GANTZ〇(マル)R15版   作:闇の戦士

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20「友人」

 死にかけている丸の視線の先には、白髪赤目の少年──夏目月渚が立っていた。その姿に、感動に似た熱い何かが胸から湧き上がってくるのを感じる。

 

 笑みを作って、疑問は絶えないが、丸を助けに戻って来てくれた事実は変わらない。

 

 それでも、確認しないといけないことがある。

 

「どうして、戻ってきた!? 夏目」

「月川君に助けてもらってばっかりだったから……?」

「理由になってない、ここにいたらお前も危ないぞ!? 夏目、さっきはマジで助かった! ありがとな! けど、もう──」

「僕も戦うって、そう決めてここに戻って来たから。それに、そんなにボロボロの月川君を放って行けないよ」

 

 夏目は丸に近付きながら、もう引き返さないと言い切った。それは紛れもなく男の頑固さで、漢の誓いである。そんなことを言われれば、丸にとやかく言う資格が無くなる。言いたくなかった。

 

その時、赤竜の眼に射抜かれたのを丸は感じた。奴が戻って来たのだ。

 

 一秒後、奴は跳躍した。その巨躯をあり得ない速度で。

 

 そして、翼を広げ、木々を折りながら上空を飛ぶ。飛んでいる、あの大きさで重さで。物理に反する、空想の為す技──飛行。

 

 バサバサと翼を振るって、丸達にそのまま上空から狙いを定め、急降下──、

 

「───ッ」

 

 そこで丸は右に向かって全力で跳んだ。体ごと倒れる勢いで。

 爆発。地面が、爆発した。そう表現するしかない、衝撃波が地面を起点に発生する。当然そんなことが出来るのは、先程までに上空にいた赤竜。おそらく上空から急降下し、丸達のいる範囲に身体ごと特攻突撃したのだ。

 

 砂利や土煙に状況が把握できないが、咄嗟に回避行動が取れた丸はなんとか無事だった。が、近くにいた夏目までもがそうとは限らない。

 

「──夏目!? どこだ!」

 

 クレーターから盛り出し、溢れている土の山を腕で掻き分けて、夏目の姿を探す。声をかけてもすぐに返ってこない。今の攻撃をもしかしたら直に喰らったのかもしれない。そう思い至るが、丸はその考えを頭から払うように、夏目がどこかに転がってないか探し続ける。

 

 と、そこで丸は、土の山から、硬い感触がして、手に取る。この温度は人間の物だと思い、夏目を探し当てたと安堵する。

 

「夏目! 夏、なつ、め……」

 

 しかし、拾い上げたそれは、存外軽く予想よりも早く抜けた。

 

 

 

 

 

 

 

 それは、腕だった。

 肩から先を失った片腕……おそらく右手だろう、と思われる千切れたもの。スーツの切れ端が残っていることから、夏目のものだと直感する。

 

「──クソが」

 

 思わず想像し、吐き気が到来するが、それよりも悍ましい怒りが打ち勝つ。

 震える。体が、異常に震える。呼吸も荒い。吐きそうだ。歯が、ガチガチと噛み合わせて鳴り、口内には土と鉄の味が混ざり合う。

 

「……す」

 

 一文字、掠れて言葉が漏れる。怒りが、脳内の血管を破りそうだ。

 

 再び、上空に舞い戻った赤竜をその目で見る。

 赤竜は、同じようなフォーム、動作、とある一点で返すようにターンし、急降下する。また、同じ事を繰り返して、次は丸を仕留める気だ。一度当たらなければ二度やればいい、そんな安易な考え。だが、確かに効果がある。次はもう避けられるか定かじゃない。

 

 分かっていた。夏目が戻って来た所で、1人が2人になった所で、怪物には勝てないのだと。所詮人間は人間を超えず、竜は当たり前のように人間を超える。それが、自然の理。

分かっていた。だから戻って来てほしくなかったし、でも戻って来て死にかけた男を助けてくれたことに、何故か無性に嬉しくなった。

 

 もっと言葉を交わしていれば友達になったかもしれない。同じぐらいの歳だ。間違いないだろう。きっと、楽しい。ろっくに続いて2人目の友達だ。最高だ。そうに決まっている。

 

 ──なぁ、そうだろ? お前もそう思うよな、夏目。

 

「殺す」

 

丸の顔から、笑みが消えた。

 その目に、口に、憤怒が宿っていた。

 友達を殺した、あの野郎ーー赤竜を許さない。だから、殺す。殺す。殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す!

「ァァガァァァァァァァァァッッァ!!!」

 

 急降下してくる赤竜の片眼に、丸は絶叫しながら、無造作に投げたガンツソードを貫通させる。噴射する血と竜の苦鳴が漏れ、その特攻を中断せざるを得なくなる。翼を羽ばたかせ、ふらふらとホバリングして1人の人間に怒りの矛先を向けた。

 

「VYAAAAAAAAAAAAAAAAA!!!」

 

『もう、許さないぞ、人間如きが』そう言っている気がした。竜の言語なんて知らない。だが、そう聞こえた。

 

 その、竜の顎門が開いた。刃の鋭さを持った何百本の牙を生え揃えた口の中から、赤い光が生まれる。否、光ではない。あれは、めらめらと揺れ動くものは、炎だ。

 

 炎。何故、口の中からそんなものが出てくるのか、全く持って理解できない。それでもただ一つ、アレを喰らったら死ぬということ。

 しかし、もう出来ることを全てやり尽くした。ガンツソードは既に手に無く、赤竜の片眼を潰しただけで一矢報いたと、自分を褒めてもいいだろう? 丸は、茫然と、赤竜の口に超高熱の火が、エネルギーが募っていくのを見つめることしかできない。

 ──悪い、華凛。俺、そっちに戻れないかもな。

 

 かも、じゃない。本当の本当に、今度の今度こそ丸は死ぬ。もう、回避する力は少しも残ってない。それに回避したところで、アレの攻撃範囲から逃れられると思わない。

 終わりだ。

 あぁ、死ぬんだったら、佐里ちゃんともう少しエッチなことしておくんだった。

 童貞は卒業するべきだった。最悪。

 夏目、ごめんな。

 華凛、アイツにもう一回会いたいぜ。

 

 そして、刻一刻と赤竜の火炎息(ブレス)が、チャージを終えていき、遂に火の玉が極大に膨れ上がった。

 死へのカウントダウン。

 あと、何秒丸は生きることができるんだろうか。

 分からない。

 

 

 

 

 ──俺、死にたくねえ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「丸っち、でもアレ、口の中に攻撃したら溜めた炎ごと爆発して超ダメージ与えるチャンスじゃね?」

 

「お前……」

 

「ハァハァ、ここまで辿り着くのに疲れたお。全くぅ……レモンたんと運命共同体じゃなかったら不可能だったんだからなぁ」

 

「──ろっく」

 

 気付けば、丸の隣にガンツスーツの上に金髪の美少女を描いたTシャツをぱつんぱつんに着たろっくがいた。

 ろっくはXライフルガンを構え、赤竜にターゲットをロックオンし、軽い口を叩く。当たり前のように、友人に話すようにして、そこにいた。

 

「やれ、ろっく」

「らじゃ」

 

 丸の一言で、ろっくが一切の迷いなくそのXライフルガンのトリガーを引いた。ギュイーンという青い光を発し、

 

 次の刹那、赤竜の口内に溜めていた炎が爆発し、火だるまになった。

 

 

 

 

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