死んだ目をしたプロデューサー 作:勇気に満ちし者
大変お久しぶりです。私生活が忙しくて執筆活動が疎かになってました。
一か月ぶりの投稿ですがご覧いただけますと幸いです!
なんと初感想&評価をいただけました!とても嬉しいです!
少しでも色んな方にご覧いただきたいので評価してバーに色を付けていただけると助かります!!
それでは本編どうぞ!
咲季さんの視線を感じながら二組の扉を開く。
「すみません。花海佑芽さんいらっしゃいますか?」
早々に要件を簡潔に述べた。
『………………………………………………』
クラス一同、じっーとこっちに視線を向けられる。
「(視線つらー、これだから目立ちたくないんだよな)」
佑芽さんに携帯で連絡を入れればよかったが、咲季さんに会ってた以上、あとから一年のフロアに来てたら会いに来てくれてもよかったじゃないですかー!って言われかねない。
だから俺はあえて直接、会うことを決めた。
ちなみに咲季さんに会いに行った理由は連絡先を知らないから、会うしかコンタクトをとるすべはなかったからだ。
「あっ!プロデューサーさん!もう戻ってきてたんですね!」
教室の奥から佑芽さんが元気よく発しながら近付いてきた。
「先ほど戻ってきました。咲季さんにお土産を渡すついでに佑芽さんの迎えに参りました」
「そうなんですね!わっー!これ!お爺ちゃんの野菜ですか!?」
「はい。たくさんいただきました」
佑芽さんは野菜に釘付けのようだ。
野菜を手に取り品質を確認するように眺めていた。恐らくそういった意味合いで見てるとは思えないが。
「ありと、愛知からもう帰ってきたの?」
「長旅ご苦労さまです!」
篠澤さんと倉本さんが声をかけてきた。
「ええ、あ、こちらは名古屋のお土産です。篠澤さん、倉本さんの分もありますよ」
「おーありがとう」
「まぁ!本当ですの?ありがとうございます!」
「お二人のお口に合えばいいのですが…」
特に倉本さんのお口に合うかどうか…。
もし、不味いものでも渡したら俺の首は倉本爺に吹き飛ばされるかもしれん。
「また広ちゃんがプロデューサーさんのこと名前で呼んでる…。本当になんで?」
佑芽さんは疑問符を浮かべていた。
「ふふ、なんでだろう、ね?」
「……俺に振られても困ります」
篠澤さんは横目で俺を見ながら話を振る。
4人で少し話をしていたが周囲がざわつき始めた。
ヒソヒソとあの人誰?だったり、なんで補習組と仲良いの?目、死んでない?と言われていた。
その声を聞いたのか佑芽さんが声を出した。
「みんな!紹介するね!こちらはあたしのプロデューサーさんになりまーすっ!!」
元気よく、ばばーんと効果音が着くような形で俺は二組のメンバーに紹介された。
「圷 有翔と申します。皆さん、佑芽さんと仲良くしていただけると助かります」
当たり障りのない挨拶を行った。
すると警戒心が薄れたのか、クラスの大半が俺に興味を持ち始めて一斉に近寄って話しかけてきた。
「あの!佑芽ちゃんのプロデューサーさん!どうゆう経緯で佑芽ちゃんのプロデューサーになったんですか!?」
「佑芽ちゃんをプロデュースしようと思った理由なんですか!?」
「……えっと───」
人混みに慣れてない俺は一斉に質問されて萎縮してしまう。
1on1であれば無敵だが、多勢となると話が変わってくる。
「あ、皆さん。あたしのプロデューサーさんと話したい時はあたしを通してください」
佑芽さんは皆さんにステイと呼びかけるように手を前に出してそう言っていた。
「佑芽がありとのプロデューサーみたいになってる」
「ふふ、立場が逆転してますわ!」
「……なんか、複雑な気分ですね」
プロデュースする側の身でありながら担当アイドルに助けられる。これ如何に。
「冗談はその辺にして早く事務所に向かいますよ」
みんなに囲まれる佑芽さんに聞こえるよう声を大にして言う。
「わかりました!───って、事務所?事務所ってなんですか!」
「事務所とは我々の活動拠点と思っていただければと」
「活動拠点!あたし達のアジトってことですね!」
「……まあそんなところです」
アジトって表現が小学生感を思わせる。
佑芽さんらしくて俺は好きだが。
「それってわたし達も着いて行っていいの?」
「そうですねー。事務所の整理整頓が落ち着いたらお呼びしますよ。今日はご遠慮いただけると助かります」
篠澤さんが聞いてきたものだからそう答えた。
今日は今後のプロデュース計画を話す重大な内容だ。
いくら仲のいい篠澤さん、倉本さんにも安易に聞かれることは避けたい。
「相変わらずの秘密主義者だね。佑芽のお姉ちゃん、咲季にもやっぱりプロデュース計画は話さないの?」
「!お察しいただきありがとうございます。そうですね。咲季さんに話すつもりはありませんでしたが、少し
「揺らぐ?それは何故ですの?」
「はは、何故ですかねー」
乾いた笑いをしながら俺は話を切り上げるよう教室の出口へと向かった。
「佑芽さん行きますよ」
「はーい!それじゃあみんな!また明日っ!」
クラスメイトに囲まれていた佑芽さんは飛び出し俺の元へ駆け寄ってきた。
二人して一緒に廊下へ出て、あさり先生が用意してくれた事務所へと向かうのであった。
◆◇◆◇
プロデューサー科のフロアへ向かい、あさり先生からいただいた情報を元に事務所を特定した。
「ここ、か」
鍵は開けてるとのこと。
鍵はキャビネットの中に入れてるから回収してくれと連絡が来ていた。
「佑芽さん、ここが俺達の事務所です」
「なんか普通の教室ですね。もっと、こう、なんて言いますか?パソコン室みたいな…?」
「一般的なオフィスとは違いますよ。なんせここは学園なのですから」
あははと笑いながら扉を開ける。
中は佑芽さんが言ってた通り普通の教室となんら変わりない。違いがあるとすればキャスター付きのモニター台と固定されているモニターがあるぐらいか。
「野菜ここに置いちゃいますねっ!」
ドサっと鈍い音と共に卓上にダンボールが置かれた。
ドサってなんだよ。どんだけ重かったんだよ。
俺、よくこの重さのダンボール2つも持ってたな。
ちなみにだが、荷物はここに向かう道中、佑芽さんが持つと言い出し、断ったが簡単に奪われたのだ。
「お荷物、運んでいただきありがとうございました」
「ふっふっふー!鍛えてますからね!これぐらいへっちゃらですっ!」
「頼もしい限りです」
へっちゃらですか。
流石と言いたいが自分の不甲斐なさを感じざるを得ない…。俺も筋トレするか。
「さてと、事務所にも着きまし、予定通り情報交換会、もとい佑芽さんの今後のプロデュース計画について話したいと思います」
筋トレすることを決意した直後、俺は意識を切り替えそう言い出す。
「はい!よろしくお願いします!プロデューサー先生っ!」
「……せめてどちらかにしてください」
「じゃあプロデューサーさんで!」
なら先生とはじめから付けなくてよかったのでは?と思うが話が逸れるからスルーしようか。
「モニターがあるので資料を投影します。止めて欲しい箇所があればお伝えください」
「はいっ!」
相変わらず返事の元気がいい。
やる気がそそられるその返事は気持ちがいいな。
「では始めさせていただきます。───まずは情報交換についてですが、こちらにらついては俺が一方的に佑芽さんのことを知ってるので、俺のことについて話す流れになります」
「ふむふむ」
「なのでこれは最後に持ってきます。聞きたいことがあればなんでも答えるのでそのつもりで」
「わかりましたっ!」
佑芽さんは元気よく答え、ビシッと敬礼をして見せた。
「いい返事です。早速ですが佑芽さんの今後のプロデュース計画について説明します」
資料を投影した瞬間、佑芽さんはん?と疑問符を浮かべ腕を組みながら首を傾げていた。
恐らく見慣れたフォーマットの資料だったから少し考えたのだろう。ご両親からいただいた花海家で使っているフォーマットだからな。
「佑芽さんのご両親からの要望は幾つかありましたが、ここでは2つをピックアップします。───まずは学力面ですね。アイドル活動も大切ですが、学生なので勉学に励むようにと」
「えぇぇぇえええ!!勉強!?ぐ、ぐぬぬ、あんまり乗り気にならないです!」
「ご安心ください。そんな定期試験で満点取れとは言ってませんよ。補習にならない程度で構わないとのことです」
「ん〜勉強か……が、頑張ります!」
アイドルである前に学生だからな。
赤点なんて取って補習を受け続けるとなれば成績不良でアイドル活動に制限がかかる可能性もある。そうならない為に俺も全力でサポートするつもりだ。
現段階で補習を受けているが…。
これはアイドル科独自の補習であって練習になるから別扱いとする。
ここで言う補習とは普通科や他の科との共通科目での補習を指しているのだ。
「俺もサポートしますよ。なので放課後のレッスン前に勉強時間を30分設けましょう」
「さ、30分も…ですか?」
「はい、ですがあくまで目安です。この30分で勉強、もしくは課された課題を終わらせましょう」
「課題?課題って宿題のことですか?」
「失礼しました。高校ではそのような呼び名でしたね。───そうです。宿題さえこなせば赤点は回避できるはずです。提出物もしっかり出すことで内申点の減点も防げます」
宿題の面倒を見つつ俺が教えれば赤点ぐらいなら回避できるはず…。佑芽さんの学力にかかってはいるがな。
「んーでもレッスン前にするって気が乗らないなー」
「何をおっしゃいますか。宿題が終われば楽しい楽しいレッスンが待ってるじゃないですか」
「なっ!つ、つまりレッスンがご褒美ってことですかっ!?」
「そうです」
「うぉぉぉぉおおおお!それなら!燃えてきました!あたし!宿題ちゃんとします!!!」
ちょろいなこの子。将来が少し心配だ。
「良い心がけです。続いてアイドル活動についてです。ご両親からはトップを目指すようにと言伝をいただいてます」
「!トップ、ですか?───その、他に何か言ってませんでしたか?」
「他、ですか。───佑芽さんは何か言われるような心当たりがあるのですか?」
「ぎくっ!」
佑芽さんはわかりやすい反応をして見せた。
「その、お父さんとお母さんはあたし達がアスリートの道を選ばなかったことについて……何か言ってたりしませんでしたか……?」
弱々しく佑芽さんは聞いてきた。
こんな佑芽さんを見るのは初めてで少し同様したが切り替えて答えた。
「その点においては特に話は伺ってません。───が、少なからず思う部分はあったかと思います」
「あ、で、ですよねぇー」
頭を掻きながら佑芽さんは下を向く。
「ですが、ご両親はこうおっしゃってました」
「え?」
俺は佑芽さんにご両親からいただいた言伝を伝える。
「『期待している』と」
「!!!!」
「思う部分はあったかもしれませんが、ご両親は佑芽さんがアイドルの道を選んだことを否定してません。───寧ろ期待してます。ご期待に応えれるよう一緒に頑張りましょう」
「〜〜!!はいっ!」
思うものを全ての見込み佑芽さんはいつも通り元気よく答えた。
『期待している』それだけで全てを察せれる親子関係、佑芽さんがご両親からどれだけ愛されているのかわかる。
「いい返事です。では話を戻します」
「はいっ!」
「語りたいことは山ほどありますが、ここではメインの話だけにしておきます。───佑芽さんは物覚えがよろしくないとのことなので、各レッスンにおいてひたすら反復練習を行う形になります。これは以前も話した内容ですが覚えてますか?」
「しっかりと覚えてます!リズム感覚はあたしの勘を活かしていくんですよね!?」
「ええ、その通りです」
いいぞ。ちゃんと話を覚えてて偉いな。
「ダンスレッスンにおいては佑芽さんの勘を元に取り組んでいく方針です。幾つか計画があるのでそれはレッスン時にお伝えします」
ふむふむと佑芽さんは頷く。
そんな佑芽さんを横目にモニターを見ながら話を続けた。
「時に佑芽さん。あなたは天才って言葉を聞いてどう思いますか?」
「え?それは───ものすっごーい!天賦の才を与えられた人のことをさす言葉だと思いますっ!」
「そうですね。では秀才は天才に勝てると思いますか?」
「秀才が天才に……?勝てないことはないと思います!秀才だからって天才に勝てない道理はないのでっ!」
ほう、なかなかいいこと言うなこの子は。
「おっしゃる通りです。が、こと佑芽さんは天才側の人間です。───今はその自覚がなく、実技試験は散々な結果でしたがね」
「あ、あたしが天才!?」
「はい。高校1年生、且つ早生まれというハンデを抱えながら同学年の生徒よりも優れた身体を……最高の肉体を持つ佑芽さんは正しく天賦の才を与えられた天才です」
「す、優れた身体……で、最高の肉体って───」
ほうほう、この感じ喜んでくれたか?
「えっ!えっちですよ!プロデューサーさん!」
「……………………………………………………」
予想とは違った反応だな。
とゆうか俺がえっち、だと?
つまりあれか?変態ってことか?
この俺が…?
「そう思うなら結構です。さて、話を続けますね」
「えっ!?スルーですかっ!?ちょっとは反応してください!ほ、本当にえっちなんですか!?」
「なわけないでしょ。なんで真面目な話をしてる時にそんなこと思うんですか。少女漫画の読みすぎですよ」
この世界は残念ながらフィクションじゃないんだよ。
頭がお花畑なのは別にいいが口に出す必要はないだろ。
「……た、確かにプロデューサーさんが急にえっちなこと言うはずないですもんね。───す、すみません!今のは忘れてください!!!」
「いいえ。忘れません。一生、佑芽さんの脳内がお花畑だけだと弄り続けます」
「そ、そんなー!謝りますから許してくださいよぉー!!!」
意地悪するのはこの辺にしておくか。
「なんて冗談ですよ。今後はちゃんと空気を読んで失言は控えましょう」
「ううっ、ご、ごめんなさいぃ」
謝る姿が可愛いから良しとするか。
「話を戻しますが、佑芽さんは天才です。ですがあなたにはその自覚がない。ので俺がその才を開花させます」
「!開花ですか!」
「ええ、聞いたことありませんか?「才能は開花させるもの。センスは磨くもの」と」
「聞いたことありませんっ!」
そ、即答〜。及川さん泣いてんぞ。
「んんっ!秀才のくだりは覚えてますか?残念ながら俺は天才ではありません。───秀才と呼ばれる存在ですらないかもしれませんが、秀才になるための術は知ってます」
「秀才になるための術、ですか?」
「ええ、それは天才と戦うための術です。つまり解釈を変えれば、天才が秀才と同じことをすれば、天賦の才を持つもの天才は秀才より、成長スピードはダンチなのです」
「うぅ、天才と秀才がたくさん出てわかりにくいですー」
佑芽さん頭から湯気が出ていた。
ちょっと話が難しかったか。
「要するに天才である佑芽さんが努力をすれば秀才よりも成長スピードは早く、簡単に才能を開花できるって話です」
「おー!わかりやすいです!グッとですっ!」
ぐーと腕をのばしながら佑芽さんは答えた。
「俺が持つ秀才の術を駆使してあなたの才能を開花してみせますよ。───特に、ことダンスにおいてはロジックでなんとでもなります」
「わー!プロデューサーさん!なんだかデータ分析する漫画のキャラクターみたいです!!」
死んだ目をしてるやつが、そんな立ち位置キャラな訳あるかーい。
と、ツッコミたいが話が脱線するので無視しよう。
「ボーカルに関してはロジックが通用しませんからね。ここはトレーナーと一緒に共同でレッスンします」
歌が得意な生徒から指導を受けるって案もあるが、生憎、俺には仲のいい生徒なんていないし、佑芽さんも今のところいるようには見えない。
「ビジュアルに関して、佑芽さんのその容姿であれば問題ありません。同学年の中でもトップレベルの可愛さですからね」
「!え、えへへっ!そこまで直球で褒められると照れますねぇ!」
よし、えっちだとは思われなかったみたいだ。
「では続いて───」
そこから俺は30分程、続きのプロデュース計画を語った。佑芽さんはしっかりと反応してくれて、俺だけがつらつらと語るような時間とならなくて安心した。
「───以上がプロデュース計画になります。ご清聴ありがとうございました」
ぱちぱちぱちと佑芽さんが拍手をして終わりを迎えた。
「次は俺のことですね。聞きたいことがあれば───」
「はいっ!質問ですっ!」
予定通り俺の話へと移った瞬間、佑芽さんは手を挙げて体を前のめりにしながら俺の話を遮って、元気よく手を挙げた。
「───はい、佑芽さんどうぞ」
「プロデューサーさんはどうしてプロデューサーになろうと思ったんですかっ!?」
想定していた質問だった。
今日でなくともいつかは聞かれると思ってた質問だ。
「語ると長くなります。あれは───。」
俺は佑芽さんに自分がプロデューサーを目指すきっかけとなった話をした。
母親が大のアイドル好きで幼い頃からライブに連れていかれていたこと。
連れていかれたライブの中には『HIF』もあり、新たに『
『アイドルはみんなに夢を見せる存在なんです!』
という言葉に対して、じゃあアイドルに夢を見されるのは誰かと疑問を抱いた。
その疑問を母親に問いかけて「プロデューサー」と答えられたことをきっかけにプロデューサー業務に興味を持つことになったと。
「プロデューサー業を調べるうちに魅力に引かれましてね……。俺はこうゆう見た目ですし、裏方に徹するプロデューサーが合ってると思って志したんです」
「……………………………………………………」
佑芽さんは黙って俺の話を聞いてくれた。
長く語りすぎた俺は正気に戻り話のまとめに入る。
「要するに俺は担当アイドルに夢を見させたいんです。───だから、佑芽さんの要求は可能な限り応えてみせますよ」
「ッ〜〜〜!!じゃあ!」
「???」
佑芽さんが椅子からガバッと立ち上がった。
「あたしがプロデューサーさんに夢を見せますっ!あたしのプロデューサーでよかったって!世界で一番幸せだって言わせてみせますよっ!」
にひっ!と笑って佑芽さんは言い切った。
「───はい。期待してます」
「はいっ!期待しててくださいねっ!」
少し早いが、佑芽さんを担当アイドルとして選んでよかったと心から思えた。
仮にこの先レッスンでつまづくようなことがあっても今の言葉を思い出せばなんとも思わないだろう。
「他に質問はありますか?」
「えっとえっと!あっ!プロデューサーさんって出身地は何処なんですか?」
「出身地はわかりませんが、育った場所は長崎の山と川に囲まれた小さな町ですね」
地元のことは思い返すだけで嫌な気分になるがな。
「長崎!ちゃんぽんとか!カステラが有名ですよね!」
「みたいですね。俺は興味ないので知りませんが」
「?あれ?出身地は長崎じゃないんですか?」
「長崎はたかが育った街です。出身地は伝えた通り知りませんね」
「し、知らないってどゆう……あの!これって追求していいやつなんですかっ!?」
「はは、知らないので追求しようがないですよ」
「あっ、そうか!」
すまんがこればっかりはセンシティブな内容だから答えられない。
父親は生まれた時から、母親は俺を産んでからすぐに他界してて、今の母親はただの育て親ですーなんて言ったら佑芽さんも反応に困るだろうし。
「んーなんかプロデューサーさんって秘密主義者っぽくないですか?」
「失礼ですね。語る必要がない話は語らない主義なんですよ。俺の出身地や家族構成など語る必要はプロデュースに1ミリも関係ないので」
「それはそうですけど……ぐぬぬー!き、気になるぅ〜!!!」
そんな気になることだろうか?
気になってレッスンに身が入らないとなるのは嫌だな。
「なんでも答えると言いましたが嘘になってしまいましたね。罰として佑芽さんの言うことをなんでもひとつ聞きますよ」
「いいんですかっー!」
「はい」
佑芽さんは元気よく答え再び体を前のめりにして、目を輝かせながら喜びを露わにしていた。
「じゃあじゃあ!事務所ができたことですし、引越し蕎麦?的なやつを食べたいです!」
「引越し蕎麦ですか?───いいですね。佑芽さんのご実家からいただいた野菜もあるので、天ぷら…いえ、かき揚げ蕎麦なんか如何でしょうか?」
「おー!それナイスアイディアです!あっ!やるなら広ちゃんと千奈ちゃんを誘ってもいいですかっ!?」
「構いませんよ。人が多ければ多いほど野菜も消費しやすいですから」
野菜をどう消費しようか悩んでたところだ。
佑芽さんがそうゆうことをしたいと提案するならいい機会だし、野菜を消費できて万々歳だ。
「どうせなら咲季さんも誘いましょうか。自分抜きで何をしてるんだと、あとから突っかかれたら面倒ですからね」
「はいっ!───なんかプロデューサーさんってお姉ちゃんのこと気にかけてません?今日も会いに行ってたんですよね?」
「お土産を渡しに行っただけですよ。まあ、魅力的な方だとは思いますが、佑芽さんには敵いませんよ」
「!えっへへー!なら許します!」
俺は一体何を許されたんだろうか?
「では今週末にでもしましょうか。早くしないと野菜もダメになりますからね」
「わかりましたっ!広ちゃん、千奈ちゃん、お姉ちゃんに声をかけておきますねっ!」
「ええ、よろしくお願いします」
参加者が多ければいいと思ったが事務所にはいりきらないか。
事務所の引越し祝い?引越しか?まあいいが、事務所でできないのはあれだが油も使うし流石に別の場所を抑えるか。
学生寮のラウンジであれば調理場もあるからうってつけか。あとであさり先生に使用許可の申請を行うとしよう。
「プロデューサーさんとこうゆうことするの初めてですねっ!あたし!楽しみにしておきますねっ!」
「わかりました。俺も腕によりをかけて最高のおもてなしをしますよ」
「とゆうことはプロデューサーさんの手料理ってことですか!蕎麦も打つんですかっ!?」
「蕎麦は流石に市販のものでご勘弁を…。」
蕎麦は打ったことがないから市販のもので妥協していただきたい。
「んんっ!週末のイベントを楽しむ心意気は結構ですがまだ先の話です。補習の予定もありますし、これからは俺達の個別レッスンも始まりますからね」
「はい!体力には自信があるので精一杯頑張ります!」
なんて心強い答えだ。
やはり佑芽さんはプロデュース欲をそそられる逸材のアイドルだな。
「それと俺が与えた
「うぅ、プロデューサーさんからの宿題は難しそうです……。でも!あたし諦めませんから!必ずプロデューサーさんが納得する答えを見つけます!」
「はい。待ってます」
佑芽さんに与えた宿題、プロデュース計画の後半で課した言わば課題だ。
佑芽さんであれば答えに辿り着ける。
そう信じて一緒に考えずに佑芽さん1人で考えるよう課したのだ。
「さて、明日から忙しくなりますよ。今日はゆっくり休んで、元気な姿を明日もお見せ下さい」
「はい!プロデューサーさんも出張と資料作成お疲れ様です!───明日もよろしくお願いしますっ!」
ぺこりと佑芽さんが一礼する。
釣られて俺も会釈して今日のMTGは終わりを迎えた。
まだ少し明るいということもあって今日は寮まで送らずに事務所で解散することとなった。
佑芽さんが事務所を出たあとは少しだけ掃除をして事務所から退室する。
「……………………………………………………」
事務所の鍵を暫し見つめたあと施錠する。
ポケットから自宅や自転車の鍵を付けてるキーケースを取り出し、そこに事務所の鍵を付けた。
「(ここが俺達の事務所…。)」
憧れてたプロデューサー業務もできて事務所まで手に入った。
プロデューサー科の生徒であれば、申請すれば簡単に手に入る部屋だが、長年夢見てたものだから安易に手に入るものであっても嬉しく思う。
「(俺が佑芽さんを『
廊下の窓から見える夕焼け空に輝く一番星を眺めながら改めて決意したのであった。
小悪魔リーリヤが可愛すぎる件について。
実は僕、リーリヤ担当Pなんです。次が手毬でその次が佑芽ちゃんです。
佑芽ちゃんが一番じゃないんかいってね。
次回は引越し蕎麦回?ではなく3話で登場したあいつの話をお届け予定です。
少しでも面白いと思ったら感想と評価をお願いいたします!!
〈人物紹介〉
【
佑芽にえっちだと言われ少しショックを受けていた。
自分こそ紳士OF紳士だろと思ってたが故にショックが大きかった。