死んだ目をしたプロデューサー 作:勇気に満ちし者
新たに評価してくださった、マーベラスきのこさん、アキヤマさん、ハルトさん、ビターシガレットさん、ハリースさん、ありがとうございます!!
新たにお気に入り登録してくださったみなさん!ありがとうございます!
今回は真面目な手毬が見れますよ。
それでは本編どうぞ!
後方で十王星南と一緒に月村さんが歌う様子を見届けることにした。
「有翔、なんで月村さんに歌うようお願いしたのかしら?」
十王星南がそう問うた。
「彼女の歌声が純粋に好きなんです。生の歌声を聞きたいと思ってお願いしました」
佑芽さんのボーカルトレーナーになるのだからお願いすればいつでも聞けるとは思う。
だが、ここまで大人数の前で歌うとなれば彼女の性格上、俺が見たいと思った全力の月村手毬として歌うに決まってる。
コンコン
考えていた時、窓が数回ノックされた。
窓へ視線を向けると秦谷さんがいた。
俺は窓の鍵を外す。
「こんにちは、プロデューサー」
「こんにちは、秦谷さん。随分と早かったですね」
外から話しかけられるとは思ってなかったがな。
「今日は天気がいいのでお外でお昼寝をしようと思ってたところです。───ところで……まりちゃんが歌うというのは本当のようですね」
前方の方で準備している月村さんを眺めながら秦谷さんは言った。
「ええ、俺が───」
月村さんが歌うことになった経緯を軽く話す。
「まあ、ご自身の担当アイドルではなくまりちゃんを選定するなんて……浮気ですね」
「そう捉えられても仕方がありませんね。なんとでもどうぞ」
「では、プロデューサーは浮気性で女性が泣いてるところを見るのがお好きなお方、という認識よろしいでしょうか?」
「後者は誤解なので認識を改めていただけると助かります」
泣かされたことを根に持ってる様子だ。
この先もこの件でグチグチ言われるのだろう。
「美鈴、そんなところにいないであなたもレッスンに参加しなさい。───とゆうかあなた達、いつの間に仲良くなってるのよ」
俺の隣にいた十王星南が秦谷さんに話しかけた。
「まあ、星南会長ではありませんか。奇遇ですね」
「ええ、奇遇ね。……じゃなくて、あなたもレッスンに参加しなさいと言ってるのだけれど!?」
「ふふ、今日はレッスン着を部屋に忘れてしまいました。見学ということでお許しください」
ならせめてレッスン室には来なさいよ……。
と、言いながら十王星南は頭を抱えた。
「佑芽さんのプロデューサーさんとは昨日の食事会で仲良くなりました。わたしたち一緒にまりちゃんに料理をお出しした仲なんです。───まあ、わたしの料理が一番美味しかったとまりちゃんからお墨付きをもらってますが」
誇らしげに言うが凄くどうでもいい。
改めて対戦ありがとうございましたー。
「あ、有翔……?ま、まさか、佑芽に続いて美鈴まで、私から奪うつもり……!?」
「人聞きが悪いことを言わないでください。佑芽さんは元から俺のものです」
そんな会話をしてる時、周囲からの鋭い視線を捉えた。
先程の行動、そして十王星南との会話。
何者だアイツと言わんばかりの視線を向けられる。
「んんっ!少し話しすぎました。そろそろ月村さんの曲が始まります。黙って見届けましょう」
十王星南と一緒にいると嫌でも目立ってしまう。
これが『一番星』のカリスマ性と言うやつか。
『一番星』とは言ったものの、十王星南は抜けてる部分が多々ある。そんなことを知ってるのはごく一部の方だけだと思うが、ギャップがあって俺はいいと思う。
初めて気付いた時は普段との温度差で風邪をひくかと思った。
「プロデューサー、なんの曲が聞きたいの?私、初星の曲なら殆ど習得済みだからなんでも歌えるよ」
準備を終えた月村さんがマイク越しで話しかけてきた。
「そうですね───……では皆さんご存知、『初』でお願いします」
「わかりました」
佑芽さんに習得してもらう予定の曲だ。
彼女が覚えるにあたって月村さんの歌は参考になるはずだ。
月村さんが一呼吸した次の瞬間、『初』のイントロが流れた。
「〜♪♪♪」
月村さんの歌がレッスン室に響く。
初めから全力疾走。
後先、考えないその歌は確かに魅力的だが、その分、危うさも見受けられる。
最初はいいものの中盤から終盤にかけて体力が残ってないのか、パフォーマンスの質が下がっている。
横目で秦谷さんの様子を見るが心配そうに月村さんを見つめている。
───やはり月村さんが全力で歌うことを心配しているようだ。
「(1曲だけだから全力で歌うことを拒んでない感じか)」
流石に数曲も歌うようなライブであれば多少はセーブするはず……。だが、今回はこの『初』のみだ。それと俺の挑発もあって全力で歌ってるのだろう。
もしくは本当の本当に単純に何も考えずに全力で歌っている可能性もある。
「〜♪♪♪ ───ありがとう……ございました」
『初』を歌い終えた月村さんが挨拶をした。
挨拶の後、全員が月村さんを労うように拍手を送った。
「月村さん、ありがとうございました。素晴らしい歌声でしたね。では、これから───」
拍手が止んだところでボーカルトレーナーが話し出した。
その後はボーカルトレーナーから生徒への集団レッスンを行い、終わった後は自主レッスンという形となった。
「プロデューサー、これを……まりちゃんに渡してくれませんか?」
秦谷さんは俺に水を渡してきた。
「構いませんが、秦谷さんからお渡しすればよいのでないでしょうか?」
「今は絶交中です」
「休戦中なのでは?」
「ですが……今のわたしだと、以前のように自分の意見を押し付ける形で話すとことになると思うんです」
なるほど。
話し合わなかったことを後悔しているのだな。
先程の彼女の全力疾走を見たことで、改めて『頑張りすぎ』といい出すと思って接触を自ら控えたのだろう。
「わかりました」
秦谷さんの思いにこたえて水を受け取る。
「ありがとうございます。あとで連絡をいただけると助かります」
「はい、話したいことはありますからね。後ほど連絡します」
一礼して秦谷さんは何処かへ向かう。
俺も月村さんの先程の様子を見て話したいことがある。
だけど今は月村さんの所へ向かうべきだ。
秦谷さんもそれをわかってたから『あとで』と言って立ち去ったのだろう。
「俺は秦谷さんから受け取ったお水を月村さんへ渡してきます」
「ええ、なんだかあなた達が何を企んでいるのかわかった気がするけど……今は何も言わないであげるわ」
「……お気遣いありがとうございます」
さすが生徒会長にして『一番星』だ。
察しが良くて助かる。
だが顔を青ざめた状態で言うのはなんだろうか。
『SyngUp!』再結成については思うことがあるのだろうか。
「私も千奈の所に向かうわ。───それに、会いたい生徒が他にもいるのよね」
新たなプロデュース対象の生徒でも見つけたのだろう。十王星南はそう言い残して立ち去った。
俺もその場から離れて月村さんの元へ向かう。
「お疲れ様です」
こちらをどうぞと言いながら月村さんに水を渡した。
「……ありがとうございます」
床に座ってストレッチをしている月村さんはそのまま水を受け取ってごくごくと飲んでいく。
「ふぅ……どうでしたか?私の全力、ちゃんと見てくれましたか?」
「ええ、しかと目に焼き付けました。流石と言わざるを得ない歌声で感服いたしました。うぅ───!」
「な、泣くほどのことではないと思うんですけど!?」
俺は泣くふりをしながら月村さんに感想を伝えた。
「いえ、本当です。まさに歌姫ですが……。中盤から後半にかけて、前半で飛ばしすぎたせいでバテてましたね」
「!……は?バテてません。気の所為です」
「はは、そうですか。それは失礼しました」
隠しきれてるつもりだろうか。
別に今は問い詰める必要はないため流すことにした。
「なんか……怪しいです」
「え?」
「普段のあなたならもっと馬鹿にするはずです。───性格、クソ悪いので」
おいおい、言い過ぎだろ。
だが月村さんからそう思われても仕方がない発言したことは事実だ。
「……少し思ったことはあります」
「また酷いことですか?」
「月村さんからしてみてはそうなるかと」
「……一応、聞いてあげます。酷いと思ったらまた言うことを聞く権利、くれてもいいですよ」
「ええ、構いません」
なんでそちらから提案するのか謎だがな。
ちなみに月村さんは小さくガッツポーズしていた。
「───まあ、この場では話しませんが」
思うことは沢山ある。
だがここで話せば彼女は取り乱すだろう。
軽々しく話せる内容でもないし、しっかりと話し合える時間がある時に話すべだと思ったから、この場では話さないと伝える。
「は?は?は?」
月村さんが見上げながらそう言った。
「あまり強い言葉を遣うべきではないかと。弱く見えますよ」
「は?の何処が強い言葉なんですか?」
それはそうだ。
これは俺が間違ってるな。
「あ、はい。失礼しました。───と、まあ月村さんとはボーカルトレーナーというビジネスパートナーです。ここで追求して不機嫌にでもなられたら困ります」
謝罪した後に話した。
伝えた通り佑芽さんとのレッスンに支障が起きるの避けたいって理由が一番ではある。
「やっぱり酷いことだったんですね。流石、性悪です。目も死んでる上に心も死んでるなんて救いようないですよ」
目が死んでることについてはいい。
心まで死んでると言われるのは傷付くな。
俺は無敵だと思ってたが違ったか。
「はは、そうですね」
笑って流すことにした。
「おーい、手毬〜」
月村さんと話を終えた直後、背後から誰かが月村さんに話しかけた。
「なに、ことね」
ことね……。藤田ことねさんか。
「みんなで今からレッスンすんだけどー手毬はどうするー?」
「……私はいいよ。この人に邪魔されてストレッチ終わってないから」
月村さんは俺を睨みながら言う。
「この人ってお前なー!
藤田さんは敬えよと叱ってくれた。
とゆうか───
「俺のこと覚えてたんですね」
藤田さんとは一時期だが、バイト先が同じだった。ファミレスでバイトしてたが、俺はキッチンスタッフ、彼女はホールスタッフだった。
「え?あ、はい。あれですよね?うちのファミレスで一時期、賄い作ってたのって圷さんでしたよね?───圷さんの料理、めっっっちゃ美味くて覚えてます!」
なん……だと……!
確かに料理の練習もかなてバイトメンバーの賄いを作ってたが、俺は一度も自分が作ったなんて公言してない。
勝手に作って店長に伝えてみんなに振舞ってたのだが……。あの店長、俺が作ったと言いふらしたのか?
「圷さんがいなくなってから賄いのクオリティが下がったんですよー、だから圷さんが作ってたんだろうなって。───もしかして、違いましたか?」
「いえ、事実です」
そう言うことだったのか。
なら納得だ。
「2人でなに盛り上がってるんですか?とゆうか話し終わったなら邪魔なんで何処か行ってください」
「イラー、言われなくても行くっての!大体、誘わなかったら文句言いそうだから誘ってやっただけだし!───圷さん、行きましょう!」
「え、ええ、月村さん、今日の放課後ですが───」
「わかってます。時間になったらレッスン室に向かいます」
月村さんは俺が何を言おうとしたのかわかってたように遮って答えた。
俺は藤田さんに着いていくようその場を後にした。
「圷さんは花海佑芽ちゃんのプロデューサーでしたよね?なんで手毬に歌うように言ったんですか?」
「性格に難アリですが、月村さんの歌声が好きですからね。是非、聞きたいと思って提案した次第です」
「好きって、それ本人には言ったんですかー?」
「はは、言うわけないですよ。死んだ目をした俺からそんなこと言われたら迷惑かと」
ただでさえ、こんな死んだ目の人好きなる人なんていないでしょと本人に言われたぐらいだ。
「自虐ネタキツイですって!あたしはどう反応すればいいんですか!?」
おかしいな。
これで高校生の時は笑いを取ってたはずなのに。
「見つけたわよ!ことね!」
俺がそう思ってた時、十王星南が現れた。
見つけたわよってことは、会いたい生徒は藤田さんだったのか。
「げっ!せ、星南会長!?な、なんでいるんですか!───って!いるのは気付いてましたけど!!」
素直にいるのは気付いてたと藤田さんは自白する。
「それはあなたに会うためよ!この前も言ったけど改めて言うわ!───ことね!私のモノになりなさいっ!」
「うぅぅぅうう!ごめんなさい!無理ですぅぅ〜!!」
「ことね!?待ってくれないかしら!こ、ことねぇぇぇえええ!!??」
藤田さんが逃走して十王星南が追いかけていた。
なんか一瞬にして嵐が立ち去っていったような気分を味わったぞ。
俺はそんなことを思いながら佑芽さんの元へ向かった。
「なっははは!ボーカル勝負もわたしの勝ちよ!」
「ぐぬぬぬー!!くそー!!また負けたあぁぁぁぁああああ!!!」
どうやら咲季さんとボーカル勝負をしてたようだ。審査員はボーカルトレーナーで、咲季さんの腕を持ち上げていた。
「佑芽さん、お疲れ様です」
「プロデューサーさんんん!!また!!お姉ちゃんに負けちゃいましたぁぁあ!!」
泣きながら佑芽さんは報告してきた。
「今回はボーカル勝負でしたか。ボーカルはまだ本格的なレッスンを積んでないので負けても仕方がありません」
「そんな断言しないでくださいよ!そうだとしても負けは負けなんですよぉぉおお!!」
うわぁぁーーーんとその場で大泣きしてしまう。
「今は勝てなくともあなたら確実に勝てます。もとより俺が勝たせます。───今はその悔しさをバネに日々のレッスンに励みましょう」
「ぷ、プロデューサーさんがそう言うなら……。信じます!」
涙を拭いて佑芽さんが答えた。
「何度でもかかってきなさい!返り討ちにしてあげるんだから!」
咲季さんが煽るように佑芽さんに言う。
「咲季さん、お疲れ様です。今回は我々の負けです」
「自分の担当アイドルが負けたのに随分と落ち着いてるのね」
「ええ、勝つ時は今ではないと思ってますから。───もっと大きな舞台で完膚なきまでに花海咲季を倒してくれると信じでます」
信じてる。と言うより俺がそうしてみせると決意してる方が正しいか。
直近の中間試験……。いや、最終試験で勝って1位で終えて『初』に出場させて、咲季さんの余裕を無くしてやる。
「大きな舞台だろうが負けないわ!だってわたしはお姉ちゃんだもの!───有翔!佑芽のプロデュースに励みなさい!2人まとめて倒し続けるんだから!」
「望むところだよお姉ちゃん!次はあたしが勝つから!」
「ふふん!その意気よ!───じゃあそろそろ1組のところに戻るわ、残りのレッスンも頑張ることね〜♪」
余裕ぶりやがってー!!と佑芽さんは怒りながら咲季さんに手を振っていた。
思いと仕草が一致してないんだが。
「プロデューサーさん!あたし、早くボーカルレッスンしたいです!」
「落ち着いてください。今日の放課後から月村さんとのレッスンが始まります。───彼女の歌はちゃんと聞きましたか?」
俺は流れるように佑芽さんに月村さんの歌を聴いたか確認する。
「なるほど!手毬ちゃんの歌うところを見せるために歌わせたんですね!───手毬ちゃんの歌、すっっごく上手でした!あたしもあんな風に歌えますかねぇ……。」
人差し指をちょんちょんと合わせ下を向きながら佑芽さんは言う。
「歌えますか、ではなくて俺が歌えるようにしますからご安心ください。まずは───先程の咲季さんとの勝負の内容を教えてください。一緒に振り返りましょう」
「!はいっ!」
佑芽さんと振り返って合同レッスンは終わりを迎えたのであった。
◆◇◆◇
放課後、約束通り佑芽さんは事務所で宿題をしていた。
わからないところは俺が教えて規定時間の30分以内で終わり、余った時間で宿題内容の復習に取り組んでもらった。
終始、頭から湯気を出してたが真面目に取り組む姿に感激した。涙が出そうだ。
勉強を終えた俺達はレッスン室へと向かう。
「月村さん、お疲れ様です」
先に到着していた月村さんに声をかけると、ムスッとした表情で振り返った。
「遅いです」
「予定時間ちょうどだと思うのですが……。」
「5分前行動って知ってます?」
「……それはそれは、大変失礼しました」
言い訳をすると話が進まなそうだから謝罪した。
これに関しては俺に非があるな。気を付けよう。
「手毬ちゃん!今日からレッスンよろしくねっ!!」
元気よく佑芽さんが挨拶をする。
「元気がいいのは認めるよ。でも元気だけでアイドルなんてなれない。───下手だったら下手って言うし、才能なかったら厳しいことも言うから」
「わかった!」
「ほ、本当にわかってるの?」
月村さんが佑芽さんの即答でたじろぐ。
「とりあえず、今の佑芽の実力が知りたい。適当に好きな曲でいいから1曲歌ってみせて」
「んーじゃあ練習中の『初』にするね!ちょうど手毬ちゃんが歌ってくれたしね!」
佑芽さんは練習中の『初』を披露すると言った。
俺としても『初』を披露するのは賛成だ。
「では準備します。佑芽さん、スタンバイをお願いします」
「はいっ!」
俺はマイクスタンドの準備や音響の設定をする。
月村さんは窓に背を預けてリラックスした姿勢で佑芽さんを見つめていた。
「(やっぱり黙ってたら美人だよな)」
整った顔立ちはまさにアイドルだ。
クールぶってはいるが、黙ってたらそう思われるのも納得だ。
「準備できました。───佑芽さん、どうぞ」
マイクを渡して曲を再生した。
「〜〜♪♪♪」
佑芽さんが歌い出す。
先程聞いた月村さんの歌と比較すると数段劣るものの、元気よさは伝わる。一生懸命歌ってるのも伝わり、応援したくなる。
「〜♪ ───手毬ちゃん!どうかな!?」
歌い終えた佑芽さんが目を輝かせながら月村さんへ感想を伺う。
「はぁ───……思ってはいたけど下手すぎ。本当にアイドルになる気があるのか疑うレベルなんだけど」
「う、うぐっ!ど、ドストレートに下手って言われたぁぁああ!!」
佑芽さんはその場で悔しがる。
月村さんの言い分はわかるが……。本人も下手だったら下手と言うと宣言してたし佑芽さんも了承してた。
ここは俺もフォローすることは避けようか。
「そもそも歌詞、間違えてる」
「そ、それはーまだ練習中、だしー?」
「論外なんだけど。まずは歌詞の朗読から初めてみて。歌詞を理解して、何処で区切って、何処で息継ぎすればいいのか理解してから練習して」
「お?おぉぉおお!!手毬ちゃんがトレーナーさんみたい!」
「み、みたいじゃなくて!今はトレーナーなんだけど!?」
真面目なトレーナーモードから一変して普段の月村さんに戻った。
にしても───
「(言語化できてて凄いな)」
さすが中等部で3年間アイドルをしてただけはある。
月村さんが思ったことか、はたまた賀陽燐羽がかつての月村さんに教えたことなのか……。
どちらにしても自分の考えをこうも円滑に伝えられるのは普通に難しいところだ。
同い年だった頃の俺が、先程の月村さんと同じ説明ができるのかと言われたら難しいと思う。
「月村さん、ご指摘ありがとうございます。的確すぎて俺もダメージを受けたところです。───ところで、歌い方についてのご指摘はありますか?」
「……声を張るのを意識しすぎ。張るんじゃなくて響かせることを意識した方がいいよ」
「むむむ〜?響かせる……?」
佑芽さんは腕を組んで考える。
「難しく考えなくて結構です。───声を押し出すのでなく、リラックスした状態で、息を吹き出しながら話す感覚で歌ってください」
「!ふーん、プロデューサーにしてはいい説明ですね」
「ありがとうございます」
月村さんに褒められたから感謝の言葉を送った。
「話す感覚……。本当に難しく考えなくていいってことですか?」
「それは極端すぎ。抑揚やビブラートを意識しないと単調になるよ。棒読みの歌とか聞くに絶えないでしょ?」
「確かに!話すことをイメージして?抑揚やビブラートを意識……。む、難しそうだけど理解すればできそうかも!」
「勘違いしないで。歌うだけならいいかもだけど私達はアイドルなんだよ。歌うのと同時に踊ることも忘れないように」
「わ、わ、わわわわわぁぁぁぁあああ〜!!」
歌とダンスを並行してやることを伝えられ佑芽さんの目はぐるぐる状態になった。
「はは、座学みたいなレッスンになりましたね」
「笑ってる場合じゃないですよぉー!さっきまでとやってること一緒じゃないですかぁー!!!」
事務所で宿題をしてたものだからそれと同じだと佑芽さんは言った。
「気持ちは分かります。ですが何事も上手くは行きませんよ。ここを乗り越えればあなたは一段と成長できる。───踏ん張りどころですよ」
「う、う、うおぉぉぉぉ……!が、頑張りますっ!!」
目をつぶりながらそう答えた佑芽さんが失礼だが可愛いと思ってしまった。
「まだまだレッスンはこれからだから気を抜かないで」
「はいっ!手毬ちゃん!引き続きお願いします!」
押忍!と言わんばかりに気合いを入れ直した佑芽さんが月村さんへ指導を乞うて、後半のレッスンが始まったのであった。
次回は8話冒頭で有翔を尾行していた二人が登場します。一体誰なんですかね。
ちょくちょく挟んでいるジャンプネタは今回の話をもって終了とします。
僕は楽しかったですが、万人受けするネタでもないので止めます。
1~9話のネタは修正しないのでお許しを。
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※人物紹介は今回もお休みです※