オーボエに音を乗せて   作:桜紅月音

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6話 縣祭り

 

6月5日。宇治には縣祭りという伝統な祭りがある。

今年は…不運なのか…土砂降りとまではいかないけど、生憎の雨だった。

 

 

「ゆうーそろそろ行こー」

 

 

私服に身を包んでりりりんが、チャイムを鳴らす事も無く、家の中に入ってきてそう言ってきた。

 

 

「はいはい、ちょっと待って」

 

 

先日、りりりんからお誘いを貰って、二人で行く事に。

去年もなんだかんだ言って、りりりんと行ったけど。

 

 

「お待たせ」

 

 

「うん、行こ~」

 

 

そう言って、手を差し出してくるりりりん。

そんな彼女の取る。

 

 

「はいよ」

 

 

「えへへ~」

 

 

彼女の手を取ると、彼女は嬉しそうに微笑んでいた。

 

 

「吹部の誰か来てるかな」

 

 

京阪宇治を出てすぐ、りりりんがそう聞いてきた。

 

 

「一年の一回のお祭りなんだし、来てるだろうね」

 

 

宇治橋を渡って、屋台を巡りながら、りりりんとそんな話をする。

実際、北宇治の制服を着た先輩方を見かけたし、居るには居るんじゃないかな。

 

 

「ゆう、あれ食べたい」

 

 

「はいはい。好きなだけどうぞー」

 

 

両親からは、りりりんと楽しんでおいでと言われて、かなりのお金を渡してもらっている。こんなに要らないんだけどな。

 

 

「今日は、たくさん食べるぞー」

 

 

「祭りってそういう物だったっけ…」

 

 

りりりんの言葉に、僕は思わず困惑してそう返す。

祭りとは楽しむもの……食べる事も楽しむうちに入るか。そうなると……よく分かんないや

 

 

「だって、ゆうと同じ高校に入って、同じ部活して、こうやって祭りにも来て、私めっちゃ嬉しい」

 

 

「僕も同じだけど、さっきの話と関係ある?」

 

 

「あるよ~」

 

 

「いや…無いと思う」

 

 

なんて会話をしていると、僕達に聞きなれた声で僕達の事を呼ぶ声がした。

 

 

「あっ、梨々花ちゃんと伏見君だ」

 

 

僕らの姿を見かけたのか、僕らに声を掛けてきたのは、黄前先輩と塚本先輩だった。

二人きりって事は、デートでもしてるのかな。付き合ってるとかそういう話は聞いた事ないけど。

 

 

「黄前先輩と塚本先輩、お疲れ様です!」

 

 

「お疲れ様です~」

 

 

「うん、お疲れー」

 

 

「先輩方はデートですか~?」

 

 

「えっ!?」

 

 

りりりんが先輩方に聞いたが、黄前先輩から返ってきた反応は、僕の思っていた反応と違っていた。

 

 

「あれ~違いました?」

 

 

「ち、違わないんだけど…」

 

 

様子がおかしいな…なんかこう、関係がバレたくない…みたいな。

やっぱり付き合ってるのかな。黄前先輩と塚本先輩。

 

 

「そう言う二人もデートか?」

 

 

塚本先輩がそう聞いてきた。

 

 

「そんな所…ですかね?」

 

 

「え~私はそう思ってるけど~」

 

 

僕はあやふやに先輩に返すと、りりりんが隣からそうツッコんできた。

このやり取りを見て、塚本先輩がちょっとだけ微笑んでいた。

 

 

「です」

 

 

「お前らも複雑なんだな」

 

 

塚本先輩を困らせてしまった。

後日、何か美味しい物でも私に行こうと思う。

 

 

「先輩達も、デート楽しんでくださいね。行こ、りりりん」

 

 

「うん、ではでは~」

 

 

僕とりりりんは先輩達に手を振って、この場を後にする。

 

 

「うん、二人も楽しんでね」

 

 

黄前先輩からそう声を貰った。

 

 

「それでそれで久美子先輩と塚本先輩、付き合ってると思う?」

 

 

「僕はそうだと思うけどなー」

 

 

雨が上がり、橘橋を渡って、中洲にある雨粒が付いたベンチをタオルで拭いて座り、りりりんと先輩達の話題で盛り上がっていた。

先輩達が付き合ってるのかいないのかの話で。

 

 

「黄前先輩の様子がおかしかったのは気になったけどね」

 

 

「それは私も思った~」

 

 

「だよね」

 

 

りりりんも同じ事は思っていたようだ。

今度、友恵先輩にでも聞いてみようかな。何か知ってるかもしれないし…

でも、それを知った所で…意味ないしなと思いつつ。

 

 

「僕らに言えない事かもしれないし、この話は終わりでいいんじゃない?」

 

 

「そうだね~って事ではい」

 

 

りりりんはそう言って、リンゴ飴を出してきた。

というか、どこに隠し持っていたんだ。

 

 

「いつのまに買ってたの?」

 

 

「ゆうがトイレに行ってる間に~」

 

 

「あの時か」

 

 

「そうだよ~」

 

 

りりりんからリンゴ飴を貰って、一口舐める。

 

 

「うん、美味しい」

 

 

「ね~」

 

 

りりりんと過ごすこの時間はとても心地良かった。

そんな時間が30分程経っただろうか。腕時計を確認すると、良い時間になっていた。

 

 

「もうこんな時間だし、帰る?」

 

 

「私はもうちょっと夜空を見たい~」

 

 

「確かに綺麗な夜だからな」

 

 

りりりんが言う通り、雨がさっきまで振っていたのが嘘のように、綺麗な夜空が見えていた。

 

 

「ゆう」

 

 

「ん?何?」

 

 

「オーディション頑張ろうね」

 

 

「…もちろん」

 

 

来週に控えたオーディションの事を頭の隅に入れて、僕はそう返した。

 

 

「あっ、流れ星だ」

 

 

「何かお願いしなきゃ…!」

 

 

りりりんはそう言って、手を握って願い事を口に出していた。

 

 

「鎧塚先輩とゆうと三人でコンクールに出られますように…!」

 

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