「雨ですねぇ~」
「うん…」
「良く降りますね」
「うん…」
『……』
コンクールに向けての練習が始まった。そんな中、季節は梅雨へと入っていった。湿気も多くなりジメジメとする。
パート練習中に、僕とりりりんの二人で、みぞれ先輩とコミュニケーションを取ろうとしたのだが話が続く事はなかった。
「どうしようゆう…話が続かないよぉ~」
りりりんは困った顔で僕に訴えてきた。
そんな目で見ないで。僕だって困っているんだから
「あっ…そろそろ、音楽室に行かないと…」
先輩がそう言った事で、集合時間が迫っている事に気付き、りりりんと慌てて音楽室に向かった。
「今日は課題曲を中心にやりましたが 明日はリズの方を集中的に練習する予定ですので そのつもりで準備をお願いします」
『はい』
「部長から何かありますか?」
「みんなで決めたとおり、今年の目標は全国大会で金を取ることです。今度オーディションがあるけど、選ばれたメンバーも、そうでないメンバーも、チームの一員であることは変わらないから、みんなで支えあって最強の北宇治をつくっていこう」
吉川部長からの言葉を聞き、オーディションが近づいているのを嫌でも分からされる。嫌な気候。そしてオーディション…。
そんな言葉が脳内を駆け巡る。
「フルート良い雰囲気だね」
「うん、私達もあそこみたいになりたい」
全体での練習を終えて、パート練習に切り替わり、音楽室にはフルート組がワイワイと楽しそうに話をしていた。
「それかわいいよねぇ」
「ほんとだかわいい」
「のぞ先輩のクロスも可愛いですね」
傘木先輩の作り出す空気というかオーラというか、そういった面がかなり大きいのだろう。こちらと違って凄く良い雰囲気が伝わってくる。
「お疲れ様ですぅ~あそこいつもにぎやかですねぇ~まるで小鳥たちのさえずりのよう、なんちゃって」
そんな中、りりりんがみぞれ先輩に話しかけにいった。
僕は、ファゴットの2人と後方からりりりんのことを見守っていた。
「うん」
「フゥ…先輩?今度ファゴットの子たちとダブルリードの会するんですけど、まあ言っても帰りにお茶するだけなんすけど、鎧塚先輩もご一緒にどうですか?せっかく五人しかいないダブルリードですし」
りりりんがそう言って、先輩を誘った。
結果は果たして…
「私はいい」
みぞれ先輩は、はっきりとそう言い切った。
「そう…ですかぁ…」
りりりんは、分かりやすく落ち込んでいた。
そんなりりりんに、何か声をかける事もなく、みぞれ先輩は音楽室を後にした。りりりんの作戦は失敗に終わってしまった。
「ダメか…」
『はぁ…』
ファゴットの二人と一緒に落胆してしまった。
まぁ…知ってたよね。
「ダメだった~」
落ち込みながら、僕達にそう言いながら寄ってくるりりりん。
そんな彼女の背中を僕は摩っていた。
「今日のお茶会どうしよっか」
籠手山がそう話を切り出し、
「予定通りでいいんじゃないの」
兜谷がそう返事を返す。
「そうだよね」
「まぁ、みぞれ先輩は来てくれたら…って話だったからねぇ…」
りりりんのお誘いが通っていれば、先輩も一緒にって話だったが、いつも通りのメンバーになるよねと。そして、僕達四人でパート教室に向かっていると、先輩とまた会い、りりりんがお疲れ様でしたと言い、続けて僕達も先輩に挨拶をしたのだが…
「お疲れ様」
「先輩つれないですぅ…」
みぞれ先輩は、釣れなかくて再び、落胆。
先輩とどうやってコミュニケーションを取ろうかと思っていると、フルートのパート教室で楽しそうに話している傘木先輩の姿が目に入った。
「りりりん、傘木先輩ってみぞれ先輩と仲良かったよね?」
「えっ?確かそうだったと思う」
「なら、みぞれ先輩の事で何か分かるかも」
りりりんとそう会話をして、傘木先輩に僕達は声をかける事にした。
「先輩」
「え~っと、君達は確かオーボエの…」
「はい、僕は伏見結です」
「鎧…じゃなくて剣崎です」
りりりん、みぞれ先輩の事で頭いっぱいだなさては。
傘木先輩に話しかけて良かったと、この時思った。
「アハハ、えっと、何?」
「鎧の…じゃなくて、鎧塚先輩のことで相談が…」
りりりんがそう言って話を切り出す。
「みぞれ?どうした?」
「あの~先輩って鎧塚先輩と仲いいですよね?」
「と思うよ」
「ですよねぇ~なのでちょっと相談が」
「うん、どうした?」
「はい、あの…私、鎧塚先輩とたぶんうまくやれてなくて」
「同じくです」
「そうなの?何で?」
僕とりりりんがそう言うと、傘木先輩はそう返してきた。
「え~っとですね。話しかけてもあんまり返事してくれないし~お話できてもあんまし興味持ってくれてない感じで…もしかして私、嫌われちゃってたりするのかな~って…」
「僕はそうじゃないって思ってるんですけど、先輩はどう思います?」
「う~ん…みぞれってちょっと不思議なとこあるからなぁ。たぶん君達…」
先輩はそう言って、僕達の方を向く。
「剣崎です。あと梨々花です」
「伏見結です」
「フフッ、二人の事を嫌ってるわけではないと思うよ」
「そうですかぁ?」
「ですよね」
「うん。大丈夫」
先輩にそう言われて、ホッとする。
「ありがとうございますぅ…あっ、お礼にこれ」
りりりんはそう言って、鞄の中に入れたおいたゆで卵を先輩に渡した。
なんで、持ってるんだ…
「ん?何これ?」
ほら、先輩が困惑してるよ
「コンビニのゆで卵です。味ついてておいしいです」
「へぇ…」
「失礼します」
りりりんはそう言って、先輩の元から去っていく。
「傘木先輩、失礼します」
「あっ…うん、またね」
傘木先輩は、手を振ってくれながら僕の事を見送ってくれた。
「よーし!私、頑張る!」
「おおー」
先輩に話を聞いて貰ったりりりんは気合が入っていた。
「そうだ!ゆう」
「ん?」
「縣祭り、私と行こうよ~」
そう言えば、もうそんな時期か。
「あーいいよ。予定入ってないからね」
「あれ?てっきり、誰かと行くもんだと」
僕の言葉を聞いて、りりりんは驚いていた。
「その割には、行きたいって言葉だったけど」
「そっか、当日、おめかしして行ってあげるね~」
「楽しみにしてる」
「えへへ~」