サンフェスに向けての練習が始まった。
僕とりりりんは、ダブルリードは楽器を持って演奏はしない。
フラッグという旗を振る演技に回る。北宇治には謎ステップという伝統的な物があるが、僕達はしないらしい。
「こんな感じです」
「すご~い」
「凄いです!緑先輩!」
低音パートの川島緑輝先輩にフラッグの振り方を教えて貰っていた。
りりりんと同じパートの月永が先輩の事を褒め称えていた。
「みぞれ先輩はあれしないんですか?」
「私は、こっちだから…」
みぞれ先輩の手には、ポンポンを持っていた。
先輩に似合っていた。
「ゆいがポンポンを持って踊る姿見たかったな~」
「りりりん…想像したら吐きそうになるんだけど…」
りりりんが発した言葉を聞いて、想像したが…やっぱり無理だった。
「え~可愛いじゃん~」
「そういう問題なのかな…」
「鎧塚先輩、似合いますよね」
「えっと…」
りりりんの問いに、みぞれ先輩は困っていた。
りりりんなりに、みぞれ先輩と仲良くしようと思っての行動なので、僕は見守る事にする。
「鎧塚先輩、どう踊ったらいいんですか?」
その時だった。ファゴットの兜谷がみぞれ先輩に声を掛けた。
ファゴットの二人はポンポン係なので、みぞれ先輩に教えて貰う事になっていた。
「うん、分かった」
……みぞれ先輩は、彼女達の元に向かった。
「むぅ…上手く行かなかった…」
落ち込んでいるりりりん。
そんな彼女の頭に手を乗せて、慰める事に
「よしよし…りりりんなりに頑張ってるのは分かってるよ」
「ゆい~」
りりりんはそう言って抱き着いてきた。
学校ではやめような…うん。
「緑先輩~続きもお願いします!」
月永も月永で変わらんなぁ…
多分だけど…こいつ、緑先輩の事好きだろ。知らんけど
「求君だけに教える訳にもいきませんからね」
「はい!緑先輩!もちろんです!」
いや…なんだこいつ…緑先輩信者か。
久石…これを毎日見てると思うと、同情する…
なんて思っていると、副部長の夏紀先輩の声が響く。
「は~い、一旦全体練習するよ!」
『はい!』
夏紀先輩の声に部員達の声もグラウンドに響いた。
「疲れた~」
「だからってもたれかかってこないでよー」
「いいじゃんこれぐらい~」
電車内にもかかわらず、りりりんが僕にもたれかかってきた。
周りには誰も居ないからいいけど、居たら注目の的だなとか思っていた。
「そうだ。ゆいは身長伸びた~?」
「なんでいきなり」
「身体測定あったじゃん今日」
りりりんが言うのも、今日の午前中に身体測定があった。
男子も女子も盛り上がっていたのを思い出す。
「あーりりりんはどうだったのよ」
「ふふん、私はなんと2センチ伸びましたー!」
「おおーこれで僕にちょっとは近づいたね」
「私は成長中なのです〜」
胸を張って言うりりりん。
「それで僕の話だっけ?」
「うん、どれぐらい伸びたの?」
「5センチだったかな。だから今で175センチ」
「おお~」
「大分伸びた方だと思う」
「そうだね~その内、私が見上げないといけないね~」
「今でも見上げてるじゃん…」
りりりんの身長は、160センチ。
「15センチ差は大きいかぁ~」
「だねぇ」
りりりんの言葉に、僕はそう言って同意した。
「それでいつまでくっ付いてるつもり?」
「え?最寄り駅までだけど」
「暑いんだけど…」
「私とゆいの関係だから、気にしないの~」
「そういう問題じゃ……もういいや、諦めた…」
学校でも抱き着いてきたし、もう今更の話かと思い、諦めた。
********
「は~い、サンフェスの衣装配るから、取りに来て」
サンフェスまで一週間。そんな日、サンフェス当日に着る衣装の試着を行う。
「どうです」
「似合ってんな久石」
「私、可愛いので」
サンフェスの衣装は、全体的にオレンジ色をまとった衣装だった。
久石は、真っ先に見せに来た。
「あっ、居た~ゆい、どう?」
「りりりんは、何着ても似合うに決まってるでしょ」
「えへへ~」
「むぅ…」
喜ぶりりりんと違い、久石は不満そうな表情をしていた。
「奏~どうしたの?」
「私と梨々花で反応が違う…」
「幼馴染と知り合いだと違うのは当たり前では…」
「そういう訳じゃなくて……もういいです」
久石はそう言って、僕とりりりんの前から立ち去っていく。
「怒らせてしまったかな…」
「大丈夫だと思うよ~私がフォローしとくね~」
「ごめんなりりりん」
「うん、大丈夫だよ~」
りりりんはそう言って、久石の後を追っていった。
「伏見、ちょっといいか?」
「月永、どしたん」
「その呼び方辞めてって」
「面倒くさ…」
*********
サンフェス当日がやってきた。
「北宇治の演奏を楽しみにして この場所に足を運んでいる観客もたくさんいる 決して気を抜かないようにしろ」
松本先生の言葉で、気合が入る。
「楽しみだなぁ」
この場に立てるのもそうだけど、立華や洛秋といった強豪校の演奏を聴けるのだ。
楽しんだもん勝ちだ。
「ゆいは緊張しないんだ~」
「今日は楽しんだもん勝ちだよ」
「ゆいらしいね~」
「今日は全力で楽しむよ」
「お~!」