死んだ目をしたプロデューサー 作:勇気に満ちし者
この流れを止めないためにも急遽、執筆いたしました!
評価をしてくださった、ぺん爺さん、中山鳥さん、カクカクシカジカ0120さん、海月風船さん、nkm302さん、かこにゃんさん、シバイヌ0901さん、くろばねさん、感動するカワセミさん、夜市よいさん、prinnyさん、kihaさん、ありがとうございます!!
高評価をいただけたおかげでお気に入り登録の数が急増しました!
お気に入り登録してくださった皆さん!本当にありがとうございます!
本当は一人ずつお名前を上げて感謝の言葉を贈りたいのですが人数が多すぎるのでまとめさせていただきます。
今回は日常回になります!楽しんでいただけると幸いです!
それでは本編どうぞ!
日曜の昼下がり学生寮の正門前で俺は待機していた。
「有翔、待たせたわね」
「いえ、今来たところです」
本当にさっき来たばかりだからそう答えた。
「学生寮に男一人で入るのは抵抗がありますからね。───咲季さんが迎えに来てくれて助かりました」
咲季さんと一緒に学生寮のラウンジに向かいながら話す。
「そうかしら?プロデューサーなら普通に出入りすればいいじゃない」
「普通のプロデューサーであればそうですね。ですが、俺は死んだ目をしたプロデューサーですからね」
一人で女子寮をうろつく死んだ目をしたプロデューサーとか悪評が広がるの待ったなしな件について。
佑芽さんの為にも俺は悪い意味で目立ちたくないのだ。
「それはそうとお迎えありがとうございます。潔く受けていただき感謝してます」
「断る理由もなかったし、わたし達は料理担当でしょ?どの道、早めに来る必要があったから問題ないわ」
今回のお食事会(お食事会になった)の料理担当は俺と咲季さんの2人だ。
料理ができるか咲季さんに聞いたら「任せなさい!」と一つ返事で了承してくれたのだ。
「佑芽さんのプロデュース計画書はご覧いただけましたか?」
先日、渡した佑芽さんのプロデュース計画書について話を切り出した。
「概ね問題ないわ、佑芽のことを知って数日で立てた計画とは思えないほどね。───まあ、うちの両親と会話しただけのことはあるわ」
「ええ、お二人とも情熱溢れるお方でした」
口論になった日が懐かしい。
あれ?たった数日前のできごとか。
口論といえば十王星南さんとも佑芽さんのプロデュースについて口論したな。
「あ、そう言えば佑芽さんから聞きました。今回のお食事会には生徒会執行部の方も来れるとか」
「らしいわね。でも十王星南と雨夜燕は営業のお仕事で来れないみたいよ」
それは初耳だ。『一番星』十王星南、『No2』雨夜燕の2人は初星を代表するアイドルだからな。日曜日に営業の仕事が入っててもおかしくない。
その他の生徒会執行部の方達は参加してくれるのか。
急遽することとなった食事会に参加していただけるのはありがたい。
「せっかく初星学園のトップと接触できる機会だったのに残念だわ」
「と、言いますが咲季さんが上に行けば行くほど接触できる機会は増え続けますよ」
「ふふん!そうね!既に入学首席という肩書きがあるのだから、近いうちに一目おかれるのは間違いないはずだわ!なっはははっ!」
テンション高いな。
ラウンジへ向かう廊下に咲季さんの高い笑い声が響いた。
「咲季、うるさい。ここまで笑い声が響いてる」
ラウンジからひょこりととある生徒が姿を表す。
「手毬じゃない!手毬も食事会に参加するの?」
「まあね。そこの死んだ目をしたプロデューサーに誘われたから仕方なくだけど」
「へー有翔が手毬を誘ったのね。意外だわ」
咲季さんがこっちを見ながら言う。
「それよりプロデューサー、ちゃんと私の要望に答えてくれるんですよね?」
ふっと笑いながら月村さんが俺に問うた。
「ええ、月村さんのご要望通り「とんかつ」を作りますよ。かき揚げと合わせて作ります」
「とんかつ!」
月村さんは目を輝かせながらとんかつと叫ぶ。
「ではこれが以前、約束した要望ということ───」
「は?そんなわけないでしょ。これはプロデューサーが花海佑芽との顔合わせの場になるからって誘っただけでは?」
遮るように月村さんは否定した。
くそう、この程度の要望で約束を果たしたとなれば万々歳だったのに。
そう、月村さんと連絡先を交換したあと、本日の食事会に誘ったのだ。
理由はレッスン前に佑芽さんと顔合わせをするためだ。
そしたら───。
『どうせ揚げ物するなら「とんかつ」作ってください。───作ってくれるなら行きます』
と、何故か交換条件を提示されたのだ。
恐らく好物なのだろう。
作れないことはないから作ることにしたが。
ちなみにだが、佑芽さんには事前に月村さんが参加することを伝えている。
「佑芽?手毬、佑芽と話したことあるの?」
「ないよ。でも、そこのプロデューサーが私に花海佑芽のボーカルトレーナーになってくれってお願いされたからさ。仕方なく指導してあげるだけ」
「手毬が佑芽の…?不安ね」
「なっ!は!?な、何が不安だって言うの!?」
月村さんは若干声を裏返しながら激しく問いただした。
「だって手毬って感覚派みたいだし、ロジックで説明なんてできそうにないじゃない!」
それは一理ある。
が、咲季さんドストレートすぎますて。
「感覚派じゃないから!さ、咲季こそ頭まで筋肉だから説明なんてできそうにないんだけど!」
「な、なんですってぇぇー!!!」
2人がヒートアップするのを横目に俺はキッチンへ向かう。
向こうで2人がギャーギャー騒いでるうちに俺は料理の準備に移る。
持ってきたダンボールから野菜を取り出して並べる。
「お姉ちゃんの声が聞こえる!お姉ちゃん声が聞こえるーっ!!!」
聞きなれた元気な声が廊下から聞こえた。
リズミカルな足音がどんどんと近付いてくる。
「お姉ちゃんー!!!」
佑芽さんが元気よくラウンジに現れた。
「来たわね佑芽!」
「お姉ちゃん!───って、何してるの?」
咲季さんと月村さんが2人して睨み合ってたタイミングで佑芽さんは現れたのだ。
「あっ!もしかして手毬ちゃんっ!?あたし!花海佑芽!プロデューサーさんから話は聞いてるよっ!」
佑芽さんは一瞬にして咲季さんと対峙していた生徒が月村さんだと察したようだ。
次の瞬間、月村さんの手を取り自己紹介をしていた。
「て、手毬?な、馴れ馴れしくない?」
「え?じゃあ手毬先生だ!いいや!手毬トレーナーがいいかも?」
「呼び方じゃなくて名前呼びについて触れてるんだけど!?」
月村さんが動揺しているぞ。
相変わらずクールヅラが雑だな。
「でもこれからあたしの指導者になるんだよね!?なら名前で呼びたいな!」
「言っとくけどずっとじゃないから!短期間だけだから!───ですよねプロデューサーぁ!」
こっちに助けを呼ぶみたいに月村さんが話しかけた。
「はい、ずっとは月村さんの迷惑になります。具体的な期間は決めてませんが、短期間なのは間違いないです」
「えーそうなんですかぁー残念だなぁー」
不貞腐れる佑芽さんも可愛いな。
こないだ月村さんに負わされた心の傷が癒える。
「佑芽!手毬が変なこと教えだしたら無視しなさい!そしてお姉ちゃんに報告しなさい!わたしが手毬にめっ!するんだから!」
「?わかった!」
「ッ!まだ言ってる───ふっ、別にいいよ。佑芽、私の教えた歌でさっさと咲季を倒してね」
「おぉー!!うん!手毬ちゃんから教わった歌でお姉ちゃんを倒して見せるね!」
「ふん!勝てるものなら勝ってみなさい!!」
いつの間にか2対1の構図が出来上がっていた。
月村さんと佑芽さんの関係も今のところは問題なさそうだ。咲季さんが絡んだのはイレギュラーだが、初回の顔合わせの結果は良好と捉えていいだろう。
「佑芽、廊下を走ったら寮長に怒られるよ」
「いきなり走られると困りますわ!わたくし荷物を持ってますから!」
そういいながら篠澤さんと倉本さんが現れた。
「ご、ごめんね千奈ちゃん、お姉ちゃんの声が聞こえたからつい、えへへ」
佑芽さんは頭を擦りながら謝っていた。
「それにしても凄いスピードだった。この感じだと佑芽のジョギングがわたしの全力に匹敵するかも」
「全力といっても普通の人から見たらただの徒歩に等しい速度かと思われますわ」
「ふふ、千奈、酷い。でも、そうゆうイジリは好きかも」
「い、イジってるわけではありませんわ!」
「じゃあ事実を言ってるんだ。それでも間違ってないから大丈夫」
一体何が大丈夫なんだろうな。
「あっ!花海さんのプロデューサー!この度はお食事会へのご招待、感謝いたしますわ!」
「わたしからも。ありと、誘ってくれてありがとう」
俺の視線を感じたのか倉本さんと篠澤さんが話しかけてきた。
「いえいえ、佑芽さんと仲良くしてくださってるお礼と思っていただければ」
「仲良くっていっても友達になったのはつい数日前だけど、ね」
「ふふ、ですが不思議と長く一緒にいるような気がしますわ」
「あたしもそう思ってた!もしかしてあたし達、前世からお友達だったのかもねっ!」
なんて眩しい友好関係なんだ。
俺にもこんな友達がいたらよかったなと青春コンプレックスを刺激されてしまった。
「そうでした!花海さんのプロデューサー!わたくし、実家から気持ち程度ですがお品を持参しましたの!」
「え?」
倉本さんがそういいながら近寄って、両手で抱えた発泡スチロールを渡してくる。
い、いやな予感がする───!
「おじい様からお食事会に行く旨を伝えたらいただきましたの!皆さんのお口に合えば嬉しいですわ!」
渡された発泡スチロールを恐る恐る開ける。
そして現れたのは───!
「うわっ!か、蟹だぁぁぁぁあああ!!!」
目立つ蟹を見て佑芽さんが皆目叫ぶ。
「いくらに雲丹もある。豪華海鮮ボックスってやつだ」
篠澤さんの言う通りだ。
蟹を初めとして、いくらや雲丹、鯛やホタテにetc…。豪華海鮮詰め合わせボックスってやつだ。
「え、えっと。こ、これは…?」
「世の中の殿方は皆さん魚を捌けると幼い頃に伺いましたの!花海さんのプロデューサーも捌けますわよね?」
「……………………………………………………」
な、何言ってんだこの子。
世の中の殿方が全員、魚を捌けるだと…?
おいおい、そんな世界なら魚職人なんていらないだろうが。
「千奈、それは間違ってる。世の中の男の人が全員、魚を捌けたら魚職人はいらなくなる」
「えぇぇぇええ!!そうなのっ!?お父さん捌いてたけどっ!?」
なんで佑芽さんが驚いてんだ?
てか佑芽さんのお父さん魚も捌けんのかよ。
あと篠澤さん俺の気持ちそのまま伝えてるんだが。
「まあ!そうでしたの……認識を改めますわ。───花海さんのプロデューサー、如何致しましょうか……?」
倉本さんは困った目でこちらを見つめる。
だが、俺は捌けないとは言ってない。
「俺は捌けますよ。海がそう遠くない所で育ったので魚を捌く経験は幼い頃からあります」
「本当ですの!?なら安心ですわ!」
変な話だよな。魚は捌けるのに料理できないって。
中途半端だった俺に料理を教えてくれたあさり先生には感謝しなければ。
あさり先生に料理を教わった思い出に少しだけふける。
「プロデューサーさんお魚捌けるんですかっ!?」
「ええ、捌けます。鮮度もいいみたいですし…雲丹やいくらもあるので寿司にしますか」
魚を手に取り、鮮度を確認してから判断する。
さすが倉本家、長崎で見た市場よりも良い魚だぜ。
「寿司!いいわね!赤身なら低脂質でアイドルに適した品だわ!」
「咲季さんは魚捌けますか?」
「捌けないけど教えてくれたらできると思うわ!だってわたしはお姉ちゃんだもの!」
「そうですか」
お姉ちゃん関係あるのかな?
「お姉ちゃんとプロデューサーさんが料理してくれるの楽しみです!あっ!あたし達は何しておけばいいですか?」
「こちらで対応しますので遊んでて大丈夫ですよ。幸いボードゲームもあるみたいですし」
ラウンジに備え付けられてるボードゲームで遊ぶように伝える。
3人はボードゲームを取りに向かい、月村さんは一人でトコトコとこっちにやって来た。
「プロデューサー、魚捌けるんですね。意外です」
「ええ、意外な男、圷 有翔とは俺のことです」
「なんですかそれ」
月村さんに真顔で突っ込まれる。
なんだよ。恥ずかしいじゃないか。
「話はその辺にして調理に取り掛かるわよ。魚は有翔に任せるわ、先に野菜を切っておくわね」
「わかりました」
俺は鯛を取り出し捌く準備にとりかかる。
咲季さんは習えば捌けると言ってたが、教えるのは別の機会として今回はひとりで終わらせるか。
「わっーー!蟹だ!プロデューサー!咲季!蟹がいる!」
遅れて蟹の存在に気付いた月村さんが話しかけてきた。
「そうね、蟹ね」
「蟹ですねー」
俺と咲季さんは調理をしながら答えた。
「……2人とも反応薄くない?」
月村さんが若干睨みながらそう言った。
「包丁を使ってんのよ。ふざけてる場合じゃないわ」
「ごもっともです」
それに近くにいると気が散るから何処かに行って欲しい。
申し訳ないけども。
「ふん、もういい。あっちの佑芽達の所で遊び相手になってくる」
「ええ、そうしてくれると助かるわ」
「ぐぎぎぎぃ!!!」
月村さんは野菜を切ることに集中している咲季さんを睨む。
その後、「ふんっ!」と言い残して佑芽さん達の元へ向かった。
俺達は無言で調理に没頭することにした。
「(静かな咲季さん珍しいな)」
なんてことを思ったが失礼だろうか。
そんなことを考えていた時だ。
「───お疲れ様です。遅くなりました」
その声は優しく囁いたような透き通た声音だった。
声が聞こえたラウンジの出入口へ視線を向ける。
先日『SyngUp!』のライブ映像で見たことがある人物が立っていた。
「初めまして、佑芽さんのプロデューサー。1年2組、生徒会執行部、会計監査担当の秦谷美鈴です」
その瞳は正しく魔性で飲み込まれるような瞳だった。
「こちらこそ初めまして、佑芽さんの担当プロデューサー、圷 有翔と申します」
俺は布巾で手を吹いた後、秦谷さんの元へ駆け寄り自己紹介と合わせて名刺を渡す。
「まあ、ありがとうございます。───圷 有翔さんというお名前なのですね。以後お見知りおきを」
「こちらこそ、佑芽さんをよろしくお願いします」
近くで見てみると一線級に整った顔立ち。
初星学園内でもトップレベルの美貌だ。
「今回はお誘いいただきありがとうございます。書記を担当されてる莉波先輩はもうすぐで来られるみたいです」
「承知しました。では、秦谷さんには───」
秦谷さんにもみなさんと遊んでおくようにと伝えようとした時、視線を感じた。
「─────────ジー」
秦谷さんがじっーと俺の顔を見つめていた。
「すみません。お見苦しいものをお見せしました」
俺は自分の目を両手で覆い隠した。
「ふふ、お噂通りの瞳だな思いまして。不快な気持ちにさせて申し訳ございません」
「なるほど。何とも思ってませんので大丈夫ですよ」
噂って、やっぱり死んだ目をしたプロデューサーってことで話が広まってるのだろうか。
「良ければわたしも手伝ってもよろしいでしょうか。料理には自信があるんです」
「本当ですか?それは心強い───」
です。と答えようとした時。
「プロデューサーぁー!!」
月村さんが飛んできた。
「プロデューサー!今!人生ゲームしてるんですけど!私の職業カードがアイドルだったんです!」
「そうですか」
「……なんですかその反応。数ある職種の中でアイドルですよ?これって───」
月村さんが秦谷さんの視線に気付く。
「美鈴ッ───!」
「───まあ、ふふっ」
月村さんの顔がみるみる赤くなっていく。
「ぷ、プロデューサーぁぁぁあああ!!!」
恥ずかしさを消し去る勢いで月村さんは俺に突っかかってきた。
「美鈴も来るなんて聞いてないんですけど!?」
「ええ、話してませんから」
「軽っ!って!普通、誘うなら誰が来るとか共有すると思うんですけど!」
「聞かれませんでしたので」
「聞かなくても共有すべきだって言ってるんですけど!?」
声でか。佑芽さんには劣るけど。
月村さんと秦谷さんが『SyngUp!』を解散してから不仲である噂は聞いたことがあったが…この様子だと本当のようだな。
秦谷さんは終始ニコニコしているが月村さんは嫌がるように顔を顰めて俺に罵声を吐いている。
「まりちゃん、わたしが参加するのは嫌ですか?───もとより誘われたのはわたしが先だと思いますが」
「ッ!はい!出た嫌味。自分が先ですってマウント取りたいの?」
「まあ、取りたいと言うより事実を述べているだけです。他意はありません」
「……ふん!そのすかした感じきらい。ていうか私達、絶交した仲だと思うんだけど!?」
月村さんは恥を晒した恥ずかしさからか、食い気味に秦谷さんと会話する。
「絶交だなんて……。わたしは今でもまりちゃんと仲直りしたいと思ってますよ?」
「───ふーん、あっそ。私はそう思ってないから」
月村さんはそう答え、秦谷さんから視線を外すが若干にやけていた。
「!な、なんですか!」
「いえ、なんでもないです」
俺と目が合った月村さんがムスッとしながらそう言う。
秦谷さんから仲直りしたいと言われてきっと嬉しかったんだろう。
「まりちゃん?前々から思ってたのですが……。合同レッスンや今回のような交流会や行事では一時休戦といたしませんか?」
「は?なにそれ。一時休戦って言われても訳わかんないんだけど」
「2人だけの時は構いませんが、大勢の前でそのような態度を取っててはまりちゃんの評価が悪くなってしまいます。───まりちゃんのためにも、こう言った場ではわたし含めて節度ある態度を取るべきだと思うんです」
秦谷さんはそう説明しながら休戦協定を提示した。
理にはかなってる協定だと思う。
月村さんは秦谷さんが絡むと態度が一変する傾向がある。
月村さんをあまり知らない人が一変した月村さんを目撃したらそれが素だと思われても仕方がない。
「私が節度ない人みたいな言いぐさやめて。別に前から美鈴と話す時はこんなだったじゃん」
「いいえ、昔のまりちゃんはもっとかわいげがありました。もちろん今も可愛いですけど」
「───はぁ、本当、そうゆう飴と鞭、昔からきらい」
「まあ、でしたら褒め続けた方がよろしいでしょうか?」
「それはそれで恥ずかしいからいい!───で?一時休戦だっけ?別にいいよ。2人以外の時はそうゆうことにしてあげる」
「ふふ、ありがとうございます」
2人は俺の目の前で休戦協定を結んだ。
佑芽さん達のような仲良さは感じないが、月村さんも満更ではない様子だし、なんだかんだ内心喜んでるのだろうな。
一方、秦谷さんは終始ニッコニコだ。
久しぶりに月村さんとお話できて秦谷さんも嬉しかったのだろう。
「ところで佑芽さんのプロデューサー、まりちゃんとどうゆうご関係なんですか?」
先程のニコニコとは打って変わった。
表情こそ朗らかであるものの背後にゴゴゴゴと圧をかけているぞと言わんばかりのオノマトペが見える。
「この人は私の下僕だよ」
この人、真顔で凄いこと言い出したぞ。
「普通に失礼すぎません?訂正します。ただのビジネスパートナーです」
「ビジネスパートナー、ですか?」
月村さんが佑芽さんのボーカルトレーナーになったことを話すと秦谷さんは驚いた。
「まりちゃんがトレーナーですか?───懐かしいですね。りんちゃんからまりちゃんと一緒にレッスンを受けた日々を思い出します」
「燐羽の話はしないで。今は関係ないから───でもそんな感じでレッスンしていくつもり」
「りんちゃんと同じレッスンを?流石にそれは無理ではありませんか?───もし、よろしければご一緒に指導しましょうか?」
「断るに決まってるでしょ。とゆうか普段やる気ないくせいに…こんなところでやる気を無駄遣いしないで」
「まあ、断られちゃいました」
そう言いながら秦谷さんはこっちを向く。
「と、そんな感じです」
賀陽燐羽さんはお二人にどんなレッスンをしてたのだろうか。
物凄いスパルタレッスンだったのだろうか。
「そうだ、聞いてよ美鈴。このプロデューサー、私に酷いこと言ったんだよ?」
「酷いこと?───まりちゃんに何をしたんですか?」
怖い怖い。圧が怖いですよ秦谷さん。
「『SyngUp!』の解散原因について出過ぎた発言をしてしまいました。その節は申し訳なかったと思ってます」
「まあ、それはとても気になる内容ですね」
この流れ、あのことを話さないといけない流れだろうか。
「有翔、いつまで油売ってんのよ。早くしないと作業が進まないわよ」
痺れを切らした咲季さんが話しかけてきた。
思いもよらない助け舟で助かったー。
「秦谷さん、話の続きは次回ということで」
「───わかりました。次回、ゆっくり、じっくりと聞かせていただきますね」
秦谷さんはにこりと微笑みながら答えるも相変わらず圧が強かった。
「じゃあ私も佑芽達の所に戻るとするよ。人生ゲーム、そろそろ私のターンだろうから」
月村さんは決めゼリフっぽく言い残して去っていった。
「では話を戻しましょう。お料理ですがわたしも手伝ってよろしいでしょうか?料理は得意なんです」
秦谷さんが話を戻して、改めて提案してくれた。
「材料も増えて2人では心細いなと思ってたところです。お願いしてもよろしいでしょうか」
「ええ、構いません。ではわたしは何からいたしましょう」
「そうですね。お寿司を握るので酢飯の準備を───」
って、米なんてなかったんだった。
元々かき揚げ蕎麦を作る予定だったから米なんて持ってきてないっての。
鮮度のいい海鮮だったから寿司にしようと思ったが…。
米がないならやむを得ない、刺身にするとしようか。
「お米でしたらわたしがご用意しましょうか?」
「!よろしいのですか?」
「かまいません。普段から料理をするのでたくさんあります」
であるならお言葉に甘えるとしようか。
「では、ありがたく頂戴します。お米の料金は後日お支払いしますね」
「ふふ、ではその際にまりちゃんの話をお聞かせください。───それでは取りに行ってきますね」
「…………承知しました」
自然な流れで月村さんの件を話す機会を設けられたのだが。
もしかしてはめられた?
というかなんで米ないって気付かれたんだ?
俺は去っていく秦谷さんの後ろ姿を暫し眺めながらそう思うのであった。
「(いかんいかん、早く魚を捌かないと)」
咲季さんの言う通り話しすぎた。
急ぎ足でキッチンへ戻り、気合を入れるためにジャケットを脱いで袖を捲る。
魚をまな板に置き、母親から教わった魚の捌き方を思い出しながら作業に取り掛かる。
「プロデューサーさ〜ん〜♪」
気合を入れたこともあって話し込んでた時間分、作業が巻けたと思われるタイミングで佑芽さんが話しかけてきた。
「佑芽さん、どうかしましたか?」
「用事はないですけどプロデューサーさんがお魚捌くところを見たいなって!」
「かまいませんが制服に血が付いてしまいます。そのまま見ててください」
カウンターの向こうから顔をひょこりと出してた佑芽さんにそのまま見るようにと伝える。
「なんかお父さんよりも上手です!お姉ちゃんもそう思うよね!」
「んーどうかしら。あの人なんでも無難にこなすでしょ?それにできそうにないこともできる感じでやるじゃない」
この子達のお父さんやっぱり凄くね?
「そんなんだから後輩達から好かれないんだろうねー」
「そうね。でも、悩んでみるたいだから本人には言っちゃダメよ」
「はーい!」
いや、娘達からの評価はそこまでよくないのかも?
「佑芽さん、まだ料理はできてませんが楽しめてますか?」
「はいっ!楽しいです!今、あたし人生ゲームで出世コースまっしぐらなんですよ!お金もたんまり持ってます!」
「それは素晴らしい。佑芽さんはゲームがお強いのですね」
「えっへへ!それほどでもないですよぉ〜!」
うひょーか、可愛い。
この笑顔、ずっと見てたいぜ。
「手毬とは反応が天地ね」
「当たり前です。佑芽さんは担当アイドルですから」
至極当然のことを言い出した咲季さんに俺は食いつくように肯定した。
「それより有翔!できたわよ!」
咲季さんが野菜を切り終えたようだ。
魚も全て捌けて柵も用意できた。
あとはお寿司用に切り分けるだけだから…。
咲季さんか秦谷さんがかき揚げを作れるのなら任せるとするか。
包丁を置いて咲季さんの元へ向かう。
「これが花海咲季特性のSSDよ!!!」
???
何を言ってるんだ?
SSD?ソリッドステートドライブのことか?
いや、それはパソコン器具やがな。
「あっー!!!SSDだ!お姉ちゃん作ってくれたの!?」
「ええ!これから油っこいものを食べるのだから胃を整えておかないといけないもの!今日は特別に許すけど、しばらくカロリーの高い食事は制限するのよ?」
「わかった!早速飲んでいい?」
「ダメです」
俺は怪しげなSSDと呼ばれている飲み物らしきものを佑芽さんから取り上げる。
「何すんのよ有翔!佑芽がSSDを飲めないじゃない!」
「こんな得体の知れないものを飲んではいけません。だいたいSSDってなんですか?」
なんか光ってんだが。
飲み物が光るって何入れてんだよ。
「ふっふっふっー、SSDとはアイドルにとって必要な栄養素をいっぱい配合しているお姉ちゃん特性の栄養ドリンクなんですっ!」
自慢げに佑芽さんは言うも納得できない。
「クラスのみんなや手毬に飲んでもらった時は泣いて喜んでたわ!」
それは美味しくなくて涙目になってただけなのでは?
「これどんな原理で光ってるんですか」
「もーう、作り方を知りたいならそう言えばいいじゃない。───ほら見てなさい。あ、佑芽は見ちゃダメよ」
「わかったっ!」
佑芽さんはそう返事をすると後ろを向いた。
「こうして、これをこうして、これを入れてっと───」
野菜や魚の干物、梅干し、etc…。
ラウンジの冷蔵庫からあれこれ取り出してミキサーに入れて電源を付けて混ぜた。
「───そしてなんやかんやで完成よ!」
なんでだぁぁぁあああああ!!!!!!!
光る要素どこにあるんだ!?
思わず銀魂のノリで突っ込んでしまったんだが!?
とゆうか肝心ななんやかんやを説明しろよ!?
「もう見てもいい〜?」
「ええ!いいわよ!」
どうゆうわけか佑芽さんにはSSDのレシピを秘密にしているらしい。
「有翔も飲んでみなさい!これであんたも健康になれるわ!」
まるで俺が不健康みたいな言い方はやめていただきたいのだが。
「プロデューサーさんもきっと気に入ると思いますよ!さあっ!一緒に飲みましょう!」
「えぇー」
かき揚げ用の野菜だったのにSSDの材料になってしまった。
まだ残ってるからいいけどさ…。これ飲まないといけない流れじゃないか。
「さあ!さあ!さあ!」
佑芽さんが目を輝かせながら催促してくる。
「(ええい、腹を括るしかないのか…!)」
意を決してSSDを飲み干す。
「(に、苦い!果てしなく苦い…!不味い…!)」
苦味のせいで涙目になる。
『……………………………………………………』
花海姉妹が2人して目を見開いた後、涙目になった俺の目をじっと見つめる。
なんだか2人の視線が別の意味で怖い。
「お、お姉ちゃん、プロデューサーさんって涙目になるとさ、なんか、こう……なんて言えばいいんだろう!?」
「え、ええ、生気を取り戻すついでに、なんだかいけないものを見た感じになるわ…!」
興奮を隠せてない感じの視線で怖いのだが。
人を涙目にさせて何を楽しんでるのやら。
「咲季さん、材料の無駄遣いはやめてください。残りはかき揚げに使わせていただきます」
「!え、ええ!わかったわ!」
正気に戻った咲季さんがいつも通り答え、SSD事変は幕を閉じた。
まったく、酷い目にあった。
早く美味しい料理を食べて口直しをしたいところだ。
佑芽さんは月村さん達の所へ戻り、俺達は残りの作業に取り掛かる。
秦谷さんもお米を持って戻ってきた。
米を研ぎ早炊で米を炊くように依頼した。
その後、秦谷さんと2人で用意した柵を切り分けることになった。
秦谷さんは言ってた通り、普段から料理をしているのが伝わる綺麗な手捌きだった。
並行して咲季さんは蕎麦を茹でるためにお湯を沸かし、かき揚げを作るために油を温めてくれている。併せて蒸し器で蟹も蒸してくれている。
先に蕎麦をみんなに食べてもらって、3人で寿司を握れば時間的には問題ないか。
だが食べる量が多くなりそうだ。
余ったら恐らく教員室にいるであろうあさり先生におすそ分けするとしよう。
そんなことを考えてた矢先、本日こられる最後の生徒会執行部に所属する生徒がラウンジに訪れた。
「すみません!遅くなりました!」
少し駆け足気味で登場した生徒。
その名は───
「あっ!莉波先輩!こんにちは!」
「佑芽ちゃん!遅くなってごめんね!」
「全然大丈夫です!まだ何もできあがってないので!」
姫崎莉波、だったか。
あまり目立つような生徒の印象ではない。
一時期、妹キャラのアイドルをやってたような覚えがある。
とゆうか姫崎莉波の隣に
「あれ?隣にいる方って!もしかして───!」
隣に立つ
「莉波先輩のプロデューサーさんですかっ!?」
その声を聞きとった全員が姫崎莉波の隣に立つ男性に視線を向ける。
「……うん、私のプロデューサーくんだよ♪」
微笑みながら姫崎さんは答えた。
その後、隣に立っていた姫崎さんのプロデューサーが口を開く。
「皆さん初めまして、姫崎莉波の担当プロデューサー、───です。今後ともよろしくお願いします」
彼の低い声がラウンジに響き、静寂に包まれるのであった。
原作Pは莉波お姉ちゃんの担当Pとなります。
よかったね。莉波お姉ちゃん。
タグに月村手毬と秦谷美鈴が追加されてますね。おやおや?
御察しが言い方は察しているでしょう。そういうことです。
少しでも面白いと思ったら感想と評価をお願いいたします!
モチベが爆上がりします!!!
〈人物紹介〉
【
実はジャンプ作品が好きな20歳。
ちょいちょいジャンプ作品関連の突っ込みや例えを内心でしている。
たまには声に出して真似たセリフを言ってたりする。
好きな言葉は努力と勝利。友情は苦手な言葉らしい。
(良ければ見直してみてください)