死んだ目をしたプロデューサー 作:勇気に満ちし者
純粋に好きなのと、原作P、星南以外のPがプロデュースしたらどうなるか考えてて一番楽しかったからです。
それではどうぞ!
予約した会議室で佑芽さんのプロデュース計画を立てていた。
佑芽さんは補欠合格ということもあり、生徒名簿に情報が一切載ってないため、先程のやり取りのみで大凡を把握する形で仮として計画を立てている。
佑芽さん自体の情報はない。だが花海咲季の情報は載っているため、
使えそうな情報は彼女のプロフィールからくみ取った。
「……花海トレーニングセンター」
彼女達のご両親は愛知県で花海トレーニングセンターと言うなの施設を運営しているようだ。
今年からアイドル専用ルームを鋭利建設中なんだとか…。これは今後プロデュースするにあたって利用する可能性が高いと見た。
サイトを閲覧中、連絡先フォームに目が止まった。
佑芽さんのご両親への挨拶と佑芽さんの情報を伺うことを目的として、
早速プロデュース用のアドレスを使ってメールを送った。
するとものの数分で返事が来た。
「……マジですか」
返信メールを見て俺は苦笑いした。
内容はこうだった。
『すぐに娘のプロデュース計画について話がしたい。
明日、下記住所に来ていただきたい。経費は───』
花海トレーニングセンターの住所と領収書を切る際の企業名まで丁寧に教えてくれた。
経費はなんか色々と面倒だから一旦自分で払うとして……。
こうして急ではあるが、明日、愛知への出張が確定となった。
善は急げ。新幹線の手配、及び担任へ出張申請を行う。
その後、次の講義までの待ち時間を使って、明日協議するための事前資料として、佑芽さんのプロデュース計画の資料作成へと勤しんだのであった。
◆◇◆◇
あれから数時間が経った。
本日の全ての講義が終わった俺は佑芽さんが来るまでプロデュース計画の資料作成を続けていた。
予定時間の数分前にして携帯に着信が入る。登録したばかりの佑芽さんからの電話だった。
「はい、圷───」
「プロデューサーさん!ごめんなさいぃぃ〜!!補習があるらしくて会議室に行けそうにないですぅぅぅ〜!!!」
「───そうですか」
電話に出た瞬間、かなりの大声でそう発していた。
全ての言葉に濁音が着くような声量に耳を痛めたが、咄嗟にそうですかとだけ返事をした。
「補習がある可能性は何となく察してしました。
入学式初日からとは思いませんでしたがね……。
いい機会です。俺も同行しますので補習を行う場所を教えてください」
「いいんですかっ!?ありがとうございます!
───えっと、広ちゃん!千奈ちゃん!補習授業の場所って何処だっけ!」
友人だろうか…あれ、今日入学式だよな…。
もう友人ができた?それとも元から知り合いなのだろうか。
電話の後ろで3人が会話している様を黙って聞く。
「今日はダンスルームだそうです!部屋番は───」
「わかりました。では後ほど伺います」
「はいっ!ふっふっふっ!プロデューサーさん、
あたしのダンス見ると驚くと思いますよ〜?」
「はは、覚悟はできてますのでご安心ください。では後ほど」
「ちょっ──!」
電話を切る寸前に佑芽さんが何か言いかけていた。
十中八九、驚くというのは下手さに驚くって意味だろう。
本人も下手と言っていたしな。
現段階で下手だったとしても問題ない。これから上手くなればいいだけのこと。佑芽さんが成長できるかどうかが俺の腕の見せどころといったところだ。
俺は必要な資料一式を鞄に詰めて伺ったダンスルームへと向かうのであった。
◆◇◆◇
「失礼します」
ダンスルーム入り口前に着いた俺はドアを数回ノックして扉を開いた。
「ほーう?花海のプロデューサーは圷だったのか」
「ご無沙汰してます。トレーナーさん」
ダンストレーナーは一瞬にして俺が佑芽さんのプロデューサーと悟ったようだ。
佑芽さんが事前にトレーナーへプロデューサーが来る旨を伝えてたから悟った感じか。
「今年からだったか?にしてもプロデュース生徒を決めるの早過ぎないか?まだ入学初日だぞ」
「ご心配なく。別に生き急いでたりしませんよ」
「だがもう少し……いや、本人を目の前にして言うのはやめておくか」
横目で補習組の生徒を見ながらトレーナーは口篭った。
「あっ!プロデューサーさん!こんにちはっ!早かったですね!」
「ええ、なるはやで来ましたからね。───ですが、えっと。時間的に補習授業は始まったばかりかと思うのですが…?」
トレーナーの視線の先、そして佑芽さんの両隣にいる生徒2人の様子を見ながら俺は確認した。
「も、もうヘトヘトですわ…。まさか入学初日からこんなにキツイことをするとは思いませんでしたわ!」
床に座り込んでいる生徒が、息を切らしながらお嬢様口調でとても分かりやすく体力が尽きたことを言っていた。
「ふふ、こんな準備運動で動けなくなるなんて
───ままならない、ね」ガックシ
「ひ、広ちゃーん!!しっかりして!まだ始まったばかりだよぉぉお!!!」
床にうつ伏せになりながら彼女はそう語った。
佑芽さんが身体を揺するも返事がない。どうやら屍のようだ。
「お前ら準備運動ごときでバテるとは何事か!
やっぱり先生達の意見を押し切って入学初日から鍛えてて正解だったな!」
どうやらトレーナーが無理やり入学初日から補習授業をやることを決行したようだ。
この体たらく…。トレーナー達はこうなることがわかってて、少しでも早く基礎的なトレーニングができるよう尽くしたというわけか。
「佑芽さん、お水になります。そこの方を介抱してあげてください」
「プロデューサーさん、ありがとうございます!
───広ちゃん!ほらっ!お水だよ!」
「うう、飲ませてくれる佑芽、好きぃ…」
佑芽さんに水が入ったペットボトルを渡しながら寝そべっている生徒を介抱してあげるよう伝えた。
「お疲れ様です。こちらをどうぞ」
「まあっ!ありがとうございます!」
反対にいた床に座り込む生徒には俺から水を渡す。
受け取った瞬間、感謝の言葉を述べたのと同時に水を一気に飲み込む。
「ぷはっ!生き返りますわ〜!このお水、すっごく飲みやすくて一気飲みしてしまいましたわ!」
「それは何よりです。───あ、申し遅れました。
俺はこうゆうものになります」
名刺を目の前の生徒へ渡した。
「ふふっ、存じてますわ。圷 有翔さんですよね!
花海さんからそれはもう何度も話を聞きましたわっ!」
「わわわっ!千奈ちゃん!言わないでよぉ〜!」
寝そべっていた生徒の介抱が終わった佑芽さんが一瞬で飛んできた。
話ってプロデューサーが決まったことを話してたってことだろうか。
「わたしも知ってる。───なんでも目が死んでる人って聞いた、よ?」
息を吹き返した生徒も話を聞いていたようだ。
目が死んでる人って…きっと俺の特徴を伝えるにあたって2人にはそう話したのだろう。
「あ、わたしは篠澤広。わたしのことは好きに呼んで」
「初めまして。では篠澤さんとお呼びします。
俺のことも好きに呼んでください」
「ふふ、じゃあありとって呼んじゃおっかな」
好きに呼んでいいと言ったが初対面でいきなり名前呼か。ちょっと嬉しいな。
って篠澤広ってあの飛び級で大学卒業したって噂の編入生じゃないか。
天才タイプは名前呼とか気にしない感じかなのか?
「うわっ!広ちゃんがいきなりプロデューサーさんのこと名前で呼んでるっ!?
な、なんで!?」
「ふふ、何となく?」
「えぇぇぇえ〜!なんかすっごく嫌!せめて苗字呼びにしてよぉ〜!!」
「だって。じゃあ普通にプロデューサーって呼ばせてもらおうかな」
「ええ、それで構いません」
佑芽さんが代わりに名前呼を断ってくれたおかげでプロデューサー呼びで定着したようだ。
「わたくしは倉本千奈と言います!
花海さんのプロデューサー、これからよろしくですわっ!」
「こちらこそよろしくです。
お二人とも佑芽さんと仲良くしていただけると助かります」
多分、今日初顔合わせのはずだよな?
この子達、仲良すぎないか?陽キャの力って凄いな。
倉本千奈…。この子も噂の子だな。
なんでも国内有数の大財閥『倉本グループ』当主の孫娘だそうだ。噂によると学園長と当主様は古い友人だとか。
誰か優秀なプロデューサーにプロデュースするよう学園長から指示したりするのかな。知らんけど。
「ほらお前ら休憩は終わりだ!準備運動の続きをするぞ!」
「ひぇー!ま、まだ準備運動終わってませんの!?」
「当たり前だろ!あんなの序の序の運動だ!これからまだまだ続くぞ!」
「ふふ、トレーナー凄く厳しい…。好きになるかも」
篠澤さんの変態発言をスルーしながら俺は携帯で生徒名簿を確認した。
倉本千奈…入試試験では最下位、次位が篠崎広…。
そして補欠合格の花海佑芽、なるほどワースト勢と言ったところか。
準備運動からこの有様。
佑芽さんは余裕がある感じだが2人は瀕死寸前、
これは担当するプロデューサーは大変そうだ。
だがセンスはありそうだ。愛嬌も見た感じと口調から良いと思われる。
倉本千奈さんは体力が付けば順当に成長しそうな予感がする。
篠澤広さんは体力を付けるだとかそう言った考えを捨てた方がいいだろう。
ミステリアスな容姿を活かした、曲、歌詞、最小限の表現を行うダンスを組み合わせれば爆発的な化学反応が起きそうだ。
「(まあ担当プロデューサーが彼女達の魅力に気付けれるかってところが難しいけど)」
自分が他者から死んだ目を持ってる人と思われるように、2人が最下位組として見るものなら、俺が感じだ魅力に気付けないだろう。
「トレーナーさん、遅くなりましたが本日は俺も見てていいですか?
佑芽さんは補欠合格ということもあって生徒名簿に情報がまだ載ってないんで、少しでもプロデュースの参考になればと」
「ああ、構わんさ。相変わらず見た目に反して熱心なやつだな。───そんなに担当アイドルが決まって嬉しいか?」
俺の過ごした一年間を知った上での発言だろう。
見た目に反しては余計だけどな。
「ええ、凄く嬉しいです。
憧れてたプロデューサー業を行えるのですから」
「ふっ、そうか。なら精一杯励め。陰ながら応援して
───って!篠澤!勝手に床に寝そべるな!」
激励の言葉の最中に怒号をあげたダンストレーナー。相変わらず声がでかい。見た目は美人なのにな。なんなんだろうか。
その後、俺は3人の準備運動が終わるまでダンストレーナーの背後から様子を見守るのであった。
◆◇◆◇
紆余曲折あったもののようやく準備運動が終わった。
「よし、では基礎練の前に入試試験で踊った『初』を見せてもらう。あれから多少成長したかどうか見させてもらうぞ」
初星学園に通う生徒であれば全員が知る『初』。
誰もが一番最初に習得する楽曲でもあり、同じ名前の定期公演がある程の楽曲だ。
初星学園の顔と言っても過言では無い楽曲でもある。
他にも沢山あるがあげればキリがないから割愛させていただく。
「倉本と篠澤はバテてるからな。休憩がてら先に花海から見させてもらうぞ。準備はいいか?」
「はいっ!何時でも大丈夫ですっ!」
佑芽さん元気よく自信満々に答えた。
発言はしなかったものの視線をこちらに向けて「見ててくださいっ!」と伝わってくる。
「一つの夢───♪」
どうやら歌うようだ。
『初』の出だしの歌詞を歌いながら演奏が始まった。
「───掴み取るの 今〜♪」
佑芽さんの演奏が終わった。
倉本さん、篠澤さんは拍手を贈るもダンストレーナーは頭を抱えていた。
「佑芽さん」
「はいっ!」
演奏を終えた佑芽さんに話しかける。
「───これから一緒に頑張っていきましょう!」
「はいっ!……って!ええっ!?
感想は!良かったとか!何かないんですかっ!?」
中等部かの内部進学組のレベルを知ってる俺からすると天地の差がある。
リズムは取れてない。動きはぎこちない…。正直、擁護することができないほど酷い。
「確かに驚きました。
でも今ので概ね不足部分は掴めました。
改善しがいがあってプロデュース欲が唆られるダンスでしたよ」
「おおっ!本当ですか!」
「圷、正気か?」
ダンストレーナーは呆れた様子でそう問うた。
「ええ、正気です。リズム感覚は基礎練を通せば佑芽さんなら習得できると思います。
佑芽さんは勘がいいとおっしゃってましたからね。
得意な勘を活かせばクリアできます」
「?お、おおぉぉー!!!??」
「ダンス面においてはひたすら反復練習ですね。
佑芽さんのご両親曰く、物覚えが良くないとのことなので───」
「ちょっと待ったぁぁぁああ!」
「なんですか。人がせっかく今後のプロデュース計画を語っていると言うのに」
「ご両親ってなんですかっ!?ぷ、プロデューサーさんは、あたしのお母さんとお父さんとお話したんですかっ!?」
「ええ、先程メールでやり取りしました」
俺は連絡先フォームからやり取りを行った旨を伝えた。
ちなみにだが、考えてたプロデュース計画と実際に佑芽さんのダンスを見て、想定通り動けそうで内心ほっとしている。このことは明日ご両親に伝えよう。
「明日は花海トレーニングセンターへ訪問予定です。
あ、お土産のリクエストがあるなら承りますよ?」
「えっ!本当ですか!じゃあじゃあ!お爺ちゃんが作ってるお野菜!
貰えるなら貰ってきてくださいっ!」
「わかりました。ご両親に相談しておきますね」
「やったぁー!じゃなくてっ!なんであたしの実家に行くんですかっ!?」
「綺麗なノリツッコミ!花海さん流石ですわ!」
倉本さんが何故か感心していた。
お嬢様だからこういったやり取りは珍しいのだろう。
ちなみに俺もちょっとこの会話を楽しんでいた。
「実はですね───」
俺は花海トレーニングセンターへ向かうこととなった経緯を説明した。
「ご両親に挨拶って、お前初日から飛ばしすぎにも程があるだろ」
ダンストレーナーが顔を青ざめながらそう言った。
「そうですか?挨拶することは普通のことだと思いますけど」
「まあそうなんだが…。早すぎて流石に引くぞ?」
「はは、そーゆうのは慣れてるので大丈夫ですよ。
ノーダメージです」
「───こいつ無敵か?」
「ええ、無敵の圷 有翔とは俺のことです」
地元で嫌われてた俺の精神力を舐めないでいただきたい。
そういった扱い方には慣れているから耐性ができてるんだ。
「ッッッ〜〜!!プロデューサーさん!
あたしのためにこんなに尽くしてくれるなんて!!
すっごくっ!嬉しいですっ!」
「それは何よりです。頑張った甲斐がありました」
「花海がそれでいいのならいいんだが…。」
佑芽さんが喜んでいるんだ。挨拶をしてて良かったと思った。
ご両親がどんな人かまではわかってないため、今夜中に調べるつもりなのは黙っておこう。
「友好的な関係で羨ましい限りですわ!私も早くプロデュース契約を結べれるように頑張りませんと!」
倉本さんは俺と佑芽さんのやり取りでプロデューサーの存在の良さを知れたようだ。
いい子そうだから優秀なプロデューサーが着いてくれることを願う。
最悪の場合、俺が何とかするか…。
「やっぱりあたしの勘は間違ってませんでした!
あたしのプロデューサーはプロデューサーだけだったんですね!」
「佑芽、凄く喜んでる。───ねえ、佑芽、プロデューサーにわたしのプロデュースしてくれないか聞いてみて」
「だーめ。プロデューサーさんはあたしのだよ♪」
「ふふ、厳しい、ね」
とんでもない会話が聞こえたんだが。
特にこちらに視線を送ってない様子だし触れるのはやめておくか。
「では話はこの辺にしておくか。次は倉本、お前の『初』を見せてみろ!」
「!はいっ!」
ダンストレーナーから指示を受けた倉本さんが佑芽さんと入れ替わるようにトレーナーの前に立った。
「倉本、準備はいいか?」
「はいっ!いつでもいいですわっ!」
「よし、それじゃあ───」
携帯で『初』の音源を再生しようとした時。
「見つけたわ!ここにいたのね!───佑芽っ!」
ダンスルームの扉が勢いよく開かれた。
「あっ!お姉ちゃんっ!」
「ええ!初星学園随一の美貌を持つ、学年首席の無敵のお姉ちゃんこと!花海咲季よ!」
ババーンと効果音が聞こえるような登場の仕方だった。
「初めまして、花海咲季さん
───俺はこうゆうものです」
すぐに名刺を取り出し花海咲季さんに渡す。
「───ふーん、あなたが佑芽のプロデューサー?
2組の子達が言ってた話は本当だったのね」
「と、言いますと?」
「佑芽が自己紹介で担当プロデューサーがいるって言ってたらしいの。
入学初日でまさかって思ったけど───あなたがここにいるってことは事実だったってことでしょ?」
「ええ、お察しが早くて助かります。俺が花海佑芽さんの担当プロデューサー、圷 有翔と申します」
改めて自己紹介をした。
紹介を受けた彼女は俺の顔をマジマジと見てくる。
こう改めてみると仕草といい、顔のパーツといい佑芽さんの面影があるな。
「何考えてるのかわっかんない目。あなたのその目、周りから死んでるって言われない?」
「自他共に目が死んでると思ってますよ。
言わば俺のアイデンティティと言っても過言では無いでしょう」
「ぐぬぬ〜〜〜〜。馬鹿にしたっていうのにこうも簡単にスルーされるとはね」
「はは、馬鹿にされすぎてますのでノーダメージです」
「そう、わたしなみに無敵ね」
さっきから無敵ってなんだよ。流行ってんのかな。
「ところでお姉ちゃんは何しにきたの?」
「佑芽にプロデューサーが着いたって聞いたからいてもたってもいられなくってね!
この目でプロデューサーの様を見るために学内を探し回ったわ!」
「もーう、お姉ちゃん過保護すぎるよー」
今更だが姉妹関係は佑芽さんが妹のようだ。
特に言ってなかったら言及しずらかった部分を解消できて何よりだ。
「時にプロデューサー、言っとくけどわたしはあなたが、佑芽のプロデュースをするなんて認めてないんだからね!」
だそうだ。
困ったな。別に彼女の許可は必要ないと思うんだが。
───とゆうか。
「と、言われましても明日には佑芽さん、
もとい花海咲季さんのご両親にご挨拶に伺う予定───」
「はぁぁぁぁっっ!?あ、挨拶!?まだ入学したばかりなのにっ!?」
なんだろうか。今日は話を遮られることが多い気がする。
「んっ!んんんっ!こ、行動力が優れていることは認めるわ!なら佑芽のプロデュース計画を教えなさい!わたしが見定めてあげるわ!」
「紛らわしいので名前呼で失礼します。
───咲季さん、それはお断りします」
「なんでよ!?わたしは大事な妹が変なプロデューサーに捕まって欲しくないから確認したいんだけれど!?」
「───佑芽さんから伺ってます」
「???」
俺はプロデュース計画を教えない理由を語る前に佑芽さんから伺った内容を話す。
「佑芽さんには勝ちたい人がいると。それは咲季さん、あなたですよね?」
「ええ、佑芽とは数多の競技で鎬を削った仲良だからそう思われてるはずよ。───それが?」
「要するにあなたは我々の敵なのです。
敵にプロデュース計画を語る阿呆が何処にいますか?」
『……………………………………………………』
その場にいた全員は思った。
『(確かに…。)』
と。
「ッ!そ、そうかもだけどわたしは敵である前に佑芽のお姉ちゃんなの!妹のプロデュース計画ぐらい聞いたっていいじゃない!それともまだ計画してなくて話せないのかしら?」
痛いところを付かれた。だが、それの答えは持ち得てる。
「ええ、練ってはいますが計画は決まってません。
明日、佑芽さんのご両親達と今後の育成方針について協議する予定です」
「なるほどね。両親の挨拶と合わせて詰めてくって魂胆ね。───いいわ、話を変えるわ。
あなたが佑芽をプロデュースしようと思った理由は?
返答次第では…この契約、破棄させてもらうわよ」
「お姉ちゃん!勝手なこと言わないでよっ!この人はあたしがッ───!」
花海咲季さんの発言に対して佑芽さんが割って入ってきた。
俺は佑芽さんの肩に手を置き、目で自分で言うから大丈夫と伝えた。
(目が死んでるから伝わってないけど)
「俺が佑芽さんをプロデュースすると決めた理由、
ですか、そんなの至極簡単です」
そう、本当に至極簡単。圧倒的イージーすぎる理由。
「佑芽さんが、こんな死んだ目をした俺を勘だよりだけど、───俺がいいと言ってくれたからです」
「…………………………………………………………」
「誰かに期待されたことがない俺だけど、こんな俺を頼ってくれた。俺はそんな佑芽さんの思いに応えたい。
───だからプロデュースすると決めたんです」
ダンストレーナーは組んでた腕の力を強めた。
色々と事情を知れて俺の異常と呼べれる佑芽さんに対する行動理由の合点が言ったと悟った顔付きへと変わっていた。
「───そう、わかったわ。
咲季さんは真剣な面持ちでそう答えた。
「さっきの発言、謝罪させて。
───あなたの目、馬鹿にしてわるかったわ」
これまた真剣な面持ちで謝罪された。だがこればっかりは違う。
「いえ、死んだ目のことに関してはなんとも思ってませんよ。言ったじゃないですか、自他ともに認めてるって」
「……ねえ、佑芽、この人なんか話噛み合わなくない?」
「そうかな〜?そんなことないよっ!」
佑芽さんは笑顔でそう返した。
咲季さんはため息をついて息を深く吸った後、先程までと同じテンションで語り出した。
「いいわ!佑芽がそこまで言ったのなら認めてあげる!───
佑芽を不甲斐ないアイドルに育成したらタダじゃおかないんだから!」
「望むところです。俺達は咲季さんを倒して学園一のアイドル…。
『
人生でこんな言葉を使ったのは初めてだ。
どうやら咲季さん好戦的な発言に影響を知らないうちに受けたようだ。
「返り討ちにするから覚悟してなさい!
おっと、じゃましたわね。それじゃあ失礼するわ!」
ぺこりと一礼して花海咲季さんはダンスルームから退室した。
嵐のように颯爽と登場して場を一気に制圧してたものだから、居なくなった途端室内が無音となった。
「あ、あの!わたくし、そろそろ『初』をお披露目してもよろしいでしょうか…?」
放置されていた倉本さんがそう発した。
「!す、すまん!さあ行くぞ!倉本ぉっ!」
何故か気合いが入っているダンストレーナーが勢いよく音楽の再生ボタンを押して、『初』を流すのであった。
◇◆◇◆
幾度となく休憩を挟んだことで、予定より大分後ろ倒しとなった補習授業は無事に終了した。
今後の補習授業のスケジュールをダンストレーナーから共有され、早速プロデュース計画に組み込んだ。
多方、補習授業があると予想はできてたため、計画に大幅な変更はなかった。
「ではこちらの用紙に署名をお願いします」
「はいっ!」
補習授業後、俺達は予約していた会議室でプロデュース契約書の作成に勤しんでた。
「次はここへ押印願います」
「はいっ!」
プロデュース契約書の書き方について、記入する際、戸惑っている様を担当アイドルに見せたくない一心で何度も勉強したのは内緒の話だ。
あと佑芽さんが一言一言に元気よく返事をしてくれるから嬉しい。
篠澤さんの言葉を借りると好きになりそうだ。
「以上になります。あとはこちらから提出しておきますね」
「はいっ!色々と教えてくれてありがとうございました!」
「いえいえ、プロデューサーとしてこれぐらい当然のことですよ」
フレッシュ溢れる満面の笑顔。
知ってるか?彼女は俺の担当アイドルなんだぜ。
「今日はお互いの情報を共有する情報交換会的な時間を設けるつもりでしたが…。補習授業が思ったより長引きましたね」
「はい〜〜、うーん!初日からちょっとだけ疲れちゃいました」
佑芽さんは伸びをした後、肩に手を当てて筋肉を解すように肩を回していた。
「情報交換会は明日行いましょう。愛知から帰ったら連絡します」
「戻ってすぐですかっ!?プロデュースさん休まなくて大丈夫なんですかっ!?」
心配してくれるなんて佑芽さんは優しいな。
「ご心配なく、俺も多少は鍛えてますから」
高校一年から大学一回生の年度末までずっとバイトに明け暮れた日々だったからな。
体力に関しては佑芽さんには劣るが自信はある。
「おおー!それはいいこと聞きましたなぁ〜!
じゃあ!今度、よかったら一緒にランニングしませんかっ!?」
「いいですね、機会があればご一緒させて下さい
…って話しすぎましたね。今日は遅いので寮まで送りますよ」
辺りも暗くなり始めてる。
夜道は危ないから寮の門まで送るとしよう。
「ありがとうございます!じゃあすぐに着替えてきます!
───あっ!待たせるのもあれなので、今のうち契約書を提出してきてもいいですよっ!」
「ではお言葉に甘えてそうさせていただきます。
正門前で待っときますね」
「はいっ!わかりました!」
会議室から出た佑芽さんは注意されない全力の速度で更衣室へと向かっていった。
俺はというと、PCと資料を鞄に入れて契約書を提出すべく事務室へと向かった。
あさり先生が不在だったため、別の教員にプロデュース契約書を提出して、俺達は正式なプロデュース契約を結ぶこととなった。
早速、明日から愛知の出張となり忙しいスタートとなるが満更でもない自分がいる。
これから、あの日、憧れ焦がれたプロデューサーとしての日々が始まると思うと高ぶってしまう。
俺は高鳴る期待を抑えながら、正門前で佑芽さんが来るのを待つのであった。
続きは後日ということで。
果たして原作Pの担当アイドルは一体誰なのか…。こうご期待。
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〈人物紹介〉
【
母親がアイドル好きであったため、ライブに行くときは幼い頃から同行していた。
『HIF』にも同行したことがあり、当時『
【花海 佑芽】
練習着のまま会議室で有翔と二人っきりだったなと就寝前に気付いた。
有翔に汗臭いと思われてないか気になって少しだけ寝付けなかった。
※人物紹介はオリ主と担当(もしくはなる)アイドルだけです