伏黒恵に転生したから魔虚羅をブン殴る 作:鈍い
皆様の応援のおかげです。
姉妹校交流会2日目。
初日に行われた団体戦とは打って変わり本日は個人戦だ。
両校の生徒が順番にタイマンを行い、白星の多いチームが勝利となる。
しかし昨日の一件を受けて乙骨先輩には出場停止処分が下された。
理由はもちろん折本里香である。
あの特級過呪怨霊が顕現すれば交流会どころの話ではない。
1日目で死者や怪我人が出なかったのは奇跡だ。
なので東京校の出場者は秤さんと綺羅羅さんの2人。
対する京都校は東堂、西宮さん、加茂さんの3人だ。
後は原作に登場しなかった上級生が何人か。
このままでは東京側が1人足りない。
「というわけで恵が代打ね」
「俺は高専生じゃありませんよ」
「来年から入学するんだし誤差だよ誤差!」
本来なら俺は現在の交流会に参加していない。
ここへ呼ばれた理由は式神と視界を共有できるようになったからだ。
仮に原作通りだったなら代打は誰が務めていたのだろうか?
「対戦カードは僕の独断と偏見で決めたよ」
五条先生から受け取った紙には、
1回戦:星綺羅羅VS西宮桃
2回戦: 秤金次VS加茂憲紀
3回戦: 伏黒恵VS東堂葵
と描かれていた。
「てなわけで始めようか」
1回戦は綺羅羅さんが制した。
序盤の主導権を握っていたのは西宮さんだ。
上空という安全圏から一方的に攻撃を浴びせて反撃の隙を与えない。
しかし綺羅羅さんは呪力を籠めたコインを上空へ放り投げ、
その勢いのまま西宮さんの箒へマーキングを施す。
さらに自身へ同じ星をマーキングして相手を強引に引き寄せた。
飛行という最大の武器を封じられたことで西宮さんの優位は崩壊する。
最後は接近戦に持ち込まれ、純粋な男女のフィジカル差を覆せず敗北。
2回戦は秤さんが制した。
開始と同時に領域展開を発動してゴミみたいな情報を加茂さんに叩き込む。
ついでに観戦している俺たちまで巻き込まれて会場のあちこちから困惑の声が上がった。
一方の加茂さんは混乱しながらも赤鱗躍動で身体能力を引き上げて何とか主導権を握る。
しかし秤さんが大当たりを引いたことで戦況は逆転。
無制限に溢れ出す呪力を前に押し切られて敗北した。
今回は模擬戦なので相手を殺してはいけない。
決定打を与えられず粘られてしまったのが敗因だろう。
後は純粋に相手が悪すぎたな。
ノッてる時なら俺よりも強いだろうし。
「乙骨と戦えないのは残念だがオマエなら相手にとって不足はない! その歪んだ性癖を叩き直してやる!」
「やってみろよぉ!」
姉妹校交流会2日目のトリを飾るのは俺と東堂だ。
原作よりも遥かに強くなっているとはいえ勝ち切れるかは分からない。
何しろ相手は1級術師だからな。
しかも俺の十種影法術は東堂の不義遊戯と致命的に相性が悪い。
なぜなら式神という俺の手札が、そのまま相手の手札へと変わってしまうからだ。
味方が増えれば増えるほど戦場を引っ掻き回される余地も増えてしまう。
ならば余計な手札を与えなければいい。
つまり式神を一切使わずに己の肉体だけで戦う。
不義遊戯の対象が少なければ相手の取れる手段も減るからな。
……いや、戦う前から負けることを考える馬鹿がいるか。
それに強者との死闘は自分の限界を知り、乗り越える絶好の機会だ。
「それではスタート!」
開始の合図と同時に俺たちは呪力を滾らせた。
実戦ではないが絶対に負けられない。
津美紀への愛が本物だと証明する為にもな。
「アンタの術式は手を叩くことで呪力を帯びた存在の位置を入れ替えるんだったな」
「よく知ってるな。普段の任務では術式を使っていないはずなんだが……」
「地獄耳なもんでね」
俺から先に言い当てたので術式の開示は封じられた。
せっかく原作知識があるのだから最大限に活用させてもらう。
というか勝つ為には手段を選んでられない。
「さあ、始めようか!」
そう言って東堂が地面を蹴り上げた。
巨体が一瞬で間合いを詰め、拳が唸りを上げて迫ってくる。
俺は身体を捻って紙一重で拳を躱し、そのまま懐へ潜り込んだ。
そして腹部へ渾身の打撃を炸裂させる。
「悪くないパワーだ!」
確かな手応えを感じたが東堂は僅かに身体を揺らしただけだった。
直後、横薙ぎの拳が飛んでくる。
それを腕で受け止めると凄まじい衝撃が骨まで響く。
……なんて重さだ。
これが東堂葵か。
単純な膂力だけでも1級術師として規格外だ。
しかも巨体からは想像できないほど動きが速い。
そりゃあ百鬼夜行で無双するわけだ。
「……術式は使わないのか?」
「自分から不利な状況になるわけないだろ」
俺は拳を握り直しながら答える。
とはいえ術式を封じた状態で肉体派の1級と殴り合うのは流石に分が悪い。
そこで俺は式神を顕現させないことを条件に身体能力を底上げする縛りを結んだ。
夜蛾学長と戦った頃より調伏した式神は増えている。
その分だけ術式から差し出せるものも多い。
以前よりも強力な縛りになっているはずだ。
「そうか……。では容赦なく術式を解禁するとしよう」
「させるかッ!」
不義遊戯は入れ替える対象が存在しなければ機能しない。
現在、戦場にある呪力を帯びた存在は俺と東堂だけ。
この程度なら相手の動きを読むことは難しくない。
厄介なのは戦場に新たな選択肢を増やされた場合だ。
例えば小石などに呪力を籠めて撒き散らせば一気に入れ替え先が増える。
そうなれば次の動きを予測するのは困難になるだろう。
だったら何かを仕込まれる前に潰せばいい。
地面に転がっている小石を利用する場合なら、
①身体を屈める。
②小石を拾う。
③呪力を籠める。
大雑把に考えて3つの動作が必要になる。
これなら実行される前に妨害できるはずだ。
「残念だったな」
「へ?」
そう言って東堂はポケットから大量のビー玉を取り出し、俺に向けて投げつけた。
もちろん普通のビー玉ではなく、どれも呪力を帯びている。
事前に用意していたのかよ。
戦場に落ちている物を利用する必要なんてない。
最初から手頃な物へ呪力を籠めて持ち込んでおけばいい。
少し考えれば分かることだったな。
そんな描写は原作に無かったから油断していた。
これは予見できなかった俺のミスだ。
……派手にヤバいな。
こいつ身内としか戦ってねぇな。