オーボエに音を乗せて   作:桜紅月音

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5話 鎧塚先輩

 

 

「雨ですねぇ~」

 

 

「うん…」

 

 

「良く降りますね」

 

 

「うん…」

 

 

『……』

 

 

コンクールに向けての練習が始まった。そんな中、季節は梅雨へと入っていった。湿気も多くなりジメジメとする。

パート練習中に、僕とりりりんの二人で、みぞれ先輩とコミュニケーションを取ろうとしたのだが話が続く事はなかった。

 

 

「どうしようゆう…話が続かないよぉ~」

 

 

りりりんは困った顔で僕に訴えてきた。

そんな目で見ないで。僕だって困っているんだから

 

 

「あっ…そろそろ、音楽室に行かないと…」

 

 

先輩がそう言った事で、集合時間が迫っている事に気付き、りりりんと慌てて音楽室に向かった。

 

 

「今日は課題曲を中心にやりましたが 明日はリズの方を集中的に練習する予定ですので そのつもりで準備をお願いします」

 

 

『はい』

 

 

「部長から何かありますか?」

 

 

「みんなで決めたとおり、今年の目標は全国大会で金を取ることです。今度オーディションがあるけど、選ばれたメンバーも、そうでないメンバーも、チームの一員であることは変わらないから、みんなで支えあって最強の北宇治をつくっていこう」

 

 

吉川部長からの言葉を聞き、オーディションが近づいているのを嫌でも分からされる。嫌な気候。そしてオーディション…。

そんな言葉が脳内を駆け巡る。

 

 

「フルート良い雰囲気だね」

 

 

「うん、私達もあそこみたいになりたい」

 

 

全体での練習を終えて、パート練習に切り替わり、音楽室にはフルート組がワイワイと楽しそうに話をしていた。

 

 

「それかわいいよねぇ」

 

 

「ほんとだかわいい」

 

 

「のぞ先輩のクロスも可愛いですね」

 

 

傘木先輩の作り出す空気というかオーラというか、そういった面がかなり大きいのだろう。こちらと違って凄く良い雰囲気が伝わってくる。

 

 

「お疲れ様ですぅ~あそこいつもにぎやかですねぇ~まるで小鳥たちのさえずりのよう、なんちゃって」

 

 

そんな中、りりりんがみぞれ先輩に話しかけにいった。

僕は、ファゴットの2人と後方からりりりんのことを見守っていた。

 

 

「うん」

 

 

「フゥ…先輩?今度ファゴットの子たちとダブルリードの会するんですけど、まあ言っても帰りにお茶するだけなんすけど、鎧塚先輩もご一緒にどうですか?せっかく五人しかいないダブルリードですし」

 

 

りりりんがそう言って、先輩を誘った。

結果は果たして…

 

 

「私はいい」

 

 

みぞれ先輩は、はっきりとそう言い切った。

 

 

「そう…ですかぁ…」

 

 

りりりんは、分かりやすく落ち込んでいた。

そんなりりりんに、何か声をかける事もなく、みぞれ先輩は音楽室を後にした。りりりんの作戦は失敗に終わってしまった。

 

 

「ダメか…」

 

 

『はぁ…』

 

 

ファゴットの二人と一緒に落胆してしまった。

まぁ…知ってたよね。

 

 

「ダメだった~」

 

 

落ち込みながら、僕達にそう言いながら寄ってくるりりりん。

そんな彼女の背中を僕は摩っていた。

 

 

「今日のお茶会どうしよっか」

 

 

籠手山がそう話を切り出し、

 

 

「予定通りでいいんじゃないの」

 

 

兜谷がそう返事を返す。

 

 

「そうだよね」

 

 

「まぁ、みぞれ先輩は来てくれたら…って話だったからねぇ…」

 

 

りりりんのお誘いが通っていれば、先輩も一緒にって話だったが、いつも通りのメンバーになるよねと。そして、僕達四人でパート教室に向かっていると、先輩とまた会い、りりりんがお疲れ様でしたと言い、続けて僕達も先輩に挨拶をしたのだが…

 

 

「お疲れ様」

 

 

「先輩つれないですぅ…」

 

 

みぞれ先輩は、釣れなかくて再び、落胆。

先輩とどうやってコミュニケーションを取ろうかと思っていると、フルートのパート教室で楽しそうに話している傘木先輩の姿が目に入った。

 

 

「りりりん、傘木先輩ってみぞれ先輩と仲良かったよね?」

 

 

「えっ?確かそうだったと思う」

 

 

「なら、みぞれ先輩の事で何か分かるかも」

 

 

りりりんとそう会話をして、傘木先輩に僕達は声をかける事にした。

 

 

「先輩」

 

 

「え~っと、君達は確かオーボエの…」

 

 

「はい、僕は伏見結です」

 

 

「鎧…じゃなくて剣崎です」

 

 

りりりん、みぞれ先輩の事で頭いっぱいだなさては。

傘木先輩に話しかけて良かったと、この時思った。

 

 

「アハハ、えっと、何?」

 

 

「鎧の…じゃなくて、鎧塚先輩のことで相談が…」

 

 

りりりんがそう言って話を切り出す。

 

 

「みぞれ?どうした?」

 

 

「あの~先輩って鎧塚先輩と仲いいですよね?」

 

 

「と思うよ」

 

 

「ですよねぇ~なのでちょっと相談が」

 

 

「うん、どうした?」

 

 

「はい、あの…私、鎧塚先輩とたぶんうまくやれてなくて」

 

 

「同じくです」

 

 

「そうなの?何で?」

 

 

僕とりりりんがそう言うと、傘木先輩はそう返してきた。

 

 

「え~っとですね。話しかけてもあんまり返事してくれないし~お話できてもあんまし興味持ってくれてない感じで…もしかして私、嫌われちゃってたりするのかな~って…」

 

 

「僕はそうじゃないって思ってるんですけど、先輩はどう思います?」

 

 

「う~ん…みぞれってちょっと不思議なとこあるからなぁ。たぶん君達…」

 

 

先輩はそう言って、僕達の方を向く。

 

 

「剣崎です。あと梨々花です」

 

 

「伏見結です」

 

 

「フフッ、二人の事を嫌ってるわけではないと思うよ」

 

 

「そうですかぁ?」

 

 

「ですよね」

 

 

「うん。大丈夫」

 

 

先輩にそう言われて、ホッとする。

 

 

「ありがとうございますぅ…あっ、お礼にこれ」

 

 

りりりんはそう言って、鞄の中に入れたおいたゆで卵を先輩に渡した。

なんで、持ってるんだ…

 

 

「ん?何これ?」

 

 

ほら、先輩が困惑してるよ

 

 

「コンビニのゆで卵です。味ついてておいしいです」

 

 

「へぇ…」

 

 

「失礼します」

 

 

りりりんはそう言って、先輩の元から去っていく。

 

 

「傘木先輩、失礼します」

 

 

「あっ…うん、またね」

 

 

傘木先輩は、手を振ってくれながら僕の事を見送ってくれた。

 

 

「よーし!私、頑張る!」

 

 

「おおー」

 

 

先輩に話を聞いて貰ったりりりんは気合が入っていた。

 

 

「そうだ!ゆう」

 

 

「ん?」

 

 

「縣祭り、私と行こうよ~」

 

 

そう言えば、もうそんな時期か。

 

 

「あーいいよ。予定入ってないからね」

 

 

「あれ?てっきり、誰かと行くもんだと」

 

 

僕の言葉を聞いて、りりりんは驚いていた。

 

 

「その割には、行きたいって言葉だったけど」

 

 

「そっか、当日、おめかしして行ってあげるね~」

 

 

「楽しみにしてる」

 

 

「えへへ~」

 

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