやって合流しよう〜!」
そう言った彼女は誰が見てもわかるほどがっくし肩を落として悲しみを露わにしていた。
「───差し出がましいとは思いますが、合流したところで入学式に参加してないことは担任にバレてるかと」
「あ、確かに」
彼女は一瞬にして真顔になった。
確かにと答えたあとはポカーンほうけている。
「過ぎたことは仕方がありません。正直に謝って担任に許しを乞いましょう」
「うぅーん、ちゃんと目覚ましセットしたのにな……仕方がないですね。先生に謝りますっ……!」
人に謝ることができる…。実に素晴らしい精神の持ち主だ。
「(これだよこれ。編入生らしい在校生とは違う清らかさってやつは)」
中等部から上がった内部進学組とは違うぜ。
「ああっ!申し遅れました!」
内心で腕を組みながら頷いている最中に彼女が話しかけてきた。
「あたし、アイドル科の新入生で花海佑芽っていいます!初めまして!」
ぺこりと頭を下げて丁寧に挨拶をされた。
「初めまして花海佑芽さん。俺はこうゆうものです」
俺は返すように自己紹介をするべく、新調した名刺を彼女に渡す。
「おぉ〜!プロデューサー科の方だったんですね〜!
───アクツ……アリト?」
彼女は俺の名を読んだ。何故かカタコトで。
「はい。圷 有翔です。……ところで花海佑芽さん。
貴方のお名前が生徒名簿に載ってないみたいですが?」
花海、と聞いて真っ先に浮かんだのが新入生首席の花海咲季だった。
彼女が名刺を見てる隙に携帯で生徒名簿を確認したが「花海」と名のつく生徒は前述の生徒のみだった。
「ふっふっふっ!それは入学成績がギリギリで補欠合格だったからですね!」
「なるほど」
補欠合格ってことは入学を辞退した生徒がいたってことか。
というか補欠合格したことを自慢げに言うことに衝撃を受けた。
「……補欠だろうが合格したことに変わりはありませんからね。これから学ぶことは沢山あると思いますが頑張ってください」
俺は精一杯の激励を送った。嘘偽りはない。合格すればこっちのもんだ。あとは本人の努力次第でなんとでもなる。
「(スカウトするかどうかは別だけど)」
そもそも目を付けてる生徒がいる。
入学式がそろそろ終わりそうだ。
気になる生徒を見るため、彼女から離れようとした。
では、と言い残しその場から去ろうとした時。
「あ!待ってくださいっ!」
ジャケットの袖を握られた。
伸びるからやめて欲しいが力が強すぎて離そうにも離せれない。
「あたしのことプロデュースしてくれませんか!?
───こうして出会えたのもなにかの縁だと思うんですっ!」
「───唐突すぎますね」
唐突すぎるお誘いに一瞬硬直した。
プロデューサーとしてプロデュースのお誘いをする立場のはずが、逆にしてくれと誘われるとは思いもしなかったからだ。
「あたし、アイドルのことまだ何も知らないので、プロデューサーさんが一緒だと心強いなって!」
「───ふむ」
編入生組は進学組と違ってアイドルのことはある程度知ってるであろうが疎いことに変わりは無い。
本来ならそこを狙って目を付けた編入組の生徒を誘う予定だった。
だが───。
「お気持ちはわかりました。ですが
───本当に俺でよろしいのでしょうか。
俺ってこうゆう見た目ですし…。」
俺は自分の死んだ目を指差しながら言った。
俺はこんな目をしてたから地元で煙たがられた経験から遠回しで断れる雰囲気を作る。
そもそも補欠合格という時点で損切りする人が過半数だろう。
俺の場合、この見た目でプロデュースできる生徒がこの先できるかどうか危ういって話があるけど。
「見た目、ですか?ん〜確かに他の人達とは違った瞳ですね!いいえ!初めて見たかもですっ!」
「……あの、近いです」
彼女は俺の目を確認するために近付く。
目をマジマジと見てくるもんだから流石に恥ずかしい。
「す、すみません!
近付かないとじっくり見れなくてつい…。
──でも!あたし!見た目なんて気にしませんよっ!
それに大事なのって見た目より中身、ってよく言うじゃないですかっ!」
彼女は満面の笑みでそう言った。
ま、眩しすぎる。背中に後光がある気がするほどの眩しさ。
世界にはこんなにも清らかな心を持った方がいたとは…世界が広いと痛感した。
自分で彼女からの誘いを断るようこの目に触れた。
だが、それを言うならこれから俺がプロデュースを誘おうと思ってた生徒にも目のことで断られる可能性が高いはず…。
つまり、これは担当アイドルを獲得する絶好の機会というやつか。
しかし、こんな目だからな。
何考えてるかわからないプロデューサーとか普通に嫌うはず。
───だと言うのに彼女は見た目ではなく中身だと言った。
「初対面なのに中身って、俺のことまだ何も知らないのでは?」
「それは大丈夫ですっ!
あたし、こう見えて勘がいいんですよっ!
直感であなただったらあたしの力になってくれそうだなって!───あなたがいいなって思ったんですけど…ダメですか?」
正直答えになってない。勘だなんて不確定要素で自分の今後を左右するお誘いを簡単に行うなんて…。恐れ知らずなのか、それともなにも考えずに発してるだけか。
───前者であればなんて大胆な生徒なんだ。
「少し考えます。質問してもよろしいでしょうか?」
「!!!はいっ!」
未成年の生徒の今後を見守る立場として、彼女の心の広さだけでプロデュースすることを決めるのはいささか良くない。
彼女をしっかりと知った上で最終判断をすることにした。
「ありがとうございます。
早速、補欠合格とのことですが、
花海佑芽さんは体力面において優れたお方かとお見受けします。運動が得かったりしますか?」
先程、俺の目の前に現れた彼女を思い出す。
恐らく寮から講堂まで走ってきたのに息を切らしてなかった。
体力面が良いことから運動神経が良いと見た。
「おぉ〜!プロデューサーさん見る目ありますねぇ〜!そうなんですっ!あたし、ダンスや座学はダメダメだけど運動面においては自信あるんですっ!」
なるほど。ダンスは初心者だから苦手意識があるだけで、
運動神経が良いのなら慣れれば難なくこなすだろう。
最悪、座学は俺がついて教えればいい。
「では最後です。───あなたがアイドルを志した理由、もしくはこの学園に入学した理由を聞いてもいいでしょうか」
「はいっ!───それは……勝ちたい人がいるんです」
彼女は元気よく返事をしたあと理由を語った。
自分には勝ちたい人がいる。
生まれた時からずっとそばにいる。
色んな競技で何度も何度も争い会って。
ただ一度も勝てたことなく、尊敬してて…。
「───だから。今度こそ絶対に勝ちたいんです」
「…………………………………………………………」
きっと花海咲季のことを言ってるのだろう。
「正直、あたしはアイドルのことよくわかってなくて、運動神経だけが取り柄で、才能なんてないかもしれません。
───でも、勝ちたい気持ちだけは負けません」
真剣な表情で彼女は俺を見る。
俺の死んだ目に彼女の燃えるような輝きを放つ闘志に満ちた目は眩しすぎた。
だけどその瞳から俺は目を離せなかった。
彼女は先程まで可愛い笑顔で誘っていた状況から一変して真剣に自分について語っていた。
「……………………………………………………」
彼女の数メートル後ろには入学式を終えた新入生が講堂から教室へ向かうために列を作っていた。
集中していて周囲の音が聞こえていないか。はたまた単純に気付いていないのか。
彼女はそんな状況で最後の思いを語った。
「───私はその人に勝ちます。
そして…学園で一番のアイドルになってみせます!」
学園で一番…。『
だが、それはあくまで花海咲季に勝った証拠として手に入れたい感が歪めない…。
「素晴らしい動機です。感動しました」
今はそれでいい。
動機がどうであれ『
ゆくゆくは一緒に彼女が目指すアイドル像を見つける。
それが
「えへへっ!ありがとうございますっ!
自分で言うのもあれですけど、優良物件だと思いますよっ!」
最後のひと押しだろうか。
自分を指さして優良物件だと言い切った。
「そんなダメ押ししても無駄ですよ」
何故なら俺の中で答えは決まってるのだから。
「へっ?」
間抜けた声を上げて、ジャケットの袖を握る力が弱ったところで彼女の手を取った。
「花海佑芽さん」
「!は、はい!」
「俺もあなたと同じで本年度からプロデュース許可が降りた素人です。それでも、それでもいいと言うのなら───」
あれ、何度も練習してきた筈なのに…。
いざ、本当にプロデュースを誘うとなると声が出ないな。
「俺にあなたをプロデュースさせてください。
あなたが『
俺を誘ったのは本当に勘なんだろう。
だけど彼女の長い謳い文句に簡単に魅了されてしまった自分がいる。
こんな目をして、交友関係なんてここに入ってから意識した程度で、
誰かから期待されたことなんてなくて…。
そんな俺に期待してくれたことが例え勘だとしても堪らなく嬉しかったんだ。
彼女の思いに応えたい。
かといってプロデューサーという立場上、どうしてもこちらから誘いたいという我があったから、俺からプロデュースをさせてほしいとお願いした。
「〜!!!はいっ!これからよろしくお願いします!プロデューサーさん!」
彼女も嬉しかったのか、握った手を強く握り返してその場で飛び跳ねながら了承する旨を答えた。
「あっ!プロデューサーさん!これからあたしのことは佑芽って呼んでくださいね!」
思い出したかのに彼女は唐突にそう言った。
「わかりました。佑芽さんと呼ばせていただきます。
───佑芽さん、改めてこれからよろしくお願いします」
そう答えると彼女は再びよろしくお願いしますと答えてくれた。
今日はプロデュースを誘う予定はなかったんだがな。
あれ、俺、煙草臭くないよな…?1本未満しか吸ってないんだが。
「???」
佑芽さんを見るが特に気にして無さそうだ。それは何より。
「とりあえず、時間も時間なので契約に関する正式な手続きは放課後に行いましょう。連絡先を聞いてもよろしいでしょうか」
「大丈夫です!」
こうして俺達はお互いの連絡先を交換した。
佑芽さんにはひとまず教室へ戻り、当初の予定通り担任へ遅刻したことについて謝罪するように伝えた。
先程まで希望に満ちていた笑顔から一瞬にして真っ青な顔になった時、表情豊かで羨ましいなと思ってしまった。
「では行ってきます!プロデューサーさん!またお会いしましょうねっ!」
「はい。抑えた会議室は後ほどメッセージで連絡します。確認しててくださいね」
「わかりました!では〜〜!」
佑芽さんは可愛くこっちを見ながら手を振った後、もの凄いスピードで教室へ向かって行った。
「…………さて、と」
俺はふと空を見上げた。
佑芽さんがいなくなった後、俺は雲一つない快晴の空を見上げながら担当アイドルができたことに対して喜びがじわじわ湧いてきた。
こんな自分に担当アイドルができるとは…。向こうから誘ってくるのは予想外だったが、俺を誘ってくれたことがこれまた嬉しすぎる。
「(俺が必ず佑芽さんを『
───そして佑芽さんのプロデューサーとして相応しい存在になってみせる」
だってそれは……。俺があの時、目指すと憧れたプロデューサー像なのだから。
佑芽ちゃんであればどの世界線でも遅刻するだろうし、目に入った人に話かけるだろうし、プロデューサー科の方であれば自分をプロデュースするよう誘うだろうなと思ったので、1話は原作ベースで執筆しました。
2話以降から原作とは違った展開とするつもりなのでお楽しみに(?)
そしてなんと───2話目は続けて投稿してますので是非ご覧ください。
〈人物紹介〉
【
本作の主人公。色々諸説があって目が死んでいる。
本来は、若者特有の口調で話すが、他人と話す時は丁寧口調となるよう意識している。
見た目がこれで、話し方まで汚かったら救いようないと思ってそうしている。
【花海 佑芽】
本作の担当アイドルの一人。
セットしていた目覚まし時計が粉々になった状態で見つかったらしい。