伏黒恵に転生したから魔虚羅をブン殴る 作:鈍い
原作通り虎杖悠仁の秘匿死刑が決まり呪術高専への入学も決定した。
個人的には宿儺の器とかいう人間爆弾を自由にさせるよりも厳重に監禁しておくべきだと思う。
まあ五条先生は青春をこじらせた哀れなオジサンだから仕方ない。
その後、釘崎野薔薇とも合流し俺たちは幾つかの任務をこなした。
「というわけで……虎杖悠仁くん、釘崎野薔薇さん、入学おめでとー!」
五条先生の声を合図に先輩たちが一斉にクラッカーを鳴らす。
ここは呪術高専の敷地内にあるグラウンド。
現在、2度目となる入学記念パーティが開催されていた。
「五条先生、なんで屋外なの?」
「ちょっとしたレクリエーションをしようと思っててね」
虎杖の疑問に五条先生を笑みを浮かべながら答える。
原作通りだと伏黒たちは少年院で特級呪霊と戦い、色々あって虎杖は死ぬ。
だが今の俺なら下手な特級呪霊くらい余裕で祓える。
しかも俺は宿儺が顕現した際の処刑人という名目で虎杖の傍を離れないつもりだ。
そうなると事態の黒幕である羂索も動きはしないだろう。
この場合、宿儺は俺に器としての適性があることに気づくこともない。
となると渋谷事変で宿儺が一時的に顕現した時、何をしでかすか予想できなくなる。
高専の人間を殺さない代わりに身体の主導権を明け渡す縛りでも結ばれた最悪だ。
「それじゃあ、今から恵が宿儺と戦いまーす!」
「「「は!?」」」
五条先生の宣言に周囲が一斉にざわめいた。
ちなみに呪術総監部には無断である。
「危なすぎるでしょ!」
「でも恵本人からの提案だし」
「だとしてもダメでしょ!」
釘崎の抗議を軽く受け流す五条先生。
このレクリエーションの目的は幾つかある。
その内の1つが俺に器としての適性があることを宿儺に知らせる為だ。
つまり渋谷事変で宿儺が顕現した際、その標的を此方へ誘導する。
契闊の縛りを結んでいない以上、宿儺は俺の身体を奪おうしてくるだろう。
そこは俺自身が頑張って強くなることで対処するしかないな。
後は虎杖に宿儺の指を取り込ませないように立ち回ることくらいか。
「というか宿儺が応じてくれんの?」
虎杖がもっともな疑問を口にする。
「だからメリットを提示する」
そう答えた直後、虎杖の頬に口が生えた。
どうやら交渉する気はあるらしい。
「勝利条件は10分の間に俺を殺すことだ。勝利すれば虎杖は宿儺に身体を明け渡す」
「いいだろう。ケヒヒッ!」
「もちろん乗っ取った身体から心臓を取り出して『虎杖の命が惜しければ新たに縛りを結べ』みたいな狡い真似はするなよ。後は観戦者に対する加害の禁止。それと戦いが終わった後に虎杖の身体を反転術式で治す縛りも結んでもらう」
「……仕方あるまい」
宿儺は渋々了承する。
原作で似たようなことをやっていたからな。
そこら辺の対策を怠るつもりはない。
「身体を乗っ取られるとか嫌なんだけど。俺に拒否権とか無いの? 」
虎杖が不満そうな顔をする。
まあ当然の反応だよな。
「これは虎杖にも利があるぞ。スポーツでも何でも動きってのは繰り返し何度もやっているうちに身体が覚える」
「身体が覚える?」
「宿儺が呪術を使って戦えば、虎杖の身体に超特級の戦闘経験が刻み込まれる。つまり今まで以上に成長できるはずだ」
少年院で宿儺が顕現したのは数分くらいだろう。
しかも全く本気を出していなかった。
つまり10分間本気で戦えば原作以上の経験を積めるはずだ。
「ただでさえ上層部は虎杖を殺したいと思っている。自分の身を守る為にも強くなっておいた方が良いはずだ」
「でもよぉ……」
「俺を信じてくれ」
そう言うと少し悩んだ末に虎杖が顔を上げた。
「……分かった! 伏黒を信じる! だから絶対に勝てよ!」
「任せろ!」
俺の呪力量は乙骨先輩と同じくらいだ。
そして完全体の宿儺は先輩の倍以上の呪力量を誇る。
なら俺の呪力量は宿儺の指8本か9本分ってところか。
今の宿儺は2本の指を取り込んでいる。
純粋な呪力量だけを比較すれば俺の方が上だ。
だが、それだけで勝敗が決まるわけではない。
宿儺は閉じない領域を始めとした高度な呪術を扱える。
ぶっちゃけ勝てるかどうかは分からない。
それでも戦う。
逆境に打ち勝てば更に強くなれるからな。
「早速、始めようか」
五条先生の声が響く。
俺と宿儺はグラウンドの中央で向かい合った。
「愚かな男だ。不完全とはいえ俺に勝てると思っているとは」
「愚かさこそ人間の証明じゃないですか?」
「ケヒヒッ! 違いない!」
宿儺が愉快そうに笑い全身の呪力を滾らせる。
呪力量では勝っているのに纏っている圧力は相手の方が上だ。
「まずは小手調べですね」
「そんな暇は与えんぞ」
宿儺が踏み込むと同時に俺は額に紋様が浮かぶ
直後、俺の姿が10人に増える。
今回は脱兎の能力を自分に付与した。
「分身の術式か。悪くはないが……良くもないな」
そう言って宿儺が手を構える。
「解」
無数の斬撃が走った。
分身たちの身体が次々と切り裂かれ、黒い影となって消えていく。
「一応、縛りで強度は上げてるんですけどね」
分身は式神を召喚できない。
本体と比べれば強度も脆く単純な戦闘力では大きく劣る。
だからこそ俺は本体の額にだけ紋様を刻んだ。
式神の能力を自らに付与する際、神宝の紋様を額に刻む。
使用している能力が見ただけで分かる代わりに術式の効果を向上させる縛りだ。
今回は更に分身に紋様を刻まないという条件を重ねている。
本体が分かりやすくなるというデメリットを負う代わりに分身の呪力を強化したわけだ。
「これはどうです?」
俺は敢えて残った分身を消した。
そして宿儺へ向かって一気に踏み込む。
「ほう」
宿儺も迎え撃ち拳と拳が衝突する。
相手は格闘技術も超特級クラスだ。
単純な殴り合いだけでも普通の術師なら相手にならない。
だが呪力の総量と出力は俺の方が上だ。
「オラァッ!」
「チッ!」
拳を叩き込み宿儺の身体を後方へ弾き飛ばす。
相手も反撃を繰り出してくるが真正面から受け止めて更に殴り返す。
何度も拳を交わした末、最後に立っていたのは俺だった。
「なるほど、敢えて分裂しないという縛りで本体の呪力を強化したわけか」
「ご明察!」
なお分身に紋様を刻まないことで得られた呪力も本体に還元されている。
なにせ本体にだけ紋様が刻まれている状態は継続しているからな。
要するにデメリットを踏み倒したわけだ。
「いつの時代でも呪術師は厄介なものだな!」
「こんなもんじゃありませんよ!」
俺は呪力を滾らせながら2つの影絵を結ぶ。
すると玉犬・渾と嵌合獣・顎吐が姿を現した。
準備運動は終わりだ。
ここからギアを上げていくぞ。
※新たに課した縛り
・脱兎の紋様
脱兎の能力を自らに付与して分身している間、本体の額に神宝の紋様を刻む。
本体の位置が分かりやすくなる代わりに分身の呪力を強化する。
これは式神の能力を自らに付与する際、神宝の紋様を額に刻む縛りと効果が重複する。
・不分裂
脱兎の能力を自らに付与している間、敢えて分裂しない。
本来なら分身に使うはずの呪力を本体へ集中させる代わりに呪力出力が向上する。
この際、脱兎の紋様による縛りで分身が得た呪力も本体に還元される。
なぜなら本体にだけ紋様が刻まれている状態は継続しているから。
要するにデメリットを踏み倒した。