去年の8月。僕は京都府大会吹奏楽コンクールの会場に居た。
「今年はどこが全国に行くのかなー」
「いつもの所じゃないですか?後、北宇治」
僕が通っていた音楽教室の先生の一言に僕はそう呟いた。
「北宇治?いつも銅賞の所が?」
「先生…お口が悪いですよ…」
先生は思っている事をすぐに口に出してしまう。
音楽の腕は凄いんだけど、ここは悪い所なのである。
「おっと」
「サンフェスで気になったんですよ北宇治の事」
5月、サンフェスに行った時のことである。
関西大会常連校の立華と洛秋の演奏を聴きにいった。間に挟まっていた北宇治は、その時は目にも入っていなかったと思う。
無理もない。府大会でも銅賞常連校だったのもある。だからこそ驚いた。立華や洛秋にも劣っていなかった事に。
「そういえば、結君はサンフェスを観に行ったもんね」
「はい。りりりんと一緒に見に行って、二人で驚きましたから」
僕の口から出てきたりりりんというのは、
「ふ~ん、そこまで言うなら私も注目してみようかな~」
そして、演奏の時間になった。
「三日月の舞_かっこいいじゃん」
北宇治の自由曲である三日月の舞は。去年まで府大会銅賞だったとは思えないくらいの完成度だった。
先生の口からはそんな声が漏れていた。
そして、発表の時はやってきた。
僕が注目していた北宇治は、金賞を取り、そして_
「えー、この中より関西大会に出場する学校は_プログラム5番、北宇治高等学校吹奏楽部」
司会がそう言うと、歓声が沸き起こった。
「ね、先生言ったでしょ。北宇治は関西に行くって」
「結君の通りだね。先生侮っていたよ。そっか…北宇治か…関西大会も見に行く?」
「是非」
「関西大会は、梨々花ちゃんも誘ってあげないとね」
「はいっ」
そして、それから数週間。関西大会が行われる兵庫県尼崎市にある会場に居た。
「暑い~」
「夏だからそれはそうでしょ…」
タオルで汗を拭っているりりりんに僕はそう言った。
「ゆい~後でジュース奢って~」
「はいはい、りりりんは仕方ないな~」
可愛い幼馴染に頼られると、僕はつい甘やかしてしまう。
これは、僕の悪い癖。
「二人は相変わらず仲が良いわね」
「先生~仲が良いって話ではなくてですね~私たちは結び合ってるんです~」
りりりんは、手をハートにしてこちらに手を差し出してくる。
「そう言った意味ではないと思う」
「あははは」
決められた席に座り、開演まで今か今かと待ちわびた。
そして、演奏が始まり。気付けば発表の時間になっていた。
「北宇治良かったね。ゆいが推す理由が分かる気がする~」
「でしょでしょ。顧問が変わったらしいんだけど、ここまで変わるとはね」
小声でりりりんとそんな会話をしていると、会場がざわざわとし始めた。
ここで、金を取れなければ全国への道は無くなるのだから
『プログラム15番 大阪府代表 明静工科高等学校 ゴールド金賞』
全国常連校は相変わらず上手だった。
金賞は確実なものだった。
『プログラム16番 京都府代表 北宇治高等学校 ゴールド金賞』
そして、僕が気になっている北宇治も金賞を得た。
『続きまして 全国大会に進む関西代表 3校を発表します』
そのままの流れで、全国大会に進む高校3校が発表される。
いつもなら、常連校である大阪東照 明静工科 秀大付属の3校が選ばれるが果たして_
『プログラム3番 大阪府代表 大阪東照高等学校』
『プログラム15番 大阪府代表 明静工科高等学校』
残すは一つ。秀大付属は既に通り過ぎた為、全国には行けない。
北宇治は次の番だが_
『最後に プログラム16番 京都府代表 北宇治高等学校』
北宇治が常連校である3校を破って、そのうちの一つに入った。
それは、後に『奇跡の演奏』と呼ばれることを当時の僕は知らない。
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桜が咲き、温かい風が靡く四月。
「ゆい、おはよ~!」
「りりりん、おはよ」
僕とりりりんは、北宇治の制服に身を包んでいた。先生からは立華や洛秋をおススメされたが、りりりんが北宇治に行くのもあって、北宇治を選んだ。後は公立っていうのも大きかった。
余談ではあるが、北宇治高校吹奏楽部は、全国大会では銅賞だったものの。間違いなくインパクトを残した。
「今日の私、可愛い?」
ゆるふわギャルらしく纏められた髪をアピールしてきながら言うりりりん。
「うん、可愛い」
「えへへ、ありがと」
このやりとりももう何回もやってきたので、もう慣れたもの。
電車に乗り、六地蔵駅から北宇治高校まで歩く。それなりの坂もあったが、オープンキャンパスとかで来てた事もあり、そこまで苦ではなかった。
校門辺りでは、各部活が勧誘を行っていた。
「そこの男の子、演劇部に興味ない?」
「すみません…僕、吹奏楽部に入るつもりなので…」
演劇部の先輩に声をかけられたが、僕はそう言って断る。
最初から目的は決まっていたから。
「ゆい~お誘い受けてたね~」
「揶揄うの辞めてよ~」
りりりんとそんな会話をしていると、吹奏楽部が演奏をしていた。
じっくりと演奏を聴いていたが、やっぱり_
「うん…ここに決めて良かった」
「ゆい、一緒に頑張ろうね~」
「うん」
僕とりりりんはそう言って、校舎内へと歩みを進めたのだった。
名前 伏見結(ふしみゆい)
担当楽器 オーボエ
ソロコン、全国大会金賞経験在り