GANTZ〇(マル)R15版   作:闇の戦士

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21「死ねバーカ」

 爆発によって生まれた熱風が辺り一面を円状に広がった。

 ろっくの狙撃が見事的中し、自らの攻撃が仇となり火達磨になった赤竜は、翼が燃え地に墜ちていく。

 その際、火の粉が空中に拡散して、丸の頬に触れた皮膚が焼き焦げる。そんなことどうでもいい。今は、墜落する赤竜を、眺める。

 

「――やったのか?」

「丸っち、それフラグ~っしょ、やばい、言っちまった」

「あっ」

 

 ろっくにあちゃ~と頭を抱えて言われて、丸ははっと気づく。敵が死んだかもしれない時に、やったのか? というと敵の復活フラグが立つのだ。

 言ったそばから、地面に墜落した赤竜が、火達磨になって尚、その身を炎に焼焦がしながら、立ち上がる。

 翼が燃え、もはや空を飛べなくなった竜が、丸達目掛けて四足を頼りに森を燃やして突進してくる。

 ――何だよ、あの目。俺たちが、そんなに許せないのかよ? 俺たちが何をやったんだよ、お前に! 

 その殺意が、燃える竜の双眸に宿っている。殺意、ありったけの殺意を込めて、丸を睨む。

 赤竜だって、先ほどの攻撃、今身体が燃えるというダメージがあるはずだ。相当、弱っているはず。おそらく、奴も死に体。

 

「VYOOOOOOOOOOOOOOOOOO!!!」

 

 今まで一番弱く、一番恐ろしい咆哮を上げ、赤竜が丸達を殺しに大地を駆ける。

 火の塊が盛大な物量をもって、接近してくる恐怖。弱体化、デバフどころか、その攻撃性は更に炎も合わさり、上がっている。

 丸は、真正面からそれを身に受けながら、距離を縮めてくる赤竜と対峙する。

 

「そんなに……、そんなに、俺たちを殺したいのか? 夏目は、お前に何も――やってないんだぞ。いいぜ、だったら最後まで付き合ってやるよ。ろっくッ!」

「ほ~い! 分かってるぅ、れもんたん見ててぇ~今カッコいい姿見せてあげるからねぇ」

 

 膝立ちの姿勢になり、ろっくがXライフルガンを赤竜目掛けて射撃した。

 ギュイーン! ギュイーン! ギュイーン! ギュイーン! ギュイーン! ギュイーン! 

 ろっくのXライフルガンが六連続の発射音を鳴らし続け、その間に丸も走り出す。目指す先は、当然赤竜だ。ここで逃げても奴は地の底まで丸達を殺し尽くすまで、追いかけてくるからである。

 これは、殺し合い。人と竜の戦争だ。どちらかが死ぬまで続くから、丸は、目の前の竜を殺さないといけない。

 

 時間差で、足に、腰に、翼に、首に、六連射が一発のミスもなく直撃し、その赤竜の速度を緩ませる。

 衝撃波が竜の牙を爪を足を顔を削り取っていく。その最中、丸が走る。目標との接近まで後三秒ほど。

 

 一秒経過。丸の背骨が完全に折れる音がする。体制を崩す。

 二秒経過。更に加速し、無理やりに体制を戻す。痛みが、脳内を駆け巡り、電撃の針で身体中を縫い付けにされたみたいだ。それでも関係ない。ろっくの射撃が当たっているか、聴覚が聞こえづらいので判別不可能。それでも、友達が絶対に外さないことを信じている。

 

 三秒、経過。接近成功。

 

 

 六連続の衝撃波をもろに受けた赤竜の足が完全に止まっている。

 丸は、その眼下で、飛び跳ねた。飛ぶのと同時に意識を失う。

 

 

 

 

 

「――――」

 

 

 

 手に、ガンツソードが当たった感触で意識を振り戻す。

 白目のまま、

 丸はガンツソードを抜き、

 空中に流される中、赤竜の下腹部が正面にあることを知覚、

 丸の体に、赤竜の身に纏っている炎が燃え移って、ともに火達磨となる。

 

 

 

 

 

 

 

「死ねバーカ」

 

 

 

 

 

 全身全霊の投擲を、厚い鱗が破れ、皮膚が欠け、穴が開き、飛び出した臓器に、行った。

 そこで丸は、笑ったまま、意識を失う。

 

 

 

-----

 

 

 

 

 

 

 

 丸は、土が喉奥に侵入した違和感で目を覚ました。

 

 ごぼ、と咳が強く出る。口内から出た土色と混じった血液が地面に飛散する。痛みを全身が襲う。特に耳が痛いと、指で耳の中をほじるとべちゃりと血が付いていた。

 

「何が、あった? ここどこだよ」

 

 記憶も頭もまだあやふやだが、とにかく現状を把握しなければと近くにあった岩を掴み立ち上がる。

 血で滲む視界の中に、灰色の半球のようなものを発見する。それは丸の頭ほど大きさがあり、上の部分が潰れて半透明の液体が溢れていた。

 

「何だよ、コレ……? 石……いや、卵か?」

 

 卵。丸の知っているサイズとはかけ離れているが、近くで見てみれば大きい卵だと分かる。潰れているのは殻であり、半透明の液体は中に入っていた黄身? というのだろうか。

 大きい卵が潰れている。丸の見ているものは、それに間違いなかった。

 それを手に取ろうとして、歩き始めた丸は、木の根に躓き転んでしまう。おまけに木の幹におでこを強打して、のたうち回る。

 

「いったァ! クソ最悪」

 

 と、痛みが少しだけ収まってきて目を開けると、目の前に大きな卵があった。

 木の根元にそれは転がり落ちていて、先ほどの卵とは違って、潰れていない。

 灰色の殻に、赤色の模様が混ざった卵を見て、丸はまさか、と潰れた卵の方を覗きに戻る。

 

 

 

 割れた卵の中には、まだ未熟な赤子ともいえるか怪しいラインの蜥蜴――いや、竜が入っていた。背中部に開いていない翼があるから、竜なのだろう。

 しかし、こんなところに卵。それに竜の。一体、誰が産んだんだ? と、頭が回り、点と点がつながるように答えにたどり着く。

 

「まさか、あのドラゴン……こいつを守ろうと? 母親だったのかよ、アイツ……」

 

 だが、もう死んでいる。その竜の赤子は。

 そこで木の根元に落ちてある、無事な方の卵を思い出す。

 

 ――あの野郎《赤竜》が生きてるかは知らないが、そいつの子供が生き残るのはマズイ。いつか、あんなに恐ろしい化け物になるんだろ? だったら、今のうちに卵の時に処分しておくべきだ。

 

 無事な卵の前に立つと、丸は片足を振り上げ、その体制のまま止まる。

 

「夏目を殺しやがった……! 許せねえ! アイツを! 俺は……ッ!」

 

 足を振り下ろそうと、震える。力をいくら入れようと、足は動いてくれない。

 

「だけど、だけどッ! こいつに罪があるのか......? まだ卵の、こいつに!」

 

 結局、丸は卵を足で潰すことができなかった。

 親を憎み、友達を殺されても、その子にまで丸は非常になれない。それを自覚してしまったら、もうダメだ。

 仮に親であるあの赤竜が、自分の子供の為に外敵である丸達を殺そうとしたなら、納得がいく。身体が燃えて死にかけているのに、あの殺意の目。最後まで親が子を守ろうとしたなら――。

 

 

 許さない。

 だけれど、最終的に丸はこの卵を、地面に埋めて隠した。

 丸にだけ分かるサインを木に刻み込んで。

 

 

「それに……、ドラゴン飼うの夢だったんだ。悪い、夏目! 俺、最低だ! 許してくれ!」

 

 

 そこからなぜか逃げるようにして、丸は足を引きずりながら去った。

 

 

「いつか、戻ってくる! その時まで待ってろ! ドラゴンベビー!」

 

 そう言い残して。

 

 

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