伏黒恵に転生したから魔虚羅をブン殴る   作:鈍い

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 遂に原作突入です。
 それと読者さんから血塗の発言は「」ではなく《》にした方が良い、とアドバイスを受けたので採用しました。


宿儺の指

 両面宿儺

 それは呪術全盛の平安時代に実在した呪いの王だ。

 当時の術師たちは総力を挙げて討伐を試みたが返り討ちに遭う。

 余りにも強大な力を持っていた為、死後も20本の指は呪物として残り続けた。

 それらは誰にも祓うことができず現代になっても強烈な呪いを放っている。

 

 なんやかんやあって2018年。

 いよいよ原作が始まる時期になった。

 

 呪術廻戦は虎杖悠仁が宿儺の指を食べることで物語が始まる。

 しかし俺が転生した影響で原作通りに話が進むとは限らない。

 

 宿儺の指が杉沢第三高校の百葉箱にあったのは羂索が暗躍した結果だろう。

 とはいえ本当に奴は虎杖に指を食べさせるつもりだったのだろうか?

 

 原作通りに指を食べなかった場合、呪術高専へ入学することはない。

 そのまま渋谷事変を迎えれば、生まれた時から身体に封印されていた指が解けて、宿儺の器として覚醒する。

 強制参加の死滅回遊では何らかの形で追い詰められ、宿儺と縛りを結ぶことで身体の主導権を奪われるはずだ。

 なにせ虎杖には縛りに関する知識が無く、宿儺の凶悪性も知らないからな。

 

 最後は裏梅が宿儺の指を集めて完全復活。

 五条先生でも倒せないので日本は終わりだ。

 

 虎杖の故郷である仙台に猛者が集まっていたのも偶然とは思えない。

 強敵が多ければ、それだけ追い詰められる可能性も高くなるからな。

 

 ここで宿儺の指を食べさせるのは羂索にとって旨味のある行動じゃない。

 むしろ五条先生の気が変わって虎杖が処刑されれば大損害だ。

 こう考えると原作の展開自体が結構な博打だったように思えてくる。

 やっぱアイツはライブ感で生きているな。

 

 まあ、これはあくまで俺の予想だ。

 実際にどうなるかなんて分からない。

 

 ここで問題になるのは俺が強くなり過ぎたことだ。

 杉沢第三高校に現れる呪霊程度なら余裕で祓える。

 そうなれば虎杖が指を食べる理由も無くなる。

 つまり原作が始まらない。

 

「本当にどうするんだ、これ」

 

《恵ぃ、どうしたんだぁ?》

 

「血塗か。これは独り言だから気にしないでくれ」

 

《わかったぁ》

 

 そもそも原作知識は本当に信用できるのか?

 俺が伏黒恵に転生した時点で既に原作とは違う歴史が始まっている。

 ならば俺の知っている未来が、そのまま再現される保証なんてどこにもない。

 何が正しくて何が間違っているのか分からなくなってくる。

 

「……出たとこ勝負だな」

 

《がんばれぇ》

 

 今は知っている未来に無理やり合わせるよりも、目の前で起きることに対応していく方がいい。

 失敗したら、その時に考えればいい。

 俺は本来の伏黒恵よりも強いのだから、未来が変わったところで何とかなるだろう。

 

「伏黒、さっきから誰と話してんだ?」

 

 隣を歩く虎杖が不思議そうに俺のことを見ている。

 現在、俺たちはオカ研の部員を助ける為に杉沢第三高校へ向かっていた。

 つまり原作通りの行動である。

 

「血塗っていう名前の相棒だ」

 

《相棒だぜぇ》

 

「……お、おう。たぶん普通の人間じゃ見えない幽霊的な存在かなんかだな」

 

「どちらかというとNARUTOの九喇嘛だな」

 

 そんな感じで話していると杉沢第三高校へ到着した。

 校門に近づくと強烈な呪いの気配を感じる。

 間違いない。

 この建物の中に宿儺の指がある。

 そしてソレに引き寄せられた呪霊も大量に集まっているはずだ。

 

「お前はここにいろ。部室はどこだ?」

 

「待てよ、俺も行く!」

 

 虎杖が食い下がってくる。

 予想通りの反応だ。

 

「よく分かんねぇけど、ヤバいんだろ!? 2月そこらの付き合いだけど友達なんだ! 放っとけねぇって!」

 

「ここにいろ」

 

「だけど!」

 

「……どうしても助けたいのなら条件がある」

 

原作通りに進む保証は無い。

だったら、そうなるように動かせばいい。

 

「なんだ?」

 

「俺と縛りと言う名の約束を結べ」

 

「分かったから早く内容を教えてくれ!」

 

「呪いは呪いでしか祓えない。だが呪物を取り込めば呪いの力を得られる。つまり宿儺の指を取り込めば呪いも倒せる」

 

「で、約束は?」

 

「今回の件が終わったら、さっきの話を忘れろ。俺は呪術師として呪いの隠匿をしないといけない」

 

 呪物を取り込ませる手助けをしたなんて知られたら色々と面倒なことになる。

 というわけで証拠を消しておくことにした。

 血塗には3段アイスを食べさせることを条件に口止めしてある。

 後は虎杖自身の意思で宿儺の指を食べてくれることを祈るだけだ。

 

「忘れられんの?」

 

「これは特別な約束だ。確実に忘れられる。……了承してくれるか?」

 

「分かった!」

 

 虎杖が頷く。

 それでいい。

 

「じゃあ手分けして探すぞ!」

 

 虎杖が宿儺の指を取り込むための理由は用意した。

 後は本人がどう動くかだ。

 というわけで俺は虎杖と別れてから校舎へ潜入した。

 

「きゃあああ!」

 

 潜入してから暫くすると近くから誰かの悲鳴が響く。

 反射的に音のした方向へ駆け出した。

 廊下を進んで角を曲がる。

 その先にいたのは呪霊たちに喰われそうになっているオカ研の部員たちだった。

 おそらく宿儺の指ごと取り込もうとしているのだろう。

 

 俺は気配を殺して物陰に身を潜めた。

 ここで動けば虎杖が指を食べる展開は消える。

 ……もう少しだけ様子を見るとしよう。

 

「うおおおおっ!」

 

 突如として隣の窓が砕け散り虎杖が飛び込んでくる。

 そのまま呪霊へ突撃して部員たちを引き剥がした。

 

「い、いまぁ、なんじぃい!」

 

 呪霊が虎杖へ襲い掛かる。

 それを受けて虎杖が拳を叩き込む。

 しかし全く効いていない。

 

「伏黒の言う通りだな……!」

 

 そう言って虎杖が後退する。

 彼の視線が床に落ちた宿儺の指を捉えた。

 

「確かジュブツを取り込んでジュリョクを得るんだな」

 

 虎杖が宿儺の指を拾い上げて躊躇なく口へ放り込む。

 アレって割とデカいんだけど丸飲みできるなんて凄いな。

 直後、虎杖の身体から凄まじい呪力が噴き出す。

 そして顔には黒い紋様が浮かび上がった。

 

 空気が変わった。

 目の前にいるのは虎杖悠仁ではない。

 両面宿儺。

 受肉した呪いの王が、そこに立っている。

 周囲にいた呪霊は一斉に逃げ出した。

 

 おそらく今の宿儺は俺よりも弱いだろう。

 だというのに今すぐにでも逃げ出したくなる。

 理屈では勝てると分かっている。

 それでも身体が本能的に危険を訴えていた。

 

「何とかなったな」

 

 ……完全に計画通りだ。

 ここまで上手くいくと逆に怖くなってくるな。

 世界の修正力が働いたと思うことにしよう。

 

「ケヒッ、ヒヒッ!」

 

 宿儺が愉快そうに笑う。

 

「ああ、やはり! 光は生で感じるに限るな!」

 

 久しぶりの肉体を確かめるように両腕を広げた

 

「呪霊の肉などつまらん! 人は! 女はどこだ!」

 

 獲物を探すように周囲を見回す。

 

「遅かったか!」

 

 ここからは俺のターンだ。

 物陰から姿を現して宿儺の前へ歩み出る。

 

「……貴様は呪術師か。禍々しい呪力を放っているな」

 

 そこから先は原作と大きく変わらなかった。

 宿儺が興奮している間に虎杖が身体の主導権を取り戻す。

 遅れて到着した五条先生に事情を説明して虎杖を助けてくれるよう頼み込んだ。

 細かい部分に違いはあったが結果だけを見れば原作通り。

 とりあえず最初の関門は突破したな。




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